逆光の商談 2
「なっ!? これは・・・・」
サンプルとしてテーブルの上においたゴブリンの武器防具一式
を鑑定して宰相の顔が引きつる。ん? 思ったものではなかった?
それとも想定の上を行く性能か品質だった?
「さて、こちらも一度鑑定はしたが、改めて鑑定するとしよう」
バルロイがぶつくさと言いながら鑑定をしている たぶん きっと
「まず宣誓するのだが、その前に一つ頼みがある
正式な本名を名乗るが、現在も俺が家名を名乗る資格があるか
確認していないので分からない。これについて、もし廃嫡等で
無効になっていても、家名詐称罪に問わないと約束して欲しい
宰相閣下、これは条件を呑んでもらえるか?」
バルロイが何時になく真剣な表情で王様と宰相に視線を向けてから
そう言った。王様と宰相は、やんちゃ坊主を見るような表情で頷き
それから宰相が、親が子供に諭すような感じでこう続けた
「そこについては、私もあの事件の再調査にかかわっているので
バルロイ殿の事情は理解している。またバルロイ殿のその件に
ついては陛下の御意向もあり家督相続手続き保留のままにして
あの地については一時王家預かり地として処理してある
貴殿は現在も正式に家名を名乗る資格があるので問題はないが
いずれ決断がついたら、継ぐか、放棄するか、届け出てくれ」
「そいう事になっていたのか。済まない、俺の身勝手で国に迷惑
をかけているようだな。だが、申し訳ないがあと数年はかかる
俺はオルムに息子を頼むと託された。ガフが一人前になるまでは
俺はあの村を離れるつもりがない。我儘を言っているのは分かる
だからそれを待てないというのなら、国で所領を処理してくれ」
「バルロイ、其方の事情は理解している。それに今は別の問題もある
使途殿がレイドック男爵に仕えると決めたのであれば、それはこの
国にとって重要な案件である。其方は使途殿と馬が合っているよう
に儂には見える。使途殿は聞いたところによると、この世界に来て
まだ日が浅いという話ではないか? 其方がレイドック男爵と共に
使途殿を支えてくれることは国だけではなく、この世界の為に
いつか役立つ日が来るであろう。よってその件は急がずとも良い」
「そこについては、レイラに聞いてくれ。あいつが俺と馬が合うかは
俺には分からないからな。さて、それより話を進めようか
バルロイ・ド・エルスリードの名とアルムの名に掛けて誓う
これから述べる鑑定結果については真実を語り偽りを語らぬ事を」
バルロイは胸に手をあてて王様の前に跪いて、目を閉じて宣誓を
行ってから、立ち上がって鑑定結果を話始めた
「鎧は金貨4枚と大銀貨50枚だ。魔力が籠っているが高値の理由だ
剣は金貨1枚と大銀貨20枚。手斧は金貨1枚と大銀貨30枚
メイスは金貨1枚と大銀貨50枚でメイスが一番高い
盾については魔道具の効果があると分かった
低レベルだが反発の魔法がかかっている
その所為でこれも値段が高い。金貨2枚に大銀貨50枚だ」
剣=130万円 手斧=140万円 メイス=150万円
盾=250万円 鎧=450万円
えーと、140セット売るとして、一式が平均化して840万円
11億7600万円か。おお、これは結構な財産になったぞ
白王金貨11枚 王金貨7枚 金貨6枚か。宰相が顔引き攣らせた
理由はこれか。予想外に高すぎたんだろな。まあ、この世界のって
貿易あまり盛んでないっぽいから、おそらく純粋な国内税収だけ
でやってるよね。銀行とか金融もないだろうから、現金とか現物
税収のみ。そこからいきなり、12億近く出せってなったら
たぶん相当無理かかるんじゃないかなこれ??
「バルロイの見立てで出た結果が正しいと仮定して
武器を平均化して金貨1枚と大銀貨40枚とします
盾と鎧で金貨7枚として一式平均で金貨8枚と大銀貨40枚
これを140セット御所望だということで、総額で
白王金貨11枚 王金貨7枚 金貨6枚になりますが
ダルク殿の見立てでは、この値段は適切ですか?不適切ですか?」
宰相は一瞬だけ、ふっと演技ではない笑みを零してから
「偽ってもどうにもならないでしょうな。ほぼ同じ結果です
ランバートン殿が提示された額で間違いはありません
しかし想定していた値段を遥かに超える値段の為
この場で一括での支払いは少々厳しいものがあります
ミスリル100㎏は精々白王金貨1枚が良い所ですので」
宰相は一度言葉を区切ると、先程蓋をあけて配っておいた
ペットボトルの紅茶を一口のんで、ほうっ と感嘆の声を漏らし
それからハンカチを取り出して額の汗を拭って言葉を続けた
「他にも買い取るべきものがありますので、それを考えると
こちらがランバートン殿にミスリルを渡した上で、尚且つ
白王金貨10枚程度の支払いが発生することになるでしょう
陛下がこの場にいらっしゃるので国庫からの支出は許可は
降りるでしょうが、この時期にこの額の支払いを一気には辛い
最悪、支払い可能な量まで購入を抑える形になるやもしれませぬ」
「支払いについては一括でなくて構いませんよ
予想外の値段になりましたので、私も追加で買いたい物があります
その現物払いで現金での支払いを減らすというのも検討してたいと
考えています。ただ私が買いたいものは、物ではないんですよ」
宰相は、ふむ・・・と一言つぶやいてから、先程と同じように紅茶
を飲む。どうやら彼は甘党なようだ、気に入った様子で味わっている
「私が欲しいのは二つ。商売の権利と工事の権利ですね
1つは、陸運及び水運の権利。王国内全域に及ぶ権利が欲しい
もう一つは、1つめの権利にかかわる事なのですが
まず手始めに、アルムの村から王都までの道路施設権が欲しい
この道路は既存の街道を改修する形で行いますが、道路幅は今より
ずっと広くするので、用地の買収及び立ち退きが発生する事がある
これらの用地買収及び立ち退き等を、国が責任をもって執り行う事
計画書は出しますし、どうしてもこのルートは無理だという場合は
協議の上で変更も可能です。但し立ち退きにも条件があります」
宰相が既に紅茶を飲んでいるので、私が飲んでも無礼には当たら
ないと判断して私も喉を潤す。今日は話す事が多くて喉が渇く
現実時代の仕事を思い出して少し楽しいというのは内緒だ
「住民の納得しない強制的な立ち退きは、例えそれがその土地の
所有権が無い住民であっても行わないこと。これが条件です
居住、生活の為ではない不法占拠については法で対処して下さい
この条件が適用されるのは、その土地で5年以上の農作等又は居住を
行っている住民のみとします。立ち退き料に集る馬鹿が出るはずなので」
「ランバートン殿は、アルムの村と王都を結ぶ街道の整備を王国に対して
今回の代金の不足分として要求する、という事ですかな??
