少年と魔法
_________________________
「ここが僕の家です!
あんまり綺麗じゃないかもしれないけど・・・・」
ガフ君がスキップしながら
たまに転びそうになりながら行き着いた先は
この村で一番大きな建物だった
ぱっと見渡した限り、アルムの村には二階建ての家が
この家一軒しか無いので一番大きな家という事になる
「えーと、これは、ガフ君?
村の村長さんとか偉いさんの家っぽいけど」
「はい、父がこの村の領主だったので
その・・・僕が跡取りなので一応は僕が村長です」
ちょっと自信なさげにモジモジしながら言うガフ君
くそっ、ちょっと可愛いぞおい・・・
「待つんだガフ君。メイドとか使用人とか護衛とか
村長ならガフ君以外の誰かが家に住んでいたり
通いで働いていたりするんじゃないの?
それ以前に領主様が身元もわからん迷い人を
そんな簡単に家に入れて良いの??」
「父はちょっと特殊な形で領主になって
この村を国王陛下から拝領したんです
あ、もう真っ暗なんで中に入りませんか?
外はすぐ冷えてくるので体に悪いですから」
「あー、まだ貴族になったばかりの家系だったのね
それでは、お言葉に甘えてお邪魔します」
ガフ君が扉に手を当てて、目を瞑ってブツブツと
何かを小声で呟くと掌の先に紫色のような色合いの
円形を基本とした幾何学模様の何かが浮かび上がり
扉にもそれにと似たような光る模様が浮かび上がる
一瞬模様が光を強く放つと玄関のドアから
ガチャッと鍵が外れる音がして開錠された事が分かる
ガフ君にとっては当たり前の事のようで
そのままドアを開けて中に入っていく
《あれは魔法ってやつだよねー、、、
確実に魔法ってやつだよねー、、、
魔力錠とか魔法錠とかそういった類のやつか?
異世界まったなし確定だこれ》
ガフ君に続いて様子を伺うように室内に入る
室内にも外にも外灯等は無いので暗くてよく見えない
視覚センサーの表示モードを変更して
AI補正暗視イメージ映像モードに切り替えると
室内が原色に近い色補正がかかった
イメージ補正映像で表示される
室内に物は多くないが、よく整頓され
趣味が良い家具や棚が置かれている
玄関正面に大きな木製のテーブルがあり
テーブルの脚にベンチのような板が接続されている
キャンプ場や公園にあるテーブルに似ている
テーブルの向こうに大きな暖炉があり
暖炉の前には金属製の低い柱が設置されていて
その柱を渡すように金属の棒が置かれている
おそらくここで料理する為の吊り具かな?
「灯りをつけますから、ちょっとま
あたっっ!? っててくださいね」
喋っている途中にガタンッという大きな音がしたので
何かに足を当ててしまったっぽい
ガフ少年、そういうウッカリ君は嫌いじゃないぞ
ちょっと最後涙声っぽいところも評価高いぞ
この少年、将来きっと大物になる
きっと立派なボケ芸人になれる事であろう
ガフ君からは、暗くて自分が見えていないと
思っているようだが、私からは色がドギツイ以外は
至って普通にガフ君の姿が見えている
ガフ君は先程の開錠と同じように
柱にとりつけられたランプのような器具に手を翳し
何かをブツブツ唱えると紫の模様が表れ
古いドラマで見たことがあるような
白熱電球のような色合いの灯りが点る
「普段は一人なんで、あんまり灯りをつけないでも
慣れで動けるんですけど・・・
今朝、木こりのリーンさんからもらった薪を
置きっぱなしにしていたのを忘れていました」
先程のあたっっの言い訳をしつつ
ガフ君は室内にあるランプのような器具に
ブツブツ言いながら灯りをともしていく
オレンジの灯りに室内が照らされ
どこか懐かしさを感じる色合いの
素朴の全容が見えてくる
「ガフ君、なんか灯りつけるの大変そうだし
私の手持ちの灯り使う?」
「え? でもこれ、起動者登録制だから
レイラさんの魔力を通しても・・・」
魔力 やっぱ魔法か、魔道かもしれない
もしかすると魔術とか魔導かもしれないけど
もう魔何とかがこの世界の論理形態であるの確定だ
「ううん、私が持ってる別の灯りを使うと
もっと明るいし簡単に済ませられるから」
「そんなものがあるんですか!
見てみたいので出してみてほしいです!」
「ちょっと眩しいかもしれないから
最初は直接見ないように気を付けてね」
ガフ君に注意を促しながら
インベントリから野営用のLEDランタンを取り出す
テーブルの上においてスイッチをいれると
周囲に白い明るい光が満ちる
ついでに壁にある何を引っ掛けるのか
不明な金属製の輪具にもランタンを吊るし
テーブルと周囲の壁3か所に光源を確保する
「し、、、しろい、、、しろい眩い光、、、
これは聖光を灯す魔道具ですか!」
「聖光? なんとなくわかるけど、違うよ
これは私の国なら誰でも買える道具」
「だって、、、白い上質な服に・・・
白い灯りを振りまく魔道具・・・・
レイラさん貴方は・・・
伝説の白衣の先導者様なのですか!!」
「何それ? この国の伝説とか私さっぱり分らんけど
それは絶対に違うからね
だってこれ、魔法じゃないよ」
「え?? 魔法じゃないって?
だって白く眩く光ってますよ!」
「私、それ光らせる時にさ
魔法?てののブツブツ言うのしたっけ?」
「あ・・・・・そういえば・・・
してないですね・・・・」
なんか急にテンションが下がって
叱られた犬みたいに項垂れるガフ君
ガフ君、本当に君は素晴らしい少年だ
その小動物系の愛くるしさは
お姉さん弩ストライクだ、素晴らしい!
「というかね、ガフ君。私はたぶんね
この国の人間じゃないの
んとね、理由は私もよくわからないけど
私は迷子みたいな状態なのよ
気が付いたらあの道にぽんと投げ出されていて
ガフ君が歩いてきて今に至るわけよ」
魔法らしき原理で光を放つ照明と
LEDランタンを交互に見て溜息を吐くと
再び口を開いて話を続ける
「そもそもね、ガフ君が使ってるブツブツ言って
開錠したり、ランプみたいな道具に灯りを点けたの
あれが魔法だとガフ君の言葉で理解したんだよ?
私の国には魔法なんて物は存在して無いのよ」
ガフ君は私の言葉にぽかーんとした顔で驚いている
しかし流石はガフ君だ、このタイミングで
<ぐ〰〰っ ぐぎゅるるるるっ〰〰>
腹の虫を盛大に鳴らして
赤面して俯いてモジモジするガフ君
素晴らしい! パーフェクト! エクセレントだ!
「ご、、、ごめんなさい、、、
おなかすいてたみたいで、、、、」
「私こそごめんね、面白くない話しちゃって
ご飯すぐ作るから、ちょっと待っててね」
_________________________




