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魔王様観察日記  作者: ぺんぎん
第十二章

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役割分担

 

 メーデイアの町を出て二日目。皆で平原を進んでいる。


 さっき昼食をとった。暖かくなってきたし、ちょっと眠い。ロスやカブトムシが移動を頑張っているのだから、寝る訳にはいかないけど。


 眠気を覚ますために周囲を見渡す。穏やかな場所だ。ポツンと大きな岩や大きな木があるくらいで、他には何もない。


 ディアが言うにはこの辺りに町や村もないらしい。住もうとすれば、問題なく住めると思う。


「なあ、ディア。どうしてこの辺りは誰も住んでいないんだ」


 ゴンドラにいるディアに問いかける。ディアがこちらを見た。


「この辺りはね、一年に数回、ものすごい突風が吹くんだよ。それこそ、家が崩壊しちゃうくらいの。何度かこの辺りに住もうとしたらしいけど、突風で家が壊れちゃって三ヶ月ももたないんだ」


 なるほど、だからここには誰も住んでいないと。でも、気になることがある。


「今日は大丈夫なのか? 正直、昨日の状況を考えると、突風が吹きそうなのだが」


「そういうフラグは立てないで。あれは私のせいじゃなくて、魔物の皆がやり過ぎたんだってば。警戒範囲が異常に広かったみたいだしね。大体、あの山にヌシがいるなんて初めて知ったよ」


 否定できない。確かに従魔達は不必要な場所まで警戒していた。やり過ぎたと言っても過言じゃないだろう。


「でも、結果的には良かったよね。昨日の夜に一番近い町にちょっかいをかけてくれたんでしょ? 山の方に注意が向いてくれたから、こっちの移動がバレなかったしね」


 あの後、ハーピーとグリフォン、そしてトリケラトプスが近くの町に姿を見せてくれたらしい。ちょっとだけ姿を見せて、すぐに山へ引き返したそうだ。


 ジョゼフィーヌの話では、町が山の方を警戒するようになったらしい。


 陽動みたいなものだな。私達の動きがバレないように、騒ぎを起こしてくれたというわけだ。とても助かる。


「今度、あの山にいる魔物達にお礼しないといけないな」


「そうだね。それはリエルちゃんを助けてから考えよう? さあ、突風が来たらシャレにならないから急いで駆け抜けようか! 目標は人界最大の湖と言われる場所だよ! 今日はその近くに泊まるからね!」


 ディアがそう言うと、カブトムシがスピードを上げた。ロスや水トカゲも。確かに突風が来たらシャレにならない。とっととこの平原を抜けよう。




 夕方頃に湖に着いた。


 これが人界最大の湖か。確かに広い。これは見ておく必要があるだろう。もしかしたら魚料理が食べられるかもしれない。


 ロスの背中から降りて、湖に近づこうとしたらディアに止められた。


「フェルちゃん、ストップ。それ以上近寄っちゃダメ」


「なんでだ? ちょっと湖を見たいのだが」


「ダメダメ! 皆にも言っておくよ! この湖には近づかないように! この湖はレメト湖って言うんだけど、ここには大きな蛇がいるからね! 湖に近寄ったら食べられちゃうよ!」


 大きな蛇? サーペントか?


「なんでそんなところへ連れてきた。危ないだろうが」


「危ない場所だから人がいないんだよ。私達は見つからないように移動しているんだから当然じゃない。それにこの湖に大きな蛇がいるというのはロモンでは有名なんだ。ここに来る人なんて滅多にいないから、ちょうどいい隠れミノってことだよ」


