2ノ界:#5 和解
前回。
俺は辰也として天空城に召喚され、アリスの下僕(仮)にさせられたと思ったら、女子学園のたった一人の男子生徒として入学することになった。
そして唐突に“獅子王組”と言うよくわからない集団が彼女たちに銃を乱射しにきて、彼女たちや建物などを破壊して回っていたところを暴力で黙らせ、棺桶に変えてやったが。
まさかまさかの…だ。
俺には心に決めた愛しい彼女がいるのに。
(どうして俺はギャルゲー世界にやってきたというのだろうか?)
「マスター、あ~ん…」
「辰也頑張ったね。よかったらこれも食べてね!」
「変な誤解をしてしまってごめんなさい。これ、良かったらどうぞ、お口に合うといいんだけど」
「しっかし、かっこよかったよ!あれだけ敵をバンバン倒しちゃうなんて!しかも獅子王組だよ!
他の冒険者でもかなわないばかりか、けちょんけちょんにされるが落ちだもんっ!
いやー!すっごい!」
「辰也さまは彼女さんとかいらっしゃいますの!?それともまだフリー!?
どんな女性がタイプなのかしら!高貴な感じの女性!?髪の毛がくるくるっと巻かれていて、可憐な感じの~~~!!」
「それ、アンタじゃん…」
俺の目の前には沢山のごちそうと、たくさんの美女が俺に対して行ったことへの謝罪に集まってきていた。
まあ…俺は許さないけどね。
俺を「痴漢!」だとか「変態!」だとか言って、武器持って探していたことを…
助けたのはたまたまアイツ等の精魂が気に入らない・癇に障るものだったから、ぶっ飛ばしたに過ぎないんだ。俺はちょっとやそっとで、コロッと心変わりするチョロいタイプじゃないんだ。
お前らは論外…!
食べ物を置いてったら、とっとと離れろよな。
「あ~ん…」
「あのさぁ…」
「Yes、マスター」
白銀の少女はあの時と同じように「きょとん」と首を軽くかしげて問いかける。
その態度から見ると、本当に無知であり、純粋で。穢れをしらない少女なのだと理解した。
「お前、俺をマスターって言っているが、別にマスターになった覚えない」
「?」
「いや。“?”じゃなくてね…?
えっと。俺はたまたま偶然あった剣を、たまたま手に取ったに過ぎないんだ。
お前はその気らしいが、俺はたまたま剣をその時だけ使用する程度でしか認識してなくて、お前をこれからも使うつもりなんてないんだよ…だから、マスターにはなれない。
ゴメン、ね…」
女の子だし、優しく、俺なりに丁寧に伝える。
少女は剣の付喪神。いやココでは…魂機物と言うのだったか?
俺は早乙女と共に人気のない学園裏の倉庫で借りた白銀の剣だったのだが、それが少女に変わり―――
き…っ、ま、まあぁあっ!
それよりも俺ははっきりとグラタンのようなものを口に運んでくれた少女に、断りを伝えた。
誤解はあった言い方だろうか?しっかりと相手に通じただろうか?
そんなにうまく話せないので、恐る恐る少女を見る、と… 少女は俺の口に運んでいたスプーンをぽろりと落とし、目にボロボロと大粒の涙を泣き出してしまった…だとぉ?!!
「うぁああああああああ…ごめん、ゴメンね!でも無理だからっっ…そのっ…!!」
「~~~~っ!」
「辰也!なに女の子泣かしてるの!!」ゲシィ!!
「 ア リ ス は ち ょ っ と 黙 っ て ろ っっ!! 」
アリスは堂々とした態度で俺を囲みまくっていた少女たちを追い払い、俺の背中を足蹴りする!
どんな女の子たちも質が悪かったが、こいつはもっと質が悪いっ!!
こいつが俺を下僕だのなんだの口にしては、俺を使用物扱いする学園の中で銀髪碧眼の少女の次に小さく、小学生レベルの体型で。一番態度がでかく、何より暴力女という今の流行りでもない少女だ。
こんな小娘に縁が結ばれたのかと考えると虫唾が走る…!
子。十二支の人柱が、アリスに俺の世話をしてくれだなんだと言ってから、アリスは俺にくっついて指示を投げるばかりっ!
かなりうっとおしい!
なぜ俺がこんな小娘に世話されなければならないんだっ!?
アリスはツンデレというお決まりな台詞を吐いては、腕を組んでそっぽを向く。
ギャルゲー世界の世界ではしょうがない行動なのだろうと思うが、俺はどうも好きになれない。
「ふんっ!女子にちやほやされているからって、鼻の下伸ばして!本当にサイテーな下僕ね!
