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魔王様観察日記  作者: ぺんぎん
第三章

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護衛依頼

 

「司祭様、こんにちは。ギルドに来るなんて珍しいですね?」


「冒険者ギルドに仕事を依頼しようと思ってのう」


 女神教の爺さんが冒険者ギルドに仕事の依頼か。以前言っていた、護衛の件かな?


 護衛というのはどれくらいの依頼料になるのだろうか。こういうのはディアに任せた方が良いのだろうが、何となく割り増しで受けそうな気がする。受け取る金額が多いのはうれしいが、その分、ディアが儲かるのは少しモヤっとするな。


「もしかして、女神教を潰すんですか! 大金貨百枚ですよ! 一割は私の収入ですよ!」


 一割の収入はギルドであって、ディアのじゃないぞ。汚職の瞬間を見てしまった。


「相変わらずじゃのう。ちょっと懺悔室で正座するかね?」


「正座は昨日、一生分しましたから、もうしません。あれ? でも女神教の討伐依頼じゃないんですか?」


「護衛の依頼じゃよ。以前、フェルには少し話してたんじゃが、この村にシスターが来ることになっておってのう」


「そうなんですか。そういえば、フェルちゃんも護衛の依頼があるかも、とか言ってたね」


 そういえば、ディアに話をした気がする。女神教を潰す場合に大金貨百枚と言ったのも、その時だったな。余計なことを言ってしまった。


 護衛の依頼料がどれ位になるのかはわからないが、あのボロい教会が払えるのかな? 魔族に寄付をお願いするレベルなのに。


「護衛の相場というのは知らないが、依頼料は払えるのか?」


 タダで受けるわけにはいかない。人界で暮らすにはそれなりにお金が必要なのだ。主に食費で。


「女神教の経費で落とすから問題なく払えるのじゃよ」


「じゃあ、女神教を潰すのにも経費で!」


 目の前に馬鹿が居る。もしかして、女神教が嫌いなのか? 爺さんも呆れを通り越してスルーの構えだ。


「ボケか本気か分からんが、それに突っ込むつもりは無いぞ。そんな事よりも、護衛の相場はどれくらいか教えてくれ」


「うん、ちょっと反省してる。ノリと勢いって怖いね。えっと、護衛の相場? そうだねー、護衛対象にも寄るんだけど、大体一人一日大銀貨一枚で、食費等の経費は全部依頼主持ちだね。ただ、ほとんどが成功報酬だよ。途中で護衛が逃げたり裏切ったりしたら危ないからね。とは言っても依頼主が護衛した後で料金を渋る場合もあるから、頭金として三割ぐらい渡すのが通例かな」


 商人とか貴族とかならもっと高いお金を出してくれるかもしれないが、普通の奴ならそんなものか。ただ、食費を依頼主が出してくれるのはありがたいな。食べ放題って素敵だ。


「なるほどのう。お金に関しては掛かった経費を教えてくれれば、女神教から払うので気にせんでよいぞ。ただのう……」


 厄介ごとだろうか? その場合は経費を上乗せするぞ。


「護衛対象のシスターなんじゃが、隣町のリーンに着いたと連絡があったんじゃ。丁度、フェルがエルフに捕まった日じゃな。ところが、それ以降、連絡がないのじゃよ」


 確か、リーンの町からは二日でこの村に来れるとか聞いた気がする。私がエルフに捕まったのが、三日か四日前だからもうこの村に着いていてもいいぐらいなのか。


「向こうで護衛が見つからないのかもしれんが、なにか面倒事に巻き込まれた可能性があるでのう。問題が無ければそのままこの村まで護衛してもらいたいのじゃが、なにか問題があったときはシスターの力になってもらいたいんじゃ」


 それは構わないが、ちょっと情報が無さ過ぎて何をすれば良いのか分からないな。


「そういえば、向こうの町にも女神教の教会がありましたよね? 何か知らないんですか?」


「向こうの司祭に聞いても、のらりくらりとしておってのう。念話の時間制限もあるし、要領を得ないんじゃよ。そもそもあの町の司祭は気に入らんでな」


 この爺さんは問題発言が多いな。


「引き受けてやっても良いが、私は魔族だ。どういう状況か分からんが、私が大きな町に行くと別の問題が起こるかもしれんぞ。人族と信頼関係を結ぶつもりだから、暴れたりはしないつもりだが、それでもいいか?」


「かまわんかまわん。それに向こうの司祭が気に入らなければ、ぶん殴ってよいぞ。女神教の名において儂が許す」


 そんな許しはいらない。


「次の念話が二日後じゃから、その時に魔族が行くことを伝えておくかの。もしかしたら、その時にシスターから連絡があるかもしれないからの。だから、もし連絡が無ければ三日後にリーンへ向かってくれぬか?」


「私も向こうの冒険者ギルドに魔族が行くことを連絡しておくよ。そうすれば、余計なトラブルは起きないかも。あ、ノストさんにも連絡しておこうかな」


 不安だ。いらないトラブルを引き寄せる気がする。とはいえ、仕事があるのは助かるから、受けないという選択はないな。


「分かった。とりあえず、その依頼を引き受けよう」


 でも、よく考えたら町の場所を良く知らないな。道に沿って東に行けば良いのだろうか? 町について情報を集めておきたい。だれか知ってる奴に付いてきてもらうということも考えよう。その場合は必要経費として計上すればいいか。


「では、三日後、よろしく頼むの」


「分かった。大船に乗った気持ちでいるがいい」


「頼りにしておるぞ」


 爺さんは笑いながらそう言うと、ギルドから出て行った。




「経費はガンガン使ってね! 女神教から搾り取ろう! そうすればギルドにお金がいっぱい入るから!」


 女神教じゃないし、どちらかと言えば敵対勢力だけど、ディアに天罰が下ればいいと思う。


「リーンの町に行くまでの道や、町そのものに詳しい奴を知らないか? 迷子にはならないと思うが、事前に情報がほしいのだが」


「うーん、そうだね……、ヴァイアちゃんとか、ロンおじさんかな?」


「なんでだ?」


「向こうの町に商人ギルドがあるんだよね。ヴァイアちゃんもロンおじさんも、商人ギルドに加入してるから、何度か一緒に行っているはずだよ。普段はこの村に来た商人さんの馬車に便乗して行っていたけど」


 そういえば、宿屋では食材や調味料を売っているとか聞いたことがあるな。商人ギルドに加入しないと雑貨屋とか宿屋をやれないのかな?


「こんな小さな村のお店なんて、ギルドに加入しなくてもいいんだけど、ほら、ヴァイアちゃんもロンおじさんも真面目だから」


 ディアが不真面目なだけ、という気もするが言わないでおこう。あと、ロンが真面目ってマジか。猫耳事件があってから、なんとなく真面目という認識はないんだが。悪い奴じゃないけど。


「そうか。じゃあ、ヴァイアに付いてきてもらおうかな」


「二人で行くの? なら私も行くよ!」


「お前はギルドの仕事があるだろ?」


「無いよ! あったらフェルちゃんとお茶なんてしてないよ!」


 言い切りやがった。しかし駄目だ。ディアを連れて行ったら余計な経費が掛かるし、その経費の一割が冒険者ギルドに入るのが納得いかない。それに不正な感じがする。それは魔界では許されない。不正ダメ絶対。


 丁度、お昼なのでヴァイアを昼食に誘って、付いてきてくれないか交渉してみるか。


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