王と宰相
王様自らの御出陣? によって、逃げる機会を失った我々は
なぜか、王族や城の重鎮しか入ることが許されない
王族専用エリアにある談話室のような場所に案内された
あれ、謁見の間とか、そういうとこじゃないわけ?
こんな初見の人間を同じテーブルに座らせていいわけ??
それ以前にボディーチェックとか武器の預かりとかしないわけ?
これ殺そうと思えば今ならレミリアでも捨て身ならいけるよ?
ザロス君は・・・無理か、うん、あの女中とか執事は護衛だな
ザロス君の腕では到達する前に死ぬな、確実に
「使徒様。ここは儂の個人的な空間ですので
どうか面倒な儀礼などは忘れてお過ごし下さい
私はベルニアス・エルスリードと申します
一応、この国の王等という偉そうな立場をしておりますが
これも全て、以前に降臨なさった女神様の使徒殿の
御助力のお陰に御座います。私の代で再び女神様の使徒殿に
お会いできたこと、誠に嬉しく思いますぞ!」
長いテーブルの端の一番大きな椅子に腰を下ろした
見事な白髪で軽く天然ソバージュがはいった長髪を綺麗に整え
口ひげはなく、顎鬚を襟元まで伸ばした品の良さそうな老人
しかし笑顔ではあるが、何かしら威厳を感じさせるその人物は
そう自己紹介して何やら嬉しそうにニコニコしていた
体つきはかなりがっしりしており、左眉のあたりには刀傷? 剣傷?
と思わしき跡があり、よく見ると左手の人差し指は失われている
こりゃ、チェニスと違って武闘派の王様って感じだわ
一応、非公式の席になるのだろう、公式行事に使う部屋ではないので
しかしだ、王族がいきなり頭下げてくるとかありえないだろ??
等と事前の予想を完全に裏切る展開に、軽く混乱していた私は
「あ、その・・・それ私関係ないので、私に感謝されても・・・」
「関係無いなどととんでもない! 現に使徒殿はこの国に降りかかる
としていた、邪なる行いを阻止して下さったではありませぬか!
この国を治める者として、何とお礼を申し上げてよいのやら・・・」
まずい、完全に事前のシミュレーションと違いすぎる・・・
どんだけ嫌味いわれて、質問攻めにあって、胡散臭そうな目でみられて
面倒おしつけられて、無理難題おしつけられて、どう切り返すかしか
考えていなかったので、まったく想定外の対応でかなり混乱していた
よし、ここは事務レベルの話に切り替えて、主導権をこちらに戻そう
「近衛兵でしたか? 迎えに来た兵に尋問可能な状態で捕虜は引き渡しました
一応、こちらでも聴取は終わっていますのでその資料はチェニス第二王子に
既にお渡ししていますので、そちらにも目を通して頂ければと・・・
私としては、これだけ人や金を使っているのにこれで終わりとは思えません
しかしあくまで、私はレイドック男爵に仕える身で王都の問題に積極的に
関わるつもりはありませんので、後の対応はそちらにお任せします
あと、残りの捕虜がまだ20名近くアルムの村におりますので
そちらの早期の引き取りをお願いします。食費も馬鹿にならないので」
「それは誠に申し訳ない! チェニス、貴様は何をしておった!
その手配も行うべくあの言葉を飛ばす魔道具で伝えるべきであろう!
使徒殿、本当に気が利かぬ愚息で申し訳ありませぬ・・・」
私に謝罪をしてから、いきなり笑顔から鬼のような形相になった王様は
音がするんじゃないかってくらいの勢いで首を左にぐわっ!とまげて
少し離れた所に立つ、気が弱そうなつるっぱげの初老の男に向かって
「おい、宰相! 早急にアルムの村へ騎士団を派遣しろ!
ワグナー配下の反徒どもを早急に引き取ってここに体持ってこい!
儂自らがその身にふざけた行いがどうなるか叩き込んでやる!!!」
・・・まずいな、こいつ、私と似たタイプだ
体持ってこいとか、ヤクザ映画以外で久しぶりにきいたわ
しかもなに、王の拳でお前らの体に罪を刻み込んでくれるわ
そういうのやっちゃうタイプ??
やばいな、近いタイプって苦手なんだよね
「た、直ちに騎士団に出立するように命令を出しましょう」
気が弱そうな細身のつるっぱげの宰相と呼ばれたおっさんは
額やら頭頂部やらをせわしなく白い清潔そうなハンカチで拭いていたが
王様に怒鳴られると、即座にハンカチをしまって
ローブのような、それでいてどこか品を感じさせる服のどこからか
紙? いや違うな、あれは羊皮紙ってやつか??