やっぱり去勢が必要かしら!」
「誰が鼻の下を伸ばしている、とぉ?お笑い種だなぁこの暴力娘っ!
お前のほうを去勢かけて、大人くしてやったほうがいいんじゃないか!?」
「なんですってええええええええ!」
「やんのかゴラッ!」
<キャー!キャー!
「二人とも、みんなが怯えているからそのくらいにしてっ!ねっ!」
茶髪で、腰までかかりそうなくらい長いロングヘアだが、毛先が外側にはねたのが早乙女なでこ。
彼女が俺たちの間を割って入り、仲裁をする。
(まあ仕方ない。
今回は喧嘩したいわけじゃなく、このステータスバーをなんとかしなければいけない。)
早乙女はこのアリスという少女と違ってとても優しく。
とてもポジティブなオーラをまとっているくらい人懐っこい良い子だ。
他の少女たちと違い、出会って早々俺が薔薇のトゲでケガをしていたのに気が付き、絆創膏を張ってくれた優しい子だ。傷口が塞がっても、まだもう少しだけ付けさせてもらっている。
彼女のことは少しだけ信用に値する存在だと思っているため、彼女の顔に免じて大人しくさせてもらう。
「ふん…!下僕のくせに他の女の子ばっかりデレデレしちゃってっ…!」
(うっせ。誰が下僕だ…)
俺は自分のステータスバーを開いて、今度動く予定を考える事にした。
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名前:辰也たつや 年齢:17歳 性別:男 レベル:∞
種族:人間+神 十二支=辰 守護神 学生
クラス:無し 属性:すべて
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HP:10000000000000000/999999 MP:999999999999999999999999/999999
攻撃力:∞ 体力:∞ 防御力:∞ 精神力:100 魔力:∞
素早さ:99999999 クリティカル:∞
運の良さ:E+ 回避力:A 魅力:SSS+
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各種耐性(%)
火:999999999999999999999999 水:999999999999999999999999
土:999999999999999999999999 風:999999999999999999999999
光:999999999999999999999999 闇:999999999999999999999991
スキル:≪権力≫≪言語理解≫≪錬金術≫≪気配感知≫≪騎乗≫
*NEW≪子孫繁栄≫
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*NEW
攻略キャラ:「魔剣 “無銘”」
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どう考えても…≪子孫繁栄≫スキルは子のスキルであることがわかる。
子は干支のうち、子孫繁栄と財力の象徴であり、御利益がある俺たち干支にとって大黒柱的存在だ。
あの時に見たステータスバーは、あれから変化したものだと考えられる。
子の奴!何を考えて俺にそんなものをつけたんだ?
てか、絶対にそのスキルを持ったから攻略キャラ欄ができたと考えられる…
俺はこのおかしなスキルの外し方を聞こうかなと眉を顰めると、まるで外すのを勘ずいたかのように。
銀髪の少女はあきらめきれない面持ちで、俺の服をちょいちょいっと軽くひっぱり、涙目ながら食い下がろうとしないでいた。
「ますたぁー…どうしても。ますたーが、いいのです…」うるっ
「ぐっ…!」
そう言われてしまうと、とても弱い。
長い間女性を見てきた(しかし、しゃべるなどと難易度高いことはあまりしたことがない)が、やはり女性の涙は、全てをチャラにできてしまうほどの魔力を感じてしまう。
「(でも確かに…別にマスターとしてなってやってもいいんだろうけど…)でも。ダメだ。あきらめろ」
「~~~~~っ」
「ああ…泣かないで…ね?辰也も意地悪で言っているんじゃないから…」なでなで
「~~~~~~~~~~~~~~~っ!」
「辰也はどうしてこの娘のマスターにならないの?なってやんなさいよっ」
「アリスはやっぱり馬鹿だな。
責任も取れる保証もないのに、早々考えなしに承諾できるものでもないし。
俺は剣なんてなくても戦えるんだよ…まあ。あの時は銃の弾が飛んで来たら肉体じゃ切れないし、ただ使った程度のことだし…」
「やっぱり使ってんじゃない!責任なんて、流れと勢いがあればなんとかなるものなのよ。
現に私があんたを召喚して立派なサーヴァントにぃ~…いっひゃい!いひゃいっ!」
傲慢なアリスの口を引っ張り、黙らせる。
ああ、大丈夫…喧嘩じゃない。これはじゃれ合いだぞ?
