いもむしころころ
「じゃあガフ君、最終確認するけど
アルム村は彼女達を受け入れる。この方針でいいのね?」
「その通りです。父さんなら必ずそうしたはずです
それに僕は、困っている人や不条理にあっている人を
見てみぬフリをして生きれる程、大人じゃないんですきっと・・・」
癒し系わんこ少年なのに、なんか決意ある男の目だったな・・・
ガフ君もこうやって大人になっていくのかと思うと感慨深い
しかしお気に入りのガフ君の成長に喜んでいる場合ではない
「では、次は居住についての問題を確認しましょう
現在、アルム村に、廃家や未使用の家屋等の施設があるか
また存在した場合はその賃貸もしくは一時利用が可能か
それらが存在しない場合は、一定の平地の一時利用許可が出るか
これらについて確認して検討していきましょう」
「あんたたまに、ものすっごい真面目に話しすると
なんてか・・・ガラって雰囲気かわって有能そうに見えるな」
「あー、私どっちかっていうと、こういう交渉とか専門だから」
「え? 兵隊だろあんた? 殺しが専門じゃないのか?」
「あー・・ええ・・まあ・・それも専門ですね・・否定できません」
説明しても分からないよなー・・・
商社の社員として契約とか事務仕事をしつつ
家に帰ったらズボラ家事してゲームでヒャッハーしてるとか
この世界の人に説明するのは、コンピューターの概念からになる
文明レベルが違いすぎるから、この説明はしばらくあきらめよう
「レイラさんの質問ですが、空き家や廃家はありません
前はあったんですが・・・解体して他の家の資材にしちゃいました
土地についてはあまってるので問題ないんですが
他の住人の畑や家屋、生活に影響がない場所ならという条件になります」
「大体、予想通りの答えかな
ガフ君とこの家の前の草があんまりはえてないところ、使っても良い?」
「そこでよければ構いませんが、僕から皆さんに提案があります
僕はバルロイさんの家に泊まるので、しばらくこの家を使うのはどうですか?」
「・・・駄目・・それ絶対駄目・・ガフ君にバルロイ臭が移るから駄目」
「俺の体臭はそこまで毛嫌いされるレベルなのかよおい!」
「バルロイ臭を抜きにして考えても、村長が邸宅を明け渡すは有り得ない
それは村長の尊厳にも、村人からの不満にも影響する
だからガフ君がこの家から一時的にでも退去するは無しで
村長より新しくきた住人の方が格が上って事例にすり替えられる危険性がある
相手がね、ガフ君より格上の貴族とか、王家の方とかならありなんだけどね」
「ガフ、これはレイラが言うことが全くもって正しい
お前はまだ未成年だから名乗れはしないとはいえ
正当なレイドック男爵家の継承者でこの村の村長だ
その地位はこの村では常に最上でなければならないし
それを示して村の治世を安定させるのもお前の務めだ」
「す・・すみません・・・ちゃんと考えないで言ってたかもしれません・・・」
ガフ君は急に、しょぼーんモードになって少し俯く
バルロイはそんなガフ君を見て、苦笑しながら
「いや、人としちゃガフの判断は正しいし、俺個人としては嬉しいよ
オルムの息子はちゃんとまっすぐな人間に育ってくれたと誇りに思う
だが、お前には、ただの平民ではなく男爵家の家長って立場もある
今回はその立場の問題があった。ただそれだけのことだ」
「私もほぼ同意見ね
この臭いおっさんの家で最悪な環境での生活に耐える覚悟をもち
自己犠牲を払ってでも困っている人を助けようとするその姿勢は
私もとても嬉しく思う。ただ、立場があったってだけ」
「あんた本当に、俺を何だとおもってんだ!!」
「勘違いで私の事を殺そうとして負けた挙句に、飯だ酒だと集るおっさん」
「ぐっ・・・反論できねぇ・・・・・」
「あ、あの、それじゃあ、どうしたら良いんでしょう?」
ガフ君がおっさんとの言葉のドツキ漫才を中断させて質問をしてくる
おっさんへのイビリはまたの機会にしよう
「この家の前の草が刈り込まれた敷地をお借りできるなら
テントを設営して居住空間を確保します」
「テントですか? この季節だと夜はかなり冷えますよ?
まだ大丈夫とは思うけど、夜は雪になる事もあるから厳しいですよ?」
「そこは問題ないよ。スリーピングマットとシュラフがあれば
外気温が氷点下でも居住可能なテント出すから」
「まてまてレイラ。冒険者ならともかくだな
ただの村人だった彼女達に、この季節の野営はきついぞ?」
「んじゃ実験台の無駄飯ぐらいのバルロイよ
現物出すからまあ、試してみてよ」
「また俺で試すのかよ・・・・・」
断熱材が入った赤外線反射コート仕様のスリーピングマット
冬季仕様の軍用シュラフ、これらをインベントリから取り出す
それと地べたに寝るのは害虫問題で危険なので
キャンバス地の折り畳み寝台を取り出す
折り畳み寝台を展開して、スリーピングマットをのせ
丸まっているシュラフを広げて上にのせてファスナーを下げる
「おっさん、こっからこう、足をいれて体を入れて
んで、この銀の部分をこう、金具を上に優しくひっぱりあげて」
「なんだこれ?面白い携帯寝具だな・・・あれ???
