少女達の決断 2
「ッツ!」
ユミアが反射的に銃を構えてザロス君に向ける
ザロス君にとってはあれが武器かどうか不明だろうが
私が騎兵の一人を拳銃で撃ったので
類するものだろうと予測したのだろう
彼は目を閉じることもなく、覚悟をきめた表情で銃口を見る
「お姉ちゃん、撃つの? 私はやめたほうがいいと思うな」
「なんでよ! こいつの所為で私達は!」
「この人が計画したわけじゃないじゃん? 命令に従っただけじゃん?
それにこの人、反省もしてるし大事な証言者でもあるんだよ?
少なくとも、ランバートン様の計画が終わるまでは殺すべきじゃないよ」
そういうレミリアに目にも、憎悪の色は宿っている
パノンとサーラとアエルの目にも、憎悪の色は宿っている
「私は君達領民を守るべき立場なのに、それをしなかった
ワグナー様の命令とはいえ、私は君達から多くのものを奪った
殺されて当然だと思う。もしそうしたいなら、受け入れる」
パノン、サーラ、も銃を構えてザロス君に向ける
アエルとレミリアは、憎悪の色を浮かべながらも銃を構えない
「ねえ皆、彼殺したら元の生活に戻れるの?
それ以前にさ、領主になんかいわれたからってぽいって差し出す村に
戻って生活したいの? 私は恨みが無いといえば嘘になるけどさ
この人殺しても得るものないしさ。それより罰を受けさせたいなー」
「罰?? レミリア、どういうこと?」
ユミアが銃口は向けたまま、レミリアに顔だけ向けて聞く
「こいつはこの後、王都で証言とかするよねたぶん?
そしたらさ、反逆に手を貸した一人にはなるんだよ
たぶん、ランバートン様が手回して処刑は回避されると思う
証言で国への反逆を防いだとか、反逆を不利にさせたとか
そういう配慮で陛下も処刑はたぶん回避すると思うのね」
レミリアは口を閉じて、少し考えるようにしてから
「でも、騎士でしょ彼? もうそこには戻れないんだよ
王国に牙を向いた叛徒の一人であったって事実は消えない
その叛徒すら裏切ったって事実も消えない
無抵抗な女を他国に差し出す手助けをした、これも消えない
彼たぶん、死んだほうが余程マシって人生をこれから送るよ?
2回の裏切りに、騎士としてあるまじき女子供を虐げる行動
たぶんね、一生、卑怯者の屑野郎って烙印おされるんだよ?」
全く持って、レミリアの洞察力と推論能力は恐ろしい
私が説明する手間が殆ど省けた。ただ一つだけを除いては
この14歳、ほんと何食ったらこんな脳みそできるのよ?
「それでも・・・それでも・・・じゃあ私は誰を恨めばいいのよ!」
「自分だよお姉ちゃん。ただ与えられることにずっと甘んじていた自分
言われたことをすればいい、その人生を甘んじて受け入れていた自分
どうしてこうなったのかって、自分で生きようとしなかったからだよ」
「そんなことない! 私はみんなの助けになるようにってずっと!」
「村に所属しているから村の為に。お父さんに言われたからその為に
妹のために。ご近所の為に。国の為に。なんでもかんでも何かの為
自分がどうしたいのか、そのために何をしたいのか、考えなかった」
「私もレミリアの意見は正しいと思う
でも私はこの人に一つだけ許せないところがある」
アエルがザロスに視線を向けたまま言葉を続ける
「この人は今、楽をしようとしている
生きる事を諦めて、他人に人生の終わりをゆだね様としている
私は生きる事に必死だった。家族も家もなかったから
だからこの人が生きようと必死じゃないのがわかる」
ザロスの体から力が抜けて、尻餅をつくように地面に座り込む
レミア、パノン、サーラの銃口はそれを追わない
「アノンの言う部分は私も同じ不満を持ってる
私がこの人を憎悪を込めてにらんでいるのは別の理由があるの
私がこの人の立場なら、きっとこう言う
『貴方達に殺されるのは当然だと思うけど、少しだけ待って欲しい
