望まぬ騎兵隊
ユミアをつれてガフ君の家を出ると私は村の広場を目指して走った
既にアルベルトが、レミリア、アエル、パノン、サーラに指示を出し
広場中央にあるステージのような場所の上で、警戒態勢を取らせていた
「ユミア、レミリア、アエル、パノン、サーラ
恐らくこれから戦闘になる。貴方達はまだ訓練を始めたばかり
だからまともな戦闘はまだ行えない。それは自覚してるわね?」
全員が少し戸惑いながら頷く
「アルベルト、5人を預ける。村人の退避を支援しながら
退避場所の建物の防衛戦を行え。一人も被害を出すなよ?」
「畏まりました。レイラお嬢様はどうなさるおつもりで?」
「ここで一杯やって待つことにする。彼女達のことお願いね」
「そてはとても素敵ですな。承りました、では皆さん行きましょう」
「あの・・・出来たら、私も残りたいです」
ユミアが先程よりは多少マシになった顔でそう言って来た
「駄目よ。貴方達はこの村に受け入れてもらった
ならその恩をきちんと返しなさい
アルムの村人に一人の犠牲者も出させるな。いいわね?」
「・・・・・・・・・・分かりました」
不承不承のユミアをつれて、アルベルトが指示を出して走り出す
周囲の家々からは、先日逃げて戻ったばかりだというのに
また避難する羽目になった村人が、慌しく東に向けて駆け出していく
ガフ君とバルロイの、村人に避難を急がせる怒声に近い大声が
日が沈み始めた村中に響いている
《お待たせしましたマスター 光学映像出します》
仮想ウィンドウに街道を走る騎馬隊の列が映し出される
ファンタジーや歴史物の映画等で見たことがるような
妙にテカテカした西洋甲冑を着込んだ騎馬隊の一団が
土煙を上げて街道を走ってくる姿が現実味を感じさせない
《なんか、2キロくらい先からでも狙撃しやすそうなてかてか具合ね》
《夜でも昼でもあれは目立っていい的になりそうですな》
《あの馬ってさ・・・馬刺しにしたら美味しいと思う?》
《・・・それはどうなんでしょうか・・・アルベルトに聞いてみますか?》
《いや、興味本位程度の質問だからいいわ》
さて、あいつらをからかうのにいい素材は・・・
いつもの折り畳みテーブルと椅子をだして
高そうなワイングラスと瓶の見た目だけで選んだワインを取り出して
大皿を取り出して、その上に何種類かのチーズとサラミを並べる
《バルロイ、避難誘導終わったら広場にきて。ワイン開けて待ってる》
《俺の分残しておいてくれよ。てかこの状況で飲むのかよ、すげーな》
《あいつら来た時にさ、私らが ウェーイッ! とかいって飲んでたら
あいつら滅茶苦茶怒りそうじゃない? そういうの面白くない?》
《あんた本当に性格悪いな。そういうの嫌いじゃないわ》
《摘まみはチーズとサラミ。ちなみにかなり美味しい もぐもぐ》
《2分で行くわ》
騎馬隊は一度、村の前で停まって馬の息を整えさせてから
隊列を組んで村に入ってきた
その所為で時間が想定よりかかった為
私とおっさんは、2本目に突入して結構堪能できた
「貴様ら、そこで何をしている!」
「お前誰?」「あんた誰?」
威圧的に隊列を組んで村に入り込んできた騎馬隊の指揮官らしいのが
いきなり高圧的な態度で質問をしてきたので
事前の打ち合わせどおりに馬鹿にする返事を返してみた
指揮官らしき男はかなり沸点が低いらしく
剣を抜いてこちらに向かってきた
「バルロイ、あんた殺る?」「殺していいのか?」
「出来れば無力化してほしいところ」「任された」
完全に相手を見下して馬鹿にした態度でどちらが相手をするかを決めて
おっさんがやるというので、お任せすることにした
