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魔王様観察日記  作者: ぺんぎん
第一章
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冒険者ギルド

 

 ちょっと寝すぎた。疲れていたからかな。まだ寝ていたい。しかし、そういうわけにもいかない。魔王様に「もう魔界に帰っていいよ」とか言われたら立ち直れない。役に立つことを証明せねば。


 さて、魔王様はまだお休み中だろうか。無理に起こすわけにもいかないので朝食でも取りながらこれからのことを考えよう。


 色々と準備をしてから、食堂へ行くとニアとロンがいた。そしてニアがこちらに気付く。


「おはよう。よく眠れたかい?」


「おはよう。普段よりも良く寝れた。正直なところ、まだ眠っていたい」


「ははは、そうかい。でも若いんだから寝てるだけなんてもったいないよ」


「そう思って起きてきた。朝食をもらえるだろうか」


「あいよー」


 テーブルについて食事が来るのを待つ。さて、考えよう。


 人族と友好関係を結ぶには、信頼されないといけない。この村だと特に問題なさそうだが、ほかの魔族達も呼びたいし、もっと信頼されるように振る舞おう。冒険者ギルドに登録したし、依頼をこなせば信頼されるだろうか。


 あと、お金だ。人族の中で暮らすならお金が必要だ。今は宿泊がタダだし、夜盗の報奨金が出るとのことなので、しばらくは大丈夫だが、それだけでは心配だ。魔界に食糧を送ったりしないといけないし。そういえば、魔界から色々持ってきてる。雑貨屋で売ってみよう。


 世界樹のことはよくわからないな。これは魔王様にお願いするしかない。あ、リンゴを買うお金も稼がなくては。


 まずは冒険者ギルドで依頼を確認しよう。おお、なにか冒険者っぽい。魔界の奴らに自慢しよう。


 そんなことを考えていたら、朝食が運ばれてきた。


「はーい、おまちどー」


 パンと干し肉と牛乳、あとサラダだった。肉以外が沢山ある。ちょっと涙で視界がぼやけた。特に牛乳は大事。私はまだ背をあきらめてはいない。まだ希望はあるはずだ。胸は別にいい。あんなのはただの飾りだ。スレンダー上等。


 量が足りない気もするが、追加料金は払えないので我慢する。


 食後の休憩をしつつ、ニアとロンに話を振ってみよう。話す回数が多いほど信頼されるとか本に書いてあった気がする。


「二人は普段何をしているんだ?」


「俺は宿の掃除とまき割り、あとは畑を耕したり、家畜の世話をしたりだな」


「私は昼間に掃除と料理の仕込みをしてるね。夕方は調理や給仕をしてるよ」


 宿を経営しているのだから当然か。他の人達はどうなのだろう。


「ちなみに、この村の奴らはどんなことをして生計を立てているんだ?」


「大体は畑仕事か、狩りだね。たまに開拓するのに木を切ったりしてるようだけど」


「それだけで村としてやっていけるものなのか?」


「この村は森を抜けるときの休憩場所だからね。冒険者もいるけど、大体は商人なのさ。魔物の素材とかを売って、生活に必要なものを買っているから、かろうじて成り立っている感じだね。贅沢をしなければ何の問題もないよ」


 そうだろうか。この村に住むメリットを感じない。もっと利便性のあるところに行った方が良いと思うが。


「はは、理解できないって顔をしているね。この村にいる皆は色々と訳ありでね。あまり大きな町とかには住めない奴らばかりなのさ」


 なるほど、はみ出し者ということか。だから魔族でも受け入れてくれたのかな。


「色々と参考になった。朝食、ごちそうさま」


「あいよ。ちなみに今日はどうするんだい?」


「昨日冒険者ギルドで登録をしたので、ギルドカードを取りに行くつもりだ。あと、依頼があれば受けるつもりだが」


「え、冒険者ギルド? 登録したのかい?」


「ああ、昨日、登録申請した」


「そうかい。くじけずに頑張っておくれよ。あ、いや、それなら……」


「うん? そうだな、頑張るつもりだ」


 何だろう? なにかあるのか? 行けばわかるか。


 宿を出ると、魔王様から魔道具に連絡があった。


『ちょっと世界樹にいけるようにエルフの森を調べてくるよ。悪いけど、魔族のイメージアップ作戦はまかせたよ』


「畏まりました。全力で仲良くします」


『うん、ほどほどにね』


 さて、冒険者ギルドに行くか。


 ギルドの建物に入る。カウンターには昨日の女性が座っていた。


「あ、いらっしゃい。ギルドカード出来てるよ」


 これがギルドカードか。なくさないようにしよう。


 ギルドカードには洞窟と剣の絵が書いてある。これは冒険者ギルドのマークらしい。ほかには名前、種族、年齢が書いてあり、年齢は自動的に更新されるそうだ。また、ギルドカードは依頼受注の成否や魔物の討伐情報などが記録されるという魔道具になっているらしい。すごいな。


 さらによく見るとかわいらしく顔が書いてある。


「この顔はなんだ?」


「あ、それはフェルちゃんの顔。書いたのは私だよ」


 まずどこから突っ込むか迷う。


「色々言いたいが、まず、フェルちゃんというのは、私のことか?」


「うん、同じ十八歳だし。あ、私はディア。呼び方はディアちゃんでも、ディア様でも、華麗なるディア姫でもいいよ」


 うざい。


「ディアで十分だ。あと私ってこんな顔しているか?」


「ちょっとデフォルメしてるよ。ちなみに私が受付しているギルドでカードを作るなんて大当たりだからね。他の受付嬢だと、識別不能なぐらいひどい場合があるんだから」


 そう聞くと少なくとも識別はできるので、当たりなのかもしれないが、嘘をつかれている可能性もある。比較対象がないのでわからん。いつか確認しなくては。それよりも私はこんなに八重歯は大きくないだろ。吸血鬼か。どちらかというと角を強調してほしかった。


「じゃあ、ギルドの説明をするね」


 聞いた話によると、冒険者の仕事は、採取、討伐、護衛、その他の四種類に分かれている。それぞれで仕事のランクというものがあり、自分のランクの依頼しか受けることはできない。ただし、指名依頼の場合はランクに関係なく受けることができる。断ってもいいらしい。


 ランクを上げるには、受けられるランクの仕事を何度もこなす必要がある。依頼に失敗するとランクが下がることもあり、達成率が低すぎると除名もあるとのこと。


 ランクに関しては、金属の名前が該当するらしい。硬い金属の名前ほどランクが上になっている。ちなみに鍛冶師ギルドのランクも同様なので混同しないように気を付けてほしいとのことだ。


 私の場合、なんのコネもないので、最低ランクのブロンズからだ。最高ランクはアダマンタイトらしい。


 他にもルールはあるが、それは必要になったら教えてくれるそうだ。


 なんだろう、ディアを見ているとかなり心配だ。あとからやばいルールが出てきそうな気がする。


 まあいいか。まずはなにか依頼を受けてみよう。こういう時はギルドの掲示板に依頼が載っているはずだ。


「ディア、ちょっと聞いていいか」


「なーに?」


「掲示板に依頼が一つもないのだが」


「うん。この村にギルドが出来てから、一度も依頼はないよ。皆、自分のことは自分で出来るし、そもそも冒険者がいなかったから、誰もギルドに依頼しなかったね」


 あれ? これって冒険者登録前に聞かなかった私が悪い流れなのか。例えそうだとしても、ちょっとディアを殴りたい。


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