はじめてのこうぐん
久々に見る木々の間から漏れる日の光はとても眩しくて暖かい
顔を撫でて行く風の香りと感触は、とても優しくて少し冷たい
あの日まで、毎日当たり前だったこれらを感じる事が
こんなに懐かしくて、こんなに嬉しい事だなんて思わなかった
悲しいわけではないのに、自然に涙が頬を伝う
レミリアも、サーラも、パノンも、アエルも
二度と見る事が出来ないと思っていた外の景色に涙ぐんでいた
「さて、まだ10時前だけどどれくらいの速度で進めるか分からないし
出来れば、お昼には森林地帯は抜けておきたい
昼食は鬱蒼としげった暗い森より、見晴らしがいい草原で食べたいしね
3キロ弱で草原地帯に出るので、1時間もあれば辿り着くとは思う」
ランバートン様がこれからの予定を簡単に説明してくれる
説明しながらランバートン様はあの不思議な力で何かを取り出して
私達に一つずつ渡してくれた
「森の中は歩きにくいから、杖を渡すので使って
森の中では特に足元に気をつけて
窪み、石、枝、木の根、こういった物に足をとられて挫くことがある
足を挫けば、全体の移動速度が落ちるし体力を多く消耗する
ただ、足元ばかりみていると、張り出した枝や蔦で顔を怪我することがある
足元にも、目の前にも、視点を動かして常に注意して移動するように」
「「「「「はい、分かりました!」」」」」
「それでは、最後の締めくくりをしたら出発しましょう
全員、洞窟に注目
耳を両手で塞いで口を大きくあけて姿勢を低くして」
よく分からないまま、皆は屈み込んで言われた通りに耳を覆って口を開く
「これより洞窟を吹き飛ばすので全員衝撃に備えて。起爆」
ランバートン様が起爆と言った次の瞬間
物凄い轟音と地響きがして、洞窟があった崖が火と煙を噴き上げて崩れた
あまりの衝撃に、屈んだまま転んでしまう子もいた
「これであの忌々しい洞窟を使うことは二度と不可能になった
そして貴方達がここに攫われてきた事を調べる事も不可能になった
あの大量の土砂やら岩やらを除去しない限り、洞窟には入れない」
「ねぇねぇねぇねぇねぇ、ランバートン様何したの何したの何したの??」
レミリアが転んだ状態から、好奇心に輝く目をランバートン様に向けて
今起こった事に興奮しながら説明を求めている
私はただ驚いて呆然としていたのに、なんでこの子はすぐ適応するんだろ
「C4って爆薬を出てくる前に洞窟のあちこちに仕掛けておいたのよ
起爆させるとああいう風に爆発して、大抵のものは吹き飛ばしてくれる」
「あれ私でも出来るの? やってみたいやってみたい!」
「玩具じゃないぞあれは・・・ま、そのうち訓練で経験はするんだけどね」
「すっごい楽しみ! なんか私、今のほうが前より人生が楽しいかも!」
「レミリア、いいかげんにしなさい。ランバートン様が困ってらっしゃいます」
「困ってはいないが、そろそろ移動は開始したいところかな
お喋りに夢中になると注意が疎かになり体力も消耗する
ただでさえこの人数での移動で音を立てながら歩くので
周りの野生動物とか魔物? とかに見つかりやすいので
常に注意を怠らないこと。では、出発しましょう」
「「「「「「はい!!」」」」」
行軍を始めてから、違和感がだんだん酷くなる
どうして訓練を受けていない彼女達がこの速度で歩けるのか?
誰も弱音や愚痴も吐かずに、息も上げずについてこれるのか?
どうして等間隔で段違いの隊列を維持できているのか?
