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魔王様観察日記  作者: ぺんぎん
第四章

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魔剣

 

 さて、次はどこに行くべきか。


 スライムちゃん達にお土産の石鹸を渡す必要があるのだが、今日は誰も見ていないな。畑の方にいるのだろうか?


 畑の方に行こうかとも思ったが、昼食の時間が近い。また戻ってくるのは面倒だから、午前中はヴァイアの店を案内して、畑は午後に行くことにしよう。


「ヴァイアの店に行こう。案内してやる」


「そういえば、ヴァイアは店をやってるんだな。よし、行こうぜ。金は無いけどな!」


「今日の軍資金は小銅貨三枚。無駄遣いは許されない」


 アンリがリエルよりも金持ちだ。だが、小銅貨三枚でヴァイアの店にあるものが買えるのだろうか? 使い捨ての石でも大銅貨からだったような気がするけど。


「たのもー」


 店に入ると、ヴァイアがカウンターに座っていた。どうやら石に魔法を付与しているようだ。こちらに気付くと笑顔になった。


「いらっしゃい。みんな揃ってどうしたの?」


「いろんな場所にリエルを案内している。アンリは社会勉強だ」


「よーう、いい店じゃねぇか」


「物価の変動を見て、経済の状況を確認する」


「そうなんだ。リエルちゃんもアンリちゃんもゆっくり見てってね」


 リエルはともかく、アンリが変なことを言っているんだが。慣れたものなのかヴァイアはスルーだ。


「日用品しか売ってねぇんだな?」


 リエルが色々な商品を手に取りながら確認している。壊したりするなよ。


「そうだね。皆、日用品以外は村を通る商人さんから直接買うからね。だから、商人さんが売ってくれるようなものを店に置いても、埃をかぶるだけになっちゃうんだよね」


 なるほど。需要が高い物しか置かないということだな。まあ、変な物を置いて売れなかったら赤字だしな。


「そろそろ商人さんが通るころだよ。ルハラからオリンに帰る商人さんが来るんじゃないかな?」


 商人か。この村に随分と滞在しているが、一度も遭遇したことは無かったな。


「村の広場で商品を売買してくれるんだ。青空市とかフリーマーケットとか言ってるね」


 いきなりアンリが持っている木剣を掲げた。危ないな。


「軍資金を貯めてこの木剣を買った。魔剣七難八苦。業物」


 自慢してきた。だが、名前からして呪われてないか? いや、自分で名前を付けただけか?


「そういえば、アンリちゃんはそれを商人さんが来た時に買ってたね」


「魂を感じた。フェル姉ちゃんに剣を貰っても、これはこれで大事にする」


 物を大事にしてくれるのか。ならミスリルの剣をあげる甲斐があるというものだ。


「そうか、ならお土産の剣も大事にしてくれると嬉しいぞ」


「大事にする。名前も決めてある」


 あげる側としては一応聞いておきたい。変な名前がついていたら変更してもらおう。


「なんという名前にするんだ?」


「魔剣フェル・デレ」


「ちょっと待て」


 フェルというのは私の名前だと思う。だが、デレというのは、ツンデレとかのデレだろうか?


「私の名前が入っている気がする。それにデレというのはなんだ?」


「フェル姉ちゃんの名前と、ツンデレのデレ。ディア姉ちゃんに教わった」


 アイツは後で殴る。あと、腹を抱えて笑っているリエルも殴る。


「それは止めよう。もっと格好いい名前を付けた方がいい。魔剣ティラノサウルス・レックスとか」


「駄目。お土産を貰う前からずっと考えていた。渾身の命名」


 ずっとと言っても三、四日程度じゃないか。だが、まあいいか。いい加減に名前を付けるだけだ。言わば自称。ユニークアイテムじゃあるまいし、本当にその名前がつくわけじゃないからな。


