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噂の彼女はフルボーグ ゲーマーOL異世界転生記  作者: 弩理庵
第二部 ワグナーの脅威編
52/131

ワインと演劇

 アルベルトの話によると、スタングレネードで耳をやられた馬は

 乗用馬としては二度と使い物にはならないとのことだった

 メディパックのSかMかLを使えば治るかと聞いたところ

 耳と眼が治ったとしても、恐怖が染付いて使えるか分からないというので

 メディパックMまでの使用で治せる物は治して後日試してくれとお願いした

 回復の可能性がなさそうな馬については、楽にしてやってくれと頼んだ

 無力化した22名のワグナー伯爵家所属の騎兵はとりあえず

 ケプラー繊維入り結束バンドを取り出して、後ろ手に縛った上で

 両足も縛り上げて村の広場周辺に転がしている

 この騎兵は斥候だと思っていたのだが、少し気にかかる点がある

 斥候としては数が多い上に堂々と村に入ってきたりと行動がおかしい

 そこで諜報、防諜に優れるアルベルトに、情報収集を任せた


「アルベルト、肩とわき腹に傷があるのが恐らく隊長格

 そいつは止血して一応確保しておいて

 あと、その右に転がっているのが恐らく副隊長

 その男も確保しておいて。後のは楽しんでくれていいわよ」


「畏まりました。では何名か連れて行ってお話を伺ってきます」


 アルベルトが2名の騎兵を選んで、襟首をつかんで引きずっていく

 私は気絶して転がっている残りの騎兵に、メディパックSを投げていく

 5分もすると気絶から回復して耳の機能も戻った彼らは

 自分が置かれた状況を理解できずに、何やらわめきだす


「うるさい。黙れ」

 

 通常弾のマガジンを取り出して、M40-A1のマガジンを交換する

 そのまま適当に一番近かった騎兵の太ももを、動脈を避けて撃つ

 撃たれた騎兵は大げさな悲鳴を上げて地面を転がる


「うるさいと彼と同じ目に遭うけど、それが望み?」


 撃たれた騎兵以外は黙って静かになった


「バルロイ。あんたなら次の手はどう出す?」


「まあ、正攻法なら歩兵を主力とした部隊で村の制圧だろな」


「でもこいつら馬鹿よね、戦術がまともとも思えないのよね・・・

 普通で考えたら、斥候なら騎兵3くらいでいいはずでしょ?

 挙句に機動力が売り物の騎兵を村に突入させるとかあり得ないし

 この騎兵の数と行動が素人レベルの考えですらなくて分からない」


「たぶんだがな、これだけの騎兵が村に入ってくれば

 こっちが恐怖していう事を聞くと思ったんじゃないか?」


「あちらも、バルロイがこの村に居るのは知ってるんでしょ?」


「それなんだが、さっきの副隊長っぽいのの反応をみると

 知らなかったんじゃないか? という気がするんだよな俺は」


 おっさんとそんな話をしていると

 凄まじい悲鳴が少し離れたところから聞こえた

 「いやだぁぁぁぁぁ 離してくれぇぇぇぇ」

 「お前は悪魔か やめろ いぎゃああああああ」

 等と被害者の悲鳴がはっきりと聞こえてくる

 まあ、見えないけど聞こえる位置でわざとやってるんだろうけどね

 ちなみにこの悲鳴の声の主はアルベルト本人である

 おそらく彼らと少し お話 をして

 発声パターンを学習して、声色を合成してこちらに聞こえるように

 村の家屋への反響を計算した位置で偽悲鳴を上げてると思う


「ああ、アルベルトがはじめたのね・・・ご愁傷様」


「さっき連れて行った2名に拷問でもしてるのか?」


「そうそう。アルベルトってそういうのも得意なのよ

 彼、諜報と防諜の担当だったから、色々楽しい事してるんじゃない?」


「どれくらいで喋ると思う?」


「さあ・・・喋って楽になるか

 死ぬことを望むほど苦しいかどちらかだから

 まあ・・・10分程度かな?」


 明らかに周囲に転がる騎兵の顔色が明らかに悪くなる

 それを見越したように

 「たすけて、かあさぁぁぁぁぁぁぁん ぎぃぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

 という悲鳴を最後に、静かになる

 口元に指を当ててバルロイに喋るなと合図する

 誰も喋らなくなり、周囲に聞こえるのは

 先程足を撃たれて転がされている騎兵の、苦悶の呻きだけになる

 その呻きも、出血による意識体力の消耗で少しずつ小さくなっている


「人が死んだ後の静寂って本当に素敵ね

 さっきまであんなに激しく奏でてくれていたのに

 それが嘘のように一瞬で静寂に変わるの

 魂が燃え尽きた後のこの厳かな静寂

 私この瞬間がたまらなく好きなのよ

 次は誰が私と彼を楽しませてくれるのかしら?」

 