明らかに一定の訓練を受けた者と思われる動きをしていた。全員が
1時間もしないうちに森林を抜けて草原に出る
そこであることに気付く、このまま進めばあそこに出てしまう
《グーデリアン、ルート指示お願い。この前の戦場を避けたい》
《了解であります。しかし迂回する場合街道までの到達時間が延びますが?》
《それは問題ないわ。彼女達に嫌な記憶を呼び起こさせたくない》
《ああ・・・そういう事ですか。出すぎた事を申しました》
グーデリアン君が来たときとは違うルートを地図上に新たに表示する
あ、そろそろいい時間だ、ついでに昼食に適した場所も探してもらおう
《グーデリアン、昼食に適した、見晴らしがいい場所をルート上に入れて》
《了解です。ルート再修正を行います》
ほんの少しルートが変更されて、昼食予定地点のプリップが追加される
修正されたルートに沿って歩きながら、一瞬振り返って全員の様子を見る
多少の疲労は感じられるが、特に問題があるレベルではない
銃や弾薬、食料等の荷物がないとはいえ、道無き森林を踏破して
この状態はやはり異常だ。グーデリアン君に聞いてみよう・・・
《グーデリアン。彼女達はどうして、この速度で行軍をして脱落しないの?》
《前にも少し話題に出たのですが、マスターの戦術指揮支援機能の影響かと》
《あれってどういう効果があるの?》
《今回のケースの場合、彼女達はマスターの正式な指揮下にあります
指揮下に入ることを了承し、マスターの部隊のドッグタグを装備しています
まず、指揮下に入ることを了承した時点で、新兵の能力が付与されます
指揮下に入りドッグタグを装備しているため、配属された兵士として扱われ
彼女達には常に、マスターからの戦術指揮支援技能が無条件で発生します
現在彼女達に与えられている戦術指揮支援技能による影響は
肉体強化LV5 士気鼓舞LV5 持久強化LV5 射撃補正LV5 体力強化LV5です》
《んー・・・それって具体的になんか分かりやすい説明できる?》
《戦術指揮支援機能LV2につき、1ランク上の兵に相当する能力になります
つまり彼女達は、2.5ランク上の兵士相当になります
新兵 一般兵 熟練兵 エリート兵 特殊部隊 サイバー
これがCall to Stormでのおおまかな兵士のランクになりますが
現在、新兵に2.5の修正がついて、熟練兵の扱いではないかと》
《つまり、なんも訓練してないのに、そこそこ使える兵隊になったと?》
《それは正しくはありません
肉体能力、士気、持久力、射撃命中度、HP(体力)
これらの能力のみが熟練兵相当に底上げされているだけです
そのため、戦闘経験、判断経験、小火器や兵器の運用経験はありません
銃の分解整備等の知識もないので、戦闘を行うには不安があります》
ゲームとしてCall to Stormを楽しんでいた時は、意識もしてなかった
戦術指揮能力とか存在したのは知っているけど
基本的に、戦場に行く、陣地を作る、徹底的な前線防衛をする
そして戦闘車両による火力支援と安定した補給を確保し
戦場が自分にとって優位になってきたら、じわじわと前進する
その時には自分が一番前にでて、AI兵の損失を出さないように進む
こういう時間をかけて殲滅する戦術を多用してきたので
兵の個々の強さを重視した遊び方をしていなかったからだろうな・・・
それにクワッドドライブボディーを運よく手に入れてからは
兵隊つれないでソロで狩場にいって無双してたもんなー・・・・
兵の武器や装備についてはお金かけたり物資かけたし
訓練関連も暇さえあれば一番お金かかるのをやらせてたけど
基本的に、あがってない数値あげて自己満足だったんだよね
戦術指揮が兵士にどれだけ影響与えてたかよく検証してなかったわ
「あの、ランバートン様、どうかなさいましたか?」
グーデリアン君との会話。そしてそれからの考え事で
無口になった私が不機嫌になったとでも勘違いしたのか、ユミアが問い掛けて来る
「ああ、ごめん。そろそろお昼にしようとおもって、何食べよっかなって」
「私達はまだまだ大丈夫ですので、街道まで先に出てしまうのはどうでしょう?」
「それもいいけど、そこまで時間に余裕がないわけじゃない。休憩しましょ」
「はい、わかりました! 全体、この先で少し小休止にする。もう少し頑張って!」
「「「「はい!!」」」」
・・・・・ユミアさん、貴方完全に先任になってますよね・・・
兵隊としての知識も指揮下にはいったから最低限が刷り込まれた??




