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魔王様観察日記  作者: ぺんぎん
第二章

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 村長の家から宿に戻るときに、村の入り口を見ると修理が完了していた。早いな。


 しかも、以前よりも立派になっている。あれは、アーチだろうか。


 まあ、いいか。あまり口出しをしたくない。


 黄色い植物も仕事が終わったようなので、改めて聞いてみよう。


 ヒマワリで良いのか、聞いてみると「地対空ヒマワリmk3です」と言われた。この魔物は何を言っているんだろう? それにmk2はどうした? でも、魔眼で見たら間違いなかった。解せぬ。


 というか、ネームドか。普通、魔物がネームド、いわゆる名前持ちになるには、進化しないとなれないんだけど。


 驚いていたら、アルラウネとマンドラゴラも挨拶してきた。


 それぞれ、「アルラウネ九八式」と「マンドラゴラ憤怒」という名前だった。どういう進化をしたらこうなるのだろうか。「豊穣の舞」の効果かな? 豊穣の意味って私が知っているのと違うのか?


 どうやら、挨拶してきた奴らがリーダーとなって、同じ種族を率いているようだ。なんでも借りた畑で縄張り争いをしているそうだ。次は第三次畑大戦らしい。もう、すでに二回やってたか。他の畑には侵攻するなよ。


 スライムちゃんの命令には忠実なようで、私の言うことも一応聞いてくれるようだ。なんで私の言うことは、一応、なんだろうか。種を用意したのは私なんだが。


 深く考えると頭が痛くなりそうなので、放って置くことにした。


 ちなみに、ヒマワリに種を貰えるか聞いてみたら、駄目だと言われた。大事な戦力らしい。魔界の食糧事情は改善されないようだ。




 宿に戻り、夕飯になるまで待つことにした。疲れたからあまり動きたくない。ヴァイアも同じようだったので、時間を潰しつつ雑談した。ヤトは宿に戻るとすぐに掃除を始めた。元気だな。


 そうこうしていると、ディアがやってきた。


「皆、酷いよ! 私だけ置いていくなんて!」


「いいか、ディア。物事には、原因と結果があるんだ。なんで正座させられたのかをよく考えろ」


 ディアは足をさすりながら椅子に座った。大丈夫だ、折れてないぞ。


「ヴァイアちゃんと一緒なら大儲けできると思ったんだけどなー」


「お前の頭の中は金の事だけか」


 それが悪いとは言わないが、もうちょっと隠せ。


「ディアちゃんは、お金が好きだよね? そんなにお金を貯めて何に使うの?」


 珍しくディアが照れた顔になった。キモい。


「どうしよっかなー? いっちゃおうかなー?」


 うざい。別に聞きたくはないけど、聞いてほしいオーラが漂ってくる。


「面倒だから早く言え」


「実は仕立屋を開きたいんだよね。冒険者ギルドで美人受付嬢なのは必要なお金を稼ぐまでの腰掛なのさ!」


 受付嬢なのは良いが、自分で美人とか言うな。そういえば、エルフの森でも言っていたな。冗談なのか、自信があるのか、どっちか分からんが。


「わあ、そうなんだ! ディアちゃんがお店開いたら、絶対買うよ!」


「ヴァイアちゃん、ありがとう! 友人割引きで一割安くするよ!」


 友人なのに一割引きなのか。もうちょっと割り引いてやれ。


「そういえば、裁縫の腕は良かったな。売るのは普通の服か? それとも冒険者用の装備か?」


「両方だね。あ、布とか皮とか持ってきてくれたら無料で服でも装備でも作るよ。練習がてらに」


 受付嬢の仕事をしろ、と言ってもディアだしな。もしかして、この村のギルドは暇そうだから来たのか?


「まあ、私に迷惑をかけない程度に頑張れ」


「よーし、じゃあ、私は偉大な魔法使いになるよ! 私みたいに魔法が使えない人のために役に立てたら良いなぁ」


 なんだか今度はヴァイアが将来のことを語りだした。皆で言う流れなのか?


「ヴァイアちゃんは雑貨屋じゃないんだ?」


「いままではそれしかなかったけど、これからは違うよ! 魔道具を使えば魔法使いっぽく見えるからね!」


 両親との約束とか言っていたからな。まあ、そっちも頑張れ。


「ねぇねぇ、ヤトちゃんは何かない? 将来やりたいこと」


 掃除中のヤトにディアが問いかけた。仕事の邪魔をするなよ。


「今、魔界の方針は人族と信頼関係を結ぶことニャ。その意向に沿う形で獣人の地位向上を目指すニャ。でも具体的な方法は何も考えていないニャ」


 ヤトも色々考えているんだな。魔族は人族を襲っていたから疎まれるのも仕方ないが、獣人は何故か迫害されているからな。この村の奴らは違うけど。


「ヤトちゃん! それならアイドルだよ! アイドル冒険者! 私がプロデュースするよ!」


「アイドル冒険者ニャ?」


 なんかヤトが考え出したけど、大丈夫か。うさんくさいぞ。


「大丈夫! 必要なのはちょっとの勇気だけだよ! それに私がヤトちゃんを初めて見た時、ダイヤの原石だと思ったよ! 磨けば輝くって! これはヤトちゃんだから言うんだよ?」


