プロローグ:中二病展開を夢見ても現実は見失わない!
「人生にむしゃくしゃしてやった…反省も後悔もしていない。」
なんて半分嘘で。
とにかくオールスターとかクロスオーバーのように、豪華で次元が違うキャラが集まりわきゃわきゃした物語が生唾出るほど大好きだったから。
それに似た物語を作りたいと考え作成した自分だけが萌える(燃える)塊。
人生は生まれる前から決められている。
それは地位や名誉だったり、見た目や雰囲気だったりもする。
日陰者の人は必ずその運命…いや。必然を理解し、折り合いをつけて人生を謳歌しなければならない。
それでも中には…
「陽の光に当たりたい」「その景色を見てみたい」と願い、足を踏み出そうと足掻く者もいる…
しかし、そいつの結末は決まって悲惨なものになり、陽の光に燃え尽き、死ぬ。
希望なんて。
選ばれた人間にしか降りかからないのだから。努力も勝利も、愛情ですら。
まずい飯を平らげるように、貧相に生きなければいけない…と誰かが言った。
だが…そんな負け犬な生き方は嫌だ。
そいつらの為に道を開けるのも、みずぼらしく、泥をすするのも嫌だ。
いじめられる人間が悪で、死ななければいけない世界なら―――
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「ねーねー!まだやってるよねっ!バスケ部!」
「”辰也”くんが助っ人で入っているはずだから早く見に行こっ!!」
廊下にバタバタと走りながら、恋する乙女たちは黄色い声を廊下中に響かせながら図書室を素通りしたころ。
「明日どこ行く?あん時はカラオケ行ったし…ゲーセンかボーリングして遊ぶ?」
「ん~どうしよっか…」
と。ウチと仲のいいグループの睦下悠と里中つむぎは。ダラダラと無駄な会話をしながら、ある人物がくるのを待っていた。
『彼女の名前は”木村まい”。
一人称は”ウチ”。
父の実家の叔母と暮らしていた頃が有り、言葉が訛っている。
好物は魚介類と麵類だ。ウニとサザエが好きで、
彼女の父親が旅行好きだった為、新鮮で美味しいものを小さい頃から食していた。
食べ物の味を知らないゴミを漁るような他の人間よりかは、舌が肥えているんだ。
ほら。あの他の子とは違ってぽっちゃり体型で、おでこを出したセミロングの子がいるだろ?
彼女がまいだ。顔もまんまるで太眉で愛らしいだろ?
抱きしめると、フニフニとマシュマロのようにとても柔らかでー…』
『あっ、そこは聞いてないからっ。まいの趣味はなにぃ~?』
『まいは漫画やライトノベル。後ゲームのシナリオなんかも書いたりするのが趣味だな。
多種多様に幅を利かせるが、やはり創作活動が一番症に合っているらしい。
特にファンタジーものが大好きで、日常系の話とかゆるキャラ系を描かず。
冒険とか、今流行りの萌え系ばかりを描いているよ…
例えばほら。この作品だ。
この作品は”dream of Alice(ドリーム オブ アリス)”というアリスが登場する話だ、たぶんこの作品も完成せず終わるだろう…』
『えーっ、どうしてわかるのー?予知したぁ?』
『予知しなくてもわかるよ…まいは、そうゆう人間だから…』
『ふーん』
(完成させるよ…今度こそ完成させるからっ…!)
ウチはぼんやりと“他者”の会話にも耳を澄ましてしまい、イライラしていたが。
つむぎちゃんが話しをふってきた「どうしようか」の言葉を拾い。新しくできた雑貨屋・夢春という小さくて女子高生が好みそうなお店が、バスに乗って14分くらいの場所に出来たことを話題にして、盛り上げたいと思い立った。
「じゃあ新しくできたお店がー…
「ゴメンね!遅くなっちゃった!」
「あー!やっときたか」「おそいよぉ姫ちゃん!」
出来たから…そこに―――」
でも、ウチの話は話題の「わ」の字も始まらない前に終わった…
二人は満面の笑みで近づく相手に気づき、そっちの方へ同じくらいの笑顔を向ける。
『あと、どんくさいんだねっ』
『ほっとけ』(ほっとけ)
『……ありがとう。このアリスって作品の子お借りするねっ!頑張って~!にししっ♪』
『?ああ…』
なんだったんだ?頭がうるさかったなぁ?
まあさっきの会話は全てどうでもいいし、内容のない話なので忘れていいや。
ウチらが待っていた人物は亜麻色のロングヘヤーをふわふわと揺らし、まるで別次元の住人のように愛らしくも気品ある、姫カットの女の子。
谷 姫愛鈴だ!
