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噂の彼女はフルボーグ ゲーマーOL異世界転生記  作者: 弩理庵
第三部 見えぬ脅威編
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王族との夕食 5 鹿肉とデザート

 グーデリアンの自動操作でスープを食べ終えていた私は

 機体の制御を自分に戻して、まだ少し残っていたワインを飲み干す

 私の動きが変わったのを察したのか、バルロイがこちらに視線を送ってくる


「バルロイ、例の魔法の範囲と対象人数ってどんなもん?」


「ん?・・・そうだな、まあ、この部屋3つ分くらいまでの

 50人くらいまでなら気合をいれてぶっ倒れる覚悟ならできる」


「場合によってはその、ぶっ倒れる覚悟をしてもらうけどいい?」


「穏やかじゃないな。まあいい、必要ならやるさ」「有難う」


 バルロイの言質を取り付けたので、思考伝達通信で二人に繋いで


《レミリア、アエル。食後に少し仕事をしてもらう

 夕食が終わったらトイレに行きたい等と言って部屋から退室して

 この部屋の2か所ある出入口を、一か所ずつ外から警戒して

 外から中への侵入を警戒でなく、中から外への脱出を警戒ね

 テーブルの下を通してGlockを投げるので受け取って袖に隠して》


 テーブルの下に手をやって、回収していた物をインベントリから取り出す

 予備マガジンとGlockの入ったショルダーホルスターを手にとり

 サイコナイフのグリップにホルスターの端を巻き付けて二人に届ける

 二人はさりげない動作でそれを受け取り、着物の袖にそれを上手い事隠し

 何事もなかったかのようにカシスソーダを飲んでにこにこと笑みを浮かべる

 バルロイは一連の動きから何かを察したのか、渡してある片耳タイプの

 ヘッドセットを左手の中に隠したまま手に持ち


「レイラの酒は美味いが、さすがに酒精が強いから少し酔いが回るな」

 