獅子王組をぶっ倒し、少し落ち着いてからの話なのだが。
俺の胸に大きな穴が開いたケガを負っていた時、ケガの治療を行うという話になって服を全員の前でひっぺ替えされた時に、俺につけられた忌まわしき紋章。
奴隷の烙印を見られてしまった。
そこから先生がアリスも呼んでいたあの時の話がでてきて、アリスがやったのかと話が持ち上がり…
アリスの奴が「大丈夫!こいつは馬鹿で変態で覗き魔の淫獣だけど、私が責任をもってしっかり調教して手名付けていくからっ!!」とかなんとか言ってさー。
いったい。
何のために先生方がその事を伏せて学園に入学させたと思っているんだ?
あの時のオイコット先生の表情が「あーあ」って顔してたんだぞ。「あーあ」って。
…やっぱりこいつともサッサと縁を切りたい。
7週間ココにいなきゃいけないなんて拷問もいいところだ。それも含めて破棄してもらわないと…
ズドムッ!!!
「ぐごぉおおおおおおおお!!」
「いっっ!たいでしょ!このバカ犬っ!ほんとレディーの扱いを知らないんだからっ!!」
「マスター…ソファーが真っ二つになりました…」
「辰也くん。大丈夫…?」
「辰也…今度からアリスにいじわるしちゃダメだよ?」
アリスが愛用している良くわからないフラミンゴ型棍棒に頭を殴られ、勢いよくソファーが真っ二つに割れて、俺はぶっ倒れた。どうやらこれは“ギャグ補正”というもので、俺は人間の肉体を得たとしてもちょっとやそっとで死ぬことはないことが分かってきた。
そんな事も知らず、銀髪の少女は心配そうに俺の頭を優しくなでて労わってくれる。
(さっきのグラタンも…なんか味が薄くて上手くなかった…
しかも、パンは湿気を吸ってカピカピで飲み込めないわ…ハムとソーセージも、油っぽいのばっかで進んで食べたい味でもないっ!娯楽の一つである食べ物ですら俺を裏切りそうで…また逃げたくなってきた)
御厚意は嬉しいが、俺はそそくさと逃げるように女の子たちの後ろ髪を引かれる視線を感じながら、出ていくことにした。
~~~~~~~~~~~~~~~
して、数分。
「………」
「……」
「………」
「おい」
「なに?」「yes。なんでしょう、マスター」
「どうしてついてくる?」
「ふんっ!下僕が変なことしないか見張るために決まってるでしょ!
また変態行為したら、こっちが叱られるんだからねっ!」
「yes。私はマスターの魂機物なので、ずっとお供します」
「どっちもNO、だ!
下僕もならないし、マスターにもならない!
俺は子を探すためにウロチョロしてるだけだ、ただ付いてくるだけなら放っておいてくれ」
「出来ないからきてんでしょーがっ!どんだけ私が嫌いなのよっ!」
「マスター、そんなに私じゃ不満ですか…?」うるっ
この二人の温度差に精神がやられそうな気配を感じる。
二人はかなり似てないようで根本的な部分は似ているようだ。どういっても絶対に曲げない根性が。
「ところでえっと…名前はなんて言うの?」
「?」
「後ろには誰もいないでしょー…貴方よ、剣の魂機物!」
「…私…ですか?」
「私はアリス。まだ自己紹介してなかったでしょ!
長い付き合いになると思うからっ、名前で呼び合いましょう!ねっ!」
「yes。ありがとうございます。」
グッ! と俺がその間にゆっくりと逃げるのを見逃すことがなかったようで、俺の制服をしっかりと掴んで離さないでいる。そういえば―――少女の名前は“無銘”だった。
無銘とはそのまま、剣の名前ではない。
俺もマスターになる気はないが、名前を呼べないのは少々辛いものがあるのは確か。
彼女は、これまたテンプレどおりに「名前がありません…」と突っ返すだろうと構えてたが…
「yes。名前は“ガラクタ”…っといいます。」
「「え」」
「…でも、それは名前ではないようなので、名前はない。
っという事にします。」
「ガラクタって…」
「yes。私は…辰也に出会うまでずっと、そう呼ばれて嫌われていた剣なのです。
私の特性は魔力を吸収し、力に変える魔剣です。
でも、魔力の吸いが尋常じゃないので…沢山の剣士たちが私を扱っても、決まって誰もが魔力切れで倒れ、扱えませんでした。なので自然と私をそう呼ぶようになったのです…」
「ご。ゴメン。変な事聞いちゃって…」
「いえ。別にそれはいいのです、本当のことですから。
なので、私を使って倒れることもなく。気持ちよく戦ってくれたマスターに、私は運命なるものを感じたのです…
こんなにも純粋で、大きな魔力を持った方は初めてで、この胸の高鳴りを感じたこともありません…
マスターと一緒にいたいです。
びりびり、ドキドキ、気持ちいいこと。したいです。
私は…マスターに恋、したのです…!」
「こ、恋ぃいいいいいいいい!?」
「―――」
恋…ときたかっ!