いまいち話の内容がよく分からないのですよ。それに街道の整備となると
さすがに今回の支払い全額を用いてもとても足りませぬぞ??」
ああ、やっぱり宰相はそう勘違いしたか。そうじゃないんだよね
私はゆっくりと首を左右に振って否定の意思を示してから
「違います。私が欲しいのは、国が許可を出して私が自費で道路を引き直す
権利が欲しいと言っているのです。この国では土地の権利は基本的に
国王陛下が持つものとなっていますので、その土地に道路を敷き直す
権限を与えて欲しいと言っているのです。道路の敷設作業は全てこちらで
行います。メンテナンスは基本的に必要ない石畳の形式を考えています
私はアルムの村に交易路を確保して村の発展計画を立てられる。王国は
交通インフラを低コストで実現できる。悪い話では無いと思うのですが?」
「つまりランバートン殿は、自費で我が国の最北東にあるアルムの村から
この王都までの街道を敷設すると本気で仰られているのですか???」
宰相は自分の想定とあまりに違う私の要求に、呆れの色を少し浮かべた
表情で、紅茶のペットボトルを手で弄びながら確認するようにそう言った
私は笑みを浮かべて頷き、肯定の意思を伝える
「それと、もう一つ工事の権利が欲しいのです。アルムの村への港の建設
及び王都まで流れる河川の船舶の交通に適した改修工事の権利と更に
王都近郊もしくは王都に港の建設を行う権利。水上交通路も欲しいのです」
流石にこの辺で、室内にいた王城組から驚きの声で室内が騒がしくなる
そう思っていたら、驚いていたのは王城組だけでなくアルムの村組もだった
バルロイは完全に、また始まりやがった的な呆れ顔を私に向けている
レミリアとアエルは、逆立ちした馬でも見つけたような表情で私を見る
チェニスとザロス君も呆れなのか驚愕なのか判断がつかない表情をしている
「私は欲張りなんですよ。国王陛下及び宰相閣下、この提案、呑まれますか?」
ここで突然、王様が口を開いた
「ランバートン殿、何故その権利を欲するのじゃ?
儂にはランバートン殿が一方的に損をするように思えるのだが?」
「莫大な利益が出ますよ私には。長期的にみれば投資の数千倍は利益が出る
まず道路ですが、石で舗装して、馬車が2台は並んで走れる幅で作ります
道路の左右には徒歩で移動する人の為の人が3人並んで歩ける程度の歩行
専用の道路も左右に併設します。これで徒歩でも馬でも馬車でも、国内の
人の移動が活性化されるはずです。今のアルムの村には人がほぼ訪れない
あの地に人が訪れることで村に新たな産業を興すことができますし。村の
農作物、加工品、それらを王都や近隣の村に売りにいくのも楽になる
経済の活性化はアルムの村に大きな利益と新しい可能性を提供してくれる
そして私は国内の運輸業の権利を得る。それを使えばどうなりますか?」
「物資や人員の輸送で継続的な富を得る・・・つまり
物が動けばランバートン殿に金が入る。そういう仕組みを作るのですな!」
宰相いたずら小僧のようなおそらく、演技も立場もなしの素の表情で
妙に楽しそうにそう言い放つと、室内の騒めきがさらに大きくなる
「そうです。そしてその金を元に私は、次の計画を進めます
それには私の持ち物だけではなく、この世界でのお金が必要なんですよ
だからいくらでも稼げる手段が必要なんです。それについては秘密ですが」
「それはエルスリード王国の為になる計画なのですかな??」
流石にここは突っ込んでくるか。まあ、概要だけはいってもいいか
「エルスリード王国にだけの為になるかといわれれば、NOです
私がしようとしているのは、犠牲になった人々の志を繋ぐ行動です
この国だけの為に何かをするわけではないのです
悪女の嫉妬という病の研究と対策。及びその流行の阻止
これらをアルムの村を起点として世界に広める事が次の計画です
この計画の目的は、悪女の嫉妬の根絶です。長い闘いになるでしょうね」
「ランバートン様!!」「控えろレミリア、商談中だ」「も、申し訳・・・」
「悪女の嫉妬の根絶ですと!! 先程から全て正気で申されておられるのか!」
「正気です、全て実現可能です。夢物語は男がベッドで見るものですよ
女は現実的なんですよ男と違って。夢と熱意で明日の飯は食べられない
さて、秘密もあっさり暴露しました。そろそろお返事を頂きたい
エルスリード王国は私の提案を呑んで受け入れますか? 拒否しますか?」
申し訳ありませんが、本日2話目の追加は間に合いそうにありません
ごめんなさい(;;)




