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噂の彼女はフルボーグ ゲーマーOL異世界転生記  作者: 弩理庵
第二部 ワグナーの脅威編
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バースデーショット

 階段をどんがらずどんと数段飛ばししてるっぽい音が聞こえる

 忠告したけどやっぱ無駄だった、皆叫んだ

 そしてそれからほぼ一瞬で、食欲魔人バルロイが一階に現れた


「おま! それは俺の大好きなあのオレンジの魚のなんかか!」


「いや、別種だけど近い魚ので、めちゃくちゃ美味しいやつ」


「ひどくねーか? 俺ら仕事してるのにそういうことするの??」


「いやだから、ちゃんと二人の分、少し取ってあるよ・・・・・」


「あ・・・そっか。そりゃ、失礼なことを言っちまった」


 しばらくしてチェニスさんも降りてきた


「確かに下で飲っていてくれと言ったのは私だがね

 この嗅いだ事もない芳醇なワインの香りは何だ?

 それとこの魚か? いや酢の匂いもする? それはなんだ?」


「なあ、バルロイ。この国の人間の鼻ってのは、犬並みなのか?

 どいつもこいつも料理だ酒だ出すと、恐ろしいほど正確にそれらを捉えるな」


「お前の出す料理と酒が異常なんだよ!」


「なぜだ・・・普通だぞ・・・解せぬ・・・・」


 結局そのまま、残り少ないワインと切り分けた鱒の押し寿司は奪われた

 デノスさんがかなりワインの瓶を渡す事に抵抗したが

 お前らだけ飲むのはズルい とチェニスさんに言われて諦めた

 バルロイはもう結構なれてきてるのでうめー程度で済んだ

 チェニスさんは、キリっとした表情で彫像みたいに固まった

 そんないつもの食い物劇場をしていたら、二人ほど人が入ってきた


「チェイマン、お友達が着たぞ」「・・・あ、ああ・・・こっちに来てくれ」


 入り口には、ぱっとみてその手のプロらしい人間が立っていた

 どこをみても、特徴がない。それでいて違和感もない

 港で荷運びでいそうな格好の筋肉がたくましい男

 ただし顔はなんというか、髪の毛がぼさぼさで目が少し隠れていて

 後で思い出そうとしても、んー、あんまり覚えてない? となりそうな

 特徴のある部分は髪や襟やおそらくちょっとしたメイクで隠れてる

 もう一人は女で、その男の妻のようにみえるが

 こちらもフードのような帽子を被って、特徴を美味く隠している

 服もゆったりしたものをきていて、体のラインがさっぱりわからないので

 後で思い出そうとしても、太ってるようでそうでもないような という

 曖昧な印象しか与えない格好を上手く纏めていた


「これを、父と、あと父の友人に届けて欲しい。急ぎで頼む」

「急ぎですか。大銀貨2枚頂きますがよろしいですか旦那?」

「ああ、それで構わないよ」そういって銀貨を2枚渡すチェニス

「では早速配達してきやす。へへへ、毎度」


 それだけで二人は出て行ったが、女は一言も喋らなかった

 おそらくあの金額も、識別サインなんだろなー・・・なんて考える

 もしかしたら専用の硬貨で、一般硬貨と違うもので

 それで最終的な王族かどうかの本人確認をしてるのかも

 銀貨を目ではよくみていないのに、掌に押し当てて彫刻は確認していた

 注意して見ていないとわからないだろうが、掌に押し付けた際に

 親指で硬貨を撫で回して裏面の模様も確認してた。ああいうのがプロか


「では、チェイマンさん。出立できますか?」「いやもう少しだけ飲ま・・・いけます」


 ちょっとにらんだら、素直に席を立ってくれた

 残りわずかなワインをデノスさんに進呈して

 またの来訪を約束して[煌きのランプ亭]をあとにする


「ランバートン殿、あちらについたらせめてもう「わかった飲ませるから」」


「バルロイ、この世界の人間てのは全部こうなのか? なんでこうも食に拘る」


「お前の出すもんがおかしすぎんだよ・・・」


「ん・・・・バルロイ」「ああ、分かってる」


 先頭を歩いていたバルロイが歩く速度をすこしずつ緩める

 私は自然に一番後ろに移動する

 レミリアも何かしら理解したらしく、歩きながら上着のボタンを外す

 この頃になってようやく、ザロス君とチェニスも違和感に気付く


「うぃっくしっ!」

 