少女の目はキラキラとダイヤモンドの輝きを持って、俺を清らかに映している。
幼い幼女とて、心は恋する乙女のそのものだ。
とろりとした目に赤く火照った頬、思わずこちらも何か反応を返してしまいそうになる。
―――危険だ…っ!!!
俺はやっぱり急いでこの場所から逃げる為、廊下の窓を開け、さっさと二人から離れる事を決意した!
「ちょっと!それはダメっ!」
「?なぜです?」
「そ、それは~~~ねぇ?たつや… ああっ!辰也ぁあああっ!」
丁度三階からの高さだったが、辰也という体はとても丈夫に出来ているようで、俺は猫の着地のような身のこなしで地面に足を付け、早めに走って逃げる。それでもあの二人は追いかける気満々らしく、やっぱり「まてー!」だのなんだのと聞こえてくる。
…誰かにこうも近寄られる経験なんてない。気持ちがどんどん…追い詰められていく感覚がした…
~~~~~~~~~~~~~~~
そして俺は薔薇の迷路でまたジッと身をひそめることにした。
周りながら子を探しているのだが、どうも見つからない。
子は昔っから分が悪い時だけは、絶対に現れない。なので今回もそうなのかもしれない…俺は、ただ現実世界でまいと一緒にいるだけでよかったのに、異世界に来てからずっとこれだ。
「帰りたい… 帰りたい。
帰りたい。かえりたい…っ」
女々しい男だと知っている。
だが、知らない場所で。知らない人に好かれても嫌なんだ。
マスター等と、言うな。
そこまで俺に責任を持たせないでくれ、相手の理想を見せ続けなければいけなくなるじゃないか。
いちいち俺に突っかかってくるな。
俺は…俺は…
俺は、静かに。誰にも…いや、まいにだけ。
思われながら人生を生きていたかっただけなのに…喜びも、不安もなく、考えることなく静かに…
「どうしたの?辰也…体調、悪い?」
ゆっくりと驚かせないぐらいの速度で、俺に声をかけてきたのは。どこか見たことがあるオレンジ色のツインテールを耳にかけて、覗き込んでいた。
俺はふいに自分の顔が嫌な顔をしていると察して、手でもなんでも隠してやり過ごそうとする。
しかし、これ以上触れることもなく、彼女はにこりと笑って、立ち上がると「大丈夫だよ」と口にした。
「人酔いかな。私も良くなったことあるからわかるよ。もしよかったら紅茶飲む?」
「紅茶…」
「うん、ハーブティー。
ミスコンティーって気弱な子と、生徒会長であるスノーホワイトも一緒にいるの。
辰也が花園を守ってくれたでしょ?せっかくだから一緒に飲もうって…。どうかな…?」
「……」
俺はまた悟られたくないため、流れに乗るように彼女の後ろをついていくことにした。
「二人とも、急なんだけど辰也も混ぜてもらってもいい?」
小さな真っ白なテーブルと椅子を使って、絵に描いたようなおしゃれな空間でお茶会を開いている。
あの時やたらと涙目でうるさかった少女と、確かに集会時に俺を紹介した生徒会長もいた。
生徒会長は足を組んで堂々した風貌で、濡羽色と言うべきか、そんな絹の輝きをもったロングヘアをさらりと流すと、決まりごとのように微笑む。
「やあ、こちらは全然大丈夫だ。ミスコンティーはいいかね?」
「あっ、はい…!わたしは…大丈夫ですっ」
ミスコンティーという少女。目を下へ右へと泳がせ、もじもじとした素振で紅茶に口を潤している。
確か彼女は俺の背後をとり、頭を殴ったばかりか。「変態」だと広めた張本人だったと思い出す。
目に力が入ってしまったせいで、ミスコンティーは小動物のようにわかりやすい驚き方をして、小さな声を漏らしながら震えだしてきた。
とりあえず…俺は空いた席に座ればいいのかな?
