聖鋼の獣車
下のバルロイはさっきの光でどうかなってないか? とみにいったら
拘束されてた市民も教会関係者もバルロイも、気絶して倒れてた
センサー情報で外傷や生命活動に問題が無いことは確認したので
とりあえずウィスキーを出して顔にちょびっと垂らすと、ぶわっと跳ね起き
「とりあえず、気付けに貰うぞ」と、瓶ごとひったくられてラッパ飲みされた
なんかむすっとして機嫌が悪いので、何かあったのかと聞くと
「・・・夢をみたんだよ。親父が出てきてな、礼を言われた
それとな、お前のやりたいように生きろ。そう言われた」
これあれか、ちょっと涙零したいけどお前がいるから出来ないんだよか?
ちょっと皆に通信で現状を伝えると言い少しその場から移動すると
視覚映像を転送してこのチェニスに意見を求めた
「で、チェニス。これが本当に、聖獣様なの?
私にはどうみても・・・ぬいぐるみにしか見えないんだが・・・・」
「ああ・・・なんということだ・・・私はこの目で生きている間に
こんなに神々しい聖獣様の御姿を目にすることが出来るなんて・・・」
・・・・・・どうやら本物らしい・・・神々しさの欠片も感じないが・・・
「うぃっぃ~ うぃきゅ~ うぃっこ~」
「あああああ! なんと心が洗われるそのお声! 私はもう死んでもいい!」
・・・・なんか、全然理解できない。この世界の価値観全く理解出来ない
「レイラ、たぶんそいつは本物の聖獣だ。これを見てみろ」
いつの間にやらバルロイが私の後ろに立っていた。立ち直り早いなおっさん
バルロイがこちらに手を差し出すと、例の偶然大成功の短剣が握られている
短剣は鞘に入っているのに微かに光っている。バルロイが鞘から刀身を引き抜くと
刀身からかなり強い光が放たれていて、微かに震えているようにも見えた
「こいつは今、聖属性にしてあんだがな。そこの聖獣と共鳴してる」「うぃっこ~♪」
ハリネズミがぽてぽてと歩いてこちらにくると、ジャンプして短剣にとびつく
「あっ!」「おい、ちょ!?」
二人が声を上げるのと、ハリネズミが刀身に触れるのはほぼ同時だった
短剣はハリネズミが触れると、蒼い強い耀きを一瞬放った
光が消えた後には、刀身の中央に蒼い筋が残った
少しモディファイされた短刀があった
「またとんでもないものになった臭いぞこれ・・・・」
「バルロイの短刀ってなんか、そういうラッキー多いよね」
「かもしれんな・・・とりあえず鑑定してみる・・・・」
バルロイの鑑定をわくわくして待っていると、直ぐに答えがあった
「本物の聖剣になってるようなんだが・・・・・」
「だが?」
「お前が改造した時点でとんでもない武器だったんで、大きな違いがない
ただ、魔物と魔族に対しての威力が上がるのと一つ面倒がついたくらいだ」
「面倒???」
「エルスリードの名を持つ者が聖剣を所持した場合、王位継承権が与えられる
ただまあ・・・俺の場合はもう名を捨ててるのでそれほど問題にならんだろ」
「んー、それだと、エルスリードの他の苗字もちが奪いに来たりしない?」
「それは不可能だ。お前が打ち直した時点でゴッズ級になっただろ?
レジェンド級以上の武器防具は、所有者が限定されるんだよ」
「あ、じゃあそれ、バルロイ専用ってわけだ」
「そういうことだ。だから盗んでも意味がない
この手のヤバイ代物は、所有者が死ぬと天に還るんだよ魂と共に」
「なるほどね・・・ところでさ、ずっと気になってたんだけど
ここって、デングリ教ってとこの総本山なんだよね?