 バルロイがくしゃみをして


「俺がまず突っ込む、チェニスの守りを頼む。合図出してくれ」


 鼻を手で拭うふりをして一瞬隠れた口元で小声でそうささやいた

 ヘッドセットをつけたままだったので、マイクが音をひろってレミリアにも伝わる


《レミリア、私が合図したら、チェニスをそこの家の間の窪みに引っ張り込め

 返事はいい、そっちの思考伝達通信とのリンクがまだ出来てない》


 思考伝達通信を音声通信に変換してレミリアに流す

 レミリアは一瞬顔を動かして了承を伝えてくる


「ああ! さっきの酒場に財布忘れた! ザロス君なんで気付かないんだ!」


 そういって私はザロスをけっぱくって手近な障害物の陰に飛ばして反転する

 レミリアはチェニスの腰を引っ張って窪みにに押し込み

 自分の体を盾にして守りながらショルダーからGlock17を抜いて構える

 おっさんは勢いよく地面を蹴り、壁や窓枠に手をかけて屋根に上る

 私はM40-A1を引き抜いて上方に銃口を向ける

 道路を挟むように建っている家々

 その左手側の家々の屋根の上に黒い何かがある

 人間の頭だ 屋根の反対側に体をひそませ

 目から上だけを屋根上にだしてこちらを見ている

 即座に照準してダブルタップで叩き込む

 二人とも頭を引っ込める間もなく被弾して屋根の上を滑り落ちていく

 

 こちらの屋根の上からはバルロイの「しゅっ!」という息を吐く音が聞こえる

 おそらくかなり遠距離の敵に短剣を投擲したのだろう。しかしバルロイ

 それイメージリンクついてるから、そんな力いれなくていいんだけどね

 バルロイが投げたナイフが50m.程先の屋根の上にいた二人をナマスにする

 

《グーデリアン、なんで振動・・・あ・・・・》

《申し訳ありませんマスター・・・指示がなかったのでナローレンジのままで・・》

《私のミスだわ、ごめん。ワイドレンジ警戒モード、ピン打って!》

《了解であります!》


 部屋での盗聴を恐れ、超高精度小範囲探知モードにして戻し忘れていた

 グーデリアンがモードを切り替えて短信ピンを数度打つ

 仮想ディスプレイのレーダーマップに、周囲に7つの赤いプリップが表れる


《戦術リンクにこれリアルタイムで上げて。レミリアになんとか伝えて》

《小隊の戦術リンクにアクセスして上位命令として介入します》


「いたたた・・・ランバートン殿、敵襲ですか??」


「ごめん、伝える余裕ないから遮蔽物にすっとばした。あと7!」


「数分かるのか、そりゃ助かった。4は俺が仕留める!」

 

 バルロイが宣言した4を駆逐するために屋根の上を走る

 インベントリから没収していたザロス君の剣を取り出して投げて渡す


「それで自衛くらい出来る?」「はい、大丈夫です!」「そこで自衛してて」


 バルロイが倒しにいったのはこの道の先で建物の影に2-2で左右に隠れてる4人


 私の分担の3は屋根の上をこちらに向かってきている


「待つのもあれだし、飛ぶか・・・レミリア、ちょっとここ任すよ」

 

 足に力をこめて、ジャンプの要領で空中に飛び上がる

 建物の屋根の上より5メートル程上まで飛び上がると

 空中でM40-A1をかまえて、突然視界に現れた私に驚く3人にダブルタップで打ち込む

 まあ、卑怯だよねー・・・とべるわ、見えてなくても位置わかるわ・・・

 そのまま射撃反動を利用して空中で後ろ宙返りをして

 バルロイが向かった先の敵が偶然視界に入ったので、残りの残弾をプレゼントする


 「バルロイ、左の2食ったから右いけ右」「あいよ!」


 落下しながらマガジンを交換して地面すれすれで回転して足から着地する


「どうやったらそんな事できるんですか・・・・・」


「気合と根性と鍛錬」「それでどうにかなるものじゃないですよね?」


 ザロス君の質問に適当に返しながら、再度ピンを打たせて安全確認をする

 既に赤いプロップは全て消滅・・・ん? 直上???

