少女達の決断 1
「マスター。ニルン村付近に大規模な熱源の移動を探知しました
数、およそ500。移動速度と規模から推定して
軽装の鎧をつけた歩兵を中心とした部隊ではないかと思われます」
「ニルン村? まだそんな遠いわけ? 敵の到達予想は?」
「それが・・・野営の準備を行っている様子でして
明日まで野営をしてから出立してと考えますと
明日の1400~1600くらいではないかと・・・・」
「つまり、夜通しな上に午後までオール+αでここで飲めってこと?」
「いえ別に飲み続けなくても宜しいかと思いますが・・・・」
グーデリアンが困ったような返事を返す
じゃあそれまで何してりゃいいのよ・・・・
「ザロス君! 君のところの軍は弛んでるぞ!
なんで夜通しで行軍して目標地点を目指さん! 気合が足りない!」
「夜間の行軍なんて危ない事するわけないじゃないですか!」
不満をザロス君にぶつけるが、正論を返された
まあ、街灯もないし、ライトもないし、暗視装置もないし
そもそもどこから来たのか知らんけど、既に結構疲れてるはず
ま、常識的に考えれば夜間行軍の危険をさけて休養もとるわな
「ま、逆言えば 奇襲のチャンス ってことよね?
バルロイ、質問。現状でこちらからワグナー軍に攻撃して
王法とやらでこちらの行動は問題になる?」
「ちょっと微妙なところだな・・・ワグナー軍が無許可で
レイドック領に侵入した証拠は現物であるんだがな
どっちが先に がこれじゃ分からないわけだ
こいつらを王都に連れて行くか、王都から人を派遣してもらうか
それが先にできてりゃいいんだが、無理だろ?」
「んふ~ん それができれば いいってことね?」
「・・・・なんだその気色悪い声は。すっげー嫌な予感する」
「攻撃する大義名分を得るのに、王都に証拠もっていくのと
王都から人を派遣してもらって現状を認識してもらうの
どちらのほうが後で問題にならない?
それと、どちらのほうが、王都に到着してすぐ出来る?」
「これから王都に行くってか?・・・まあ、あんたなら・・・
そうだな、王都に証拠のこいつらを連れて行ったとしても
その取調べに時間がかかるな。そうなるとやはり
王都から人を派遣してもらうことだが・・・・」
「今から王都にいって、即座に拉致れて
現状を確認してもらえる人。心当たりある?」
「拉致ってな・・・まあ、ほぼそうなるか
まあ、ないことはないが・・・運次第だ」
「アルベルト。4時間、村を空けるとして任せられる?」
「お任せ下さいレイラお嬢様!
たとえ反応炉を臨界起爆してでも死守「やめろ、普通に守って」」
「まあ、冗談言えるくらいなら大丈夫ってことね
グーデリアン、マイベースコアが設置されたから、呼べるもの増えた?」
「滑走路が無いので固定翼は支援要請が出来ません
ドックがないので水上水中艦艇も支援要請が出来ません
発射施設と管制施設がないので宇宙兵器は支援要請が出来ません
高度運用施設がないので回転翼、地上兵器はランク2まで要請可能です」
「UH-60Mは呼べる?」
「可能ですが、外部兵装備の運用が運用施設が無いため制限されます」
「全体に通達する。30分後に私はここを離れて王都に行く
4時間以内に戻る予定だが、6時間までは延びる可能性がある
私が不在の間、何があろうともガフ君と村人を死守して。お願いね」
全員から了解の返事があったので、続けて必要な命令を下す
「ジール、10分以内にランディングパッドを設営して
設営が終わったらグーデリアンに報告して
グーデリアン、ジールから設営完了の報告きたら
そこにUH-60Mを呼び出してジールに給油指示して」
「アイアイサー!」「了解であります!」
「ってことでおっさん、30分後におっさんの夢の一つを叶えてあげる」
「俺の夢??? なんだそりゃ??」
「男の子なら一度は考えた事あるでしょ? 空を自由に飛びたいな って」
「え??・・・なんだこの、人生で最大の嫌な予感は・・・」
「ザロス君も良かったね。あのまま敵だったら、死んでただけなのに
これからたぶん、どんな金持ちもでも不可能な貴重な体験が出来るよ」
「なんでしょう・・・私も凄く嫌な予感しかしないんです・・・・・・
さっきの酒を無理してでも飲めと言われるほうがマシな予感が・・・」
「ザロス君に最終確認する。このまま我々は王都に行くし
場合によっては君の身柄を王都の役人に突き出して
君は罪人として尋問を受ける可能性がある
その上で判決によっては、処刑の可能性もある
それでも君は、間違いを正したいか?
それとも生き残りたいから慈悲を請うか?
素直にどちらが希望かいっていい。慈悲を選んだら殺すとかしない」
ザロス君は、天を仰いで目を閉じた
その体は微かに震えている
ゆっくりと顔を下げ、目を開いたとき、彼の瞳には決意があった
「王都にご一緒させて下さい。私は彼女達の為に、裁かれるべきです」
私は拍手をしながら、笑い声を抑えられずにクスクスと笑った
バルロイのおっさんも、口に手を当てたまま クックックと笑っている
「何がおかしいんですか! 私は本気です! 騙して逃げる気はありません!」
「あー、ごめんごめん、そういう意味で笑ったんじゃないのよ
あのね、その彼女達。全員生きてて、元通りで、無事なのよ」
「そういうことだ。そこの怖い姉ちゃんが、治しちまったんだよ」
「は・・・え?・・・どういう???」
「行く前にケジメつけとこか。アルベルト、施設の警戒まかせた
ハラペコガールズの5人をこっちに来させて」
「畏まりました」
「ザロス君。君はこれから決着をつけないといけない
自分がしたことに対しての決着を
その上で君に命があるなら、王都に同行してもらう
彼女達が君を許すなら、私はバルロイをボコってでも
君が本件において死刑になることを回避するよう働きかけよう」
「なんで俺がボコられるんだ・・・・」
「あんたとんでもないコネもってんでしょ? 使わせるためよ」
「いや殴られなくてもそういう話なら手貸すんだが・・・・」
「それじゃあ私の楽しみがないじゃん」「お前の趣味かよ!」
しばらくすると、きちんと隊列を組んで駆け足で
ユミア、レミリア、サーラ、パノン、アエルが広場に来た
彼女達の表情は少し硬い。まあ、無線垂れ流しで聞いてるしね
彼女達を一列に整列させ、広場の端で待機させる
ザロス君を促して、彼女達の正面に立たせる
「さてと、紹介しましょうか
ユミア、レミリア、サーラ、パノン、アエル
この男が、お前達をあの洞窟まで運んだ男だ」
彼女達の目に明らかな憎悪の色が灯る
ザロス君は一瞬たじろいで後ずさるが、生唾を飲み込んで
姿勢を正して彼女達の前に立つ
「さてお前達。この男を、どうしたい?」
修正履歴
2019年9月12日
高度運用施設がないので固定翼 = 高度運用施設がないので回転翼