 等といってけだるそうにテーブルに肘をのせて頬杖をつくようにして

 ヘッドセットをうまいこと周囲にみつからないように耳にあてる

 これでバルロイにも情報伝達が可能になったので、グーデリアンに指示して

 先程までの会話の概要とこれから陛下にそれを話すことを伝えさせる

 グーデリアンからの説明を聞き終えたらしいバルロイは


「レイラ、この酒が美味いのは分ったが、肉料理には合わない

 俺の胃はいつでも準備ができているので、肉にあった酒を出してくれ

 ただこのまま酒を飲むと酔いが回りそうなので、少し冷たい物をくれ」


 上手いな。自然な会話に了承と、いつでも準備はいいぞと混ぜてきたか

 分った と いつでも準備ができている の部分が少しだけ

 いつもと違うイントネーションなのでそれで理解できた

 これに違和感を感じて見破ることはおそらくプロでも難しいだろう

 ほんとバルロイってこういうところは、その道のプロだなって感心するわ

 ただ、冷たい物が何かがわからないな・・・グーデリアン経由で冷たい物

 については理解できていないことを伝えさせると、バルロイは右手を左の

 脇腹にあてて、軽くぽんぽんとたたいて、けだるそうに生あくびをした

 ああ、弾か? あそこには渡したリボルバーが入ってたはずだ

 そうか、慣れるために弾なしで装備してたはずだから、弾をよこせって事か

 テーブルの下でクイックローダーと弾の紙箱を取り出し

 紙箱を膝の上に置きテーブルの下に隠した状態でローダーに弾を込め

 たものを5つ程同じ物をつくってから弾の紙箱をしまってローダーを

 上着のポケットにねじ込んで、インベントリから珈琲の缶を取り出す

 グラスも取り出して横にいるバルロイの前において、珈琲を注ぐ


「だからいつも言ってるじゃない。ハイペースで飲みすぎなんだよ」


 等と世話女房のような説教で偽装しながら、ローダーを素早く渡す


「悪い。でもな、レイラの酒も悪いんだぞ? 美味すぎるんだよ・・・」


 ズボンのポケットに5個のローダーを突っ込みながら

 バルロイも調子を合わせてくるが、これだと装填が出来ないと気付き

 ついでに氷を取り出してグラスに入れる際に自然な感じで一つを落とす


「ごめ、一個落ちた。そっちいったから拾っといて」「あいよ、任された」


 バルロイが椅子を少しひいて上半身を屈めて机の下に体を突っ込む

 既に左手にはローダーが握られており、ショルダーから抜いたM649を

 素早くスイングアウトさせて弾を込めてショルダーに戻す

 まだそれほど日が経ってないのに、随分手馴れてるわ

 流石はAランクの修羅場をくぐってきた冒険者ってことなのか

 私が席に戻って座ったところで、空になったローダーを足元に転がしてきた

 つま先で蹴り上げで左手で受け止めて即座にインベントリに収納する


「さてと陛下、そろそろ私はお肉が食べてみたいんですが出ますかね?

 鹿肉って私の世界でもあんまり食べる機会がなかったので楽しみなんですよ

 先にお渡ししたワインは肉料理にあう物を選んでおきましたので

 そろそろ次のワインとお肉料理が出てくると嬉しいんですがどうでしょう?」


「おお! まだ別のワインがあるのか! それは楽しみじゃ!

 ベルニウス、次の料理と使徒殿のワインを持ってくるのだ」


 ベルニウスと呼ばれた年配の執事の男は一礼すると

 女中連中に指示を出して空いた皿や椀を片付けつつ次の料理の手配をする

 アルベルトを見慣れているので、やはり自分で動かない執事は違和感がある

 うちのアルベルトのほうが有能だなと、何故か少し嬉しくなる

 しっかし、この世界の料理は不味いとは言わないが物足りないな

 偶になら、素朴な味わいで良いわねなんて言えるだろうけど

 これ毎日食べてたらたぶん、モチベーション上らないだろな

 やっぱり食事を美味しくというのは、余裕がある文明でないと無理なんだね

 そんなことを考えているうちに、表面上はお待ちかねの鹿肉のステーキ

 のようなものが運ばれてくる。熱せられた鉄の皿の上とかではなく

 普通に陶器の皿の上に、ステーキだけがソースがかかった状態で載っている

 付け合わせの何かとか、香草みたいなものが一緒に載って居たりはしない


「これは2日前にフリーデン王子が仕留めた鹿肉に御座います

 血抜きをして少し熟成させておりますので、大変美味かと思われます

 今回はシンプルに脊髄の血液を混ぜたブラッドソースを合わせました」


 ベルニウスという執事が肉について説明するのだが

 ブラッドソース? 確か北欧のトナカイ料理なんかではあった気がする

 古本屋で買った昔のラリー漫画にそのネタが載っていたので、気になって

 一度奮発して食べにいったことがあるが、美味しかった記憶がある

 これはちょっと期待できるかもしれない

 王様がナイフを入れるのを待ってから、私もナイフを入れて切り分ける

 フォークに突き刺して口元に運び、少し香りを確かめてみるが

 んー? ちょっと獣臭いな・・・あと血の臭いも結構のこってるこれ?

 少し違和感を感じたがそのまま口に入れて咀嚼する

 お! これは濃厚な肉の味わ・・・・・・・いに獣臭さと血なまぐささが

 絶妙に苦手なバランスで混ぜ合わさって、キッツい!! なまぐっさい!

