第1ノ界:#6
ちいとばっかし遅くなりました。
少しだけイラスト付き。
大きく物語が変わります、なので生き抜きがやっと出来るかもですw
ガラガラと音を立て、人ひとり動かすこともできない重い鉄の門が上へと上がり、彼女を外へと解放する…しかし、それは決して自由が待っているわけではない…まいと神はそれを知っている…
外は太陽の光のせいなのか真っ白な眩しさが目に焼き付き、目を溶かさんばかりの強さであった。
まいの背後には冷徹な壁がズルズルと前へ押し出し、立ち止まらせない。
まいはそのやり方に、犬猫殺処分の映像が頭に浮かぶが背中を押され、選択すら決めさせないように外へ出されては、抵抗する間など与えないものだから、簡単に外へと追い出され。門は彼女が出たことを見計らいあっさりと落ちる。
ズゥン! 大きな音に身体を強張らせ、暗闇でもないのに先が見えない外に警戒し、恐怖した。
そこはとても不気味なほど音も何もない。
見える物も何もなければ、あの時ワープされた時と同じように真っ白な空間で落ち着けなかった。
まいの姿は、あの時着ていたメイド服でもなければ、制服でもない。小汚い白い布一枚を煽った程度で、とても肌寒いものだ。
「処刑」と言ったのだから服すら適当なものを与えたのだろう。
辺りを目を細め見回し、場所を把握しないと右へ左へと瞳を動かし、手を慎重に差し出し、何かを掴むようにしていても何もない。
『いったい…ココはどこなんだ?』
「処刑…とか言ってた気がする。目が…痛いっ」
白い色味のせいかズキズキと目が痛むが、光は徐々に物の形を見せ始めた。
物は激しい色使いされておらず、とても馴染み深い普通の色をしていた。ソファーとテーブル、馴染みのある椅子に、生活感あるたくさんの物・物・モノであふれていた…それが二人にとっ恐ろしいものだと錯覚させる!
「こ、ここって…!!」
まいはギョッとした顔をし、ハスキーボイスが高くなる。
神も、まいの背後に位置していたが前のめりに見て、慌てだす。
ここは―――!
『まいの家の中じゃないかっ!!』
―――そう。
二人が目にしたのはまさしく自分の家の中。
常に安心できて、敵も何もない。自分の居場所だ…
何故。
今異世界に行っている二人にこの光景が見えているのだろうか?
もしや現実世界に帰れたというのだろうか?しかし…
「走馬灯…とかじゃないよね?」
『馬鹿。走馬灯は脳裏を過るもので、こうして―――』
神が後ろを見やると、あの門もない…
どこか薄ら寒いものを感じる…
『まい、逃げよう…』
「うん。いくっ」
まいは少しだけ本当に現実に帰れたのかもと迷ったが、前に騎士たちが帰れないと口にしたのだ。
処刑とも口にしたのだ。
その言葉だけが頭から離れない内は、あの言葉を“嘘”だと納得できるほど能天気に構えられない。
体を回れ右し、冷たくサラリとした馴染みのフローリングを滑るように玄関まで早歩きをした、玄関の取っ手に左で開け、足を動かし目に止まった靴を履いては出る。
「ねえ、どこいくの?」
はっ! と反射的に顔を後ろを振り向いてしまった。
そこには、見たことある自分の妹…“木村 心乙”が不思議そうに、立っている。
「心乙っ」とても親しい自分の家族の顔だ。まいは頭にあったことを一瞬で忘れて、思わず自分の声に力がないのがわかる…そして、ドッと落ち着いた気持ちになった。
ああ…異世界に行ったのに、扱いはとてもよくなかった。
もしかしたら、このままかもしれないとも思った…家族とも、友人たちとも会えないのではないかと不安になっていたが。
「…まい、あんた。生きてたんだ…」
「え」
心乙は、まいの心境などお構いなしな感じで、どこか落胆したような。
帰ってきたことに困った表情を向けている。
「ど、どぉうしたのぉ~…?」
まいは急にそんな素っ気ない態度で会えた妹に“キョドり”、声がショックで震えながら苦笑いを向ける。妹もそれにつられて嫌そうに苦笑いを向けた。
まいはどこか…落胆したような、いや…もっとどす黒く感情がじわじわと上がってくる。しかし、そんな態度なんて普段からしている反抗期の妹だ。
きっと“生きていることに不都合があるからそんな顔をしている”わけではないはずだ…
まいはいつものように受け流した。
―――しかし、そのまいの心境を感じていた神は。妹に対して前々から良い感情を感じていなかったが。今回ばかりは受け流せるものではないと感じ、表情を表に出す。
心乙は昔っからそうだ。
まいは滅多に―――いや、“全然”怒ることがない。
どんな不満があろうと簡単に受け流し、そんなことを言われたことなんてないと、いつも“呑気に”笑う子だ。だからか、妹である心乙はまいに対して舐めて、馬鹿にする態度をしている。
相手が泣いてしまったり、心に傷がつくと、少しも考えてなんかない!
