表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/120

77.始まる戦い

更新が遅れて申し訳ないm(_ _)m

「先ほど、ムラヤマ様が助けてくださった者が目を覚ましました。彼の話によると、対魔族の陣は崩壊。壊滅状態に陥ったとのことです。その後、魔族はフォルト目指して進行中。距離から考えるに、十日以内にフォルトに到達するでしょう。より正確な予想日時は斥候たちが戻ってから算出いたします」


 夜に差し掛かった頃。俺と坂上、日野さんと四ノ宮、浅野は会議室でお姫様から話を聞いていた。

 あのフクロウ魔族――ビスティが言っていたことは全て事実らしい。殺されかけていた人は対魔族防衛部隊の隊長兼司令官だった。

 防衛にあたっていた人員はほぼ全滅。魔族がフォルトに迫っている。

 のっぴきならない現状だ。魔王を倒すどころかアストリアスが滅ぶ瀬戸際かもしれない。


「お姫様。単刀直入に聞くけど、次の戦場はフォルトか?」

「はい。正確に言うとフォルトの東側にある平野になります。打って出るよりも準備を整えての防衛戦の方が有利。魔族を撃退し、フォルト以西への進出を防ぐことが目標となります」


 ふうん、と頷く。

 戦術や戦略の知識なんてないので詳しいことは分からないが、攻めるより守る方が有利という程度は聞いている。

 その点から考えると防衛に回るという選択は妥当か。


「……それでアルスティア。こうして呼びつけたということは私たちにさせたいことがあるんだろう?」

「ええ。その通りですわ。勇者様たちのお力も、お借りしたく」


 苦りきった様子の日野さんに対してお姫様の笑顔はあくまで華やか。


「力を借りたいというのは、わたしたちに戦えっていうことですか」

「はい。とはいっても戦場に立たれる必要はありません。遠くから攻撃魔法を撃っていただければ十分。シホ様にはフォルトに控えて兵士の治療をしていただければ」


 もともと勇者を召喚した理由は魔族と魔王を倒すため。魔族の侵攻が再開したなら戦わせたいのは当然。

 その身勝手に俺たちが付き合う理由はないが、おそらく日野さんは契約に縛られている。坂上も防御、治療なら問題なく手を貸すだろう。四ノ宮はテキトーなことを言えば突撃すると思う。浅野は四ノ宮の金魚のフンだから同様。


「ですが、ユキヤ様には旗印として前線に立っていただきたいのです」

「任せてくれ。そのための聖剣だ」


 ほうら、やっぱり。

 魔族を倒すために聖剣を使うという考えには賛同するけど。間違っても俺に向けるものじゃない。


「あたしも征也と一緒に戦う。あたし以外に征也の速さに追いつける人はいないもん。あたしが、征也を守る」


 浅野も予想通りの動き。

 確かに四ノ宮のフォローに回すなら浅野だろう。

 単純な速度なら四ノ宮に追いつける人に何人か心当たりがある。ヨギさんなら余裕。ゴルドルさんもいける。俺でも多分大丈夫。瞬間でいいならシュラットだって四ノ宮以上の速度を出せる。

 だが、ヨギさんは単騎で戦わせてこそ。四ノ宮なんて足手まといにしかならない。ゴルドルさんはおそらく戦いながら指示も出すので、最前線で戦う四ノ宮に付けるには不適切。シュラットは魔力量が多くないので四ノ宮に追いつける速さで走り続けるのは難しいだろう。


「かしこまりましたわ。ユキヤ様とナツキ様は前線。ヒノ様とシホ様には後方支援に徹していただきます。後ほど担当の者を遣りますので、それぞれ詳しい説明を受けてください」