 いや火は通ってるのでそっちは問題ないんだが、こりゃ野性味溢れる香り

 というかなんというか・・・ニンニクとかなんかないの??と考える味だ

 周囲を見渡すと、私意外の全員が実にご満悦な顔で野性味あふれる鹿肉

 の血生臭ステーキを頬張ってとてもいい笑顔で堪能している

 私の出す食事に慣れているレミリアとアエルもこれは満足しているようだ

 やはりベーシック食文化の違いか。血がこれだけ自己主張してると苦手だ


「ランバートン様、どうされました? 美味しくなかったですか?」


「いやザロス君。私の国ではあんまり血を料理に使わないので

 血の匂いが強くてちょっと苦手な風味になってるのよこれ」


「ランバートン様って偶に不思議な事を仰りますよね・・・

 孵りかけの卵が苦手だとか、これだけ新鮮な鹿肉が苦手だとか

 もっと火を通してもらったほうがよかったんですかね?」


「焼き加減ではなくって、肉の臭みと血の臭いが強いので苦手って感じ

 たぶんこの世界では、こういう肉とか血の味を楽しむ部分があると思う

 私の世界では、肉はほとんど狩猟で手に入れないで、畜産で賄ってる

 なので、品種改良も進んでるし、与える餌も臭みを消すように工夫して

 肉の臭みってのが野生の物に比べてかなり少なくなっているのよ

 以前一度、親戚が獲ってきた猪を御馳走になったことがあるけど

 やっぱり臭かったので、臭い消しで結構手間かけてたからね」


「そんな勿体ない・・・新鮮で良い肉は臭いも楽しまないと・・・」


「まあ、そのうち慣れるんじゃないこの世界に長くいれば嫌でもさ」


 臭いがキツイので、臭覚機能を一部オミットして無理に食べる

 臭いが無い状態で物を食べると、こんなに不味くなるとは知らなかった

 味はちゃんとするのに、ガムかゴムでも食べてるような気分になった

 残すほうが失礼とはいえ、食べ切ったにしてもあの表情は不味かったかも

 まあ仕方ない。今は食事をさくさく進めて食後の会談をしなければならない

 周囲も私がこの料理を気に入らなかったのは雰囲気でわかったようで

 最初はにこにこ顔で食べていたのに、私の方をちらちらみながら

 何故か慌てて食べ終えてこちらの様子を伺っているので

 不機嫌ではないをアピールするために笑顔を作って誤魔化しにかかるが

 逆効果だったのか、ダルクは妙にこちらをチラ見しては体を揺らしている


「さてと、これで料理は終わりですかね?

 デザートは何が出ますかね? 合わせた飲み物はこちらで出しましょう」


「デザート・・・も・・・申し訳ありません、そこまでは用意が・・・」


「あああ、でしたらこちらでそれも用意しましょう

 じゃあ、デザートがてらにちょっと懇親会的にフランクにやりませんか?

 酒は控えめで。そうでないと皆様、べろんべろんになるまで飲みそうだし」


 バルロイとチェニスをチラ見して、釘をさす演技をしつつ

 思考伝達通信をレミリアとアエルに、グーデリアン経由で音声変換をして

 バルロイにも伝えてもらう準備をして


《これから動きがあるかもしれない。何かあったら対処をお願い

 バルロイはザロス君のカバーも宜しくね。彼だけ伝える手段がない》


「わかったよ。この前の酒精がないエールくらいは出してくれよ?」


「はいはい。その代わり面白いデザートを用意してあげるから

 閣下、少し準備をしたいので手伝って頂けますか? 

 宰相閣下にデザートの準備の手伝いをさせるのは申し訳ないのですが」


「はは、私は宰相といっても実務派なのでそういうのは問題ないです

 それは今日一日一緒に行動してご理解いただけたと思うのですが」


「では、どこか準備が出来る部屋とかないですかね?」


「隣に休憩用のソファーが置いてある部屋がありますので

 そちらで宜しいでしょうか? 広くはないのですが」


「ああ、人数分のデザートをのせるワゴンがおけて

 あとは机があって作業が少しできれば問題ないので大丈夫です」

 

