契約
「悪女の嫉妬を根絶できたとして・・・それがランバートン殿に
何の利点や利益をもたらすのですか? 私にはそれが分からない」
「ダルク殿、では貴方に一つ質問をしましょう
貴方にも趣味の一つや二つはあると思うのですが
その趣味は、利益を出していますか? 儲けになりますか?」
一瞬きょとんとした後、宰相は盛大に笑いだした
「ぶわははははは! 趣味、趣味だと申されるか!
それだけの事を成そうというのを趣味だと申されるか!!」
「私はアルムの村で起きた病についての顛末を聞いて納得きでなかった
だから納得できる未来をレイドック男爵領に提供したいと考えた
それで過去が変わるわけでも、既に亡くなった人間が戻るわけでもない
だからこれは私の個人的な考えです。それは趣味やエゴと呼ばれる物
そう思いませんか、ダルク殿? 少なくとも私はそう考えています
私の趣味で行うとなれば、全ての責任は私だけのものになる
その趣味により得られた結果も私の所有物になる。どう扱おうが問題ない
これを国でやれば、争っている相手の国には教えないとか制限がつく
私はこの国だけから病を根絶したいのではない。世界全てから根絶したい
だから私の趣味として私の責任で私の資産でこれらを行う。そういう事です」
すっと王様が立ち上がると、室内の騒めきが収まり凛とした空気が張り詰める
ああ、この人、いきなり国王陛下のモード起動してるよ。あー、なるほどね
私が偶に暴走して最大戦闘モード起動させた時って、こんな感じなのかな?
一瞬で場の空気が変わるって、こういうことかと納得した
「ベルニアス・エルスリードの名の元に、レイラ・ランバートンの提案
これを我がエルスリード王国は受け入れるものとする。しかし
契約の仔細についてはランバートン殿の独占にならぬよう、宰相と内容
を協議した上で、その書類を儂に提出してもらう。その内容に問題が無け
れば、儂が署名して契約の締結とする。これは国王としての決定である」
「有難う御座います陛下。では、契約内容の詳細については、これから宰相
閣下と詳細を詰め、書類にして後ほど陛下に提出させて頂きます
基本契約が合意したということで、こちらの所有する王国が欲した物品
これは先渡しでお渡しします。後ほど、どこか広い場所を用意してください
結構な量がありますので、それなりの広さが必要です。それと幾つか死体
もありますので、それらの保存措置に必要な物もご用意ください」
席を立ち、王様の元に歩み寄ると礼帽を脱いで左脇に挟み、右手を差し出す
王様は妙に眼光鋭い笑顔で、右手を差し出し握手に応じてくれた
何故か王城組の連中や宰相がものすっごい拍手をしている
アルムの村組は状況がよく理解できていないようで、ぽかーんとしているが
レミリアだけは立ち上がって敬礼しながら、酷く号泣していた。それを
アエルが抱きかかえて懸命になだめて居る。何スタートラインで泣いている?
お前もこれから一緒に戦うんだぞ? まだスタートラインに立っただけだ
まだ一歩も歩きだしてない。ゴールにたどり着いてから泣くべきでしょうが
「さてと、まだ少しやることがあるので先に済ませることを済ませましょう
宰相閣下、先に物品の引き渡しを行いたいのですが宜しいでしょうか?」
「分かりました。そうですな、近衛の練兵場を使いましょう
あそこであれば、広さだけは十二分にありますからな」
「了解です。陛下、申し訳ありませんがまだ片付けなければならない事が
ありますので、一度失礼させて頂きます。
明日にでもまたお話があればお受けできますが」
「可能であるのならば、今宵の夕食を共にしたいのであるがどうであろう?
先程は客人に持て成しもせずに見苦しい所ばかり見せてしまったのでな
せめて夕食で持て成すくらいはしなければ、儂も立場的に問題が出てしまう
忙しいとは思うが、どうか招待に応じてくれまいか?」
「そこまでいわれて、嫌とは言えませんよ。喜んでお招きに預かります
酒類はこちらで提供させて頂きます。陛下と閣下に試して頂きたい
物も御座いますので。食事は楽しみにしておりますのでお願いします」
「おおお! そうかそうか! では宰相、お前それまで使徒殿に御供しろ!」
「はっ! 畏まりました陛下」
監視ってつもりではないんだろうが、やり辛いな・・・まあいいか
全員、陛下に挨拶して部屋を辞して宰相の後に続く
この迷路みたいな城内ってどーなってんだ・・・まあ、グーデリアンが
勝手にマッピングと振動で構造解析してるだろうから、暇な時に確認しよう
意地悪な迷路のような場内を宰相と近衛を戦闘に列をなして歩いていると
宰相が妙にニヤニヤして話しかけてきた
「しかし使徒殿、あの道路と水路の計画は何か隠し玉があるのではないですか?」
曖昧な笑みを返して、質問に対しての回答を避けながら
別の話題にすり替えて宰相の追求を交わす事にする
この世界で達成可能な動力装置については、実用化までは
あまり情報を公開したくない。達成できなかった場合が面倒だしね
「使徒殿は止めていただけますか? あまりその呼び名好きじゃないんです
私、その女神ってのに会ったことも話したこともないんですよ
勝手に連れてこられて、何をしろとも、ここが何処かとも、何も教えて
もらってないんですよ。非常にその女神ってのには不快感を感じているのです」
「我が国を作られた使徒殿も、同じようなことを記録に残しておられます
これからはランバートン殿。いや、いずれはランバートン卿ですな」
卿?? 名誉男爵ってそんな呼び方されるの??
名誉男爵って私の世界の準男爵だよね。卿でなくってSirじゃないの?
