ゴブリンと私
「まずいな・・・・こりゃ、アーミーゴブリンの群れだ」
「アーミーゴブリン? どこぞの陸軍所属なわけ?」
おっさんはドローンから送られてくる映像を解説してくれる
おっさんの額には大粒の汗が浮かび、表情は硬い
「アーミーゴブリンってのは、古代王国時代の負の遺産だ
古代王国時代の遺跡の侵入者よけにな
機械の兵隊とか壁についた妙な機械もあるんだがな
へんな生物や魔物を改造した物なんかもあるんだ」
「それがこのアーミーゴブリン?」
「違う。その魔物を改造した何かが、偶然遺跡の外に出たりする
それが何らかの偶然か、死に掛けたところをゴブリンに拉致され
ゴブリンとそれが交配して生まれるのがソルジャーゴブリンだ」
「キモッ・・・・こいつら異種間交配して繁殖できんの!?」
「ソルジャーゴブリンは生まれると、大抵その群れを食っちまう
そして力を蓄えて成長して、新しい苗床を見つけて繁殖して
ソルジャーゴブリンが種となって生まれた奴で集団を作る
その集団の中で成長した個体が稀に進化する」
「生物の進化ってそんな短時間で出来るもんなの!?!?」
「進化した個体はサージェントゴブリンってのになる
これが生まれると群れの数に応じて、何匹かとごに
サージェントゴブリンへの進化が行われるようになる」
「ダーウィンの進化論とか、この世界完全無視ですか・・・」
「ソルジャとサージェントが一定の数に達すると
メイジャーゴブリンってのがサージェントから進化する
そうなると、国軍でも30倍の兵を投入しないと勝てない
アーミーゴブリンって化け物の群れになるわけだ・・・・」
「いやおっさん、既にゴブリンって時点で化け物でしょうに」
私の感想と突っ込みをパーフェクトスルーして
おっさんが説明を終えて絶望的な表情を浮かべる
「女のあんたには言いにくいんだがな・・・・・
ソルジャーゴブリンが群れを拡大してアーミーになるには
苗床がいるんだがな。それは、人間の女でないと駄目なんだ」
「・・・・・つまり・・・こいつらの群れに、犠牲者がいる?」
「おそらく・・・巣穴にはこの数だと・・・・5人ってとこか」
「分かった、殺そう。まずはこの糞虫どもを殲滅しよう
それから残存兵力の可能性を考えて、即座に巣穴を探す
巣穴を発見したら間髪いれずに犠牲者の奪還作戦を決行する」
「あんた話聞いてたのか??
こいつら下手したら、ドラゴンより厄介なんだぞ!
こいつらはメイジャーゴブリンの支援を常に受けてる
メイジャーゴブリンの能力次第じゃ、ドラゴンより脅威だぞ!」
「おっさんこそわかってんの?
こいつら殺さないと村の女がその犠牲者に追加されんでしょ?
戦って殲滅する以外の手段なんて無いんだよ
しかもこのキモいの相手を無理やりさせられてる人がいんだよ?
んなもん、一刻も早く対処しないとあかんでしょう???」
一瞬、自由意志というか特殊な性的嗜好があって
自ら進んで相手してる人もいる可能性については考えたが
PTDに映る緑の醜い生き物をちら見して考えを否定する
さすがにこういうのが好みって人間は居存在しないだろ
「Aランクの俺でもこいつらは対処できて5人が限界なんだよ!
あんたが俺より強くても、150だぞ150!!」
「問題ない。私一人で全て殲滅する」
「あんたもこいつらに捕まれば、苗床にされんだぞ!」
「たかが一個中隊でしょ? この程度日常的に殲滅してたわよ」
「東の山麓に緊急避難用の洞窟を確保してある
そこに避難して入り口の防御を固めて篭城する
その間に王都に救援を頼んで国軍がくるまで凌ぐ
俺は村長後継人としてこの案を提案する」
「分かった、おっさんはすぐそのプランを進めて
確かに一時村を放棄してでも住民の安全を第一にするのは正しい
私は一人でこいつらを倒しに行く失敗してもそのプランに影響はない
もし私が負けるとしても、私が相手をしている間は時間が稼げる
何もしないよりは避難も王都への救援要請も安全係数が上がるはず」
「だから女は苗床になるから執拗に狙われるんだよ!
