後始末 1
バルロイが妙に不機嫌そうな顔の銀髪長髪の細身な青年?
いや、こいつも耳が長いぞ? エルフってやつだと年齢不詳か?
を連れて帰ってきた時には、私達は周囲の冒険者と一緒に
スルメと干物を肴に日本酒をちびちびやりながらだべっていた
「おまあああああ! 俺がこの馬鹿を引っ張ってくるのに必死に
なってる間に、何酒のんでくつろいんでんだよおい!!」
「いやだって、暇だったし・・・飲んでたら周囲の人がよってくるし
ちょっと飲みますか? っていったら皆さん欲しがったから・・・」
最初はなんか、喧嘩腰だった彼らも、酒を飲んで叫び、肴を食って驚き
なぜか今では、とてもフレンドリーな状態で話をしていたりする
いやー、こういう事があってそこの馬鹿女にはめられかけましてね?
んでしょうがないんで、まあちょっと頑張って相手倒したんですよ
いやですよね、こういう陰険な人が職員とかしてると安心できないで
あ、鰯の丸干し焼けましたよ、どうです? あ、これもう頭もね
ぱくって、全部食べられるんですよ。ほら、辛口の日本酒に合うでしょ?
等と話しながら酒を飲んでいたら、逆に同情されてチーズやら干し肉やら
革袋のワインやら、彼らがもっていたつまみや酒を提供してくれた
ふっと横をみると、さっきの銀髪ロン毛が無言で座ってコップ見ている
インベントリからコップを取り出して渡すと、素直に受け取ったので
日本酒の瓶から直接そそいでやると、おっとっととか、お前日本人だろ?
みたいな事をいって限界まで注げと促すので、表面張力ぎりまで注いで
やると。一瞬笑顔になってから、コップに顔を近づけて一口啜り
嬉しそうな顔になって、残りをぐいぐい飲み干していく
「ボイドてめぇ何やってやがる! あんだけ行くの渋ってゴネてたのに
酒目の前にしたら何ご機嫌になって飲み始めてんだてめぇは!!」
なんかバルロイが荒れてるなぁ・・・コップを取り出してバルロイにも
渡して、なんかお怒りなので限界まで注ぐとこぼしそうなので、8割
くらい注いで渡すと、無言で受け取って一気に飲み干しやがった
「ん? これはこの前のとまた違うのか? なんというか締まった味だな」
「そうそう。ちょっと強い辛口ってやつっぽい。まあ、私あんま日本酒
頻繁にのまないから、アルベルトのおすすめ順で並べてるだけだけどね」
「それにしてもなんだよこのガラスのコップは? ほぼ透明だぞ??
この前の木の杯といいこれといい、レイラの持ち物は本当におかしい」
「バルロイ。それね、大銅貨1〰3枚も出せば買える安物だよ」
「嘘だろ!! こんだけ透明度が高いガラスが大銅貨3枚以下だと!?」
「うん。私の世界では大量生産されてるので、下手するとさ
お酒かうとキャンペーンとかで何個か無料でもらえたりするよ」
「本当にレイラの世界ってのはおかしいな・・・すげー世界だ」
「んで、こちらの銀髪イケメン耳長さんは誰?」
「あ、これは失礼を。俺はこのギルドの責任者のボイドってもんだ
いやぁ、あんた、いい酒もってんな。ワインはないのか?」
「あるけど、今は肴が海産物だから日本酒だね。これお米のお酒」
「ほほお! コメで作る酒とは珍しい。もう一杯もらえ ごふっ!?」
後ろから遠慮なしでバルロイが腰の上あたりに拳を叩き込む
殴られたボイドはコップを辛うじて落とさずに、左手で殴られた場所を
抑えて、うずくまって苦悶のうめきを上げている
「お前はまず仕事しろ! お前の管理能力のなさでこういう事になって
んだろうが! 仕事してから反省文書いて処理してそれから更に仕事しろ!」
「すごい、バルロイが仕事仕事っていってる。しかも終わってもさらに働け
とかいってる! 私ももっとバルロイに厳しくしなくちゃいけない・・・」
「俺のことは今はいいんだよ! この馬鹿に仕事させないと話にならん!