おっさんは例の短剣を引き抜くと
「まあ、お前にゃもったいないが。受けてみな、バルロニグズを」
と、かなりやる気がない感じで投擲した
どうも練習していたらしく、投擲された短剣は
向かってきた男のわき腹を切り裂いた上で反転して右肩に後ろから刺さった
刺さった短剣は刃の根元まで肩に食い込み貫通する
その上でおっさんはイメージリンクを上手く使い、短剣を90度回転させる
「戻れ、バルロニグズ」
おっさんはイメージリンクを使いこなせるようになったらしく
鞘に短剣を戻してまた引き抜いた
わき腹を切られ、肩を貫通され抉られた偉そうな態度の間抜けは
剣を取り落として落馬して、苦悶の声を上げていた
「お前ら誰だよ? 俺を疾風のバルロイと知って喧嘩売ってんのか?」
おっさんが演技交じりにダルそうに騎馬隊の残りにそういうと
騎馬隊のやつらがひるんだのが雰囲気で伝わってくる
おそらくこの指揮官はそれなりに彼らの中では強かったのだろう
それがダルそうに投げた短剣の一投でいきなり無力化された上に
ドラゴン討伐の英雄様の名前がでてきたら、こうなるんだろうなー
「何処の所属だ? うちの領主はどこの軍にも、通行許可を出してない
こりゃうちに、戦争ふっかにきた。そういうことでいいのか?」
おっさんは、落馬した指揮官の傍に短剣を投擲しては鞘にもどし
また掠めるように投擲しては鞘に戻しを繰り返して
完全に遊びながら、相手を威圧した
「待ってくれ! 我々はワグナー伯爵に使える騎士団の者だ!
無礼については詫びよう! 我々はワグナー伯爵から密命を受け
レイドック男爵領に逃げたと思われる犯罪者の捜索に来たのだ!」
指揮官の代わりに、副隊長と思われる男がいい訳をした
あ、そういう筋書きで軍隊派遣してきたのね、なるほど
にしても、なんで誰も、馬から下りて出血してる味方を助けないんだ?
「王法を知らないのか? 他の貴族管轄領に軍隊を入れる場合は
事前に許可を取らなければ侵略行為になるんだが
まさか、知らないとか、緊急事態だからとか、言う気じゃないだろな?」
「そ・・・それは・・・」
「レイラ、もういい。やっちまえ」「ほいほい、では手はずどおりに」
私は羽織っていたコートの内側に隠していた手をだして
既に安全ピンを抜いて安全レバーを握っているだけの状態の
M84スタングレネードをぽいぽい と投げた
おっさんがその場にふせて、耳を塞いで口をあけて目を閉じる
次の瞬間、激しい閃光ととんでもない轟音が当たりに響いた
馬は嘶き大暴れするか、気絶してその場で倒れる
振り落とされたり気絶したりで、馬にのってた兵隊も大損害
フルプレートの鎧なんてきて落馬したらただじゃすまない
たった2発のM84で、騎馬隊の9割近くが戦闘不能に陥った
村の入り口に近かった2騎だけが何とか立っている状態だが
馬は既に制御できる状態ではないので
必死に振り落とされないようにすることしか出来ない
待ってる間に用意しておいた、ゴム弾装填のM40-A1を引き抜き
馬の上で手綱を握って必死に耐えている男達の頭に当てていく
「22騎の騎馬隊相手に、無傷で完全勝利か
挙句にこっちは、酒飲んで適当に打ち合わせして遊び半分か」
「戦争なんて、楽できればできるほどいいじゃない」
「こいつらプライドズタボロだぞ。何もできないで気絶だからな」
「生きてるだけマシじゃないの? ま、これから地獄見るけど」
《アルベルト、騎馬隊を無力化した。後処理にこちに来て》
《畏まりました。直ぐに参ります》
《間違っても警戒態勢と防衛体制解除しないでよ。たぶん次がくる》




