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魔王様観察日記  作者: ぺんぎん
第六章

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除名と異端審問

 

 外は随分暗くなった。光球で周囲を照らし明るくする。


 そして皆は広場で仲良く正座だ。


 ニアを助けて気が緩んでいるかもしれないからな。村に帰るまで気を抜くなという名目で正座させた。半分は私をおちょくった罰だけど。


 そうこうしていると、ニア達が城から出てきた。


 ヤトが亜空間から大きな鍋をだした。カレーの配給が始まるようだ。正座している奴らから見つめられた。


 仕方ない。罰はここまでだ。


「正座を解いて食事にしろ。食い過ぎるなよ」


「はい、フェルちゃん。これはフェルちゃんだけの特別カレーだよ」


 私の分だけニアが作ってくれたようだ。感謝の一環だろう。面と向かってお礼を言われるよりは何倍もいい。


 そしてこのカレー。半熟目玉焼きが乗っていた。しかも私のみ。おお、この特別感がいいな。久しぶりのニアの料理だ。味わって食べよう。




 ……ドラゴンオムカレーよりも美味かったな。また魔界からドラゴンの卵を持ってきてもらって、ニアに料理してもらったら最高の料理ができるかもしれない。


 いや、待てよ?


 魔王様は今度、龍神がいる大霊峰に行くと言っていた。もしかしたらドラゴンの卵があるかもしれない。卵を探すミッションを加えなくては。


「フェルちゃん、どうだった? 私の作ったカレーは? まあ、食べてる時の顔で分かったけどね」


「美味かった。なんというか、いくらでも食べられそうだ。辛いのは苦手な方だが、スプーンが止まらなかったぞ」


「そうかい、そりゃ良かったよ。調子が戻ったらもっとすごいものを作ってやるからね」


 もっとすごい物か。その挑戦は受けて立とう。


「言っておくが、私はニアのせいでグルメになったぞ? 普通の物じゃ満足しないからな?」


「当然だね。アタシだって料理人としてまだまだ成長しているんだ。期待するといいよ。そうそう、包丁、ありがとうね。大事に使わせてもらうよ。それにしてもこの包丁、今までの物とは比べ物にならないくらいに切れ味がいいね」


「そうか。ドワーフの腕がいいんだろうな。喜んでくれるなら何よりだ。礼よりも美味い料理を作ってくれた方が嬉しいぞ」


 ニアは「ああ、それは任せな」といって、ロンの方へ向かった。これから食事をするのだろう。久しぶりだろうから邪魔しちゃだめだな。


 さて、食事は終わったし、これからの事を考えないとな。


 四日後に帝国兵三万がここに来る。帝都にいる兵士達をかなり引き付けたはずだ。ディーン達ならどれくらいで帝都を落とせるだろうか。


 ディーン達が四日以内に帝都を落とせば、私が帝国兵と戦う必要は無くなるだろう。憶測でしかないけど、今の皇帝がいなくなるなら私と敵対する必要は無くなるはずだ。ディーン達には頑張ってもらいたいな。


 だが、もしダメだったらどうしようか。正直、皇帝に興味はないが、怒らせたままだからな。帝都まで進軍して威嚇するというのもありだ。でも、それには正当性がない。ニアをさらわれた報復はしたし、それ以上の行為は過剰だ。うーん?


