徹飲み明け
結局、腹ペコボーイとガールズは翌朝まで起きてこなかった
ユミア達は皆、行軍で疲れていたんだろうとは思うし
ガフ君も避難所で、責任者眠れない夜を過ごしていたのかもしれない
寝袋からもそもそと皆がおきてくるころ
おっさんと私は、未だにちびちび飲んでいた
「しっかしレイラはつえーな・・・俺とサシで朝まで飲める奴は始めてだ」
「私はイカサマみたいなもんあるからね。絶対酔わない仕掛けがある」
「それ便利でいいな。俺にも出来るか?」
「んー・・・将来的に出来るかもしれないけど、今は無理かな。設備がない」
「設備がいる酔わないイカサマってどんなイカサマなんだ・・・・」
最初にこちらに歩いてきたのは、ガフ君だった
ぼーっとした目で、まだ目が覚め切っていない表情でのたのた歩いてくる
「・・・おはようござ・・・臭い! すっごいお酒臭い! 物凄い臭い!」
「はい、おはようガフ君。そりゃそうでしょ
日が暮れてからずっと飲んでるんだから。もうここらの空気凄いことなってそう」
「おうガフ、おはよう。久々に満足するまで飲めたので、今日は頑張れそうだ」
「なんでバルロイさんもレイラさんも、徹夜で飲んでそんなに元気なんです!?」
「「鍛え方が違うから」」
おっさんと見事に答えがハモったので、二人してケラケラ笑う
酔いすぎていないだけで、酔っていないわけではないので
二人とも朝から結構なハイテンションであったりする
「バルロイ、このアルコール臭いのなんか魔法で解消できない?」
「あるぞ。デオドラントって魔法がある。今かけるわ」
おっさんがぶつくさいって、周囲の空気や私達のアルコール臭を消す
この魔法便利だな。ちょっと欲しい
「ほら、ガフ君。皆がおきる前にこれ食べちゃいなさい」
残っていたスモークサーモンをガフ君に示す
一瞬で距離をつめたガフくんが、即座にサーモンの残り2切れを食べる
「おいしいいいいいい! 燻製みたいな匂いにやわらかいお魚!
油がのってて塩気も丁度いい。これすっごいおいしいです!」
「でしょでしょ。ちなみにおっさんは、これを3パック一人で食べました」
「バルロイさん! ひどいです! なんで起こしてくれないんですか!!」
「起こしたらお前が全部食っちまうだろうが・・・俺も好きなんだよこれ」
ガフ君のために椅子を出し、ジュースとカップも出してあげる
ついでに昨日ガフ君は食べていないので、BomBomのランチパックを出す
「大声出さないで食べてね。あそこでまだおきかけの5人には好評だった」
「ありがとうございます! いただきます!」
ガフ君はバーガーやらポテトやらにかぶりついて、声を必死で抑えてる
体をぷるぷる震わせて、歓喜を声に出さずに表している姿がとても可愛い
「レイラ、俺それ食ってないよな? 俺のは?」
「あんだけ飲み食いして、まだたべんの? いるなら出すけど」
「酒と摘まみは別腹。朝飯は別で食うぞ?」
「ほいほい、まったく金がかかる中年だねバルロイは」
バルロイの分も出してぽいっと渡す
私は後で彼女達と朝食を取るつもりなので、緑茶を出して飲む
「しかし、お前のその不思議な物入れの中には
どんだけ食料がはいってんだ?」
「最低でも、2万人の兵隊が3ヶ月飲み食いする分は入ってる
数えてないから、それだけは絶対にあるとしか言えない
まあ、予想で適当に答えるなら、2万人5年分くらいはある」
Call to Stormのサーバーは、3ヶ月ごとに配置初期化作業が入る
設営された大規模基地は回収され、各プレイヤーのインベントリに戻る
これはあまりにも長期間、特定のプレイヤーが
資源や狩場を独占しないためのバランス調整措置で必要らしい
そのため、3ヶ月分の食料があれば、サーバーリフレッシュ時から
いきなり他のプレイヤーに連合でせめられても、篭城できる
そのための弾薬、物資、食料は最低限確保しておくというのが
一定以上のランクのプレイヤーの共通の認識であった
ただし、採掘能力、占有面積、駐屯可能兵力等が少ない
中規模以下の基地についてはこの回収が行われない
「2万人が3ヶ月・・・もしかすりゃ5年分・・・
王国の備蓄を遥かに超える量ってことか・・・・・」
「基地を設営すれば設置した資源プラントの数と質に応じて
自動的に各種資源は採取、採掘され続ける。休みなくね
だからある程度補充も常にされるので、まあそうそう減らない」
「その基地の設営がこれから行われるわけだな?」
「まあ、その前に、ガフ君に名誉男爵の件話して許可もらってからね
ってことでバルロイ、説明お願い。私、彼女達と朝ごはん作るから」
「あいよ、任された」
「もぐもぐもぐ??」
「皆もう起きてんでしょ? 上官より先に寝るとか良い度胸してるわね?