 そういう事か。確かに危険な魔物がいる場所に好き好んでくる奴はいない。いても冒険者くらいか。


「湖に近寄らなければ安全なんだな?」


「うん、大きな蛇は地上を這いずり回るタイプじゃないみたいだよ。でも、湖に近づくと、バクっと食べられちゃうみたいだから気を付けてね」


「了解した。気を付けよう。お前達も聞いたな? この湖には大きな蛇が――」


 言いかけて、唖然とした。従魔達が湖のそばで釣りをしている。


「おい、お前達――」


「ふぃーっしゅクモ!」


 アラクネがなにかを釣ったようだ。いや、そんなことはどうでもいい。


「お前ら何やってんだ。危な――」


 アラクネの糸を引っ張ると、馬鹿デカい蛇が釣れた。相当デカい。体長二十メートルはあるか? いや、湖に体部分がまだある。もっと大きいのかも。


 ちょっと痙攣している感じの蛇を従魔達がボコる。地上で何もできずにボコボコにされる蛇を見て可哀想だと思ってしまった。


 そしてジョゼフィーヌ達が勝利する。


「このサーペントに魔物の序列を叩き込みました。サーペントが命に代えても湖の魔物達を仕切るということです。湖での安全は確保しましたので、ゆっくりお寛ぎください」


 ジョゼフィーヌが何事もないようにそんなことを言った。蛇はヘコヘコと頭を何度も下げて、湖に帰って行った。


「えっと」


 何かを言わないといけないと思うのだが、何を言えばいいのだろう。


 ディアもそんな感じだ。だが、私よりも先に立ち直ったようだ。


「安全が確保されたから夕食とミーティングにしようか」


「そうしてくれ」


 ちょっと面食らったけど、これくらいなら許容範囲だろう。もしかして、私が露払いを任せるとか言ったから張り切っているのだろうか。嬉しいような、怖いような、変な感じだな。




 食事の準備が終わり、夕食をとりながらのミーティングが始まった。昨日と同じように車座になって座っている。昨日と違うのは従魔達も全員揃っているというところだろうか。


 今日の議題は、破邪結界を展開している施設の襲撃についてだ。施設の場所は分かっていないので、メイドギルドのメイド達が場所を調べてもらっていた。昨日の時点では三つの場所が分かっているとのことだったが、四つ目は見つかったのだろうか。


「えっと、ここからはメノウちゃんに任せるね」


 ディアにそう言われて、メノウが立ち上がる。


「では、説明させていただきます。ヴァイアさん、先程説明した座標に施設を追加して立体映像を見せてもらえますか?」


「うん、ちょっと待ってね」


 メノウがヴァイアに頼み、ヴァイアが魔道具に魔力を流す。


 すると、何やら都市のような立体映像が表示された。これってもしかして聖都か?


「司祭様とディアちゃんの記憶を頼りに聖都の立体地図を作ったよ。それと、メイドさん達から施設の座標を四つ貰ったから、それも組み込んでおいたから。皆、頭に入れておいてね」


 作ったとか簡単に言わないで欲しいけど、そこに突っ込んだら負けな気がする。仕方ないからスルーしよう。でも、そうか。メイド達は施設の場所を見つけてくれたんだな。後でお礼しないとな。


 メノウが長い棒のようなもので、立体映像を指した。


「まずは聖都の造りを簡単に説明します。大まかですが、聖都は四つの地域に分かれています。聖都全体は大きな円形の都市ですが、それを聖道と呼ばれる二本の道で四つに分割されているのですね」


 円の中に十の文字が書かれているようなものかな。


「そしてその道が交わる聖都の中心。そこに大聖堂と呼ばれる建物があります。潜入しているメイド達の話では、降神の儀もそこで行われるそうです」


 当日はそこにリエルが来るという事か。いや、もういるのかもしれないな。


「では、次に破邪結界を展開している施設です。その施設は、聖都の外壁よりも外にあります。ヴァイアさん、映像を縮小してもらえますか?」


 ヴァイアが頷くと、表示されていた映像がちょっと小さくなった。そして聖都の外側に四つの施設が表示される。


「聖都の東西南北に施設があります。これが破邪結界を展開しているわけです。施設は認識阻害をしているようで、通常では見えないと報告がありました。また、常時、百人ぐらいの女神教徒がいて、魔力の供給を行っているようです。当然、護衛もいますので、襲撃する場合は十分に気を付ける必要があるでしょう」


