第1ノ界:#3 ようこそ、大カルディアン帝国へ
中身を変えました。前の文は#2のところに移動させました。
色々と改良していくことが多いかもしれませんが…その。多めにお願いいたします。
美しくも神々しく、オレンジ色の灯りが城内を照らして、天井に絵描かれた絵をより煌びやかに見せた。天使のような芸術的な絵が天井から微笑むというのは、なんと落ち着けないものだったのか。
姫愛鈴と遠山そしてまいは。客席間と言われている広い室内で、紅茶やクッキーなどのお菓子に囲まれ、歩き疲れた体を休ませているのだが…三人を余計疲れさせる原因となっていた。
「このお菓子。おいしいね…」
「この紅茶も…今まで飲んだことないくらい味わい深い、おいしい紅茶ですね…あはは…」
『まい、おいしい?』
(んー…お菓子も紅茶も―――どこぞのテーマパークと同じ味わいがする…
クッキーだって紅茶の葉を混ぜて作られたものだけど、王室の席としてはいささか安っぽく感じるし。
紅茶はこれ…ローズヒップティーだ…うう…)
『まあ、異世界の世界にしてはうまいほうじゃない?なんて…』
(確か異世界の定番だと…料理がまずいって話が主だもんね。
物語のご都合で、主人公が作る料理が美味しいって異世界の人たちが褒めまくって。
お店とか開いて有名になる展開だよね。―――ここまできて、食べれないものじゃなくてよかった。
って思えばいいのか…)
『そうゆうこと。せっかく出されたものにケチを言うよりも、感謝しておかないと』
(そうだね。ありがとうございますっ)
姫愛鈴は上品にクッキーをひとかじりしたくらいで喉も通らず。
まいは営業スマイルのように笑い、内心冷静に味の採点をつけていた。それもそのはず…
「もっとゆっくりしていいぞ。
まあ、現実世界じゃこんな豪華な建築物に入る機会なんて、一生ないに等しいだろうからな」
っと嫌味っぽくニヒルに笑う。
十代くらいの黒髪・黒目…騎士たちは皆西洋な出で立ちにかかわらず、彼だけはどこか東洋人のような顔立ちの少年が。王位席で図体でかく座っていた。
「ところであんたが本当に“アーサー王”…?
どっから見ても俺たちと同じ高校生にしか見えないし。場所負けしてるけど?」
「と、遠山くん!!」
(こいつ。まさか礼儀知らずというのか…!)
遠山は、固くなっていた二人をよそに。へらへらとした態度で相手に指さして聞いてきた。
周りは彼の無礼な態度にざわめきだし「王に対してっ!」と声を出す者もいたが、アーサー王と言われた少年の右手が軽く上げただけで、周りの空気は一斉に静まった…
(すっごい。一瞬で静まった!)
『騎士たち“は”礼儀良いのだな』
「ようこそ。我が大カルディアン帝国へ。
俺の父、絢美キリトは君たちと同じ異世界からきた男なんだ。」
「私たちと同じ…」
「異世界…つまり、現実世界から?」
「―――そうだ!
2017年春ぐらいからか。父はトラックという乗り物にひかれ、命を落とした。
そして文明も、何もかも未発達だった大カルディアン帝国を繁栄へ導き、魔王を倒し。
世界に平穏をもたらした大英雄だった…
この城は、教会から魔王を倒してくれた父への感謝の気持ちで建ててくれたものでな。
父の像や壁画がいくつかあるから、確認するといい。
銅像も壁画もかなり城に負けちゃうくらい弱そうだし、場違い感ありありだぜ?」
「お、王…そんなご謙遜を…」
「いいんだよ“ランスロット”。俺でも何となく感じてたことだからな。
いやいやっ!お前いいなぁ~!姫神娘だけを目的としてたが、思わぬ人材も連れてくるとは!
…で、名前は?」
「遠山雫。雫でいいよ♪よろしくね!お・う・さ・まっ!」
ぶいっ♪とダブルピースサインをおくり、場を和ませたような関係が生まれていた。
しかし、アーサー王と遠山以外の者は。心臓が張り裂けそうなくらい恐ろしい思いをし、まいは緊張で胃が逆流しそうになる…
『とんだ道化として、受け入れたか。まい、大丈夫?』
(…………)
『…頭真っ白けだな。』
「―――しかし。こうやって笑って、豪華な食事。衣装。建築物…そしてっ
仲間や民衆も…その繁栄も…もうすぐに消える」
「王…」
「なんとなく察してると思うが、俺の国…及びこの世界は脅威にたたされている。
この世界に“悪魔”が世界を闇に覆い被さる勢いで攻め続け、多くの民衆が犠牲となっていった。
増殖する魔物…
見たことも得体も知れない、異形のゴブリン。
父が倒したはずの魔王の復活。
そして…天変地異―――
一言では語り尽くせない異常事態が各地に起きてしまい、俺らの未来はもう絶望しか残されていない!