ハガキ大の何やら紙か羊皮紙らしきものと炭のような塊を取り出して
かなり焦った様子で何やら文章を書き記し始めた
「あのですね、アルムの村はそれほど食料に余裕があるわけではないので
到着した騎士団への補給とかたぶん厳しいんですよ
貧しい村ではないですが、これから冬で収穫とかあまりないでしょ?
なので、騎士団が慌てていって、帰りの食料売ってくれとかやられると
たぶん食料事情が悪くなるんですよ。なので、きちんと補給部隊同伴で
それと、捕虜の分の輸送中の食料も混みで計算して派遣しないと
村に迷惑がかかるので、そこだけは、宜しくお願いしますね」
「そういえば、アルムの村の近くにはニルン村しかありませんな
ニルン村はワグナー領で税の取り立てが厳しかったとか・・・
あそこも恐らく、食料の買い付けを行える余裕は無いでしょうな
騎士団と輸送隊の混成中隊を派遣することに致します
いやはや、さすが使徒殿。そういう所まで御気が回りますか」
あれー・・・宰相とかって、もっとこう、嫌味ったらしくて
なんかねちねちしてそうだけど・・・こいつもイメージ違うな・・・
しかも即座になんかメモを修正か追記してるよこのおっさん
メモ持ち歩いてすぐ取るやつは有能な奴が多いんだよね
しかしこのおっさん、かなり顔色悪いが大丈夫か??
「あの、宰相閣下? あまり顔色が優れないご様子ですが
お体に何か問題でも? ちょっと見ていて不安な顔色ですね」
「ああ・・・その、胃をやってしまったものでしてね・・・
最近あまり眠れないのと食べられないのですよ
使徒殿に不快な思いをさせてしまって申し訳ありませぬ・・・」
「んー・・・胃をやった? 吐血とかありますか?
特に空腹時の吐血、あと吐血に小さな肉片のような物が混じっている
あと寝れない・・・就寝中に胸焼けや嘔吐等で眠りが続かない感じですか?」
「・・・・・・流石は使徒殿と申すべきなのでしょうな
いくら休んでも、疲れてダルさが取れずに、ぐっすり眠れません
寝ていても胸焼けのようは症状で目が覚めるので、長く眠れません
最近は常に腹が痛い上に、お通じも悪いもので、ますます食べたいという
気がしなくてスープや酒で何とかごまかしている感じですな・・・」
「なんだと! 貴様儂より先に逝くのは許さんぞ!
お前がいなくなったら、誰が面倒な執務をこなすと思って居るのだ!
そもそもだな、体調が悪いなら何故儂に言わぬのだ!
教会でも治療師でも薬師でもいくらでも儂が手配してやるわい!」
最初から汗かいてたもんね・・・暖炉あるからある程度温かいとはいえ
これだけ痩せていて、暖炉の火程度であんな汗が滲むのは不思議だったんだよな
緊張症って可能性も考えたけど、そんな人間が宰相なんてできないわな・・・
てか予想してた胃潰瘍とは違うっぽいな、便秘や腹痛か・・・
んー・・・恩うっとくか? 死んでないから生産可能なメディパックでいけるし
んー・・・んー・・・ま、気になっちゃった時点で答えきまってんだよね
しゃーない、恩を高く売りつけて置こう
「宰相閣下、少しお体を拝見しても宜しいですか?
私の持っている治療の道具で治せるかもしれませんので」
「え・・・あの・・・このような大勢の前でですか??」
頬を赤らめて生娘のように身をよじって体を隠すようなしぐさをする禿
脱がされるとでもおもってるらしい・・・かなり気持ち悪い
「いやあの、、、なんも、脱ぐとかしないでいいので・・・
ちょっと胸に手を当てさせていただければ済みますので・・・・」
宰相は自分がひどい勘違いをしていることに気付いて、慌てて姿勢を治す
了承の意思を示したので、胸に手をあてて人体に影響がないレベルで振動を流す
《グーデリアン、アルベルトに支援たのんでいいので今のスキャンデータから
対象人物の健康状態を分かる範囲で教えて。精密な検査がいるならそれも教えて》
《了解しました! 解析中・・・・・・・・・
胃に潰瘍があります。良性か悪性かは不明です
それを判断する場合は組織サンプルと血液サンプルが必要になります
内蔵にいくつか機能低下の兆候もみられますが、総合的に判断して
長期に渡る毒物の摂取による症状ではないかと推論します
血液サンプルの入手をお願いします、至急検査が必要です
断片的な情報と振動解析によるデータのみなのではっきりとは言えませんが
このままでは半年以内に劇症化して死亡する可能性が高いです》
「・・・宰相閣下、いつごろから具合が悪くなり始めて進行していますか?
