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魔王様観察日記  作者: ぺんぎん
第三章

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ドワーフ

 

 やらなくてはいけないことを思いだして整理しよう。


 まずはリエルの護衛。護衛の報酬がもらえる最重要課題だ。いなくなると困るので、移動するときは常に傍にいてもらおう。反論は受け付けない。


 そういえば、領主に会わないといけないのだろうか? 面倒だから領主が来る前に村に帰ろうかな。そうだ、領主というか、領主の次男つながりで思い出した。牢屋にいた魔物達の従魔化をしないといけなかった。ノスト達の手続きが終われば連絡が来るかな? これはノストからの連絡を待つしかないな。


 あとは、金メッキとか、ミスリルの鎧ゴーレムも売り飛ばそう。それなりの金額になると思うんだけど。でも、どこで売れるのだろう? 武具店とか鍛冶工房だろうか? そういえば、魔王様にドワーフを見かけたら仲良くなってほしいと言われていた。この町にいるのかな?


 アンリへのお土産に関してはグレガーから奪った。ちょっとサイズが大きいけど、まあいいだろ。アンリが大きくなれば使えるだろうからな。ディアへのお土産は……この落ちてる石でいいか。形がいい気がする。お土産と言えば、個人的に本と布を買いたい。術式理論の研究も必要だし、ローテーション用の服を作る必要があるからな。


 結構やることが多いな。どれから取り掛かるか。


 よし、まずは売ろう。


「この町で金属が売れる場所って知らないか?」


「俺は知らねぇな。この町に来るのは初めてな上に、いきなり捕まったからな」


「商人ギルドでも売れるけど、買いたたかれちゃうかな? 鍛冶工房なら高く買い取ってくれるかも」


 なら、鍛冶工房に行ってみるか。


「ヴァイア、場所が分かるか?」


「うん、こっちだよ。以前、やかんとか作ってもらったことがあるからね」


 早速行ってみよう。




 町の南東が職人街と呼ばれる場所らしい。色々な職人が集まっているそうだ。鍛冶職人以外にも、木彫り職人とか、ガラス職人とかがいると言うから驚いた。まあ、どんなことにもその道を極めようとする奴らがいるよな。


 ヴァイアに連れられてきた場所は結構入り組んだ場所だった。分かりづらい上に、なんだかボロボロな工房だな。


「ここでいいのか? なんだかボロいんだが?」


「あ、あれ? 久しぶりに来たけど、前はこんなんじゃなかったような……」


 潰れたのかな? でも、探索魔法を使った限りでは工房のなかに反応がある。誰かはいるのだろう。


「おーい、ここ、鍵が掛かってねえから入ろうぜ」


 リエルが何の遠慮もなく工房に入って行った。危ないから先に行くな。


 工房の中に入ると誰もいなかった。それなりに鍛冶に使うような道具が置いてあるが、結構、埃がかぶってる。あまり使っていないのだろうか?


「おじさーん、いますかー?」


 どうやら、地下に誰かいるようだ。ヴァイアの声に反応して、階段を登ってくるのが分かる。


 階段から現れたのは、毛むくじゃらの小さい男だった。男の背は私の腰ぐらいまでしかない。もしかして、ドワーフなんだろうか?


「なんじゃい。この工房は閉鎖したぞ。もう武具は作らんから帰るがいい」


「こ、こんにちは、おじさん。ヴァイアです」


 ドワーフは片目だけ大きく開いてヴァイアを見た。あんな目で見られたらちょっと怖いな。


「おお、ヴァイアの嬢ちゃんか。久しぶりじゃな。ロンは元気かの?」


「元気ですよ。ところで、おじさん、工房を閉鎖しちゃったんですか?」


「なに、儂も歳でな。工房を継げるものもおらんかったし、閉鎖することにしたんじゃ。後はどこかのんびりできるところに住んで、悠々自適に暮らすつもりじゃ」


 なんと。という事は金属も買ってくれないのか。


「ところで、そちらのお嬢さんは魔族かの? ヴァイア嬢ちゃん、大丈夫なんじゃよな?」


「もちろん、大丈夫ですよ。まず、こちらがフェルちゃんで、こっちがリエルちゃんです」


「女神教の信者でリエルだ。よろしくなー」


 リエルは手をひらひらさせて挨拶した。軽いな。


 さて、私も名乗るか。このドワーフは敵対的な感じには見えないし、ドワーフとは仲良くしないとな。


「魔族のフェルだ。今はヴァイアの住むソドゴラ村に滞在している。金属を売りに来たのだが、工房が閉鎖しているとは思わなかった」


「金属じゃと? 何の金属じゃ?」


 いきなり食いつかれた。金属が好きなのかな。


「金とミスリルだ。ファスとか言う女神教の司祭から戦利品として奪った」


「なんじゃと! た、頼む! 見せてくれ!」


 近い近い。下から見上げるように見るな。ちっこいけど、特にかわいくない。ワンコならいいのに。


 とりあえず、亜空間からミスリルの鎧ゴーレムだったものを幾つか取り出した。あと、金メッキも。


 だが、金メッキには目もくれなかった。金にも良いところはあるのに。光を当てると眩しいところとか。


 そんな風に思っていたら、ドワーフはミスリルの鎧を色々な角度から見て、大きくため息をついた。


「ミスリル……ええのう。儂にもっと腕があれば、ミスリルも加工するチャンスがあったんじゃが」


 どういう事だろう? ミスリルの加工って技術的に難しいのかな?