イギリスの歴史を例にとるとだが、正規の貴族である場合はLordを爵位の
代わりに用いる事がある。しかし準貴族や騎士階級の者はSirを用いる
ちなみにヴィシュマル・ダルク宰相を私が閣下と呼ぶのもまた理由がある
宰相等という特別な立場にいる彼は、貴族の頂点である公爵家であろうと
予想したのである。そして公爵はLordではなく、Your Graceという
敬称を用いるのがイギリスの風習なので、予想して使っていたのである
どうやらそれはこの世界でも間違いではないらしく、彼らは間違いを指摘
したり気分を害したりはしていない。そう考えると名誉男爵についても
準男爵や騎士と同じSirが用いられるはずなのに、なぜLordなのだろう??
「失礼ながら宰相閣下、私は名誉男爵予定のはずですが
名誉男爵の場合、卿ではなくサーになるのではありませんか?」
「まさかまさか、あれだけの事を成した者に名誉男爵で済ませた場合
陛下の器量が疑われる事になりますのでそれは無理な話です
ランバートン殿は恐らく、名誉侯爵に叙されると思いますぞ
エルスリード王国の歴史上、1名だけその位に叙された者がおります
まあ、特別な理由がありましてな。生まれつきその、子を成す能力が
無い人物だったのですよ。しかし王国に多大な貢献をした人物である為
6代目の陛下がそのような位を設けて叙勲された記録が残されております
その時の陛下のお言葉が、好きに生きよされど義務は背負わせぬだった
そうですので、ランバートン殿には最適な位ではないかと思うのですが?」
「その言葉通りなら有難いんですけどね。名誉侯爵とかともなれば、夜間の
王都への出入りも自由にできそうですし。ただ、義務は背負いませんよ?
私の力はこの世界ではイレギュラーすぎる。私の存在が国家の存在を脅かす
私はそれだけの決断をするなら、他人の命令ではなく自分の責任でします」
雑談をしながらしばらく歩いていると、外への通用口のような小さな
扉の前に辿り着いた。扉の左右には警戒態勢の衛兵らしい兵士が立ち
宰相の姿を認めると、左腕を胸の前に当てて背筋を伸ばして姿勢を正した
そして宰相の表情と容姿を確認して、一瞬驚いたような表情を浮かべる
まあそりゃそうだろな、恐らく前にあったときは、今にも死にそうな
顔してただろうに、今じゃすっかり元気はつらつ禿マッチョだもんね
「ご苦労。これから重要な御客人と練兵場で少し大事な話がある
近衛第一小隊に直ぐにこちらに来るように伝えろ
それと、近衛第一小隊と陛下以外は、誰であろうと近づけるな」
「はっ! 畏まりました宰相陛下!」
一人の兵士が駆け足で去っていき、もう一人が扉を開けてくれる
扉を潜ると城の内部にあると思われる開放された空間に出る
四方を白の壁がかこっているところを見ると、城壁と城の間に
ある空間ではなく、中庭のような場所の一つといった感じかな?
「さて、ここでしたら大抵の物は出しても大丈夫と思いますが
ランバートン殿、広さ的にここで問題がありますかな?」
「十分な空間容積がありますので問題ありません。では、早速
取り出して並べていきますので、しばらくお待ちください」
インベントリから必要とされる物をどんどん出していく
一応分類分けはされているので、分かりやすく並べる
偽造通貨、王国衛兵偽装セット、謎のお揃い装飾品
使途不明なガラクタの山、むき出しの宝石の原石
カプセルに入ったネズミ顔のローブの死体を取り出す
「ランバートン殿、個人的な質問を宜しいですかな?」
「はいはい? なんでしょう???」
「何処にそれだけ物が入っておるのです? 魔道具ですかな?」
「・・・すみません、私にもわかりません・・・たぶん異空間?」
言われてみて、インベントリって何なんだろう? 何でこんな入るの?
まあ、入るようになった理由は分かっている。本来はこれほど物が入ら
なかったのだ、Call to Stormの初期の仕様では・・・
しかしゲーム内マネーやアイテムを販売する違法アクセス集団が
基地の倉庫のデータにアクセスして資源やアイテム等を移動させるという
違法アクセスによるプレイヤーの被害が多発して、その原因として
アイテムのデータ管理を行うベース専用のサーバーに抜け道があり
その脆弱性をつかれてアイテムを盗まれている事が運営の調査で分かった
しかしゲームの仕様上とサーバーのレンタル契約の問題で即時の改善
が不可能であったため、運営会社が直接管理する、プレイヤーの
キャラクターデータがあるサーバーにそれらのデータを移動させ
キャラクターから直接アクセスする方式に変更されたため、インベントリ
というシステムが急遽追加されて仕様変更になったという経緯がある
「一体どれくらいの物が入るんですかのう?」
「正直私も限界は分かりません。ただ、このお城くらいは軽く入ります」
「・・・・・・王城全部ですか?」「ええ、それ以上が既に入っています」
「恐ろしい能力ですな。スキルか魔道具になるのですか?」
「申し訳ないのですが、この機能については私もよく分からないんです」
雑談をしているうちに、近衛第一小隊と思われる一団が入ってくる
宰相の前に横一列で並ぶと、先程の衛兵と同じ姿勢をとって背を正す
この国敬礼はどうやら左腕を胸に当てる形式のようだが
普通で考えれば武器を使う利き手を用いると思うのだけど、なんでだろ?
申し訳ありません、ちょっとなんかもやもやして全然書けていません
本日もこの1話だけとなります。なんかこう、うまいこと繋がらないな・・・