ミスコンティーと生徒会長の真ん中に座り、空いたカップにツインテールの彼女が入れてくれた。
「どうしたのかな。さっきまであれだけ女の子にモテモテであったじゃないか。
もしかして…アリスにどやされたかな?」
「花園の様子をみようと思ったんだって。相当心配してくれたの」
ツインテールは俺の代わりに嘘を代弁してくれ、生徒会長は特に詰め要ることもなく「そうか、それはありがとうっ」とお礼をして紅茶を飲む。
俺も口にしてみると、このハーブティーはほんのり甘酸っぱく、果物ような甘さで女子好みの味だ。
料理がやたらとベタベタ・パサパサばかりだったので、口直しに丁度いい味わいだった。
誰もが無理な静けさなんて与えておらず、3人はただこの静けさを楽しむためだけにやってきた女子ばかりだった。風に揺らされこすれる植物の音と。小鳥の声だけが耳に入るだけだ。
<ぴぃ、ぴぃ
「ちーちく…」
白くてふわふわしたシマエナガのような小鳥が、テーブルにやってくる。
ミスコンティーはその小動物に気が付いて優しく指を差し出すと、小鳥はちょいちょいっ とはねるように近づき、スリスリと懐く。
「ふふっ」
「ちーちくちゃんも、無事でよかったね。ミスコンティー」
「はいっ!動物さん、いっぱい住んでましたから…」
「……かわいいな。」
「ぇ!?」ドキッ!
ミスコンティーが驚いて、体を強張らせたせいで小鳥も驚き、飛んで行ってしまった。
…しゃべらなきゃよかったかな。
「でも。私ほどではないな!私はミスコンティーよりも、小鳥よりも愛らしくかわいいっ!」
「スノーホワイトはどっちかって言うと綺麗だと思う」
「へぇ!?す、素でボケられると…反応に困ってしまうではないかっ」
「?」「うふふっ」「…」
生徒会長はナルシストな気でもあるのだろうか?
「辰也は気にしなくていいさ。
ちーちくはすぐに戻ってくるよ…ほらっ、きた!」
「ん?」
今度も同じ場所に止まり、首を傾げながらちょんちょんっ とはねて近づいていく。
ただ違うのは俺のほうにやってきて、俺の右手にひょいっ と軽く乗ってきて止まったくらいであった。
小鳥をただジッと見つめ合い、何も語ることも掃うこともなくジッとしていた。
たった数分の事だが、それが彼女たちのツボに入ったらしく次第に笑みがこぼれていた。
「プッ…ごめん、なんだかおかしくて…!」
「ちーちく、辰也のこと気に入ったみたいだなっ!仲間だと思ってるのかもしれんっ!」
「ふふふっ…!」
「ちーちく…」
<ぴぃいっ
「そろそろ動いてくれないか?」
―――そう言ったのだが一向に動かない。
紅茶が冷めてしまうのではないかと思ったが、この味だと冷めても美味しいと思う。また三人は小馬鹿にした笑いではなく、好意にも似た笑いだけが聞こえてくる。
俺はちーちくを見ながら、治った花園を見て。また気持ちが緩んだのを感じていた…
やっぱり俺は、何もなく淡々とした空間が好きなのだと改めて思う。
「…辰也さん。あの…花園を、助けて下さりありがとうございますっ。
あと…傷つける言い方して…ごめんなさいっ!」
「……別に。気にしてはないよ。」
「そ、そうですかぁ…よかったぁ…もし傷つけてしまってたらと思って…その…えへへっ」
…まあ。うん、表面上は…。
でも傷ついてはない。ミスコンティーは大きなため息を吐いて、一息入れた。
彼女はとてもオーバーに挙動不審に動く淵がある。
そうゆうタイプは見たことがあるので、きっと彼女も根は真面目で優しいのだろうと思う。
―――この場で俺は、今までの事を許してやってもいいかと頭に入れて、重みを置く。
静かな場所に美しい花園の中での、落ち着くお茶会を招待してくれた。
優雅…なんて俺には似つかわしくはないだろうが、それを味わえるだけでとても気持ちが満たされた。
「良かったねミスコンティー」
「はい!“カーレン”ちゃん!」
「―――カーレン!?」
俺はその名前に、やっと思い出す!ずっと…
ツインテールの少女がどこかで見たような見た目をしていると、思っていたのだ。
それはつい最近の事で、まいと一緒に無料動画から知った、あるゲーム…
―――“乙女ゲーム”の存在を!―――
その乙女ゲームの主人公の名は“カーレン”。
オレンジ色のツインテールに、確か“ワトソン”の娘で、“シャーロックホームズ”の弟子として事件を解決する物語であった!
