偽善とエゴ
一通り、アーミーゴブリンの巣穴であった場所を見て回る
入り口から二股分岐までの通路の左右にあった部屋は
殆どがソルジャーゴブリンの居住区と思われる兵舎のような部屋で
二股分岐に一番近い箇所にある2部屋が
食料庫と調理場らしい部屋だった
他にも武器庫らしい部屋と、使途不明の異臭を放つ部屋があったが
今必要とされる施設としては、清潔で安全な寝室であるため無視し
最も二股分岐に近い兵舎として使われていた部屋を掃除することにする
が、清潔とは程遠いそのベッドを使う事がためらわれたため
3段ベッドは解体して入り口のカモフラージュとバリケードに利用し
インベントリから設営セットの救護施設関連のベッドと衝立をだし
とりあえず、7人分の就寝空間を確保する
二股分岐の右側、先ほどは行かなかった方の通路の先には
金品やインゴットと思われる略奪品と
価値が少しは高そうな武器や防具が大量に積み上げられていた
食料庫にも麻袋に入れられた麦や木箱にはいった作物があったため
恐らく、苗床として攫われてきた女性達は
村を襲われて、物資ともどもここに運ばれたのであろうと推測した
「レイラ、入り口の偽装と登り通路のトラップの解除と再配置、終わったぞ」
「有難う、おっさん。私もトラップ一応配置するわ」
登り通路の曲がり角まで行き
天井にセンサー起爆式のクレイモアを設置する
これは対人用の散弾地雷というタイプのトラップで
爆発すると700個の鉄球を扇状にばら撒く兵器である
現実では対人地雷禁止条約に抵触するため、手動起爆しか認められていないが
Call to Storm内では相手はエイリアンであるためその制限がない
IFF付きレーザーセンサー起爆型の信管を設定して部屋に戻る
おっさんがいる部屋に戻ると、ドッグタグ型のアイテムを出して渡す
「首からかけといて。通路に設置した罠、それつけてないと作動するから」
「作動するとどうなるんだ?」
「天井から700個の鉄球が飛んできて、対象を確実に殺す」
「絶対外さないでいるわ! 何だよその恐ろしい罠は!」
「私がいた世界では、普通に戦争で使われる兵器でそこまで極悪じゃない」
「あんたのいた世界の戦争には、死んでも参加したくないぞ俺は・・・・」
インベントリから同じものを追加で10個程取り出す
大き目のタオルも10個 小さいタオルは20個
簡単に着せることができるスポーツタイプの下着も10着
ボタンタイプの無難な色のパジャマも10着
夜は気温が冷えるらしいので、電気式のストーブを2台
電源供給用の中型の野戦用バッテリーを4台
8人用のピクニックテーブルと椅子と小型の収納箱
これらを取り出して準備を進めていく
各ベッドの上に下着とパジャマを1セット
予備の下着と服とドッグタグをまとめて収納箱に
5個のドッグタグをおっさんに渡す
「ベッドに寝かす前に必ずこれをつけてあげてね。5個は予備ね」
「わかった、預からせてもらう」
「この服のボタンのはめ方は分かる?」
「俺らの服より随分きっちりしたボタンだが、まあ何とかなる」
「じゃあ、気乗りしないけど、始めましょうか」
二人で被害者が待つ部屋に向かう
ここからの記憶はあまり思い出したくはない
SPメディパックを作動させた瞬間、眩い光が溢れ
変異した肉体が一瞬で戻り、強制的に精神を回復された彼女達は
一瞬にして正常な状態に戻った自分の体に驚き、そして
ここで自分が何をされていたかを思いだし
ここにつれて来られる際に起きた悲劇も思い出したのであろう
叫び、泣き、暴れ、それを鎮静剤で無理やり眠らせる
おっさんは眠らされた女性を部屋に運びタオルで清め
下着とパジャマを着せてはベッドに寝かしつけ
ドッグタグをかけると、ベッドに彼女達の体を軽く縛り付け
起きた時の万が一を考え、布で猿轡を噛ましていく
この作業を二人で、無言のまま5回行った
5人目をベッドに寝かせて固定作業を終えると
1人目の被害者の下に行き、体を優しく揺さぶる
鎮静剤の効果から回復してうめき声をあげる被害者
つとめて笑顔で顔を見ながら屈み込み
「大丈夫ですからね、今猿轡を外しますからね」
と、これから行う作業を認識させながら猿轡を外して拘束を少し緩める
「周囲にはまだ寝ている方もいるので、大声は出さないでくださいね」
女性はゆっくりと頷く
「私の名前は、レイラ・ランバートンです。アルム村の住人です
ここからは衝立で見えませんが、この部屋の入り口には同じ村の
Aランク冒険者の、疾風のバルロイも待機しています
貴方と一緒に被害に合われた方も、皆救出されています
貴方は救出され、治療を終えています
もう危険はありません。体にも痕跡は一切残っていません
もう大丈夫。ここは安全ですから、どうか安心して下さい」
こういった状態では、今どのような状況で、どうなるのか
とにかく、これ以上は害をうけないこと、安心していいこと
これらを相手が理解できるように説明して、錯乱させないこと
これが大事だとあの災害の時に身をもって知った
それを意識しながら、被害者の女性に伝えていく
「貴方が混乱して暴れると怪我をする恐れがあったので
貴方の体をベッドに拘束していました。ごめんなさいね
今から貴方の拘束を外しますから、まずは体を確認して下さい
変わってしまった場所も、傷も、全て元通りです
貴方はもう、以前のような健康な状態です」
言葉通りに、少しずつロープを緩めて拘束を解く
女性はベッドに上半身を起こし、体を確かめるように動かし
触ったり、体をひねったり、目で確認したりして
自分の体の異常が無いことを認識する
「・・・私もう・・・化け物になったと思ったのに・・・
女神様・・・有難う・・・私戻れたんですね・・・・・」
女性は大粒の涙をボロボロ流しながら、嗚咽交じりにそういった
一瞬、女神様のところで 「死ね」 とか言いそうになったが堪えた
女性の肩を抱いて、抱きしめながら背中をあやすように優しく叩く
あとこの作業が4回残っている。そのことに眩暈を覚える
「眠くなる薬をあげるから今は少しでも休んで体力を回復させましょう
貴方が起きてから説明をしますし、今後について話しもしましょう
睡眠の為の投薬処置を行っても宜しいですか?」
そう伝えて、納得させた上で鎮静剤パックを取り出して使用する
女性が寝息をたてて安定したことを確認すると
次の被害者の下へ向かうために、立ち上がり歩き出した