 ダルクは頷くと、私を連れて王様の後ろにある扉に向かう

 私もそれに続きながら、室内の人員を目線を動かずにセンサーと補助

 カメラで確認して全員の顔を覚えてから、発汗と顔面の筋肉の動きを

 記録して休憩用の部屋とやらにはいってドアを閉め

 室内に二人以外が存在しないことをセンサーで確認するとダルクに近づき

 耳元に顔を近づけて小声で話しかける


「ヘッドセットつけて。ちょっとこれから内密で話がある」


 ダルクはゆっくりとポケットからヘッドセットを取り出して

 音をたてないように気を付けてヘッドセットを装着する

 その間にインベントリからワゴンや皿等を取り出して、わざと音をたてる

 デザートの準備を音をたてて行いながら、思考伝達通信を音声変換し

 ダルクに先程の他の転移、転生者の可能性について話を伝える

 そしてこれから、の対策の為に大規模な兵力を支援要請で招集すること

 それを王国として許可するかどうかについて陛下と話したいと伝える


「おお、これは何とも見た事がない不思議な菓子ですな!

 それもこのように大きいとは、なんとも見事ですな!

 これならきっと陛下も気に入って喜んで下さる事でしょう!」


 まだデザートを出してないのにダルクがいきなり騒ぎ出す。ん? 腹芸か?

 見た事もない 大きい 見事 気に入る 喜ぶ このあたりか?

 勘で翻訳すると、大規模な見事な軍隊を呼ぶとしても問題ない ってこと? 

 さすがにバルロイみたいに一緒に行動してないのでなんとなくでしかわからん

 ただNGではなさそうな雰囲気だな、よしよし、話は上手く勧められそうだ

 問題はこの会話に合わせたデザートを出さないとまずいってことだよな?

 不思議で、大きいデザートになるもの・・・それも見た事がない?

 見事・・・うん、あれしか思いつかない、あれにしよう

 ということでケーキを予定していたのだけど、急遽予定を変更して

 私の肘から指先くらいまでの高さを誇る、フルーツパフェを取り出す

 これなんのイベントのだっけ・・・オータムパーラーフェスティバルだ

 あれコラボ先が都内の外食促進協会とかって意味不明のイベントだったな

 ほんと、Call to Stormのイベントって、意味不明なコラボ多かった・・・

 パフェを目にして、今度は本当に驚いた顔をしたダルクが、顔を近づけ

 まじまじと巨大なパフェを観察して、ほぉぉと感嘆の息を漏らす


「いやはや、これは本当に美しく見事な菓子ですな・・・

 顔を近づけましたら少し冷たさを感じましたので、これは冷菓ですかな?」


「冷菓なのかな? まあ、中にアイスもはいってるからそうなるのかな

 アイスをベースに、あとフルーツとクリームで構成されてるんだけど

 フルーツソースやチョコレートがトッピングされてて美味しいよ

 チョコはちょっと、この前レミリアの誕生日ケーキだしたら興奮作用

 があるっぽい反応してたので、今回は避けてラズベリーソースのにした」


 ワゴンの上に次々とパフェを取り出しては並べていく

 ズラリとそろったジャンボパフェの列は中々に壮観だが

 これ注意しないでおいたら、みんな冷たい物一気に食べる頭痛だな

 それはそれで面白いから、今回は注意なしでそのまま出してみよう

 食べるのに長いスプーンもいるだろうと思ってそれも取り出す

 ちょんちょんと肩をつつかれたのでダルクを見ると

 例の羊皮紙のような物を差し出してきたので内容を見る

 

 第一王子のフリーデン様に御気をつけください

 あの御方は軍事力に頼る傾向がありますので御注意を


 なるほど、このアドバイスは助かる。あの王子については情報がないので

 どういう反応をするか分からなかったので少し考えておく余裕ができた

 でも一番心配なのは王妃なんだよな・・・なんか面倒な予感がする

 あの手の自分可愛い女子はどうもいい思い出がない

 嫌な予感が当たらなければいいんだが・・・

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