その名はバルロイ
「ありがとう。さようなら・・・またいつか・・・・・・」
自分の出した声で眠りから覚醒した
体は汗びっしょりで服が張り付き、顔は涙でベトベトだった
家族の夢・・・夢・・・いやたぶんあれは、夢じゃなかった
起き上がろうとして、いつものベッドと違うことに気付く
あの夢をみれたのは、父さんと母さんの寝室で寝たからなのかな
父の匂いが微かに残るベッドからゆっくり起き上がり
ベッドの端まで体を動かして立ち上がろうと足を下ろす
「おはようガフ君。うなされていたけど、大丈夫?」
入り口のドアは開いていない。ドア越しに心配そうな声をかけられた
レイラさんの声だ。何故だろう、あの人の声をきいたら落ち着いた気がする
「おはようございます。昨日は済みませんでした・・・・・・・」
「挨拶できる元気があるなら問題なしね。朝ご飯出来てるから起きといでー」
足音が食堂の方へ去っていく。なんか気遣ってもらっちゃってる・・・
それに朝ごはん・・・またご飯つくってもらちゃった・・・どうしよう
でもこのままレイラさんの所には行きたくないな・・・・
僕は立ち上がると部屋からでて、2階の自分の部屋にいった
机の横に立てかけてあるタライを取り出して、水魔法で水をためる
服を脱いでタンスから手ぬぐいを取り出して、タライの中に立つ
手ぬぐいを水に浸してしぼってから、体を拭いて、手ぬぐいを水につける
それを何度か繰り返して、汗のべた付きと匂いが取れたと確認して
固く絞った手ぬぐいで体全体をふいて、最後に片足ずつ拭いてタライから出る
タライの水を窓を開けて捨てると、風魔法で体に残る水気を飛ばす
タンスから下着と肌着と服を取り出して急いで着替える
洗濯物と手ぬぐいをタライにいれて、1階に下りて裏口の横に置く
それから小走りで食堂に行くと、改めてレイラさんにあい、、、え???
食堂にある柱には、バルロイさんが縛り付けられていた・・・えええええ!?
「あ、ガフ君。その殺人未遂犯村人Aはとりあえず後で説明する。それより」
レイラさんがクスクス笑いながら近づいてきて、耳元でこういった
「体拭いてきたのは高評価だけど、顔忘れてる。井戸であらっといで」
小声でそう言われて、涙でべしょべしょだった顔を忘れていたことに気付く
顔が赤くなるのを自覚しながら、慌てて玄関・・・・玄関が大変なことに・・・
「レイラさんレイラさん! 玄関がなんか鉄の糸みたいので大変になってます!」
「あ、ごめん、忘れてたわ。すぐ撤去するわ」
レイラさんはすぐ玄関にくると、鉄の糸みたいなものに手をふれる
レイラさんが手を触れただけで、鉄の糸みたいのが次々に消えていく
でも魔法の発動には必要な魔法陣は出現しない・・・・
夢で父さんが言っていた通り、レイラさんは異世界の人なのかもしれない・・・
「はい、これで大丈夫。閂かかってるから外してから開けてね」
「ありがとうございます」
閂を外してから玄関から外にでて、大慌てで井戸から水を汲んで顔を洗う
あ、、、手ぬぐいさっき裏口においてきちゃった、、、拭くものが・・・
仕方ないので上着をめくって上着で顔を拭く
バルロイさんの事がどうしても気になるので、小走りで食堂に戻る
「はい、お帰りなさい。まあ、連続手抜き料理で申し訳ないけど、召し上がれ」
既にレイラさんは、朝食を盛り付けて待っていてくれた
「あ、ごめん、食器は勝手に探して借りたからね。使ってまずいのとかあった?」
「そこは問題ないんですが・・・あの・・その・・・バルロイさんが・・・・・」
バルロイさんは縛られたまま、僕をすがるような視線で見ている
ふがーふがーと猿轡をされて声が出せないまま、何かを訴えている
「フゴー・・・フガガフガフッ! フゴフゴフガーーーーッ!」
「やかましいこの勘違いの殺人未遂犯! あんたはそこでしばらく反省しろ!」
「レ、、、レイラさん。バルロイさんを解放してもらえないでしょうか・・・」
「ガフ君の頼みでも今は駄目。こいつは先に体当たりした上にナイフ抜いた
こちらの説明も聞かずに、勘違いで明らかな害意と殺意を持って攻撃した
私の国の法律なら、情状酌量があってもかなりの重刑になる殺人未遂だよ
かといって勘違いだと分かるし、ガフ君を心配しての行動なのも分かる
でもケジメはいる。なのでバルロイさんだっけ? 彼には・・・・・・」
「彼には?・・・・・・・・・」
「目の前で旨そうな飯を二人が食ってるけど自分は食えないの刑にして許す」
「それ・・・・けっこう辛いですよね・・・・・」
「じゃあ、ガフ君食べない?」
「食べます!!」
「フガアアアアアアアアッ!」
きっとバルロイさんは、裏切り者!っていったんだよねこれ・・・・・
ごめんね・・・バルロイさん・・・レイラさんの料理は外せないよ・・・