なあ、レイラ・・・これ、俺の家のベッドより、具合いいぞ?」
「あ! ごめん、枕忘れてるわ枕!」
追加で枕を出しておっさんの頭の下にぐにぐにもぐりこます
「・・・・レイラ、これ売ってくれ。これ家でも外でも使えるわ」
「いやあのだな、これを家の中で使うのはどうかと思うんだけど?」
「ちょっと下が固いってのはあるんだが、凄い暖かいぞこれ」
「そりゃそうよ、体から出る熱をほぼ外に逃がさないんだから」
「というかだな、暑いくらいになってきたぞ?」
「ああ、そういう時は、ファスナーちょっと下ろして熱を逃がすの」
「なるほど、これよく出来てるな。これは冗談抜きで売ってくれ」
おっさんの感想に、何故か全員が僕も私も試したいとなって
ガフ君の家の前にでて、人数分の簡易寝台を取り出す事になる
簡易寝台の上で寝袋に包まる男2+女5という
奇妙な天日干し芋虫の列を見て、なんだこの展開はと頭を抱える
「バルロイさん、これすごくあったかいです・・・気持ちいいです」
「だろ・・・しかも軽いし持ち運べるんだぜこれ? 狩の時に良いだろ?」
「お姉ちゃん、これあったかいし、かび臭くないよ!」
「本当だわ・・・それに下に敷いてるのが意外に柔らかくて心地良いわ」
「私は厩で藁に包まって寝てたから、こんな暖かいベッドは体験したことない」
「アエルは本当に扱い酷かったもんね・・・でもこれ、本当に寝心地良いわね」
「サーラが寝心地良いって言うの分かるわ。これ私の家にあったのより暖かいわ」
評判は悪くないようなので、もうこのまま設営に入ることにした
ガフ君の許可を得て、サイコナイフで下生えを微調整程度に刈る
ブラストナックルを起動して、振動を広範囲均等モードにする
湖側に少しだけ傾斜をつけて排水を意識して均す
ブラストナックルが作動する音に全員が少しビビるが作業を続ける
インベントリから軍用万能シャベルを取り出して
テントの面積+10センチの外縁を軽く掘って排水路にする
テントをインベントリから取り出して、ポールをたて
おっさんに手伝わせて、合成素材の布地をかぶせていく
そして最後に、ワイヤーを地面に固定して歪みがないかを確認する
設営しているモデルは、本来の名前は宿営用天幕という
自衛隊の装備で一応定員は6人になっているが
実際ベッドを広げたり何かおけば4人がいいところになる
これを2つ、手早く展開して中に3個ずつ簡易ベッドを並べていく
2つある出入り口のポールに、LEDランタンを吊り下げて光源を確保
夜間の冷えに対応するために断熱板を取り出してその上に
対流式石油ストーブを設置して上に水のはいった薬缶を置く
まだ空間余裕が少しあるので、折り畳みの机と椅子をベッド脇に置く
「ほい、できた
まあ、家に比べれば快適性は無いだろうけど、しばらく我慢して
日中とかは両側の出入り口の布跳ね上げて、換気とかしてね」
「こんな上等なテントみたことないぞ・・・これも欲しいな」
「なんで狩いくのに、こんな6人定員のテントほしがんのよ」
「いや、もっと小さいのがあればそれが欲しいが・・・・」
「一人用もあるから、今度探してあまってたらあげるわ」
「それは有難いんだが、なんでベッドが全部で6個あるんだ?」
「私、ユミア、レミリア、アエル、サーラ、パノン、6人でしょ」
「なんでレイラがテントなんだ? ガフの家だろ?」
「あのさ、指揮下の女の子に外で寝させて
私は家で寝ろっての? そういうの嫌いなの」
「いや一応だな、村長の相談役なわけだレイラは
それに護衛もかねてるわけで、同じ家でも問題ないだろ?」
「年頃の男の子がさ、家に家族でない異性がいたら気使うでしょ?」
「そこについては問題ないんだが、その話は今度にしよう」
「ん、分かった。じゃあ後は基地設営についてか
ガフ君、ちょっと基地設営につ・・・・・」
パ ZZZZ・・・・・・zzzzzzz
ユ ずぴー・・・がー・・・むにむに・・・
ア もうたべれない・・・でもたべたい・・・
ガ ・・・・スーッ・・・スーッ・・・・・
サ 収穫は・・・・むにむに・・・・刈り込みも・・すやすや
レ ・・・・・・フゴッ・・・・グビー・・・グエ・・・
「・・・・おっさん、こいつら寝やがったぞ」
「まあ・・・暖かくて気持ちいいから、分からんでもないな」
「てか、いつの間に、設営したテントの中入り込んで寝袋はいったこいつら?」
「俺らが真面目に話してる隙じゃねーか?」
「・・・・・飲むか」
「・・・・そうだな」
台風で風が強くて、外で凄い音がして怖くて全然眠れません・・・