登場人物は“シャーロックホームズ”は勿論“怪盗ルパン”“ヴァン・ヘルシング”…そして“切り裂きジャック”等といったイケメンたちと恋愛するゲームだと知っている。俺たちはその乙女ゲームをプレイしたことはないが、アニメで彼女を見たことがある。
が、しかしここで疑問が俺の中で生まれた。
それは。
“カーレンがなぜ天空城で別のキャラと会話をしているのかという事”だ!
カーレンが乙女ゲームの登場人物であり、主人公であるとするならばこの舞台は当然“乙女ゲーム”。
そして彼女の周りにはそれに関係したキャラクターで固まっているはずなのに、周りにはまたタイプの違う少女たちばかりであった!
カーレンが乙女ゲームの主人公だと気付くと、他の少女たちも、乙女ゲームというジャンルで見たことがある少女ではなかったかと思い立つ!
今いるミスコンティーも、以前アニメで放送され。
動物を引き連れて旅をするほのぼのした話だったのだが、その中で攻略キャラも何人か出てきていた覚えがある。(前のミスコンティーと比べたら、性格が変わり。とても気弱でオドオドしすぎている気があるが)
早乙女も。確かごく普通の学園で沢山の攻略キャラとの少女漫画な恋愛をする物語であったはずで。
画像でだが「不思議の国のアリス」の中で…“アリス”を見た、記憶がある…!
「辰也…?」
「どうしたの?まだくらくらする?」
「…どうしたんだ?」
「わからない。会った時もすごく追い詰められた顔してたし…
きついなら横になる?ソファーとか作れるけど…」
「いや。大丈夫だ…」
カーレンや二人がとても不安そうな顔をして俺に気を配ってくれた。
もしかして、もしかしなくても…
この世界は“バグ”っているのか?
「別の異世界へ飛べない」と言っていたように、何らかの原因でこの世界は不安定な状態にあり、色んな世界線がごっちゃになって作られているというのだろうか。
もしそうだとしたら、どっかしら根が深く強い花が出来て。養分を吸い取り、弱い花は枯れて陥没してしまう!
つまり、一部の世界の“死”である。
今いる現実世界も、アンバランスな作りに出来ているが。
しっかりとした地盤で作られており、どちらかが尖り過ぎることもなく、弱すぎることもなく安定して世界は回っているものである。
あるべき姿を保っていないとするならば、原因をすぐに突き止めないと危険だ。
ひょい!
「やっほー辰~!7週間なくても真相にたどり着いたかな?」
やっと出たと言いたくなるくらい、飄々とした顔でうさぎの穴から頭をひょこっと飛び出した。
傍からみたら生首状態になってるため、周りの反応は想像しやすくわかりやすい。
ミスコンティーなんて驚き過ぎて椅子から転げ落ちてしまったくらいだ。
「どうしてそれを早く言わん」
「“言ったらこの子達とも仲良くならないでしょ?”」
「っ!」
子は見下す…というか。
予知したかのような見透かした目で口にする。
そして、俺は子が伏せていた理由に気づくことになり、歯がゆい思いが飛び出してきた。
(そうゆうことか…結局、子孫繁栄は外す事はないってことか!)
「辰也!カーレンちゃんのおじちゃまが校長室に来てって!」
「…わかった」
「た、辰也。彼?は…?」
「安心してくれ。校長のお墨付き人型マスコットだ」
「失礼しちゃうなぁ〜!」
「た、辰也ぁ!」
「はい。」
「後で217号室に来てみてくれ。アリスが君の為に部屋を用意してくれたのだ!鍵はアリスが持っていると思うぞ!」
「………了解しました。ありがとうございます、生徒会長。」
「私の事はスノーとでも、スノーホワイトでも、何でも気軽に呼んでくれ。私にピッタリの神秘的で美しい名だろっ♪」
「……ああ、わかった。」
穴に潜った子を引っ張り出し、校長室へ向かう。こんなにも素敵なお茶会なら、また参加させてもらいたいと先の未来を考えた。
2017/11/13 第2ノ界:#2 を修正。ステータスバーのスキルが2つになっていたことに気付く。
2017/11/18 第2ノ界:#4 を修正。実はね…無銘ちゃんの言葉、まだ定着してなかったんだ。
ゴメンね…w;