あんたとガフで住民を率いて避難してくれ
俺が王都まで救援要請に行く!」
なんだかんだいって、このおっさん責任感強いわ
てか俺が守らなきゃ意識高すぎでしょうに
どうせ あの時俺は守れなかったから とか思ってんだろなー
「もう面倒だ。んじゃ避難任せた!
ま、必要ないと思うけど、そういう二段構えの安全確保は大事よ」
私は一方的に話を終えると、大地を蹴って西南西に向けて走り出す
後ろからおっさんとガフ君の叫び声が聞こえたが無視する
《グーデリアン、戦闘モード起動》
《Einverstanden Mein Ehemann!》
《モード日本語 ドイツ語禁止 変態モード禁止 ごめん、機嫌悪い》
《うっ・・・申し訳ありません・・・・・大変失礼致しました》
《ううん、こっちこそごめん、余裕なくって》
《目標の移動速度は時速6キロほどです。訓練された兵士の速度です》
《村の絶対防衛圏への到達予想は?》
《起伏地形へのアプローチが推論値になりますが、おおよそ1時間18分です》
《私と敵との接敵予想位置は? あと何分かかる?》
《現在の速度ですと、予想地点はこちらになります。接敵までは約5分です》
仮想ウィンドウに周辺の簡易な地図が表示される
たぶんドローンからの情報で慌てて作ったらしくてかなり情報がない
速度差は圧倒的か。ま、機動戦術と遠距離射撃で一方的にいけるかな
《少し走行制御任せるね。武器準備するわ》
《了解しました》
走らせることをグーデリアン君に丸投げして
インベントリから武器を選ぶ
まずはM40-A1ハンドガンとMP7-A1PDWのマガジンを抜いて
予備マガジンもまとめてインベントリに戻す
スタン弾なんて使う気はない、実弾で確実に仕留める
通常のホローポイント装填済みのマガジンを取り出し
銃とポーチに込めていく
予備武器としてのこられと別に、これだけの数を相手にするなら
やはり火力と継続戦闘能力がある武器が必要になる
ベルトリンク式の火器は火力も弾数も多いのだが
いざ弾が切れると再装填に時間がかかる
そこを考えて、M27 IARという変り種を取り出す
この銃はアサルトライフルであるHK416のカスタムモデルで
バレルを連射に適した肉厚のヘビーバレルに交換し
あとは銃剣装着装置をくっつけただけの簡易分隊支援火器である
最初から分隊支援火器として設計開発されたモデルに比べると
使用するマガジン容量の少なさ、各部位の放熱性能の低さ等から
連続射撃においては圧倒的に劣る性能しかもたないものの
マガジン交換のしやすさと、圧倒的な軽さで優位性がある
マガジン容量についてはベータCMAGという100発装填の物があるので
これを使用することでベルト給弾方式の半分程度は確保できる
M27 IARにベータCMAGを挿し込んでスリングで右肩からつるす
あとは面制圧の武器が欲しいので、L67A1を取り出す
これは元々警察用とした5連発のグレネードランチャーで
元々は催涙弾や煙幕弾等を警備活動で使う事を想定して開発された
口径が同じ軍用の破砕弾頭も使用可能なため、イギリス軍が採用している
準備を終えてグーデリアン君から体の制御を返してもらう
目標まであと2キロというところで停止し、窪地を探す
手ごろな窪地を発見すると腰をおろして屈み
アーウェンを手に取りストックを地面につけて銃口を空に向ける
右手でアーウェンを保持しながら、左手でインベントリから予備弾を取り出す
グーデリアン君に周辺の地形確認を行わせて
第二 第三 第四 までの射撃ポイントを選別してマークしておく
《さてと・・・グーデリアン、はじめましょっか》
《行きましょうマスター 貴方の勝利のために》




