白いその人との出会い
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それは、そろそろ農作業を終えて
村に帰ろうとしていた時に見つけた
何時ものように農具の泥を小川の水で洗い落し
帰り支度をしていた時
村へと続く街道に、人影を見つけた
僕の村には大した特産品もないし
外から人が来ることが珍しい
季節外れの行商人かと思って期待してみていると
そうでは無いことが分かった
荷馬や馬車をつれていない
その人影は、一人で村へと歩いていた
期待が外れてがっかりしたが
それでも旅人がくるだけでも珍しい
村まで案内しておけば
旅の話を聞かせてもらえるかもと考え直し
僕は農具の手入れを手早く済ますと
街道へ向かって歩き出した
旅人と思われる人影に近付いて行くと
あちらも僕に気付いたようだ
近付いて姿がわかるようになってきて
僕は失敗したと思った
とても良い服を着ている
これは貴族かもしれない
かといって、ここで引き返したりすれば
それこそ無礼になってしまう
僕は意識して笑顔をむけて、口を開いた
「貴族様ですか?この先はアルムの村です
何か村に御用でしょうか?」
貴族様の恰好は、学がない僕が見ても
とても高価そうに見えた
上下で統一性のある白の衣装に身を包み
大柄な白い外套をマントのように羽織っている
頭には中央に金色の大きな装飾が施された
白い帽子を被っている
よく見ると服のあちこちに
金を用いた金具や装飾が控えめに施され
腰に巻かれたベルトのような物には
見た事が無いよくわからない何かが沢山付いている
それにしても、鞄や荷袋を持っていない
荷物もなしにどこから来たのだろう?
きっと近くにお付きの人がいるのかな?
「いいえ、私は貴族じゃなくて平民よ
だから畏まらないでもらえると助かるかな」
白い旅人さんは微笑みながら僕にそう言った
貴族だと思っていた相手の言葉に
僕は少し飛び上がってびっくりした
高価そうな衣服に身を包んでいるのに、平民だなんて
きっと裕福な商人か何かの出身なんだろなと思った
それより一番びっくりしたのは、声だった
ズボンを履いていたし、凛とした雰囲気で
僕はずっと男の人だと思っていた
でも、聞こえてきた声は
落ち着いていて優しさを感じる女性の声だった
「ご、ごめんなさい、女性の方だったんですね」
僕は勝手に勘違いしていたのに
謝らないといけないと思ってそう言ってから
黙っていれば勘違いしたことは
バレなかったじゃないかと気づいた
怒らせたかもしれないと慌てていると
白い旅人さんは笑った
「よく勘違いされるから気にしないで良いわよ
それより、村は近いのかしら?」
「そこの丘をこえれば見えます
宜しかったら村まで一緒に行きませんか?」
「それは願ってもない。お願いします」
「あの・・・・お名前を聞いても宜しいですか?」
女性は一瞬、暗くなり始めた空を見上げてから
「レイラ・ランバートンよ
レイラで良いわ、苗字は長いから」
「ぼ、僕はガフっていいます
苗字は・・・その、まだ無いです。よろしくです」
レイラさんより少し前を歩いて
村への道を案内することにした
僕は何故かレイラさんの存在にドキドキしていた
何もなくて何時も変わらない村の生活に
レイラさんが何か変化をもたらしてくれる
なんとなくそんな予感がした
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2020年11月9日 文章の一部とレイアウトを修正