「おじさんはミスリルの加工って出来ないの?」


「出来ない、というよりは、加工したことがない、じゃな。儂は鍛冶師ギルドのランクが低いんじゃ。だからドワーフの鉱山を離れて人族の町にいるんじゃがな。そんなわけでミスリルを扱うチャンスがなかったんじゃよ。しかし、今頃チャンスがきたかと思うとくやしいのう」


 鍛冶のことは良く分からないが、そういうものなのか。


 しかし、さっきからドワーフがミスリルをチラチラ見ているのがとても気になる。欲しいのだろうか? なにか亜空間にしまってはいけない感じだ。


「買うか?」


 ミスリルの鎧を見せて聞いてみた。


「む。じゃが、相場の金額を支払ってしまうと今後の生活がのう……」


 そうは言っても、まだチラチラ見ている。面倒くさいな。しかし、魔王様にドワーフとは仲良くなるように言われている。ここは恩を売っておくべきかもしれない。


 そうだ。多分、ドワーフはミスリルを使って加工したいだけだと思う。どれぐらいの期間が掛かるか分からないが、加工費なしで何か作ってもらえばいいのかも知れない。


「じゃあ、こうしよう。こっちが指定するものをミスリルで作ってくれ。ただし、加工費用はなしだ。余ったミスリルはくれてやる。どうする?」


「わかった。ミスリルを扱うのは初めてじゃがやらせてもらおう」


 即断即決。信用できる職人とみた。


「フェルちゃん、お金を払うから腕輪を作ってくれないかな? ミスリルなら魔力強度が高いからもっと強力な魔法を付与できると思うんだ」


 今回、ヴァイアには世話になったし、報酬として渡してやる必要があるな。


「金は要らん。今回、リーンについてきてくれた礼だ。タダで受け取ってくれ」


 ヴァイアが嬉しそうに抱きついてきた。お前の胸は物理的にも精神的にも苦しいから離れてくれ。


 とりあえず、腕輪が一個だな。あとは、誰かのお土産にしよう。


 まずはニアだな。……包丁でいいか。使い慣れている包丁があるだろうけど、もう一本あってもいいだろ。


 あとはディアか。落ちてた石でもいいが、この間、景気づけで食事をおごってくれたしな。仕方ないから、なにかやろう。……裁縫用の針かな。十本ぐらいあれば問題ないと思う。


 他の奴らは良く分からんから別のお土産にしよう。食べ物がいいかな。


「腕輪と包丁、あと裁縫用の針を十本作ってくれ」


「うちは日用品を作るのが多かったから、鉄製でならどれも作った経験があるぞ。ただ、それだと材料が随分余るぞ? 剣とか作らんのか?」


「剣は持っているからいらない。斧や槍もいらんぞ。私は素手で戦うタイプだからな」


「なら、メリケンサックとか、手甲とかはどうじゃ?」


「それもいらない。愛用の物がある。まあ、壊れてしまったので、今は魔界で修理中だがな。だが、浮気は駄目だ」


 以前、魔王様と戦った時に壊されてしまった。ボロボロになったが原型は留めていたから、開発部の奴らに預けて修理してもらっている。いつ頃直るのかな?


「じゃあ、俺用にメイスを作ってくれよ。俺が魅力的になるやつ」


 無茶言うな。メイスは分かる。だが、メイスで魅力的になるってどうするのか分からん。幻視魔法で美人に見せるとか?


「じゃあ、とりあえずメイスも頼む。なんかこう、魅力的なデザインで」


「わかった。だが、全部で一週間は掛かるが大丈夫か?」


 簡単に「わかった」って言った。魅力的なデザインが出来るのか。すごいな。まあ、それはともかく、全部で一週間か。


「そんなに掛かるのか? 流石にそこまでは滞在しないぞ」


 出来るまで待つという選択はない。どうしたものかな?


「おじさん、そういえばのんびり暮らしたいって言っていたよね?」


 いきなりヴァイアが話をぶった切った。どうしたんだろう? ドワーフもびっくりしている。


「あ? ああ、確かにそう言ったが、なんじゃいきなり?」


「ソドゴラ村に一緒に来ない? のんびりできるかは分からないけど、今、村は色々と面白いよ?」


 そうなのか。知らなかった。だが、「面白い」の部分で私を見たのは何故だろうか?


「そうじゃのう。確かに色々と楽しそうな気はするのう?」


 なんで「楽しそう」な部分で私を見るのだろうか。言いたいことがあるならはっきり言え。


「わかった。儂もソドゴラ村に行くことにしよう! 面白そうじゃしな!」


 即断即決。しかも理由が、面白そう、か。やはり職人は違うな。


「そうか。なら、リエルのついでに村まで護衛するから、いつでも行けるように荷造りしておいてくれ」


「おお、助かるの! わかった。いつでも行けるようにしておくので、町を出るときは声をかけてくれ」


 そんなこんなで、ドワーフの爺さんが村に来ることになった。


 これも一応、ドワーフと仲良くなっていると捉えていいのだろうか? うん、いいよな。やりました魔王様。


 だが、アンリ以外へのお土産が無くなってしまった。別のものを用意しないとな。


 よし、次は布を買いに行こう。


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ところで この街の司祭は捕まったし 資産もボッシュートしたから 依頼料や経費では?
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