「わかった。だが、人のいるところで剣の名前を言うなよ。心の中だけにしてくれ」


「約束する。でも、ここぞと言う時には言う」


 それは約束したことにならないだろう。それに、ここぞと言う時はどんな時なんだろう。せめて知り合いがいない時にしてほしい。


 さて、特に用があって来たわけではないのだが、冷やかしだと悪い気もする。だが、何を買うべきだろうか? とくに品揃えが変わったわけでもないから、欲しい物はないのだが。


「ヴァイア、なにかお勧めはあるか? あるなら買うぞ?」


「今、新しく試しているのはこれなんだけど、タダで良いから商品のモニターをやってくれる?」


 ヴァイアがホウキを出してきた。以前、ヤトが使っていた物だろうか? 重力魔法と空間魔法を使ってゴミを吸い取るホウキだったような。これのモニターはヤトがやっているのではないだろうか?


「これは空飛ぶホウキだよ。カブトムシさんを見て思い浮かんだんだ。重力遮断して、空気抵抗を無くして、念動魔法を使えば飛べるんじゃないかなと思って」


「失敗したら落ちて死ぬだろうが」


 それを聞いたリエルは空を飛んだ恐怖がよみがえってきたのか、顔を引きつらせたようだ。逆にアンリはものすごく食いついて来た。


「これで空を飛べるの?」


「理論上は飛べるけど、魔力が足りないと難しいかな?」


 私やヴァイアぐらいの魔力なら何とかなるかもしれないが、普通のやつには無理だろう。


「残念」


「アンリはカブトムシに乗せてもらえばいい」


「おじいちゃんが危ないから駄目だって言ってる」


「村長はいい事を言った! 人は空を飛ばない! 羽や翼がないんだから飛んじゃ駄目だ!」


 リエルは否定派か。慣れればいいものだったが、確かに安全は考慮しないとな。


「そうだな。安全が確保されたら乗ってみるといい。たしかドワーフのおっさんがゴンドラを作るとか言っていたから、少し安全性が高まると思うぞ」


「ドワーフのおじさんは万能。鞘も作って貰うから、一度挨拶しに行かないと」


 義理堅いな。


「アンリ、まずは飛ばない方向で考えようぜ? 危険なことはしない。それが人生で大事なことじゃねぇか?」


 確かに大事だが、リエルの人生には他の大事なことが抜けている気がする。


「人生で最も大事なのはチャレンジ。それが人を大きくする」


「おいおい、アンリって五歳だよな?」


「私もたまに疑問に思う」


 多分、五歳だとは思う。変な結果が出たら嫌だから魔眼で見たりはしない。


「チャレンジは大事だよね。じゃあ、とりあえずホウキはフェルちゃんに渡すね。すこし浮くぐらいなら問題ないと思うから試してみて。使ったら感想を聞かせてね」


 それはそうだな。あまり高く飛ばなければいいのだ。低空飛行なら落ちても安心だ。


「わかった。後で使ってみる」


 ホウキを亜空間に入れておこう。しかし、何でホウキを飛べるようにしたのだろう? もっと別のものにすればいいのに。


「ヴァイア姉ちゃん。ドワーフのおじさんが喜びそうな物ってある? 小銅貨三枚以内で」


 アンリは挨拶に行くとき、お土産を持っていくのか。出来た子だな。


「それは難しいかな? 値段もそうだけど、ドワーフさんが好きなのはお酒だからね。店には置いてないんだ。ニアさんなら用意できるかもしれないけど、アンリちゃんはそんな事しなくてもいいと思うよ?」


「ニアおば……ニア姉ちゃんに聞いてみる。心付けは大事」


 何で言い直した? まあ、聞く必要はないか。藪蛇という言葉もあるしな。


 よし、そろそろお昼だ。宿に戻って食事にしよう。


「もう昼だから、私は宿で食事にするが、お前たちはどうするんだ?」


「今日はニアさんの料理を食べようかな」


「奢ってください。マジでお願いします」


「フェル姉ちゃん達と食べたい。家で交渉してくる」


「そうか。じゃあ、ディアも誘って皆で食べるか」


 誘わないと何されるかわからんからな。それにアンリに変なことを教えた制裁を加えないと。あと、リエルにもな。


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