そんなことをしようともまいは怒らないだろうと、判断しているからだ。ようするに“舐めている”…
しかし、舐めた態度をするにも時と場合を把握するものだ…
“甘ったれた餓鬼がっ”
神は「おい、なんだその態度は?コロスぞ?」と聞こえもしない相手に、睨みを利かせる。
心乙は苦笑いを浮かべた後に、どこかよそよそしく「来ればわかる」と一言口にし、まいの腕を引っ張った…
心乙はまいではなく、自分から玄関のドアを開けて、街を歩く。
服装なんて気にせず、まいが知っている道へと進めてくれた…知っているスーパーを過ぎ、小さいころから好きだった神社を過ぎ、コンビニ・郵便局・病院と二人で静かに進んでいく…
「そういえば、こうやって心乙と一緒に街を歩くのは久々だよね…
前なんて心乙は…「デブ(まい)と歩いてたら変な目で見られるっ!」って言ってたのにぃ~」
と笑う。しかし、心乙は返事なんて返さなかった。
そして、少しだけ歩いたこともない場所についた。
―――そこは大きな場所…
多くの人がそこに吸い込まれるように入り、老若男女の人たちがスーツときっちりとした服を着ている。黒だ。
全員真っ黒な服で統一されており、どこか重ッ苦しい空気を遠くからでも感じ取れた。そして、すぐに妹がどこへ連れて行こうとしていたのか、わかった…
「もしかして、ウチと…」
「谷 姫愛鈴さんと、遠山雫さんの葬式…」
絶句。
まいは前から自分が死んだ時は葬式が始められることってあるんだろうなぁ~、ぐらいの簡単な妄想をしていた。しかし、こうやって外から自分の葬式を見ることになるとはつい思わず、口や目が引きつる。
すると、まいの友人たちが泣きながら何かを語っていることが見えた。
「あれは…」
「……」
睦下悠と里中つむぎだ!
とくにあんなにクールを装っていた悠が、まるで取り乱したかのように地面に崩れるように号泣きし、たくさんの生徒とつむぎが彼女を囲んで悲しみに打ちひしがれていた。
まいはとっさに悠の心配で前に出てきそうになっていたが、妹に引かれそれ以上近づかせないでいる。
すこし、どうしてなのかと疑問符がでた。
だが、それは死んだ人が出たことでまたややこしいことになるからか何なのかと思った。
そんな妹の考えなのだろうとまいは解釈をしたのだが、違う理由で止めに入っていたのだと解る。
「どうして…!どうして“姫愛鈴”なのっ!?帰ってきて…!“姫愛鈴”ぃ!!」
「悠…」
「姫愛鈴は本当にいい子だったよね…いつも笑っていて、人生が楽しいって顔をしていた。
あんないい子、今までいないよ…」
「遠山くん…もっと遊びたかった…」
「雫君ってさ、こうゆうとき。元気づけてくれてさ…飄々と笑ってさぁ…
良い奴ほど早く死ぬってひどい…ひどいよぉ!ううっ…!」
「てか木村さんどこ?あいつも友人じゃないの?」
「―――木村さんって…誰?」
「ほら。何考えているかわからないぽっちゃり系女子だよ。姫愛鈴たちの後をくっついててさ。」
「ああ…あの子って姫愛鈴たちの友達?」
「さあ?話し聞いてんなーってところは見かけるけど、友達っぽく見えないつーか。
……地味なんだよね。」
「悠たちもつむぎたちも、姫愛鈴の友達だからって付き合ってる感あるよね。
木村さんって教室でも浮いてるし、もしかしたら友人と思っているの、木村さんだけじゃね?」
「ありそー!空気読めない感じあるし!」
「なんか喪女で腐女子っぽくね?ぼっちヤダから姫愛鈴たちにくっついてさー」
「きもぉ!キモイ!それ超ー正解だろっ!」
「おい、うるさいぞっ」
「あっ、ごめんごめん!」
クスクス…
ひそひそっ…
「―――実はさぁ…
まいの葬式開いてないんだよね、どうしてかわかる?