「ああ、分かった」


 浅野の動きはお姫様も予測していたのだろう。勇者四人の配置はすんなり決まった。

 残る俺は蚊帳の外。

 ぜんぜん構わないけど。戦うつもりなんてないし、戦争なんかに関わりたくないからむしろ望むところなんだけど。

 でも、そうもいかないんだろうなあ。


「わたくしからは以上です。何か質問はありますか?」


 俺からは特にない。

 何か俺にも役目を与えられるとは思うが、わざわざ自分から聞いて積極的に引き受けたいとは思わない。

 それ以外だと戦争という事態に直面するのは初めてで、何を聞く必要があるのか分からない。戦争が起こると言われても現実感も薄い。

 他の四人も同じなのか。それとも各担当に質問をするのか。特に質問はされなかった。


「ありませんか。それでは解散といたしましょう」


 お姫様が席を立つ。

 俺や勇者四人も立ち上がるが、そこで動きが止まる。

 解散と言ったお姫様が部屋から出ることなくこちらを向いていたから。

 まだ何か話でもあるのかと思ってこちらもお姫様を見ていると、お姫様は深々と頭を下げた。


「もしもこのフォルトが突破されてしまえば、そう遠くない未来にアストリアスは陥落してしまうでしょう。それを防ぐためにも、どうか、皆様のお力をお貸しください」


 その姿は優雅から程遠い。

 力いっぱい頭を下げたせいで髪も乱れ、みっともないことこの上ない。

 これも演出かと思いかけたが、そうでない気がした。

 切羽詰まっているのはきっと事実。フォルトが陥落すれば危険というのも本当なのだろう。

 そりゃあ必死にもなる。自分を含めた多くの命がかかっているのだから。


「顔を上げてくれ、ティア。俺が魔族を倒す。だから安心してくれ」


 お姫様が頭を下げてから続いていた沈黙を破ったのは四ノ宮。

 決然と。目に強い光を宿して言い放った。

 その姿は勇者と呼ぶにふさわしいものかもしれない。まさに主人公といった台詞。

 残念ながら俺はそこまで楽観的になれない。四ノ宮が勝った時のことだけを考えているなら俺は負けた場合の対策を練っておこうか。

 ダイム先生やゴルドルさんが何も考えていないはずはないが、それは自分で考えることをやめる理由にはならない。

 ていうか四ノ宮、こっちに来てから戦う度に無様をさらしていたくせに自信満々に言えるのな。ある意味すごい。


「……よろしく、お願いします」


 四ノ宮に促されて頭を上げていたお姫様は、もう一度頭を下げた。


―――


 任せろ、と言って四ノ宮は会議室を出た。それを追うように浅野が続き、日野さんと坂上もお姫様に見送られてそれぞれの部屋に戻る。


「ムラヤマ様、少々よろしいでしょうか」


 俺も身の振り方を考えようかと思いながら部屋を出ようとするとお姫様に声をかけられた。

 ……まあ、ですよね。わざわざ俺も呼びつけたのに何もなしってわけにはいかないですよね。

 無視して帰ってしまってもいいが、フォルトの陥落はそこそこ安全な住処がなくなることを意味する。

 危険の少ない役割があるとしたら引き受けるのもやぶさかではない。


「はいよ。そんで俺は何をすればいいんだ?」


 立ち止まり話を切り出すとお姫様は少々戸惑った様子。


「少しお聞きしたいことがあるのですわ。……戦闘が始まった時、ムラヤマ様はいかがなさるおつもりでしょうか」

「? 何かさせようって話じゃないのか?」


 意外だ。てっきりお前も働けよ的な催促が来るものかと思っていた。


「いいえ。ムラヤマ様は他の勇者様方と違い魔力を持ちません。お強くはなられたようですが、その実力を発揮するためには敵に近付かなければならない。……危険です」

「そりゃそうだ。魔法が使えないぶん近接戦に特化したからな」


 錬気を飛ばす技を身に付けたと言っても射程はそう長くない。

 魔法も弓も使えない俺にできるのは単純な斬り合いのみ。

 近接戦を挑むためには敵に近付かねばならず、遠くから魔法を撃つよりも危険なことは間違いない。


