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魔王様観察日記  作者: ぺんぎん
第九章

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大氷空間

 

 ハインの案内で第二階層まで来た。


 第二階層は「大氷空間」と呼ばれる階層らしい。見た限りかなり大きな空間が広がっている。王都が丸ごと入りそうな広さだ。天井も高い。そして見渡す限り氷。ここでは地面も氷だ。この大きさなら氷結地獄と言う魔法でできたという説は無いと思う。ロマンはあるけど。


 アイスバードがいる場所はこの大きな空間の北東とのこと。ただ、その魔物以外にもアイスウルフとか氷系の魔物が多いらしい。たいした脅威ではないが、たまに奥からレアな魔物も出てくるので警戒だけはしてください、と言われた。


 レアな魔物か。進化した魔物がいるのかな。ネームドの魔物がいるとちょっと手間取るかもしれない。みんなを怪我させるわけにはいかないから、ちゃんと探索魔法も使って周囲を警戒しておこう。


 ハインが歩き出したので、それについて行く。


「皆様はアイスバードをどのように捕まえるのでしょうか? 準備をされているようには見受けられないのですが」


 ハインの意見はもっともだ。誰も何も持ってないように見える。ヴァイアの亜空間に入れているんだとは思うけど、具体的にどう捕まえるかは私も知らないんだよな。


「それは私が作った魔道具でやります。引き寄せるだけで、捕まえるのはディアちゃんですけど」


 ディアが変なポーズをして「まかせて!」とか言ってる。不安だ。


「引き寄せる、ですか。危険ではないのですね? 皆様はお客様ですので、危険な行為を見過ごすことはできないのですが」


「大丈夫だと思います。いざとなったらフェルちゃんもいますし」


「どういう状況になるのか分からないが、最終的には結界でも張れば大丈夫だと思う。そういう結果にならないで欲しいけど」


「怪我したら治してやっから死ななければ問題ねぇよ」


 鳥が数匹なら怖くはない。だが、大量の鳥に襲われてトラウマになったらどうする。多分、アイツらは徒党を組むと強い。家ぐらい壊せると思う。


 そんな話をしながら十分ほど歩くとアイスバードのいる場所へ着いた。


 三百メートルぐらい先に氷でできた大きな木のようなものが見える。


「あそこに見える氷樹と呼ばれる場所にアイスバードがいます。氷樹と言いましても氷がそういう形をしているだけでして、花や実をつけるようなことはありません」


「不思議な木があるなと思っていたが、そういう形をしているだけか。あそこにアイスバードの巣があると言うことだな?」


「その通りです。あまり近づくと攻撃されますので、ご注意ください。できるだけ近づかずに仕留め、それから引き寄せるのが主な捕獲方法ですね」


 ヴァイアがやる方法とは逆のようだけど、そもそもどうやって引き寄せるんだろう。魔道具を使うとか言っていたけど。


 そんな私の疑問をよそに、ヴァイアが何かを取り出した。鳥の形をした金属だろうか。


「これは魔道具『とりよせ君』だよ!」


 ネーミングセンスが壊滅的だ。もうちょっと、こう、あるんじゃないか?


「探索魔法を応用して、条件にあった鳥を重力魔法で引き寄せる感じの魔道具なんだ。一匹ずつしか引き寄せないから安全だよ!」


 ヴァイアが、褒めて褒めて、という顔をしている。まあ、すごいとは思うので褒めておくか。


「すごいな。そういうのを作ろうという考えに至るのがすごい」


「フェルちゃん、それ、褒めてるのかな?」


「完全に褒めてる」


 すごいとは思ってる。応用したと言っているが、どういう術式を組んだんだろう? まあ、いいか。お手並み拝見だ。


「じゃあ、ディアちゃん、準備いい? 一匹引き寄せるよ?」


「よーし、こっちも準備したからこの場所に引き寄せて」


 ディアは糸で捕縛用の網みたいなものを準備していた。この網で掴まえるのかな。


「じゃあ、検索条件は一番近い鳥だね。えい!」


 ヴァイアが魔力を通すと、氷樹からアイスバードが一匹だけ飛んできた。飛んできたと言うよりは、引っ張られている感じだけど。


 その鳥が用意した網にかかる。そしてディアが、もがいている鳥を抑え込んで鳥の首あたりに針を刺した。鳥は一瞬でもがくのをやめた。


 すごいな。身動きが取れない鳥とはいえ一撃で倒したのか。


「いっちょ上がり。さあ、どんどん行くよ! あ、リエルちゃん、ヴァイアちゃんの亜空間に入れておいてもらえる?」


 リエルは「おうよ」と言ってから、アイスバードを手に取った。


「ちょっとアイスバードとやらを見せてくれないか? 魔界にはいないと思うから見ておきたい」


 アイスバードを受け取って色々観察してみる。


 氷っぽい見た目だが、触ってみると普通の鳥と同じだな。固くも冷たくもない。どちらかと言えば柔らかい。これが美味しいのか。どんな味なのか楽しみだな。


 リエルにアイスバードを返した。ヴァイアとディアは次の準備をしているようだ。これなら特に問題なく終わりそうだな。


 ふと、ハインを見ると目を見開いていた。メイドなのに感情が顔に出ているのは問題ないのだろうか。さっきは顔に出さず、歩き方に驚きが出ていたけど、今回はどうしたのだろう?