うちが借金で少しでもお金だしたくないの…
違うか。出せないんだよね。
葬式あげるだけでも安くて37万かかるんだって…
でもまあ、死体がないから火葬費は浮くけど、それでも葬式あげるだけで大変だしさ。
だから家族と相談して、まいの葬儀はなしにしたんだよ。
取り敢えず“家族内だけでひっそりとするって建前で”。
いちよう友人たちにも、それなりに声かけたよ…
でも
誰も来なかったんだよね。
だから、今開いているのは」
“「谷 姫愛鈴さんと、遠山雫さんの葬式…」”―――
言葉のままだ。
二人のための葬儀である…
しかも、あの会話だけで誰も。
「うち…死んだってことも、周りに教えて回られてなかったんだね…」
悠も。
つむぎも。
誰かしら。
その話を降らなかったのだろう…
「―――そうか」
ウチは静かに社会的に死んだんだね。と落胆する。
それはとてもあっさりとして、混じり気のないもの…
まいは、その状況を
只々もがくことも、抗い、怒ることもなく。
“受け入れた”
『なんだそれは…』
『みんな、塞げているのか?とてもリアルっぽくない。』
『はははっ、まい…!どうやらこれは夢っぽいなぁ!
いくらなんでも現実味がないっ!まいにも死んだってことは学校集会でも何でも回っているだろうし、死体が見つからない?以上、行方不明としてそのままなはずだ!
死んだかどうかも不特定なのにそんなことをしたら、マスコミやらが憂うれと騒ぎだすだろう!非人道的ってなぁあ!パフォーマンスが過ぎるぞっ!やすっちいっ!
なんだこれは!?
まいの親は葬儀をあげない家系じゃないだろ!?どうしてひっそりとあげている!
あの親父か!?
自分で借金を作っといて、ケチになっている親父のせいか!?
なんにせよ。だ!
これは嘘だろう…たとえ嘘でないとしてもまいは“生きている”っ!!
良かったじゃないか!
前の屑友たちが人として終わっているってことがわかって!
まい、気にすることない!あいつらはそうゆう奴らってだけだ!
現実に帰れたんなら、まずはゆっくりと寝ておいしいのを食べようっ!
』
「―――そうか…“よかった”」
『え?』
まいの意外な言葉が飛んできていた。
まいの心はとても“真っ黒”である…
『まい?』
「大丈夫だよ」
『大丈夫なのか?本当に?え―――』
「誰もウチに対して、なんの干渉も持っていない…
誰の迷惑を与えず…
ひっそりと死ぬ…
夢 が 叶った…」
『叶ったって…まい、叶ってないだろ?
まいは絵を描くのが好きだよね?以前、漫画家になりたいって思ってたろ?
それはいいのか?せっかく…せっかく夢も、目標も出来たのに…
まいっ!!』
ドロドロ。ドロドロ…
全てが溶けていくような感覚に包まれ、自分たちが横に倒れて、まるで地面に落ちたアイスのような錯覚を感じていく…
ドロドロ…ドロドロ…ドロドロ…
丸っこいまいの体が次第に小さくなっていく。
どんどん細くなり、横の厚みが薄くなり“丸い頭も細くなっていく”。
神はまいの体の変化に今になって“現実”を知る!
『いや、違うっ! 本当に“横”だっ!
俺たちは立っていたと思っていたが、いつの間にか地面に横になって倒れていて、そして幻覚を見ていた!!
これが、あいつらが言っていた“処刑”なのか!? まいっ!!起きるんだ!
俺たちは幻を見ていたんだよっ!早く逃げないと!』
「…動けない。目も…腕も…」
『まいっ!まいぃいいいっ!!』
すると、地面には液体が流れ出ていた。
―――赤い…
まるで血のような液体がまいに広がり、まいの皮膚まで流していく。
神は何度も何度も、横になったまいを動かそうと試みるが、神は…肉体のないまいの空想上の存在だ。
肉体があれば、まいを動かすことが出来ただろう。
肉声があれば、今の状況を受け入れてしまったまいを、動かすきっかけになっただろう…
「―――ずっと、友人たちから必要とされていないかもと。
自分の弱さや脆さを聞いて、助けてくれなくても。理解してくれるかもと思ってしまっていた…」
『まい…!逃げようっ!俺は、俺はァ…!まいの気持ちを誰よりも理解している。
まいはずっと誰かに愛されたかったんだ…!必要とされたいと思っている!