ボイド、そこの馬鹿女をとっとと拘束して事情聴取して処分てくれ
それとあそこで伸びてる4人もどうすっか決めて欲しいが、中には入るなよ」
「訓練場の中に入るなってことか? 何か問題があるのか?」
「うん、あの中ねたぶん。今この王都で、一番臭い場所になってる
それと彼らの周囲は床がツルツルで、一度入ったら大変な事になる
10〰16時間も経過すれば渇いて安全になるけど、臭いはねぇ・・・
たぶんとっても酷い事になる。時間が経てば経つほどに・・・・・・」
「そんなに臭いのか??」
「バルロイの靴下の臭いが200くらいだとして、その40倍臭い」
「それは既に悪臭ではなく致死毒の領域だろ???」「俺そんな臭いか??」
「わかった、これ嗅いでいけるとおもうならいってみ」
インベントリからクサヤの干物の瓶詰をとりだしてあける
あけた瞬間、周囲の人間が う●こだ! とぶわーっと逃げていく
七輪の上で炙ると、さらに独特な香りが強くなり周囲に混乱が広がる
適度に炙ったところで私がそれをぱくついて美味そうな表情をすると
う●こ食べたぞ!? と混乱が広がり軽くパニック状態になる
「バルロイ、騙されたと思って食ってみ。味はすんごい良いから」
鼻をつまんで、私を化け物でも見るような眼で見ながらバルロイが戻ってきて
最初はものすっごい抵抗したが、食わないと今後一切の酒を出さないと言ったら
涙を垂らしながらバルロイはクサヤの干物に手をだして、おそるおそる食べた
が、最初は恐る恐るだったが、そのうちぱくぱくと豪快に食べ始める
そして日本酒を飲んで、お替りを要求する
「臭いがやばいんだが、味もやばいなこれ! この日本酒で残り香を流すと
不思議なことにまた食べたくなる。なんだこれ?? 確かに美味い!!」
「元々は保存食なんだけどね。海水をベースに魚の内蔵とかを漬け込んだ
つけ汁につけて干した干物だよ。臭いがきついけど日持ちはいいし
つけ汁につけることで発酵するから、旨味が強くなるんだよ
ただまあ、臭いは慣れないと、あの臭いにしか思えないだろうね
まあ、この美味い肴を食えないやつは、男じゃないね男じゃ」
周囲にわーっと逃げたやつらに少し挑発的に言うと、彼らは何かを決意
した目になって、もどってきて、クサヤチャレンジ祭りが始まる事になった
参加者の2割は、どうしても口にもっていけずにギブアップする
しかし食べた8割は口をそろえて、美味い、酒と合うと、短時間で臭いを
克服して、クサヤの魅力にとりつかれてばかすか食べ始めた
「で、なんでこれを出したかっていうとだね。これもあの訓練場で使った
スペシャルトリプル魚ウォーターの中に入ってる食品の一つで、使った
3種類の魚食材の中で、最も臭いがマシな物なんだよ。一番やばいのは
こいつの臭いの4倍臭いやつで、その身とつけ汁があの液体の主成分なの
何せその食品が郷土料理の国ですら、開封するときは周囲3軒まで通知した
上で行わなければならないって法律で決められてるレベルの代物なんだよ
この4倍臭いのは私でも食べられない、あれは無理だ、兵器だよ・・・」
「これの4倍かよ・・・4倍?? 想像ができないぞ、これだって辛うじて
ぎりぎりのレベルだぞ・・・どんな臭いなんだよそれ???」
「以前、友人が開けた人間の話をしてくれたことがある。よく考えないで
開けたらしくて、汁が飛び散って体にかかったらしい。あまりの臭さに
錯乱して、拭いても洗っても臭いがとれないので、床に汁が付着した箇所
をこすりつけて、血だらけになりながら、臭いが取れないと泣いていたそうだ」
「その汁を、さらに極悪にしたのを、レイラはあいつらにぶっかけた と?」
「そうだね。でも兵器じゃないよ? 食品だよ? それに死んではいないよ
約束は守ったし相手を意図的に 傷つける 殺害する 行為はしてないよ
臭いによる無力化っていう、とても平和的な利用方法をしただけだよ」
「レイラおまえほんと、なんていうか・・・詭弁の達人だよな
言われたらその通りで、何も言い返せない部分があるんだが
実際には、いかに自分が処罰されずに、相手に最大のダメージ
を与えるかを突き詰めてやってんだろ、すげーわ・・・尊敬するわ」
しかし、レミリアとアエルはさっきから美味そうな物を周囲が食べているのに