ウチの友達の一人で、この学園のアイドル的存在の彼女を「姫ちゃん」と皆が呼んでいる!
彼女が動きは相変わらず無駄がなく、映画のワンシーンのように頭の先から足先まで洗礼されていた!
銀色のアメリカンピン(通称:アメピン)が左右2つずつ付けられており、右側の前髪をかき上げると、白い花のアクセサリーが付いたヘアピンが太陽の光を反射させて、キラキラとダイヤモンドのように煌めかせる!
ああっなんて神々しいのだろうっ…!
同性でも惚れるくらいの「リアル世界のヒロイン」だ!
隠すほどではないが…ウチはゲームとか漫画が大好きなオタク女子で。
テレビに映る芸能人とかアイドルなんて知らないし、気持ち悪くて興味ないが。彼女と知り合った時、彼女はどの芸能人やミスコンで選ばれた美女よりも美しく、神秘的に映った…
それは恋愛という感情ではないと思うが。
ウチなりに彼女を溺愛しており他の人間よりは信頼できる存在だと思ったり、なかったり…
あ、勿論悠やつむぎちゃんも信頼してるぞ…!
っと、いかんいかんっ!
つい濃厚な妄想を働かせてしまった!
ウチはもう一度夢春の事を話を振ろうと、すぐに別の話を話しまくっている彼女らの間を割り込もうとするが、なんてこったい!
彼女らのほうがずっと話は上手だし、姫ちゃんの興味のある内容とするなら、これ以上のものはないものを出してきた。
「ねえ。さっき廊下で“辰”の話が出てたんだけど、少し覗いてみる?」
「えっ!」
「ああっ言ってたね!姫ちゃん、辰也さん見に行こっ!」
「えっと…うんっ…」
「そうと決まればさっさと行きますか!」
「オーっ!」
姫ちゃんが顔を真っ赤にして頷いた事により、次が決定された。
ウチは成り行きで提案された答えを聞き、言葉を引っ込めさっさと移動する彼女らの後ろをついて行く。
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「きゃああああ!冠之くーん!頑張ってー!」
「辰也!こっち!」
「んっ」
「させるかっ!」
体育館の中心はとても白熱したものになっており、沢山のギャラリーが見物していた。なんとか中を見ようとやってきたはいいが入り口は女子でごった返しており、白熱…だが熱気が伝わるだけで中身までは見れない状態だ。
黄色い声が耳に響き、ウチは思わず圧倒されそうになったが悠とつむぎちゃんが「ちょっと通してもらうよ!」と女子の壁を割って入り、二人の押しに乗っかる形で半ば強引に、やっと中に入ることが出来た。
「おっ!やってるやってるー!」
「姫ちゃん!いらっしゃ~い!」
「あ、姫愛鈴さん。きたんだねっ」
姫ちゃんに声をかけたのは、赤髪のバスケ部、橘 光鳳。
その声に反応しにこりと微笑んだのが、薄紫色の同じくバスケ部、沢谷 鯨一郎であった。
どちらもアイドル活動してもおかしくないくらいの美男子だ…
「お疲れ様、二人ともっ」
姫ちゃんは爽やかにニコリと笑って、挨拶。うん♪かわいいっ!
「あっ、おい祥吾!またてめぇは足をっ」
「す!すみません先輩っ!」
「祥吾の奴ぅ…相変わらずダブルドリブルばっかするなぁー」
「まだ入ってきたばかりだから仕方ない、俺たちで後輩を導いてやらないと…」
日に焼けたかってくらい肌が黒いが。別に黒人のハーフってわけでもなく、生まれつき肌が黒い…
いわゆるメラニズムという体質を持った先輩の、樹 繭良が後輩を怒鳴り散らす。
しかし、このまゆらって名前はとても奇妙だと話したら。
インド語の「mayura」つまり孔雀から来ていると教えてくれたんだけど、本当かどうかは定かじゃない。
怒られた谷 祥吾は、ぐんにゃりとした面持ちで首を垂れる…
「祥吾ー!しっかりー!」
「あんた妹の前でなんちゅう情けない顔してんのよっ!」
「ご、ごめん!」
谷 祥吾(彼)は姫ちゃんと同い年だが、一様兄だ。
姫ちゃんからは余り詳しく話してくれなかったけどどうやら義理の兄弟で、家庭の事情で一緒に暮らしているそうな…っとここまでがウチが”頑張って覚えた人物たち”ばかりなのだが―――
今でも覚えられない人物たちでごった返している…!
ウチの学校の男子生徒は…
右を見ても、左を見ても!イケメン・イケメン・美少年であふれ返っている!!