今でもそうだろ?お願いだ…逃げてくれ…!俺のために逃げて、動いてくれ…!』
「そんなことはないね。
人間は…必要ない人間はいないって、どっかの誰かが言っているけど。そんなの噓っぱちだよ。
誰かが死んでも、変わりはいくらでもいるし、死んでくれたことで、相手が幸せになることも…」
『そんな周りなんてどうでもいいだろ!!まいの幸せを一番に考えてくれっ!』
「ウチは…鬱になったり、パニックになったりすると。
家族はみんな嫌な顔をしていた。
ああ、またか。とか…気持ち悪いなって…
ウチも同じことを思ったよ。ウチは、そうなってしまったことで“欠陥品”になった。
いや“虐められて、他人の人生を不幸にさせた”。もうそれだけで―――」
『黙れ!まい! いいから俺の声を聞けっ!動くんだよぉ!!生きていれば、いいことがたくさん!』
「―――もう十分だよ―――」
『っ!!』
まいはそれ以上喋らなくなった。
神はどうしたらいいのか、次第にわからなくなっていく。それでも、しゃべりたい。
何度も呼び掛けて、触れない体をゆるり、死を受け入れてしまったまいに“生きろ”と言っている。
『まい…まいの人生は、嫌な事ばかりだったかもしれないな。友人たちから、酷いこと言われても…親から、ぞんざいに扱われても。それでも…死んでいいなんて、勿体ないよ?
美味しいものも沢山あるし、見せたいものもあるんだ。
まいには沢山の経験をして欲しいし…笑ってほしいんだよ…!
間違っても、嫌なことがあっても、自分で乗り越えて生きて欲しいんだよ!俺はっ!!
まいはいじめられて、鬱とかになったけど。それでも自分を変えようと高校生まで頑張ってきたじゃないか!!前なんて、ぼそぼそとしゃべるだけだったし。
俯いたまんまで…!
それにまいの絵はとてもかわいくて俺は好きだよ?
まいは好きじゃないかもしれないが、ゆるキャラ描いたら右にでる者もいないかもしれない!
まいには人の心を動かすほどの才能があるんだよっ!まいは悲観しているが…!
なあ、まいっ!
俺じゃダメか?
俺だけに愛されているとわかるだけじゃダメなのか?
なんでどうでもいい人間の感情をまいが理解して、遠慮しないといけない?
遠慮するべきなのは、あいつらだろっ!!!
まいは生きるべき存在なんだよっ!!
俺はまいが必要なんだよっ!!
生きてくれっ!
動いてくれっ!
前に進んで、また一から―――…っ!!!
まいいいいいいいいいいいいぃいいいいっ!!!』
すると、神の体にも異変が起きていた。
ズルズルと背後から吸い込まれるような感覚が襲ってきた…いや。吸い込まれている。
魂が何者かに呼ばれているかのような、そんな吸い込まれ方だった。
『まい…!まいっ、まい!』
まいの場所から絶対に離れないよう、地面を掴み必死になって耐える。
もし、話してしまえば―――
『まいが、本当に一人になってしまう…』
しかし…
抵抗をしようとも体は簡単に宙に浮き、まいとの距離を離していく。
神は最後までもう意識のない塊に名を呼ぶ。
何度も、何度も…
そして、己の存在とまいとはもう会えない気さえしてくる…
神は、小さくなるまいの姿を見て、今まで出すまいと思っていた感情を。
表に出すことにした。
そうすれば、自分自身が神ではなく“悪魔”になるとしても。
守護神に、戻ることもできなくなってしまっても…
まいを護れない己など、意味などないのだから。
―――憎い
―――あれから彼女らは幸せそうに生きるのだろう。
―――まいの最後など気にも留めることなく。
―――どうして、まいなのだろうか?
―――殺す。
―――ただし、
―――簡単な殺しではない。
―――簡単では、ただの“救済”になる。
―――もっと残酷で、
―――生きていたことを後悔するほどの
―――“絶望”を
―――与えてやるっ
―――まいの人生を 幸せを 自尊心を 殺した
―――奴らにっ!!!!