 周囲に転がる騎兵に明らかな動揺が走る

 転がされてろくに動けないのに、身を捩ってここから逃げようとするもの

 手足を動かして何とか拘束を解こうと試みるもの

 逆に赤子のように身を縮こませて、俺じゃない俺じゃないとつぶやくもの

 私はグラスを手に立ち上がると、無作為に選んだ一人の下に歩み寄り

 「ワイン飲む?」と屈みこんで聞いた


「え?・・・いや・・・遠慮する」


「遠慮しなくていいのに。最後のワインになるんだから。ね?」


 口元にゆっくりと、グラスを近づけていく。唇に触れる直前に


「これ結構いいワインなのよ。よかったじゃない、最後に美味しいの飲めて」


「いやだああああああ、俺は死にたくない! 助けてくれ! なんでもする!」


「それは彼が決める事だから。まあいいじゃない、飲みましょ?」


「何が知りたい? 何でも喋る! だから彼の所に連れて行かないでくれ!!」


 タイミングよく、アルベルトがゆっくり、ゆっくりとこちらに近づいてくる


「おや、レイラお嬢様。次の私の楽器はその男が宜しいですか?」


「うん、彼。とてもいい声で歌ってくれると思うのよ

 今、発生練習をしてくれていたのよ。貴方にも聞こえたでしょ?」


 アルベルトが近づいてきてその姿がはっきりと見えるようになる

 肘から先を執刀前の医師のように上げ

 指先から肘までを真っ赤にそめて、赤い液体を滴らし

 腹から胸にかけてはべったりと返り血を浴びたその姿で

 品の良い笑みを浮かべて、ゆらり、ゆらりとこちらに歩いてくる

 いやー、知らなかったらホラーだわ。確実に漏らすわこんなの見たら


「頼む、彼を止めてくれ! あんたが彼の主人なんだろ???」


「そうね。ただ、主人として配下の者に楽しみを提供するのも義務でしょ

 何でもするって言ったわよね。彼の演奏の為に協力してくれない?」


「それ以外なら何でもする! 知ってる事も全部喋る! 頼む止めてくれ!」


 アルベルトが速度をあげて男まで一気に歩み寄ると

 血塗れの手で男の顔面をガシっと掴み、そのまま立ち上がって持ち上げる

 顔面を掴まれたまま、足が地面から離れるまで持ち上げられた男は

 体をひねり、拘束された足を激しく動かしながら、痛みに悲鳴をあげる

 掴まれた顔からは、ミシミシと骨がきしむ音がする


「お前のような下賎な者が、レイラお嬢様に願い事をする等おこがましい

 お前に何が出来る? お前が何を知っている?

 お前がお嬢様が満足するような何かを出来るとでも思っているのか?」

 

 そこまで言うと掴んでいた手を開き、地面に男を捨てる

 そしていつもは、糸のように細くしか開かれていない目をカッと見開き

 白い綺麗な歯をむき出しにして、男の顔に自分の顔を近づける


「お前に唯一出来る事は歌う事だけだ。お嬢様と私を満足させるまで歌え」


「お願いしますお願いしますお願いします助けて下さい助けて下さい!!!」


 うん、もういいんじゃないかな? たぶんここまで行けば喋る

 アルベルトに目で合図をすると、アルベルトが微かに頷く


「バルロイ、その椅子をアルベルトの横にもっていって」「あいよ」


 バルロイが折り畳み椅子をアルベルトの横にぽいと投げる

 結構でかい音をたてて椅子が転がる前にアルベルトが片足でとめる

 先程と同じように顔面を掴んで持ち上げると

 椅子に叩きつけるように男を座らせると

 愛しいわが子でも触るような柔らかな手つきで

 顎をあげさせ、指を顎からつつーっと鼻まで滑らし

 鼻の頭に滴る血が少したまったところで指を離して血の匂いを意識させる


「では一度だけチャンスをやろう。お前が何を知っているのか全て話せ」


 そこからは男が面白いように喋る喋る

 22騎の重装騎兵を無力化するのに

 スタングレネードが2発 ゴム弾が4発

 必要な情報を得るための素直な捕虜を得るのに

 輸血用の血漿パック1つ 拳銃弾1発

 それにちょっとした演出と演技だけで

 私達は求めていた情報の欠片を手に入れる事に成功した




 


 






 



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