UAV
グーデリアン君が秘蔵の やらしぃふぉるだ を教材として提供し
おっさんは短時間でPTDに異常な好奇心を示し
驚異的な速度でPTDの操作を覚えていった
グーデリアン君が何故そんなものをもっているのか?
てめー誰の記憶領域勝手に使ってそんなもん保存してんだ?
というのは今回は大目に見て上げる事にした
というのが、予想以上におっさんへの教育効果が高く
既におっさんは、地図モードを普通に使いこなし
送受信チャンネルを切り替えて確認する等の
基本操作過程をほぼ終了してしまったのだ
変態AIと中年の奇跡のコラボだよ・・・最悪だけどね
この馬鹿どもはとりあえず放っておくとして
今はとにかく情報が欲しい
整理すればするほどあまりにもおかしい一連の動き
どうしてアルムの村が最初に襲われなかったのか?
ニルン村の壊滅は本当にあったのか?
ユミア達は攫われる事が計画されていたのではないか?
とにかく分からない事だらけなのに情報がたりない
その情報を少しでも埋めるたの手段として
UAVを10機投入するという荒業で対応することにした
アルム村の哨戒任務に機2機×3 (8時間交代制)
ニルン村への偵察任務に2機
周辺地形の地図データ作成に2機
全て光学センサーと赤外線センサーのペアで出撃させる予定だ
しかしなんでこんな、面倒な状況になっているのだろう?
この世界にきて一日として、何も考えずに休めた日がない
まだ3日目だというのに常に何らかの危機がそこにある
現実で勤めていた会社は給与はいいがそれなりに残業があったが
今の環境はそれより苛酷だよね・・・等と愚痴思考モードに入りかける
タイミングよくアルベルトが、昼食が出来たと持ってくる
村で収穫された小麦と、湖で取れた貝と魚を使ったシーフード生パスタ
魚の骨をで出汁を取って村の野菜がごろごろはいったスープ
それに村で作っているパンという現地食材を生かした昼食だった
調味料も村にあるものだけを使ったとのことで、味付けが薄かったが
ボリュームも十分でパスタはもちもちの食感で美味しかった
ガフ君やバルロイや腹ペコガールズもご満悦の寄声を上げている
アルベルトは私が色々考えていることを察しているらしく
彼らを私の傍からそれとなく離して一人にしてくれている
彼が戻るときに、さり気なく珈琲をマグカップに注いでくれたのが嬉しい
ジールからUAVのカタパルトと回収フックの設置作業を開始した
との報告が入るが、設置にそれなりの時間がかかるらしい
アルベルトに幾つも仕事を押し付けて悪いのだが
UAVの設置運用については任せて、準備が出来たら射出するように指示する
昨日から徹飲みで寝ていなかったので、少し仮眠を取ることにして
UAVがニルン村につくか、警戒すべき情報が入ったら起こしてと言って
外にだしっぱにしていた椅子に浅く腰掛けて、足を組んで目を閉じた
2時間後、UAVは設置と初期設定を終えて次々と射出されていった
一番最初に射出されたのは哨戒ペアで、即座にアルムの村の哨戒に入る
哨戒任務のペアからは、特に脅威と思われるデータはなかった
このまま2機を1ペアとした3ペアで、今後は24時間
アルムの村周辺を哨戒し続けてもらうことになる
ニルン村偵察任務からは、最悪なデータが送られてきた
村には普通に生活跡があり、壊滅したという様子が無かった
バルロイに確認してもらったが、上からの映像ということで
最初は自分の知っているニルン村の記憶とそれを
照らし合わせて照合するのが難しくて時間がかかったが
グーデリアン君が上空からの映像データを下に
モデリングをして立体データを推測も入れて作成し
それによる水平方向からの映像に切り替えることで
おっさんの記憶との照合が可能になった
そして分かった事は、壊された家屋は無く
火災等によって消失した家屋等もないという事実だった
私は悩んだ末に、アルベルト経由でユミアさんを呼んだ
アルベルトに残りの4人をなるべくガフ君の家から遠ざけてもらい
ガフ君、バルロイ、ユミア、私の4人でガフ君の家の食堂に集まった
「ユミアさん。私はこれから貴方に、残酷な現実を見せる事になる
私を恨んでくれてもいいくらい、酷い事をするのかもしれないけど
場合によってはアルムの村の存続に関わる問題なので、協力して欲しい」
私が頭を下げてそう言うと、ユミアさんはうつむいたまま
「もしかして・・・ニルンの村は・・・壊滅していなかったんですか?」
彼女も予想していたのか、こちらの雰囲気から察したのか
または別の理由があるのかは分からないが、そう言った
「おそらく、そうなんだと思う。今からその絵をみてもらいます