このハリネズミが聖なる存在で宗教にからんでるなら
ハリネズミ教とか聖獣教とかになるんちゃうの?」
「うぃっ!」
何故か私の質問にハリネズミが返事をする。何いってるかはわからないけど
そして自分を指差して胸をとんとんと二回サムズアップで叩くと
ハリネズミは何の前ぶりもなく、ころころ とでんぐり返しをして立ち上がり
両手を腰にあてて胸をはって、自慢げに鼻をぴーと鳴らした
「・・・・まさかの・・・でんぐり返し・・・デングリ・・・・・」
「・・俺は・・・歴史の真実を始めて知って・・・脱力した・・・」
「・・・仕事しよ仕事・・・バルロイ、気絶してる馬鹿どもの拘束続けて
終わったら拘束されてる市民と聖職者、猿轡だけはずして軽く確認して
あんたなら嘘見抜けるんでしょ? ワグナーの協力者いないか確認して」
「任された。レイラはどうする?」
「聖鋼の獣車っての確認してくる。この子がいれば動くんでしょ?」
「って話だけどな。俺はそこはよく分からん」
「まあ、一回見てくるよ。ハリネズミ君、一緒に来てくれる?」「うぃっ!!」
ハリネズミはとことこと、大きさの割りには早い足取りで階段までいくと
ころ っとでんぐり返しをして階段を落ちていった・・・・
「うぃがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・」
「・・・・あれ、悲鳴だよねたぶん?」「たぶん、そうだろうな・・・・」
トリッキーな手段で階段を転げ落ちながら悲鳴を上げて遠ざかっていった
階段下りるのが面倒だったので、ジャンプしてそのまま着地する
着地すると階段をハリネズミがころがってきたので、キャッチして止める
「うぃっうぃ~♪」「あんだけ転げ落ちて無傷の上に、ご機嫌って何なの」
私の言葉をスルーして、ハリネズミは手からジャンプして床に下りると
祭壇の基部を裏手の方へと歩いていく。たまに転がる
祭壇の裏手にはさらに奥に続く通路らしきものがあって、その先に向かう
しばらく進むと金属製の巨大な扉が通路を塞いでいる
ハリネズミがそれに体当たりすると、扉が自動的に開いていった
扉の向こうには、ボンジリ大王の持っていたのと似た戦車があった
ただ、その姿を見て少し安心した
ボンジリ大王がカスタムしたものではなく、その元となった
なんの改造も追加装備も施されていない、ノーマルのT-35があった
心のどこかで、もしかしたらボンジリ大王が私の前の年代に・・・
という、懸念があった。もしそうなら、二度と彼に会う事は出来ない
そうではなという事実が、少しだけ私の不安を晴らしてくれた
「チェニス、聖鋼の獣車を確認した」
戦車に近づき、周囲を歩いて車体の状況を見ながらチェニスに連絡する
「ランバート殿から見て、聖鋼の獣車はやはり脅威か?」
「これ私の世界で、100年近く前の古い設計の戦車だね
配備された当時の年代でも設計運用思想的に戦車として欠陥品でね
この世界の戦争に使うならそれなりの脅威にはなるんだけれども
戦車に対して正しい知識がある人間が対処すれば貴方達でも撃破は可能
市街地なら簡単に撃破できるし、森林、山岳、湿地帯はそもそも運用が難しい」
車体上面に登って5つある砲塔を確認していく
「つまり、聖鋼の獣車がランバート殿にとっては
大した脅威ではないという事なのかそれは?」
「私にとってではないよ
戦車の苦手な地形に誘導して正しい対処法を行えば
チェニスでもザロス君でも撃破できるよ」
「しかし伝承では、その聖鋼の獣車が悪を打ち破ったと・・・」
車体上面に登って5つある砲塔を確認していく
「その伝承を読んだことがないので何ともだけど
車体全体に鈍器のようなもので叩かれたような凹みがある
3~4本の平行したひっかき傷みたいのも多数ある
車体上面には焦げたような跡や投石による凹みみたいのもある
これたぶん、魔物の大群と戦って肉薄攻撃受けた痕跡だと思うのよ
その伝承って、どこぞから溢れ出た魔物をこれ複数台で殲滅した
そういう感じの伝承じゃない? これが複数あって連携して
開けた平原で戦闘を行ったとかなら、大量の相手を殲滅する
ような作戦なら、驚異的な戦闘力は発揮すると思うよ
前の砲塔の45mm.砲が一門、火炎放射器に交換されてるしね」
「伝承では、一人の男が世界を手に入れる欲に取り付かれて
邪なる心を利用して魔物を作り出したと言われている
そしてその男は魔物を世界に解き放ち世界を手に入れようとした
それと戦い人々の未来を守ったのがその聖鋼の獣車と言われている」
「ま、そういう感じだろうね
ただこれ、ワグナーの残党とかリンツの手勢が手に入れても
たぶん動かし方分からないと思うよ
これたしか、動かすのに、専門の教育受けた兵隊が15人必要だよ
それに頻繁に駆動系とサスペンションが故障するらしいので
修理専門の支援部隊の随伴も必要だったはずだよ
何より燃料とか弾薬の補給も必要だから、まあ、使えないだろね
これについては、一応奪取されないように部品をいくつか外しておく
移動できなければ使えないし、後で必要なら修理して元通りに出来る
そういう対応でとりあえずはいいかな?」
まさかこんな異世界にすっとばされて
ボンジリ大王がうちの基地で5時間くらいだらだら垂れ流した愚痴が
ここまで役に立つ日が来るとはね・・・当時は うぜぇ とか思ってたのに
「後で元通りに出来るのであれば、それでお願いする」
「そでじゃあ、キャタピラ外しておくわ」