教会から世界が不幸に陥っている原因は、星々の軌道の歪みにより起きた異常であると守護神様は自負しておられ、俺たちに異世界に住む純潔の巫女。姫神娘を召喚し、父が残してくれた現実世界の知識を元に宇宙を救いなさいと、導いてくれた!
俺は父のように聖剣・エクスカリバーを扱えないばかりか。魔物とまともに戦えないっ!
勝手に連れてきて、負担を与えることばかり口にして。本当に悪いと思っているっ!
だが、俺たちの力だだけではどうすることも出来ないほどの危機に立たされ、猫の手だろうとすがりたい想いなんだ!たのむ…っ!俺たちを助けてくれっ!!」
アーサー王は複雑な感情を浮かべ、今。三人に見えるように席を立っては頭を下げた。
騎士たちはアーサー王が頭を下げたことで冷静さを失い、アーサー王の元へ駆け寄るものも出てくるほど、室内は騒然とする!
「お、王様!頭をお上げ下さ…!」
「王!ダメです!あなたが頭を下げるなどとっ!!」
「姫神娘さま!見ないでくださいっ!」
「アーサー坊ちゃん!王はそうそう頭を下げるものじゃないぜ?
あんた一体、何をしてるかわかって―――」
「わかってるさ。しかし、俺は王としては半人前だ…只のお飾りだ。
俺はこうして姫神娘が俺の前に現れてくれただけでとても喜ばしく思う。もし、来てくれず。
世界が終わっちまうというなら…俺は頭のひとつやふたつ、下げる覚悟はある!
王は勇ましくいろと教えられたが!民衆も守れず!国も守れない王が!
救世主を前にしても堂々とするほど、間抜けじゃないっ!」
「アーサーさま…っ!」 「アーサー王…」 「王様…!」
『…なるほど。遠山の無礼に笑って流すのは、少しでも姫神娘の気分を害さない為…
王としてのプライドを殴り捨て、言い方が悪いが、媚びを売っていたのか』
(…そこまでして、追い詰められているんだね)
「―――アーサー王さま」
場の空気が重く、沈んでいる時のこと。今までずっと俯いていた少女は立ち上がり、まっすぐで意思を持った目でハッキリと告白した。それは、まるで城中に響き渡るかのような透き通る声であった。
「私。ずっと姫神娘になることにためらっていました…
もし失敗したらどうしよう。
期待してたのに、裏切ってしまったらどうしようって。
自分のことばかり考えてて…みなさんがどれだけ奇跡を待ちわびていたのか、少しも考えなかった。
私っ!
姫神娘をやりますっ!
まだ右も左もわからない状態だけど、困っている人を見過ごすことなんてできないっ!
私は絶対に、この世界を救ってみせますっ!」
「―――姫ちゃん」
「みなさん!これからよろしくお願いしますっ!」
「や…
やったぁあああああああああああああああああああああああああ!!!」
感喜が上がる。
全てを吹き飛ばすくらいの感喜の声が!
遠山もまいも、自然と笑みがこぼれた。
姫愛鈴は自分が圧し掛かる責任と言う重みを、ずっと乗せられるだろうと知りながら。
彼女はしっかりとした足取りで、アーサー王の前に立つ。
「アーサー王さま。どうか顔をあげてください…。そして、不安にさせてごめんなさい。
王さまはせっかくかっこいいのに、しょんぼりしてたら勿体ないですよっ」
「…あ、ありがと…っ」
アーサー王の顔がずっと張り詰めていたものだと気付いたのは、姫愛鈴が笑いかけた時だ。
ずっと目を見開き、笑顔もぎこちなかった。それが今は少しあどけない、どこにでもいる子供のような顔立ちになり、不器用な笑顔がこぼれだしていた。
黒髪・黒目のアーサー王ですが。
彼はアーサー王“二世”で、アーサー王という名は教会からもらった由緒ある名称である。
円卓の騎士たちは父アーサー王の元騎士たちで、物語のように恋愛が原因で国は滅んでません。
何故なら、ランスロットはアーサー王二世に惚れている“ショタコン”と化してしまったからです…