 メノウが従魔達を見渡すと、従魔達は頷いた。


 施設が認識阻害されているのに、メイド達はどうして見つけられたのだろう。考えてはいけない事なのだろうか。


 まあ、それはいい。問題は百人ぐらいの女神教徒か。護衛の強さにもよるけど、どれくらいの戦力なら大丈夫なのかな……いや、四つ全てを一度に襲撃しないといけないんだ。均等に戦力を割り振るしかない。


「戦力をどう分ける? 私とオリスア、ドレア、サルガナは外してくれ。私達はリエルの奪還や四賢の相手に集中したいから、施設の破壊は任せたい」


 全員が頷いた後、色々と意見が出た。


 一時間ほどで、最終的なチーム分けはこんな感じになった。


 ジョゼフィーヌ、アラクネ。


 エリザベート、ヤト。


 シャルロット、ロス。


 マリー、カブトムシ。


 スライムちゃん達は全員別れたな。後はそれに合わせて戦力が分散されている感じだ。


「ペルとライルは襲撃チームには加わらないのか?」


 ライルが団子状態になった。意見があるという事なのだろうか。


「私は強い魔物を操らないとほとんど戦力がありません。なので、人族の避難誘導を行います。破邪結界が無くなれば、魔虫で人族を操り、扇動できますからね!」


 次にペルが手をあげた。


「私も同様です。どちらかと言うと私の能力は避難誘導に向いているかと。女神教のお偉いさんに姿を変えて、司祭様やメノウ様と一緒に避難誘導を行います」


 避難誘導か。魔族が来たことを告げて、勇者達に倒してもらおうと発言したり、巻き込まないように避難させたりする役だな。


 それは爺さん、アミィ、メノウ、そしてメイド達にやってもらう予定だった。確かにライルやペルはそっちの方が襲撃よりも得意だろう。


「そういう理由なら分かった。ちなみに襲撃チームは大丈夫か? 二人一組で施設を落とすことになるが」


 そう聞くと、全員が問題ない、と言った。頼もしいな。


 確かにスライムちゃん達がいれば、人族の無力化に関しては強力だ。施設を破壊できるだけの力もある。ここは従魔達を信じて任せよう。


「分かった。お前達に任せる。ただ、無理はするなよ。もし、破邪結界を壊せなくても気にするな。そうなったら私達が頑張ればいいだけだ」


 私がそう言うと、オリスア達も頷いた。結界にどれほどの効果があるか分からないが、例えどんな状態でも勝って見せる。


 ヴァイアとディアは全体的に色々なバックアップをしてくれることになっているし、これで役割分担は終わっただろう。


「よし、チーム分けは終わったな。それじゃ今日はもう寝よ――」


 アンリが手をあげた。


「アンリ達は何をすればいい? 教皇を暗殺する?」


「いや、ダメだ。暗殺は却下」


 中身は女神だが、体はアンリの乳母なんだから丁寧に扱わないと。とりあえず、アンリには何かの仕事を振らないと変な事をしそうだ。


「えっと、そうだな、ヴァイア達と一緒に私達のバックアップをしてくれ。いや、そうだ、ヴァイア達の護衛だ。村長とスザンナ、そしてアンリでヴァイアとディアを守ってくれ。皆で襲撃をするから護衛が手薄になる」


 護衛がノストだけだとちょっと足りないかもしれないからな。


「ヴァイア姉ちゃん達を守る? うん、分かった。ヴァイア姉ちゃん達を誰かが襲ったら、アンリの魔剣が唸る」


「ついて来るときに、危険な事はしないって約束しただろ? 例えヴァイア達が襲われても村長がいるなら手を出すなよ? 何かに気付いたらすぐに村長に知らせる。これがアンリの仕事だぞ?」


「そうだった。おじいちゃんと約束してた。破ると針を千本も飲まないといけない。分かった、周囲に気を張り巡らせておくだけにする」


「ああ、それくらいなら期待している。村長、スザンナ、絶対にアンリには危ないことはさせるなよ?」


 二人とも頷いているから大丈夫だろう。


 よし、これで終わりだな。明日も早いようだし、そろそろ寝るか。


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