 色々と悩んでいたら、ルネが近寄って来た。


「フェル様、少しいいですか?」


「なんだ?」


「冒険者ギルドと女神教の人達が来てますけど、どうしましょうか?」


 なんだ、その組み合わせ。


「何の用か聞いているか?」


「はあ、どちらともレオールを呼んで欲しいと言ってますね。それ以上の事は何も聞いてません」


 レオール? そうか、冒険者ギルドと女神教の両方に所属している感じだからな。もしかして、引き渡せ、とか言う話かな。


「わかった、レオールを牢屋から連れて来てくれ。魔力を吸い尽くしたから動けないだろうしな」


「フェル様は何したんですか……」


 なんだかルネに呆れられた。ジョゼフィーヌのユニークスキルを使っただけなんだけど、駄目だったかな。私も魔力が減っていたし必要な事だったんだけど。


 それはいいとして、女神教ならリエルが必要だな。魔族だけなら女神教の奴と戦いになりかねない。呼んでおこう。


 ルネのぬいぐるみ、確かディアが作った人形が数体がかりでレオールを連れて来た。レオールは意識が戻ったようだが、うまく動けないようだ。


 そして跳ね橋の中ほどにいる冒険者ギルドと女神教の奴等の前に来た。


「魔族のフェルだ。そしてコイツがレオールだ」


 二十代ぐらいの男性が一歩前に出た。


「どうも、初めまして。冒険者ギルドの者です。とりあえず本人に報告をしたいことがありまして、参上しました」


 男はギルドカードを見せながらそんなことを言った。例え、偽物だったとしても別にどうでもいいからよく見なかったけど。


 そして男はなにやら書類みたいなものを取り出した。


「えーと、冒険者ギルドは、アダマンタイトの冒険者レオール、通称『神父』を永久除名するとのことです。えー、やり過ぎましたねぇ。流石に犯罪行為に手を貸すのはアウトです。ギルドカードは回収しますよ」


 レオールは何もできずにギルドカードを取られた。


「犯罪に関してはその国の取り扱いなので、冒険者ギルドとしてはここまでです。では、お騒がせしました。ごきげんよう」


 カードを持ってとっとと行ってしまった。なんというか、かなりあっさりしているな。それに動けないとは言え、アダマンタイトに対してあの対応、もしかしてアイツも強いのかな。


 今度は二十代後半くらいの女性だ。服装から考えて女神教のシスターかな。


「初めまして、女神教の者です」


「私とコイツは魔族だが立ち会ってもいいのか? 邪魔なら離れるが?」


「いえ、問題ありません。女神教でも貴方達の扱いは少々物議を醸しておりまして、現在は保留中ですので。それに今回の事は正当性のある行為だと女神教も認めております」


 魔族が絡んでいても女神教は認めてくれるのか。


「では早速。レオール様、動けるようになったら女神教の教会へ出頭せよとのことです。女神様の名を使って罪を犯すなど許しがたいので異端審問を行うようです」


 レオールは口を動かすが、何も言えないようだ。


「逃げても構いませんが、その時は女神教徒すべてが敵になるでしょう。安心なさい、女神様はすべてをお許しになります。何も起きないうちに教会に来ることが貴方自身を救うことになるのです」


 レオールは項垂れてしまった。ニアをさらった実行犯だ。何かしらの罰は受けてもらわないと。


「そして今回の件については聖女様も認めております。逃げて何も償わないというのは聖女様も裏切る行為ですよ」


 リエルの方を見ると、ものすごい勢いで顔を逸らされた。


「では、これで失礼しますね。……ああ、それと貴方」


 シスターがリエルの方を見る。


「ソドゴラ村のシスターなのですね? 魔族と一緒に行動しているのは感心しませんが、仕方のないこともあるでしょう。ですが、その修道服の着こなしはなんですか? しっかり胸元を隠して、足も隠しなさい。まったく、最近の若い子は……シスターなら聖女様を見習いなさい。聖女様を」


 笑ってはいけないのだが、これは難しいミッションだ。難易度がアポカリプス。既にルネはお腹を抱えて震えている。


 そしてリエルは笑顔で固まっている。かろうじて頷いただけだ。


「よろしい。では失礼します。何かありましたら教会までいらしてくださいね」


 そう言って、シスターは行ってしまった。


 残ったのは私とリエルとルネ、そして地面に転がっているレオールだ。


 そしてルネの笑いのダムが決壊した。床にあおむけになって腹を抱え、笑いながら足をバタバタさせている。


「リ、リエルっち、は、早く聖女様を見習わないと! く、くくく! ヤバい! 久々にお腹が痛い……!」


 笑い過ぎだろう。だが、誰もいなければ私もそんな感じになった気がする。


「聖女ってそんなイメージなのかよ。確かに聖都で人に会う時はそんな感じだったけどよぉ。本当の自分をさらけ出して生きたいぜ」


「十分さらけ出して生きてるだろうが」


「いや、もっとリミッターを外せる。後二回くらい外せるぜ?」


「絶対にやめろ」


 それ以上何があるというんだ。はっきり言って絶対知りたくない。


「ところで、リエルも女神教に連絡してくれたのか?」


「ん? ああ、ここに来る前の町にあった教会で連絡しておいた。女神教は怪しいが、味方は多い方がいいからな。まあ、そんなことはどうでもいいだろ。早く戻ろうぜ」


 これこそ照れ隠しだろう。リエルの顔がちょっと赤い。


 そしてリエルが城の広場に戻ろうとしたとき、寝っ転がっているルネを踏みつけた。


「ふぎゃ! リエルっち、踏むなんてひどいじゃないですか!」


「うるせぇ! 腹抱えて笑いやがって!」


「これはルネが悪いぞ? リエルだって好きで聖女のイメージとかけ離れているわけじゃないんだからな」


「その言い方もおかしくねぇか? 俺が聖女なのにイメージが違うってなんだよ」


 そりゃ、聖都でのリエルと、普段のリエルのイメージが違うって意味だけど、説明が面倒くさい。そもそもなんでリエルが聖女になったんだってレベルの話までさかのぼるからな。