「おい、ハイン。顔が驚き過ぎだぞ?」


「え、あ、失礼しましたわ。し、しかしですね、あの、これ、なんですの?」


 口調がお嬢様っぽくなっている。素が出ている? 動揺しているのだろうか。


「どうかしたか? 驚いているようだが」


「なんでこんな簡単にアイスバードを捕まえられるのでしょう? 確かにアイスバード一匹はそれほど脅威ではないのですが、群れで行動するので捕まえるのは結構難しいのです。それを五分も掛からずに捕まえてしまって……」


「ヴァイアの魔道具のおかげじゃないか?」


「それはそうなのですが、はっきり申し上げてヴァイア様が作った魔道具は国宝級です。物体を引き寄せる魔法はありますが、特定の生物を引き寄せるって一体……?」


 その辺りは私も分からない。ヴァイアにはどういう術式を組めばいいか分かるんだろう。


 ハインとそんな話をしている間に、ヴァイア達はアイスバードをかなり捕まえたようだ。


「十匹いれば十分かな? フェルちゃんはもっと食べたい? いくらでも引き寄せるよ?」


「美味しいなら多い方がいいぞ」


「それじゃ、今度は近い鳥じゃなくて大きい鳥を引き寄せようか? 大きい方が美味しそうだからね!」


 魔物は大きい方が魔力を持っていて、肉が美味しくなると魔界の生産部から聞いたことがあるな。なら頼むか。


「よし、じゃあ、一番大きいヤツを頼む」


「任せて!」


 ヴァイアがとりよせ君に魔力を流す。


 はて、何も起きないようだがどうしたんだろう?


「ヴァイア、どうした?」


「あ、あれ? おかしいね? 引き寄せる条件は一番大きな鳥ってしたんだけど、該当する魔物がいないのかな?」


「その条件で該当するヤツがいないわけないだろ?」


 珍しいがヴァイアが間違えたのだろう。そういう時もある。


「おい、ダンジョンの奥から何かこっちに向かって来てるぞ?」


 私の背後でリエルがそんなことを言った。


 私の探索魔法にも引っかかった。そちらを振り返ると、確かに鳥のようなものがこっちに向かってきている。もしかして、一番大きな鳥って氷樹にはいなかったのか?


 どうやら失敗した訳ではなく、大きな鳥がいた場所が違うようだ。


「ヴァイアの検索範囲が広かったんだな。樹氷以外の場所にいるアイスバードを引き寄せたみたいだ」


「ねぇ、フェルちゃん、あれってアイスバードなのかな? 遠くにいるのに鳥って分かるほど大きいんだけど」


「なに?」


 ディアの言う通り、よく見ると確かに大きい。いや、かなりデカい。


「皆様、お気を付けください! あれはアイスバードではなく、サンダーバードです!」


「サンダーバード?」


「雷を纏った鳥ですわ! 冒険者ギルドでも討伐対象になっているほどの強敵! ご注意ください!」


 なんでそんなヤツが引き寄せられるのだろうか。


「ヴァイア、検索条件はアイスバードじゃないのか?」


「え、ええと、そ、それが、ただ、魔物の鳥って……アイスバード以外の魔物も対象になったみたい……」


 なんてことを。でも、仕方ないか。大きい鳥をお願いしたのは私だし。


「仕方ない、私が仕留める。みんなは結界に入って防御してくれ」


 どれくらいの強さかは知らないが、倒せないと言うことは無いだろう。魔界でもヤトと一緒に魔物討伐とか良くしてた。こういうのは懐かしいな。


「フェル様!」


「ハイン? どうした? 一緒に戦うか?」


「はい、フォローは致しますが、それとは別件です」


 なんだろう? サンダーバードに関する情報だろうか。


「サンダーバードはとても美味です。食べたことはありませんが、アイスバードが比べ物にならないくらいに美味と言われています。市場にも出回らないレア食材ですので、できるだけ原型を留めたまま倒していただけないか、と思いまして」


「最高の情報だ。できるだけ原型を残して倒す」


 ものすごくやる気でた。


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