罰として今朝は各自で訓練を兼ねた自炊で朝食にする
これより食材と調理器具を支給するので全員駆け足で出て来い!」
「「「「「ひいいいいっ」」」」」
テントから揃った悲鳴が聞こえて、ばたばたあたふたと騒がしくなる
全員が寝癖スタイルのまま、慌しくテントから出て私の前に整列する
やはり、指揮下にはいった影響による新兵の最低限の教育
これが施されている。彼女達を私は洗脳してしまったのだろうか・・・
「も、申し訳ありませんランバートン様。その、疲れていたのか・・・」
「いい訳は良い、結果で示せ。これより装備一式を支給する」
野外炊飯セット、水、米、ガフ君に許可を貰って分けてもらった薪
それと野外炊飯のマニュアルとマッチを取り出して、各員に配る
「その本に従って自分で考えて工夫して調理を行え
米の洗浄については無洗米を支給したので省略して良い
火を使うので火災に注意して周囲の草は刈ってから竈を組め
私の朝食もお前達の手腕にかかっていることを忘れるなよ?
各員理解したなら、行動を開始せよ」
「「「「「了解しました! 行動を開始します!」」」」」
はっきりいえばこれはテストである。彼女達の能力のではない
私の指揮下にはいった影響がどのレベルで出るのかを見極めるテストだ
飯盒をつかって米を炊く。この経験は彼女達には無いはずだ
これがいきなり一定基準以上を達成できるなら、間違いなく
指揮による影響を受けて必要な知識が刷り込まれていることになる
また、軍隊調による命令に反感を抱くか、恐怖を覚えるか
こういった今まで経験したことがない状態に対してどう対応するのか
これらを見極めるためのテストとして行っている
私も周囲の石を拾って適当な竈を組み、薪を並べていく
野外炊飯セットを取り出して金属性の支柱を立て、ポールを通す
そこに大なべをかけて水をはって温める
インベントリから粉末出汁、味噌、長ネギ、豆腐を取り出し
粉末出汁を入れて味噌をといて、切った具を入れていく
沸騰しないように、遠火にして保温程度に調整して蓋をする
その時、耳慣れた電子音が頭に響いて声が続いた
PiPi
《仮設陣地の設営から一定時間が経過しました
条件が満たされた為、支援要請の一部機能が解除されました》
・・・テントを設営したから仮設陣地と認識された?
いやそもそも、今のメッセージは誰からのメッセージよ???
そして思い出した、8年前を
そうだ、マイベースを設置しないと支援要請で兵を呼べないと思っていた
違う、そうじゃない、その前に仮設陣地を設営して、支援兵を呼んで
その支援の下でのマイベースの建設が可能だった。忘れてた!
あまりに昔すぎて、そして一度しか経験していないので
記憶からばっさり抜け落ちていた・・・そうだ、初回プレイ時はこうだった
《グーデリアン、支援要請で派遣可能なユニット一覧を表示して》
《了解であります! こちらが一覧になります》
予想通り、攻撃力のある車両や設置兵装の支援は灰色で不可表示になっている
軽装甲車両、非装甲車両、非武装小型船舶・・・ここらはいけるのか
固定翼、回転翼は全滅でパーソナルジェットやアーマードスーツも駄目ね
兵員ユニットは・・・・
新兵までの各種ユニットと・・・え!? 工兵が呼べる! これは嬉しい
あとはサポートユニット・・・あれ? 作成済みサポートロイドが呼べる!?
作成済みサポートロイドのページを開いて確認すると
懐かしい、私が過去に作って育てた共に過ごしてきたサポートロイド達の姿があった
いつも居て当たり前の存在だった、彼、彼女達
メインベースに戻れば必ず挨拶をして毎日過ごした彼、彼女達
その一覧を見ただけで、たった数日しか経過していないのに、懐かしさがこみ上げた
私は自分でも知らぬ内に、一筋の涙を零していた




