ユミアとおっさんと私
三人でベッドがある部屋を出て、洞窟の入り口に近い
朝食の仕込みをしてある部屋に移動することにする
「バルロイ、少し先にいって安全を確認するから、ゆっくりきて」
「ああ、分かった」
たぶんこれだけでバルロイにはこちらの意図は伝わる
先に部屋に入って見られないようにインベントリから
キャンプ用の木製の折り畳みの椅子と机を出しランタンを載せる
先ほどセットした電子炊飯器とバッテリーを奥に移動させて隠す
準備が整ったので部屋から出て
通路には光源を置いていないので、ほとんど何も見えない
そこを女性を支えるように、バルロイがゆっくりと進んでくる
バルロイに手だけで合図をする、この暗闇でもやはり見えるようだ
バルロイは頷き歩く速度を上げて部屋に入ってくる
《まあ、いずれバレるし、物自体がこの世界では異質なものばかりだろうし
ここを撤収するときに格納するのを見られる可能性もあるだろうけどね》
私が警戒したのはインベントリの存在だ
8年間のプレイで獲得した夥しい量の武器弾薬に資源にアイテム
私自身、どれだけの量が入っているのかも想像もつかないこの中身
この存在を悪意ある者が知れば、どんな手段を使ってでも欲するだろう
正直、まだこの女性達についてはどこまで信用していいかも分からないし
これから先どういう関係になるかも予想できない
そのため、私についての情報は必要最低限しか与えたくないと考えていた
室内の先ほどだした椅子に、女性に座るように促す
座ったのを確認してから、バルロイと私も浅く腰掛ける
「助けていただいて有難う御座いました・・・・
私は、ニルン村の村長の娘で、ユミアと言います・・・」
「改めて自己紹介するわね。私はアルム村の住人で
レイラ・ランバートンです。そんなに緊張しないでいいわよ」
「俺は顔を合わせるのは初めてになるか
俺もアルム村の住人で冒険者だ。名はバルロイだ、宜しくな」
「アルム村・・・バルロイ・・・
Aランク冒険者の疾風のバルロイ・・・・
さっきランバートン様が仰っていたのは本当だったんですね」
「まあ、一応そういうことになってるな
最近はAランクだと名乗るのに少し自信が無いがね」
バルロイが恨めしそうな目で私を見てそう言う
「ユミアさん、少し聞きたい事があるんだ。ニルン村って言ったな?
たしかワグナー伯爵のとこの領地で、甥のドルビス男爵の村だよな?」
「そうです・・・もう村はありませんが・・・・・・」
やっぱりバルロイを連れて来て正解だった。さっぱりわかんない
「あんたらの村が襲われたのはどれくらい前だ?」
「正確にはわかりません・・・でも、1ヶ月は経っているはずです」
「1ヶ月・・・村一つ全滅して、その話がうちの村には伝わってない」
バルロイのおっさんは難しい顔をして少し俯いた
何かメンドクサソウな感じの考え事をしてる気配がする
「ユミアさん、村が襲撃されてあんた達は攫われた、それで間違いないか?」
「・・・・・・・はい・・・・」
「村にいたドルビス男爵のとこの兵隊はどうなった?」
「魔物が村に近づいているのを、見張りの兵がみつけました
兵を指揮していたカニス様は、応援を呼びに行くと真っ先に逃げました
残りの兵は村の守備を命じられましたが
ゴブリンの群れが見えるとすぐに逃げ出しました・・・・」
「やはりか。レイラ、少し考えないと不味い状況だ」
「ごめん、ちょっと理解できてないので詳しく説明して」
「彼女達の存在がバレたら男爵は彼女達の引渡しを求める
男爵の領地の領民なので、これはガフも俺も断れない
そして引き渡された彼女達は、幽閉か処分されるか、どちらかだ」
「あ”ん???」
「ユミアさん、あんたが他の奴に内緒で話しをしたかったのは
それが分かっていたから助けて欲しいからじゃないのか?」
「・・・・そうです」
ユミアは俯いて、つぶやくように返事をした
どういうこと? 市民を守るべき兵士が先に逃げ出すわ
あげくに生き残りは隔離か口封じ? パニック対策ってこと?
「ワグナー伯爵にしろ、ドルビス男爵にしろ、こういう筋書きにしたいんだよ
突如、村が魔物の群れに襲われた
村に駐留していた兵士達は、領民を守る為に必死に戦い討ち死にした
しかしその健闘も空しい程に敵の数は圧倒的で村人も全て殺された」
「それと、カニスってのはたしか、ドルビス男爵が愛人に生ませた子だったか?
家督相続権はないはずだが、一応ドルビス男爵の実子になる
そいつが逃げて生き残って、村人は全滅ですは領主への不満になる
生き残りがいれば、この事実がバレる上に、ドルビスの家に傷がつく
領民を守るべき領主のその実子が、まっさきに逃げた
国王陛下の耳に入れば、陛下の機嫌が悪けりゃ男爵家取り潰しもありえる」
「つまりだ、税金集めて楽して暮らしておいて
自分の怠慢と判断ミスで市民に多大な被害を与えておいて
手前へのおしおきを避けるために、生存者を始末するってこと?」
「元々、ワグナー伯爵家はこの国が建国された時からの大貴族だ
そして血縁があるドルビス男爵もその一族の末端でそれを鼻にかけてる
そのドルビス男爵家が領主の器足り得ない行動をしたとなれば
ワグナー伯爵家の社交界での立場は悪くなる。そういうことだ」
おっさんの説明を聞いて、私は深い溜息を吐く
市民の命より貴族様の面子ってか? ほんと、こういうの嫌い
「だが、どうせあんたの事だ。ユミアさん達を引き渡せなんて相手がきたら
嬉しそうに伯爵や男爵の遣いをぶん殴るか湖にでも放り投げるんだろ?」
おっさんがまじめな顔で聞いてくる。まあ、村の今後に関わるしそりゃそうだわな
「バルロイの期待を裏切って悪いけど、その選択肢はない」
「引き渡すのか!?」
ユミアさんがびくっと体を震わせて、すがるような目で私を見る
おっさんは軽蔑したような目で私を睨む
「二人とも不正解。そもそも、生き残っている事が分からないようにする
てかおっさん、私が本気で引き渡すとか思ったわけ? 結構傷つくそれ
ここまでやってさ、ヤバそうなら放り投げて逃げるとかしないから
どうせまともな戸籍制度なんて無いんでしょ。なら見た目変えりゃ良い」
「どういうことですか??」「どういうことだ?」
「私も腹括った。こういう状況なら自分の保身より出来ることを優先する
明日の朝、残りの子も含めて全員で話をしましょう
そこで私はユミアさん達の今後の人生についてある提案をする
それが受け入れられるなら全員の安全を確保する為の措置を行う」