 それ、似たようなことを私にも言ったぞ。というか、その場にヤトも居たよな。


「おーい、ヤトちゃん、掃除しておくれよー」


「あ、申し訳ないニャ。この話は一旦終わりニャ」


 ヤトはモップを持って掃除に戻った。


「うちの奴を変な道に勧誘しないでくれるか」


「変じゃないよ! 健全だよ!」


 なんとなくだが、詐欺の手口に似てる。まあ、ヤトもいい大人だから、変な事にはならないとは思うけど。


「あはは、ちょっとワル乗りしちゃったね。本当に大丈夫だよ。無理にアイドルをさせようなんて思ってないから。美人さんだからもったいない気はするけどね。それはともかく、フェルちゃんの将来の夢はなに? 冒険者のまま? それとも人界征服?」


 なんでその二択なんだ。しかし、私の将来の夢か。そういえば、そんなことを考えたことも無かったな。数ヶ月前までは死ぬつもりだったし。


 今は魔王様の従者をしているが、人族から信頼を得るための先発隊にすぎない。これが終わったら私は何をするんだろう?


 夢といえば、やりたいことか。やりたいこと……?


 魔王様のお傍に仕えたい、というのがやりたいことではあるが、魔王様の命令一つで魔界に帰る必要も出てくるから、私の意思だけではどうしようもないしな。うーん?


「どうしたの? ずっと黙っているけど」


「いや、やりたいことを考えたら、特に無かった」


「えー? じゃあ、趣味とかは? 趣味を仕事にするのは良くないとか言うけど、私は気にしないで仕立屋をやるつもりだよ」


 趣味? 好きなことだな。本を読むのは好きだ。でも、読書がやりたいこと? そういう仕事はあるのか? 評論家とか?


 そうだ、発想を変えよう。本を書くというのはどうだろうか? 今は日記を書いているが、魔王様のことを本にまとめて魔界で配布するというのは楽しいかもしれない。これは仕事ではないが、使命っぽい気がしてきた。


「なんとなく、本を書こうかな、と思った」


「わあ! 本を書くんだ! 絶対に買うよ!」


 ヴァイアがものすごく喜んだけど、魔王様の本を人族が読んで楽しいだろうか? というか売る目的じゃない。魔王様を称える本だ。


「いつになるかは分からないが、時間が取れるようになったら、本を書いてみるかな」


 今はそれどころじゃないからな。もっと人族と信頼関係を結ばないといけないし、魔界の食糧問題もある。魔王様のことに関しても情報が足りない。もっとお傍でお仕えしたいのだが。




 そんなこんなで夕食の時間になった。


 私が帰ってきたということで、簡単な宴になった。村の奴らがエルフ達のことを根掘り葉掘り聞くから疲れた。


 そのうち、エルフが村に来るから自分で聞けと伝えると、皆、喜んだ。ミトルが来るとエルフに対して幻滅するかもしれんが、それは私の責任ではない。


 ようやく解放されて、部屋に戻った。


 体を洗って、ベッドの上で大の字になる。このまま眠りたい。だが、日記をまだ書いていない。


 今日は魔王様のことを全く書けないから、別に書かなくても良かったが、日記だし、文章の訓練は必要だ。頑張って書こう。




 書き終わった。日記を書きながら、ここ最近のことを頭の中を整理した。


 エルフ達とはそれなりの信頼関係を結べて、リンゴを村で買うことが出来るようになった。信頼を得た方法が世界樹を枯らしてから元に戻すという、マッチポンプ的な気がしないでもないが、過ぎたことだ。ただ、リンゴを買うなら物々交換か。ヴァイアから買えるけど、値段が分からないから仕事をしてお金を稼がないとな。また、夜盗でも来ないかな。


 ディーン達はこれからどうするのだろう。興味はないが巻き込まれるのは嫌だ。ただ、問題は戦略魔道具だ。エルフのために何とかしてやった方が良いかな? リンゴが買えなくなるのは困るし、エルフ達がやられたりしたら、それはそれで寝覚めが悪い。情報収集ぐらいはしておいた方が良いかもしれない。


 最後に魔王様だ。世界樹に賢神がいることにも驚いたが、さらに倒してしまった。神殺しをした訳だが、魔王様は神なんていない、と言われていた。昔読んだ本には、魔界、人界、天界の三つの界、全て合わせて世界といって、世界には七柱の神が居ると書いてあった。神ってなんで柱という単位なのかな? それはともかく、そのうちの二柱を魔王様が倒してしまった。残り五柱。女神、龍神、機神、残りの二柱は知らないが、魔王様はこの五柱も倒されるのだろうか。


 それに世界樹に居た魔王様の戦友。すでに亡くなっていたようだが、なぜあんなところに居たのだろう? 世界樹は旧世界の人族、たしか人間という奴が作ったと魔王様はおっしゃった。ということは魔王様の戦友は人間なのだろうか? それに旧世界か。魔界が汚染される前の事だと本で読んだことがあるが、詳しくは知らないな。今度調べてみよう。


 色々と疑問はあるが、魔王様には、魔族の中で一番信頼しているという名誉を頂いたのだ。まずは全力で人族と仲良くして、信頼を得るようにしよう。


 さあ、寝るか。昨日、一昨日と睡眠を邪魔されたし、今日の昼寝程度じゃ足らない。


 ぐっすり寝るためには、確か羊を数えれば良かったはずだ。よく考えたら落ち着く時のおまじないじゃなかった。慌てると色々間違うな。よし、数えよう。


 バフォメットが一匹、バフォメットが二匹、バフォメットが三匹……あれ? バフォメットって、もしかして山羊か?


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