王都に行って全てを証言して伯爵の計画を日の光に晒すまで
私を殺すのを待って欲しい』
私だったらきっとこう言う。そうでなければ、責任が取れないから
反省もしているし後悔もしているように思うけど、まだ甘いこの人は」
「私には・・・・この人を殺す権利がないのかもしれない・・・・・・」
「そうね・・・私もこの人を殺すだけの生き方をしてきてないね・・・」
サーラとパノンが銃口を下ろして、どこか哀れむような瞳でザロスを見る
「ユミア、やめとけ。人を殺すってのは、後味わりーぞ」
いままで黙ってみていたバルロイがユミアに歩み寄って
ユミアの肩に手を置いて諭すように言う
「バルロイ様・・・でも・・・この人の所為で・・・」
「俺もな、そういうのあったんだよ。親父がさ、冤罪で処刑されたんだよ
親父はな、腕がいい趣味の陶器職人だった。親父は婿養子でな、家じゃ肩身
が狭いのなんのって・・・俺の実家は女優先の一族なんだよ・・・
なもんでな、俺も親父にべったりでな、親父と一緒に壷とか焼いてたんだよ」
おっさんが無言で手をこちらに差し出す。意味がわからんので首をかしげると
「酒」 と一言いわれて、「あん??」と思いつつも仕方ないので渡す
おっさんは適当に渡したビールを一気に半分程のんで、続ける
「そのうち、親父の陶器が貴族の間で高値で取引されるようになった
趣味で焼いてたもんを、お袋が売りに出すようになっちまってな
そしたら親父は焼くのをやめちまった。売るために焼いてるんじゃない
そういって釜をしめちまった。それから5年後に、ある大会があってな
昔親父がやいた作品を、別人が自分の作品ですって言って出品した
それが優勝しちまった。親父は自分の作品を勝手に使うなと怒った」
「それでどうなったの?」
「そこで食いついてきたのがレイラかよ・・・・まあいい
親父は相手が自分の作品を勝手に使ったと訴えようと王都に向かった
で、王都についたら行方が分からなくなっちまった
3日後に、安宿で、娼婦つれこんでお楽しみの後、娼婦を殺した
そういう罪で捕まって、よくわからない裁判の後に処刑されたのさ
普通ならそんなことにならない身分なんだがな・・・・・・・
自分の言う通りに焼き続けなかった事にお袋が大層ご立腹でな
親父が訴えを起こそうと王都に向かった朝にはな、どういうからくりか
親父はお袋に離縁されてたことになってたわけだ。グルだったんだよ」
おっさんは残りのビールをつぶして、空き缶を握りつぶしてから
「ほい」と私に投げた。受け取ってインベントリのリサイクルにぶちこむ
「でもな、俺は知っていたんだよ。お袋、叔母、俺の姉だの妹
もうな、親父は家中の女にいびり倒されてたんだよ。まあ、俺もだが
なもんでな、そっちの方は俺が10になる前には、ぴくりともしない
まあ、夜の帝王にはなれない体になっちまってたんだな」
「なるほど、バルロイの女運が悪いのはこれ、血筋だな」
「あんたが言うな!・・・ったく・・・
ま、だから俺はドラゴンを倒した褒章に、親父の裁判のやりなおし
というか、それまでに集めた証拠を陛下に提出してな
名誉の回復と陥れた奴の処分を求めたんだよ
んで相手の処刑を俺の手でやらせてもらったんだがな
ぜんぜんすっきりしねーよ。本当に、なんも意味がなかったよ
まあ、俺の場合は、親父の名誉が回復できて、糞みたいな家族を
豪華な家から追い出して物乞いにさせてやったんで、そこはすっきりした」
「バルロイって貴族だったのもしかして?」
「まあ、一応そうだな。今も名前を連ねてるかは知らんがな」
「もしかして、バルロイ・ウホッ・オトコスキー とかって名前?」
「んなわけあるかどアホうっ!
バルロイ・ド・エルスリード これが一応正式名だよ
実家にも戻ってないし、家長相続手続きもしてないから
廃嫡されてるかもしれないがな」