 上を見上げると、屋根から落下しながらクロスボウを構えた

 黒いローブに身を包んだ敵が3人飛び降りてくるところだった

 一瞬遅れたが私の反応速度なら間に合う。照準して射撃しようとした瞬間

 パパン パパン パパン とダブルタップが3回鳴り響いた

 あれ? まさかレミリア???

 レミリアは屈んだ姿勢から上方に照準して躊躇なく撃った

 弾はきっちり顔面に当たっていて、彼らは着地する前に死体になっていた

 まあ、飛び降りるってことは着地地点を見極めながらになるから

 確かに顔面は下を向くから撃てないってことはないけどさ・・・

 落下してくる物体ってめっちゃ撃ちにくいはずなのに、その上顔に当てるか?

 Glock17渡したの、つい一時間前程度だよ? なんで当てるのよこの子?

 一瞬反応が遅れたとはいえさ、私より先に撃つとか凄いなこの子・・・・

 褒めるより前に呆れを覚えつつ、レミリアとチェニスをカバーする位置につく


《グーデリアン、なんでさっきの3人分からなかったのよ!》

《マスター、信じられないかもしれませんが

 あの三人はあそこに突然出現しました

 怠慢のいい訳ではありません、データ上で記録しています》

《転移かなんか? それとも元からいて隠蔽してた魔法を解除?

 厄介だな・・・対人レーダー起動 ミッドレンジ モード2》

《了解です! 対人レーダー起動 中距離索敵モード 発信間隔5秒》


 頭部に埋め込まれた対人レーダーが作動する

 レーダーは使用者が探知するより、逆探知装置をもった相手のほうが

 遠くから感知する事が可能という欠点がある

 その為、Call to Storm時代は、余程のことがなければ使わなかった

 相手が逆探知装置をもっていることを前提に行動するからだ

 その習慣がこの世界では能力を無駄にしていたことに今更気付く

 この世界に逆探知装置なんて作れる技術力ないじゃん!

 ちょっと自分の失敗にテンションを下げつつ

 インベントリから9ミリパラベラム弾薬を紙箱で取り出す


「今のマガジン抜いて予備入れて

 抜いたマガジンに弾込めしといて

 Glockは普段使わないから装填済みがない」


「カバーお願いします! 弾込め始めます!」


 レミリアはちゃっちゃと手早く言われた事をこなして紙箱を返してきた

 インベントリに紙箱をしまって、G36-KA2とマガジン7本

 それとマガジンポーチつきのユーティリティーベストを取り出す


「そいつしまってこれもっといて。こっちのほうが慣れてるでしょ?」


「あー、その子のほうが好きなので助かります!」


 レミリアに追加の装備を渡しながら周囲を警戒するが

 対人レーダーにも振動探知にも何もひっかからない

 バルロイも敵を倒したのかこちらに歩いて戻ってきている


「レイラ、出れるか?」「20秒頂戴、レミリアが装備装着中」


「了解だ。俺は先行する、後からきてくれ」「了解」


 おっさんが門に向かって少し早足で歩き出す


「移動するわよ。ザロス君、最後方で警戒

 レミリア、チェニスさんにべったり張り付け

 私は屋根の上から周囲を警戒して移動する」


 返事を待たずにジャンプして屋根の上に跳ぶ

 さすがにこれだけぶっ放すわ、死体が屋根から地面に落ちるわ

 声だしてやりとりするわで、寝ていた付近の住民が起き出したようだ

 振動センサーの反応に、動態反応が増えてきている。こうなると識別が面倒になる

 下を見ると、レミリア、ザロス、チェニスの三人が駆け足で移動をしている

 屋根の上を走り、たまに道路の向かい側の屋根に飛び乗り、警戒してついていく




 

 

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