表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様観察日記  作者: ぺんぎん
第一章
5/717

人族

 

「世界樹に行くのを一旦あきらめることにしたよ」


 朝の食事が終わった後、魔王様がそんなことを言い出した。


「エルフ達は東のほうに人族の村があると言っていたよね。そこを拠点にして世界樹に行くための対策を練ろうと思う」


 なるほど。エルフ達が冷静になるまで待つということだな。昨日は出会って早々エルフ達を怒らせてしまった。だが、あれは百歩譲ってもエルフ達が悪い。リンゴを取られたくなかったら見張っていればいいのだ。


 しかし、人族の村か。人族も魔族に対して良い感情は持っていないはずだ。行ったところで拠点にできるかどうかは分からないな。殴ったりしたら駄目なので、なんとか交渉するしかないのだが。


 まあ、何とかなるだろう。将来のことを今悩んでも仕方がない。


「それじゃ、出発しようか」




 エルフの言った通り、東に向かうとすこしだけ舗装されている道があった。方角を考えると、北東に伸びている道なのだろう。この道に沿って東の方に行けば人族の村に着くのだと思う。


 そういえば、どれくらい進めば良いのかは言ってなかった。三日とか、四日とか掛かると嫌だな。


 それにしても人族か。私は人族に会ったことはないからよく知らない。いや、あの嫌な奴も人族だったか。あんなのが沢山いたら嫌だな。片っ端から殴るかもしれない。


 念のため、魔王様にも聞いておこう。魔王様はなんでもご存じだからな。それに黙って歩くのも気まずい。


「魔王様。私は人族には、あの嫌な奴以外、会ったことがないのですがどういう種族なのですか?」


「説明が難しいね。分かりやすいところで説明すると、人族は魔族に比べるとかなり弱いよ。エルフやドワーフ、ドラゴニュートや獣人よりも弱いね。ただ、繁殖力が高く、群れでの行動が得意だ。百や二百ではないよ。人族というのは下手すると万単位で行動するからね。そうなると強い。それに彼らは道具や魔法を効率よく使う。本体が弱い分、色々な形で強さを補っている種族だよ」


 なんと。魔族なんて全部で千人いるかどうかだ。人族はどれだけいるんだ。それに道具や魔法か。大昔、人族に攻め込んだ時に奪ったものが魔界の宝物庫に入っているが、魔族はだれも使ってないな。今度使ってみよう。


 でも、個人なら弱いという説明はおかしいと思う。魔王様の言うことなのだから間違ってはいないと思うが念のために確認だ。


「魔王様。あの嫌な奴は強かったのですが、本当に人族は弱いのですか?」


「彼女は特別。ここで生まれた者は誰も勝てないよ。なんというのかな、神に選ばれた人、だからね」


 魔王様は笑いながら説明してくれた。はて、今の説明で笑えるところがあっただろうか。


 そんなことを考えていると、魔王様にじっと見つめられてた。照れる。


「あの、どうかされましたか? 実は魔王様が楽しそうに笑った意味が分からなくて考えていたのですが」


「いや、なんでもないよ。あ、ちょっと待って」


 魔王様は左手を耳に当てて黙ってしまった。魔王様は、たまにこういうことしてるけど、なにをしているのだろう。


 私も真似をしてみたが、なにも起こらなかった。なにかのおまじないだろうか。


「今日はこの辺りで野営しようか」


 魔王様がいきなりそんなこと言った。まだ寝るには早い時間だ。


「時間が早い気もしますが、どうかされましたか?」


「うん、疲れた。それに近くに池があるみたいだからね。野営をするには丁度良いかと思ってね」


 魔王様が指さした方に確かに池みたいなものがある。はて、森の中にポツンと池なんてあるものだろうか。精霊でも住んでいるのかな。まあどうでも良いか。今日はここで野営だ。早速準備をしよう。




 今日の食事もワイルドボアだった。しかし、リンゴがある私は無敵だ。あと野菜があれば、神に至れる気がする。


 魔王様はすぐにお休みになられてしまった。しかし、今は夕方だ。私は眠くない。


 暇だったので池を眺める。精霊がいるかもしれないので探してみたが、周囲にそういったものは感じなかった。


 精霊はあきらめて、魚でもいないかな、と池をじっと見ていると池に自分の顔が映った。そういえば、最近鏡を見ていない。身だしなみを整えておこう。


 髪の毛はちょっとボサボサだ。昔のようにロングだったら、もっと酷いことになっていたかもしれないが、今はショート。ブラシで梳かしておけば多分大丈夫だ。それはさておき、赤い髪がちょっと汚れて変な色になっている。なんか枝毛もあるし。ストレスかな。


 頭の角はこんな状態でもいい感じだ。羊タイプの角はレアだし、色は漆黒。完璧だ。どこか落ち着けたら髪と一緒に洗おう。手ごろなタオルがあると良いのだが。


 服は洗ってないけど見た感じ大丈夫だと思う。下着はまだ何枚も替えがあるから問題ないし、靴も平気だな。しかし、執事服ってどう洗うのだろうか。まあ、いざとなったら従魔のスライムちゃん達に任せよう。洗浄スキルを使えるスライムちゃんがいたはずだ。


 さて、色々やっていたら眠くなった。日記を書いたら寝よう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