それに参加せずに、M590A1を構えて感情がない冷たい目線で受付嬢を見下ろし
銃口を突き付けたままずっと見張りを続けている。最初はザロス君が見張ろうと
したのだが、二人がこのふざけたやつは私達が見張りますと譲らずに
ずっと銃口をつきつけ、偶に片方が銃剣を突き付けたり、ポンプを動かして
音をさせてチャンバーの確認をする等して威嚇して見張り続けていた
まあ、理由は分かる。自分が手配した冒険者が一方的に倒されて放心状態から
回復したこの受付嬢は、いかに自分が普段頑張っているか、なのに認められず
に馬鹿にされるのか、そして利用者がした質問は、あれから伝えるはずだった
のに一気にまくし立てた利用者が悪い、だから私は怒ってこんなことをした
だから私は悪くない仕方なかったんだと、意味不明な言い訳と自己弁護を
だらだらと垂れ流しはじめたのである。それに対してレミリアとアエルが
非常に不快感を示し 「なんでも他人の所為にする訳だ」 吐き捨てると
ザロスと見張りを変わって、このように威嚇を続けているのである
このハラペコガールズが食い物に見向きもせずに、怒りや不快感を露わにする
というのはとても珍しい。あのだらだらと垂れ流した言い訳がよほど彼女達の
琴線に触れたのであろう。彼女達はいつもの可愛い笑顔ではなく、まったくの
無表情な兵士の顔で、泣きながら言い訳を続ける受付嬢を見下ろし続けていた
「レミリア、アエル、もう見張りいいよ。そこに管理責任者が来てるから
まあ、あんたらはお酒のむと夜までが不味いから、美味しいもんなんか
出すから、ちょっとこっちおいで。もうそいつはほっときなさい
そういうことでボイドさん、きっちり働いて下さいな。証言者は何人か
いるし、何ならこいつの会話の映像記録も出せますからね
どんな言い訳しようが、こいつがしたことは職権乱用で業務妨害だ
ま、解雇はかわいそうなんで、清掃部署に配置転換したらどうですか?
配置転換後の最初のお仕事は、訓練場の清掃。そういうのは如何ですか?」
いつの間にやらバルロイのドツキから立ち直り、自然にクサヤ祭りに参加
して酒を再び飲んでいたボイドに話を振る。ボイドはそれまでの笑顔が
嘘のように冷たい表情になり、受付嬢に視線を向けると、面倒臭そうに
「成程それは良い、実に面白いよ君。ということだリンゼ、選んでいいぞ
クビになるか、配置転換を受け入れるか。ああ、辞める場合は清掃費用
については請求するからね。どこまで逃げても冒険者ギルドの組織力で
追いかけて必ず回収するよ。どうする? 辞めるか、清掃担当になるか」
「ギルド長! この人達がいけないんです! 私一生懸命やって頑張って
たのに、馬鹿にして出来ない子扱いして意地悪するから!!」
「あのねリンゼ君。君に対しては以前から職員からも利用者からもね
クレームが結構きていたんだよ。良い男だと優遇するとか、女性の
利用者は冷遇したり依頼書を隠したり、買い取り見積もりを下げたり
そういうクレームが多いんで、君は内調部で調査中だったんだよ」
ボイドの言葉で完全に言い訳が無駄と悟ったのか、リンゼと呼ばれた
受付嬢は、今までの騒々しさがウソのように泣くのも喚くのもやめて
床の上に座り込むようにしていたのだが、そこからふっと力が抜けて
床に倒れこむようにして転がる。しかし目はボイドに向いているし
体はわなわなと震えているので、気絶したわけではないらしい
「それで今回これだろ、それに職員からのクレームもひどいんだよ
婚期を逃したくないのは分かるがね、あからさまな男性職員への
アプローチと、君より若い女性職員へのイビリが問題になってた
まあ、この件がなくても、遠からずクビにはなってた。だが今回
こちらの女性の助け舟で、清掃担当としてなら残してやる事になった
どうするか夕刻までには選んでくれ。言い訳も弁解も無駄だからね」
リンゼは床に転がったまま、突然笑い出した
くふふふふふ という、妙に不快感が刺激される笑い声を上げ始め
何が面白いのか、そのままケタケタと笑いだして床に転がったまま
腹を抱えて身を捻り、何がそんなにおかしいのか? と質問したく
なるレベルで笑い続けた。まあ、どうせろくなこと言わないなこりゃ
「私が掃除担当なんてありえない! 私は受付嬢で雇用されてます!