「ですので、お聞きしたいのです。ムラヤマ様は前線で戦うつもりなのか。そうでないのかを」


 真剣なまなざしを向けられる。

 とはいえ、どんな目を向けられようと何を言われようと、俺の答えは決まっている。


「前線に出るつもりなんてあるわけないじゃん。俺は石投げられたことも蹴り飛ばされたことも忘れてない。そんなフォルトの連中のために命をかけるとか、どんな聖人だよ」


 基本的にお姫様と話す時は事実を捻じ曲げたり、一部だけを強調して話す。

 嘘をついたらぼろが出る。だから本当のことを相手が誤認するように伝えるのだ。

 しかしこれは本音そのまま。

 一度目の試合の時。向けられた罵声も石を投げられた痛みも、名前も知らないオッサンに蹴り飛ばされたことも記憶に新しい。

 俺がアストリアス国民に持っている印象は最悪に近い。坂上と出歩いてちょっとだけ認識が変わったが、それでも積極的に助けたいと思うほどではない。

 そもそも、訓練で力をつけたと言っても勇者みたいに戦場に大きく影響を与える性質の力ではない。俺が戦場に出たところで戦況は変わらないだろう。


「……そう、ですか」


 お姫様は気が抜けたように深く息をついた。どことなく安堵しているようにも見える。

 無理に俺を戦わせれば坂上と日野さんはアストリアスから離反するだろう。

 俺を使って日野さんと契約を結んだらしいので、俺に死なれたら困る。

 盤上に大した影響を及ぼさない俺を、リスクを背負ってまで戦わせるメリットは少ない。

 いちおう、便宜上は友人のように振る舞っていないこともないので、その影響もあるかもしれない。


「では、可能な限り城の敷地内にいらっしゃってください。フォルトの中ではいちばん安全と思われますので」

「あいよ、了解」


 他に行くあてがあるわけでもなし。今までとそう変わらない。

 まあ、安全という言葉も疑わしいが。ビスティが城に侵入したことにも気付いていないようだったし。


「……あ、でもお姫様、ひとつ頼みがあるんだけど」

「頼み、ですか?」


 話も終わり、部屋を出ようとしていたお姫様を呼び止める。

 お姫様は小首をかしげた。


「俺も防具が欲しいんだよ。もし万が一、フォルトまで攻め込まれるようなことがあったら俺も戦わざるをえない。魔王軍と戦うのに防具が『ぬののふく』ってのはあんまりだろ」


 ネタは通じていないだろうけど、ニュアンスは通じるだろう。

 四ノ宮は戦いに際して鎧を着こんでいる。兵士ですら胸当てや脚絆のような軽装備は支給されている様子。

 万が一戦うような事態に陥った時に俺だけ普段着というのはさすがにひどい。


「わかりましたわ。どんなものがよいでしょうか」

「軽いやつがいいな。あと鎧はパス。動きづらいから」

「そうですか……でしたら、特殊な繊維で作られた服でどうでしょう」

「……それって布の服と防御力違うの?」

「もちろんですわ。試合の時にムラヤマ様がお召しになっていた服に近い生地になります。さすがに金属の鎧には劣りますが、重量は軽く刃を通しづらい、魔法にも耐性がありますの。生地はありますので、鎧よりも用意に時間もかかりませんし」


 ジアさんから借りたアレと同質のものか。

 あれなら動きを阻害しない。そのうえ軽くて丈夫とくれば否はない。


「ん。じゃあそれで頼む。サイズはどこで測ればいい?」

「大きさは女給たちが存じているはずですので大丈夫ですわ。すぐに手配いたします」

「ああ、よろしく」


 これで防具をゲット。

 頼る事態にならなければ一番だが、無いよりはよほどいい。

 ちょっと城を出る要件もある。服が来たら決行ということでいいだろう。

 さて。そうと決まれば攻め込まれた時の対策を練りますか。


今回と次話とその次は短めの予定なので、一週間おかずに投稿する予定です。

……あくまで予定ですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