私の見立てですと、長期に渡る毒物の摂取による多臓器不全の可能性があります」
「毒だと! 誰が盛りやがった、おい宰相、心当たりはないのか!」
この脳筋王様、本当にチェニスの親なのか? まるで正反対じゃん・・・
「心当たりは・・・申し訳ありませんが思い当たる事は無いですな
ただ、毒ならばすぐにわかると思うのです。毒がわかる魔道具の指輪を
常につけておりますので。使徒殿を疑うようで申し訳ないのですが
おそらく毒の御見立ては勘違いではないかと・・・」
「何らかの病気なのは間違いないのですが、おそらく慢性中毒症だと思います
ここからの対処法が二つあります
1 徹底的な検査をして病状を正確に確かめて適切な治療を行う
2 病気が何であれおそらく治せる道具があるのでそれを使用して治す
宰相閣下はどちらを選びますか?」
「それはまさか、この国を御作りになられた先の使徒様がお使いになられた
伝説の治療魔法を使徒殿は使えるということなのでしょうか!?」
「いえ、私は魔法の素質は宰相閣下の毛髪と同じでさっぱりありません」
まったく悪意も他意もなく受けを狙ったわけでもなく、真剣に言ってしまった
のだが、王様が ブゴフッ! と盛大に噴き出して笑いを堪える
しまったと思って室内を見回すと、女中すら少し前屈みになって笑いを堪えている
やっちまった・・・と宰相に顔をむけると、涙目でこちらを見ていた・・・
「・・・その、あれです、あれだ。髪の「ブフォァッ!!」の事は置いといて
そういう病気や中毒なら治せる道具があるのですが、どうしますか?
ただし治してしまうと、原因の特定が難しいので、原因を特定して
たとえばそれが、悪意ある他者の行為であった場合、その特定作業において
証拠を失う事になりますので、困難を極めることになります
ただ、症状的にあまりよろしくないので、治してしまうのも手かと思います」
「原因を特定して尚且つ治すのにはどうすれば宜しいですかな?」
禿について周囲が笑ったことでもう開き直ったのか
宰相はどこかさばさばした様子でそう言った
「血液のサンプルを保存した上で、治療を行えばいいのですが
血液サンプルの採取には少し痛みが伴うのと、恐怖があるのではないかと
注射器という道具を用いて、腕に小さな穴を開けてそこから採取します
傷自体は2日もあれば完治します。痛み自体は小指をドアノブに間違えて
打ち付けてしまった時よりはるかに少ない痛みしかありません」
「わかりました、その方法で血液のサンプル?とやらをお採り下さい」
「お酒が飲めない、お酒を飲むと息が苦しくなるという事はありますか?」
「??? いえ、特にありませんがそれが何か??」
「これから強いお酒のようなもので針を刺す場所を消毒しますので
それに対して拒絶反応があるかの確認ですので、安心して下さい」
インベントリから医療キットというメディパックとは違う種類の
サポートキットを取り出して、その中から血液採取ツールを取り出す
宰相に腕をまくって見せてくれ、腕を出させて腕にタバコの箱程の
血液採取ツールを押し当てて付属のベルトを締めて血流を抑制すると
自動的に消毒と血液採取が行われた。一瞬宰相が、イッ と痛みに
声を上げたが、数秒で採取終了を電子音が知らせる
「はい、これで血液採取は済みましたよ。あとは治療になりますが
まず今採取した血液の分析を行って、症状の確認をします
本当はもっと設備が整ったところで全身のチェックを行うべき
なのですが、流石にアルムの村に移動してもらうのは大変なので
こちらで直ぐにできる処置を施しますので、お待ち下さい」
《何らかの中毒症状とそれにより多機能不全の疑いがあるけど
どのメディパック使ったら確実に治せる??》
《まずサンプルを解析しましょう。検査キットに血液サンプルを
投入してください。すぐに結果が出ますので》
インベントリからBC兵器対処用の解析キットを取り出して
その中に血液サンプルの入ったシリンダーを投入する
この小型の電卓みたいな物にシリンダーを組み入れる溝がついた
ツールは、BC兵器に汚染された兵士の血液からその種類等を
判別してくれる優れものなのだ、が・・・・・・
そんな解析する前に、医療車両に放り込むか