解雇も不当な理由なので出来ません! 悪いのはその人です!!」
「いやはや凄いねこの人。なんか強力な後ろ盾がいるとか、クビにしたら
冒険者ギルドの暗部を暴露してそっちもタダじゃすまないぞと脅すの
かとでもおもったら、まったくもって意味がない理由述べてきたよ
あのね、貴方が職員の権利を悪用したことで冒険者ギルドに損害を
与えたので、その場合は契約は破棄されるんだよ? それに、配置
転換は契約上でよほどひどい事でないと違法にならないんだよ?
それ以前に、この国じゃそこまで労働者の権利の保護なんてまだ
制度的にできてないだろうから、そもそも責任者がお前クビといえば
それですんじゃう世界なんだよたぶん。もうっちっとマシな何かない?」
「てかランバートン様、これ殺しましょうよ? すっごい不愉快です
なんか、同じ女として、こんなのがいるから女ってバカにされたり
仕事できないっていわれたり、あと勉強させてもらえない気がする
んですよ。こういうのは世界にとって害悪です。殺処分しましょう」
「こんな馬鹿で冒険者ギルドの職員が出来るならきっと私でもできる
これは要らない、捨てた方が良い。きっとこれは後で面倒を起こす」
レミリアとアエルがかなり辛辣な事を言うが、リンゼは相変わらず
気味が悪い笑みを浮かべながら、ボイドに向かって言葉を続ける
「私はギルドの為に今まで一生懸命働いてきました!
ボイドさんならわかってくださいますよね???」
それに対してボイドは、まったく興味がなさそうに酒を飲みながら
「いや、俺言ったよね? 言い訳も弁解も無駄だからねって
その直後に君、言い訳したよね? だからもう無理、クビね」
「そ・・・そんな・・・」
「君さ、叱られると不貞腐れて返事した挙句に、あとでブツブツ
文句いってたよね。基本的に人の言う事聞かないからさ、こういう
事になんだよ。ま、元々君の採用がさ、うちの出入りの商店の娘
さんってことで、期間限定の嫁入りのための拍付けでしかないからね
その後で君が実家と喧嘩して一人暮らしはじめて、自分は出来る女
だから採用されて冒険者ギルドの受付なんて花形業務してますって
思い込んだのは勝手。俺は関係ないし知らん事だよ。ま、そういう
事なんでさ、荷物まとめて夕方までに出てって。出ていかないなら
警備部に回して強制的に排除するから。現時刻をもって君を正式
に解雇するよ。清掃費用は後で請求するから、宜しくね」
独り言
今回の話で、投稿を開始してからちょうど一か月なんですよね
いやー・・・一か月でよくこれだけ支離滅裂な話をでっち上げた
なと自分でも呆れますわ。他の作者さんみたいにきっちり設定できてないし
なんかこう、陰謀とか甘すぎるというか、全然頭よくない人が考えてるのが
丸わかりな内容で、なんか読み返して自分の頭の悪さを痛感しますわ(汗
それにしても主人公とバルロイ羨ましいな・・・あんだけお酒のめて
ああ、私もお酒のんでみたいもんですわ。飲んだら即座に救急車ですけど