個性的で美しく、そして他の女子よりも華やかで高貴だ…まあ、姫ちゃんよりは劣っているけど。
その存在感は度肝を抜かすほど、少女漫画や乙女ゲームなどで夢見る王子さまたちを、何らかの力で世界中から集めたのか!?と思えてしまうほどの“王子様”集団だ。
しかし…
ウチは”個性的”と口にはしたがそれは中身の話で、見た目なんて個性がなく、悪く言えば似たり寄ったりの顔だ!まさしく乙女ゲームに出てきそうな王子ばかりのせいで、顔や名前を覚えるのにとても一苦労している!
(顔にホクロがあるとか!太眉すぎとか!もっと見た目に個性がある奴いないのかぁ!?
カラフルの髪の毛で助かってるけど、限界だよっ!!
その点、繭良先輩はいいよなー名前まで個性的なんだから~!)
そして、個性は個性でも。生々しい男子の嫌な部分が見えてもいいのに、まるで二次元世界の住人たちのように爽やかで大人しい。
最近なんてウチのクラスの男子が少年漫画で楽しんでる姿を見かけたが、漫画のエロシーンを見て。
まるでピュアな女子のように顔を真っ赤にして、ばっ! っと鞄に隠した時なんてっ…!!
「あの反応は女子だよ…いや、偏見だと言われたら終わりだけど。あれは絶対に女子の反応だよ…」
「木村さんっ!」
ウチはブツブツと呟いて、頭がいっぱいになっていたかもしれない。
周りが見えていなかったかもしれない。
横からバスケットボールが大砲で打ったかのようにウチの顔面目掛けて飛んでくるのに気づき、サッと姫愛鈴ちゃんが横からウチを庇うため、盾になったのが見えた!
「ひめりちゃ…?」
バンッ!
一瞬の出来事のように姫愛鈴ちゃんを庇ったのは、また違う茶髪のイケメン…
と。飛んできたバスケットボールを右手で受け止め、しっかりと持った金髪の…彼を確認するかのようにジッと見ていると、はっ!っと彼が振り向き、彼と目が合った。
音や時間が一瞬で止まってしまったのかと疑いたくなる衝撃がやってくる。
彼も同じようにイケメンだ…
だが、この男は―――どこか違っていた。
ウチのボキャブラリーの貧困さだと思う。
しかし、彼を見るとまるで蛇に睨まれた蛙の如く心臓まで固められ、頭まで真っ白に変える!
男性に対してこんな言葉を使うのは間違っているが、何というか。彼は”妖艶”…そのものだ。
彼の顔も仕草も、不気味なほど完璧に完成されており、誰もがその怪しい光に飛び込み、自分の命すら投げ入れてしまいそうな、そんな恐怖を感じさせる男だ…
「辰也ナイス!」
突然別の男性から声がかかり、驚いて我に返った。ウチは目をぎゅっ…っと力を込めて目をつぶり、手汗滲んだ手の甲を制服でぬぐった。
「けがは…なさそうだな。ありがとう冠之」
「男子にありがとう言われても嬉しくねぇよ…大丈夫?姫愛鈴ちゃん」
「あ、ありがとうございました!冠之先輩…!」
「俺の事は冠之優希って言ってごらん?姫愛鈴ちゃんとは特別な間柄でいたいからさっ」
「せっ、先輩…」
<キャアアアアアアアアアアア!
「おい!冠之優希!女子とイチャイチャしてないでバスケやれっ!」
姫ちゃんの小さく尖った鼻をちょんっと指で触る冠之先輩。
甘い言葉をささやいたことで、周りの女子たちは布を引き裂く声で、震えだす。
ウチも、そのセリフと乙女ゲームみたいな行動に、別の意味で震えだす!
「姫!大丈夫!」
「ごめん姫ちゃん!ボール取れなかったの!」
「ううん大丈夫だよ狐塚くん。祥吾も大丈夫だよ」
「僕!保健室に連れて行くねっ!ごめんね姫ちゃんっ!」
「えっ!大丈夫だよ!気にしなくていいからっ!」
狐塚と言われている、見た目がふわっとしたイケメン…いや、こいつの場合美少年域か。
ボロボロと涙を浮かべ、姫ちゃんを抱きしめ、姫ちゃんを拉致してしまった!
「えっ!?本当に連れてくの!?」
「狐塚ぁ~~!バスケはどうすんだぁああああああ!」
「狐塚くん!」
「姫ちゃん!」
これがウチの日常・学校生活。
学校には沢山のイケメン美少年で溢れているけど、みんなが姫ちゃんを好きになっていて。
姫ちゃんを中心に動いているような”世界”だ。
(姫ちゃんが遠くに!お、おいてかないでぇ~~~…!)
「……ま、い」