ニルン村かどうか確認してく欲しいけど、お願いできる?」
「・・・・わかりました」
おっさんがPTDをテーブルの上にだして、ユミアさんに差し出す
赤外線映像を見せてもたぶん理解できないと思われるので
光学映像センサーを搭載した機からのリアルタイム映像を見せる
空から見た動く絵に最初は戸惑った様子を見せたものの
映像を食い入るように見ては、ここは何だ、あれは何だと
独り言を繰り返しながら確認していく
しばらくすると、PTDから顔を上げ、私達を見据えて
「ニルン村です。間違いありません・・・
顔は分からないけど、動きとか、家の前にいる雰囲気とか
そういうのから、死んだと思っていた人、殆ど、居ました」
どこか、他人事のように、淡々とそう告げるユミアを見て
衝撃が大きすぎて、逃避行動に入っていると理解した
「どういうことなんだ・・・ユミア達は襲われたといった
それについては嘘だと俺のスキルは感知しなかった
隠蔽の魔法や対抗魔法がかけられていた形跡もない
そういった魔道具を装備していた形跡もない
なのに村は存在する。どういうことなんだよ???」
「私の仮説ね・・・おそらく、魔法か何らかの記憶操作
魔法で村が襲われる幻影をユミアさんに見せて
それを事実として誤認させて記憶させた可能性が一つ
もう一つは直接記憶に、襲撃されて攫われたと書き込まれた
このどちらかじゃないかと推論してるけど、証拠はない」
「なんのためにそんなことをするんだ??」
「そんなの、私が知りたいですよ! なんなんですかこれ!
死んだと思ってた皆が生きてて、私達だけあんな目にあってて
そこから救いだされて頑張って生きていこうって
辛いけど辛いからって何もしなかったらなんにもならないって
無理してでも頑張ってきたのに、なんなんですかこれ!」
ユミアが立ち上がってPTDを思いっきり壁に投げつける
軍用仕様なので壊れることはないが、激しい衝突音を響かせる
ユミアは泣くでもなく、うな垂れるでもなく
ただ、正面をみて、急に力が抜けたようにすとんと座った
「ランバートン様・・・教えてください・・・・・
私達・・・村の人全てに・・・共謀されて・・・・
捨てられたんですか?・・・売られたんですか?」
「もし、そうだと私が言ったら、どうするの?」
「どうしたらいいんですか私? 死ねばいいんですか?
またあの洞窟に戻ればいいんですか?
それとも村を私達で襲って殺せばいいんですか?」
「事実確認が出来ていないので、そこについてはまだ何も言えない
ただ私が言える事は一つだけ。最終的にどうするかを決めるのは貴方
そしてその決定が正しいと私も感じたなら、私は貴方を支援する」
「・・・・もう、いいじゃないですかランバートン様・・・・
私達を放り出して、ランバートン様は関わらないようにすれば
もう、面倒なことしないでいいじゃないですか? そうでしょ?」
「私は貴方達に関わるとあの時決断をした。そう自分で決めた
だから途中で放り出す気はない。それにね
貴方は私の部下なの。レミリア、サーラ、パノン、アエルも
部下をこけにされて黙ってられるほど、私は出来た人間じゃない」
《「マスター、緊急報告です。哨戒飛行中のUAVが多数の熱源反応を感知
数22 速度20キロ前後 街道をこちらに向けて移動中
対象の現在の移動速度ですとアルム村への到達予想は25分後になります」》
投げつけられたPTDのスピーカーから、思考伝達通信からのどちらからも
グーデリアンの声が聞こえ、この場にいる全員がそれを把握した
「グーデリアン、目標の光学映像出せる?」
《「現在、光学センサー装備機は目標を補足できる範囲におりません
コースを変更して急行させていますが、2分お待ち下さい」》
「オリマーかジール、上物は防衛戦に使える状態になった??」
《「イエスボス! ギリギリ間ニ合ッタヨ!」》
「良くやった。引き続き建設作業を続けて
タイゾウは穴掘りが得意だから、地下の拡充を急いで
いざとなったら村人と地下に篭城してもらう」
《「イエスボス!」》
「アルベルト、4人を連れて至急村の広場に移動
お前が戦闘可能状態まで仕上げられたと思うなら
全員にマガジンを規定数支給しろ」
《「畏まりました! 彼女達は戦えます」》
「ガフ君、バルロイ。村人を東の湖畔沿いに作った
新しい建物に避難させて。時間がないから急いで」
「分かりました!」「任された」
「ユミア。貴方はどうするの?
ここで絶望に打ちひしがれてる?
村人と一緒に避難する?
それとも、皆と共に戦う?
貴方の人生だ。貴方が決めなさい。今直ぐに!」
「私は・・・皆と一緒に、戦います」