メディパックLなら大抵の状態を回復することが出来るので
これを使うのは、医療車両やメディパックLが高価で手に入らない
初心者ユーザーか私みたいなドケチユーザーくらいのものだ
《解析結果出ました。年齢による体力の低下や内臓機能の低下も
ありますが、一番大きな要因は鉛中毒です。血中の鉛濃度が
異常な値です。おそらくこれは、神経系や脳へのダメージもあります
対象の完全な回復を考えるのであれば メディパックLを使用して
汚染物質の除去と破壊された細胞の再生治療を行う必要があります》
《Lかー・・・Lなのか・・・Mじゃダメなのかー・・・L何個あったっけ?》
《2557個のストックがあります。製造に時間と資源が多く掛かるため
Lについてはマスターの所有物でも少ない方ですが・・・一般的な所持
数で考えるならば、十分に異常な所持量です》
仕方がないので、メディパックLを取り出して、テーブルの上に置く
バルロイに手招きをして呼び寄せて、テーブルの上を指さす
「これ鑑定して値段教えて。さすがに無料で治療は不味いので
あ、鑑定ってお金とる行為だったらそれもちゃんと請求してね」
「いや、レイラには借りが多すぎて鑑定程度で金なんざ取れないっての」
いつもの如くぶつくさと何やら唱えて、鑑定を行ったバルロイは
困ったような笑顔で鑑定結果を教えてくれた
「王金貨3枚だそうだ。効果については、ほぼ全ての状態から回復する
だそうだ。もう漠然とした上に効果が絶大なので笑うしかねーわ」
「ということなんですが、まあ・・・流石にこのお値段ですがどうします?
今回は特別に! なんと原価価格でのご提供! さらにさらにさらに!
今なら回復祝いに、今回だけの特別ご奉仕で、こちらの 発毛剤 を
なんと一本無料でお付けいたします! さあ、どうなさいますか??」
なんか妙なテンションで、どこぞのテレビショッピングのような真似をする
インベントリからハエールEXλというファッションアイテムを取り出す
これを使うとヘアスタイルが一度だけランダムで変更される代物なのだが
実際にこの世界で効果があるかは不明だ、まあ、実験台ってことで・・・
「買います! 生えるんですね! 本当に生えるんですね!!」
「いやー、これについては、まだ試したことがないのでなんとも・・・
あくまでオマケで、生えなくても自己責任という事でお願いします」
宰相は、本当に生えるかどうか分からないという言葉で明らかに落胆した
しかし、可能性はあるかもしれない・・・使徒殿が騙すわけが・・・
等とぶつくさいっているのだが、明らかに最初の目的を忘れている
「いやあの、体治すことが目的ですよね? そっちで真剣に考えません?」
「髪は重要です・・・髪が生えるなら死んでもいい・・・」
「それ髪生えても楽しむことすらなく棺にぶち込まれますよね???」
「使徒殿、私は18から薄くなり始めて23の時には全滅したのです
あの若かりし日々から味わった屈辱と悔しさの毎日が払拭される
これが如何程に重要なのか、わかりませぬか?? 私の魂が救済
される可能性があるやもしれぬこのチャンス、逃すわけには参りませぬ!」
・・・宰相・・・あんた若禿組だったのか・・・そりゃまあ・・うん
なんかそこまで執着するの分かるわ。一番人生楽しそうな年齢で抜ける
薄くなる、部隊全滅か・・・それを今取り戻せるかもってチャンスか
そして宰相は決断した、彼は決意がこもった瞳で天井を見つ
静かにこう言い放った
「買いましょう。私のヘソクリ全てをこの機会につぎ込みましょう」
・・・いや、あの、病気の治療だからね? ヘソクリでなくって普通に
家の資産から出していいんじゃないかな? なんでヘソクリなの??
修正履歴
2019年9月26日
引き取ってこ体持ってこい = 引き取ってここに体持ってこい
使途 を 使徒 に修正 ご指摘有難う御座いますm(_ _)m
独り言
この次の話を投稿したら、管理ページに2ページ目が発生して
あ、100話も書いてたのか!?と驚く事になりました
だらだらと話数だけは書いてきたものだなと驚きました
矛盾だらけで設定も甘く、誤字脱字だらけのこの話をここまで
読んで下さった皆様に感謝の言葉しかありません