「まあ、いいじゃないか。そのおかげでリエルが聖女だってばれないんだから」


「それはそうなんだけどよぉ」


 なんだか納得してないな。顔が不服そうだ。


「私としては普段のリエルの方がいいと思うぞ。丁寧な言葉を使っているリエルを見ると虫唾がはしる」


「それはそれでひでぇじゃねぇか……まあ、分かったよ。聖女のイメージと合わなくたって俺は俺だしな」


「そうですよ、普段のリエルっちの方がいいですって――ふぎゃ! なんでまた踏むんですか!」


「顔が笑ってんだよ、顔が!」


 二人はお互いに文句を言いながら広場に戻って行った。


 あれ、ここに転がっているレオールは私が運ぶのか?


「あの方は聖女様なのですか?」


 倒れていたレオールが体を起こし、ふらつきながらも立ち上がった。


 流石は勇者候補か。魔力が枯渇するほど吸い取ったんだけどな。


「そうだな。聖女らしいぞ」


「聖女様はご病気だと聞いていますが?」


「それは嘘だ。リエルは聖都から逃げるようにソドゴラ村に来ただけだ」


 男好きなのは言わないでおこう。あと、女神教を潰そうとしていることも。


「そうなのですか……」


「おい、リエルに害をなそうとするなら、今回程度の事じゃ済まさないぞ? 永遠に安眠できないようにトラウマを植え付けるからな?」


「そんなことしませんよ。なんだか頭がすっきりした感じでしてね。なぜ領主に従っていたのか、なぜ女神教にあんなに傾倒していたのか、今思うとよく分からないのです」


「ああ、お前、半分くらい洗脳されていたからな。私にボコられてまともになったんじゃないのか?」


「洗脳……?」


「知らないのか。女神教って洗脳による布教活動をしているぞ。お前は半分くらい洗脳されてるってリエルが言ってた」


「そんな、ことが」


 レオールはかなりショックを受けているようだ。顔面蒼白だ。


「リエルもそんな女神教を嫌になって聖都を離れたようだけどな」


 本当はいい男を探しに来たんだろうけど、言わないでおこう。


 そういえばさっきのシスターは洗脳されているような感じはなかったな。どういう基準で洗脳の布教しているのか分からん。


「言っておくが、例え洗脳されていたとしても、やったことの責任は取ってもらう。と言っても冒険者ギルドからは除名されたし、女神教からは異端審問を受けるようだからな。お前への罰は終わってる。動けるんだったら好きにしろ。傭兵達も連れて行って構わないぞ」


 正直言って邪魔だ。とっととどこかに行って欲しい。


「改めて貴方達を襲うかもしれませんよ?」


「同じ結果になるだけだ。何度やってもな。それが想像できない程、愚かでもないだろう?」


 レオールは考え込んでいる。本当にやる気なのだろうか? そう思ったらレオールは少し笑い出した。


「そうですね、今のところ何度考えても貴方達には勝てません。無駄なことはしませんよ」


「賢明だ」


「お願いがあるのですが、傭兵団は私に従っていただけでしてね。あまり重い罰を与えないで欲しいのですが」


「トップのお前が罰を受けたんだから、それ以上は何もしない」


「感謝します。広場や牢屋にいる皆に話をしてここを出ていきます。よろしいですかね?」


「ああ、構わんぞ。……まあ、食事くらいはしていけ。負けた相手に食事を奢られるなんて屈辱だろ? 罰は与えんが、それくらい惨めな思いはしていくんだな」


「……かないませんね。分かりました。そうさせてもらいます」


 その後、レオールと傭兵団は広場で食事と謝罪をしてから城を出て行った。レオールは女神教の教会に行くらしい。傭兵団は元々この町に拠点があるようでそこで待機するようだ。


 ニアをさらった奴等をこの程度で許すのか、という魔物達の声があったが、指示をしたのはムンガンだし、必要以上の報復は認めないとはっきり言った。かなり強気で言ったら、聞いてくれたようだ。


 さあ、久しぶりに日記を書こう。何日分か溜まっているからな。思い出せるうちに書かないと。


 城の空き部屋って勝手に使って平気だよな?


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