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11.学園祭について 2


 翌日、翠の月・十五日。オレのクラスである一年二組は大いに賑わっている。その理由は至極単純にして明快。フーリアとアキハが同時にこのクラスに来たからだ。

 まあ、賑わっていると言ってもそれは周囲だけだが。

 その張本人の一人、フーリアは早速オレの膝の上で眠っているし、アキハはオレの椅子の背凭れに腰掛け本を読んでいる。そして何故か眼鏡装備。

 さっきまで二人とも身動きがとれない状況になっていたが、オレが近付くと蹴散らさんばかりの勢いでフーリアが抱きついてきた。抱き留め肩車をすると、アキハも近くに来ており、アイコンタクトでオレの席へ移動。

 二人の席は、オレの後ろがアキハ。フーリアはオレの膝の上。これなら授業中なんかに何かしようとする奴がいても問題ない。

 その後マートルも来て四人で話していたが、名も知らぬ男子Aが近付いてきた。恰好良いと思っていたのかは知らんが、髪を掻き上げた仕草はウザイの一言に尽る。

「ウザ」

 まあ、アキハが言ったんだけどな? しかもかなり小さな声で。

 聞こえていたオレとマートルは顔を見合わせオレは笑いマートルは苦笑した。フーリアは膝にちょこんと座っていたが、聞こえていなかったらしく何も聞いて来なかった。

 とりあえずその男子Aはフーリアに何か言おうとしたのか顔を近づけた為、その時点で吹っ飛ばす。

大丈夫、巻き込む物又は者は一切無い。

 加減はしておいたから大丈夫だと思ったが、それからその男子Aは動かなかった為、保健委員の女子が二人で腕と足を持って運んでいった。

 せめて担架を使おうぜ?

「ナイス、レスト」

「ユイちゃん、何かあった?」

「ん? 何もないけど?」

 本を読みながら放たれたアキハの言葉に、教室中の女子が殺気立った様な気がしたが、まあ、いいか。

アキハは、マートルに聞かれ振り向きながらそう答える。

「そう?」

「うん」

「なんか、嫌っているっていうか、そんな感じだったけど」

「だってウザイでしょ? いかにも『自分は恰好良いです』なんて思ってる人。このクラスの女子があの……とりあえず男子Aをどう思っているか知らないけど、わたしには関係ないし」

 呼称が被ったことに小さく笑うと、フーリアが見上げてきたが、「何でも無い」と小声で言って頭を撫でる。耳も軽く撫でると、やはり弱い様でピクピクと動き、同時に少し声を洩らす。だが嫌がってはいない様で、くすぐったそうな声が聞こえるからそのまま続ける。

 ふと教室内を見渡すと、なにやら男子共が見ていたが、いくらか殺気を込めて睨むと一斉に逸らした。

 早く来てくれると助かるんだがな……。

「そう言えば、レストは知ってるの? 男子Aの名前」

 なんて考えていると、いきなりアキハに話しを振られた。

「ん? いや、知らん。というかいたのもさっき知ったからな。マートルは?」

「え、わたし? 知ってはいるけど、知りたいの?」

「「いや全く」」

 同時に答えたオレとアキハにマートルは呆れた様に笑った。

 程なくして一限目の始まりを告げる鐘の音が鳴り響き騒いでいた生徒達は皆席に着いた。アキハとマートルも席に着く。と、アキハがオレの肩を叩ききながら言った。

「レスト、教科書ないから見せて?」

 アキハは初めて会った時からこの学園の制服を着ていた。それだけじゃ無く凍りの迷宮では夏服を持っていることも分かった。だが、教科書だけはこの学園に入ってから用意するつもりだった様で、まだ持っていない。だから見せるとなるとオレしかいない訳だ。右隣の奴はオレも知らん奴だからな。信用なんか出来ん。

 フーリアを一度降ろし、机を後ろに運んでアキハの机とくっつけ、また膝の上に抱えて座らせる。

「ああ。とりあえず今日はずっとこの状態だな」

「ごめんね?」

「謝ることじゃないっての」

「……そうだね。ありがとう」

「おう」

 それから教師が来て授業が始まったがフーリアは直ぐに眠り、オレも眠った。目が覚めた時には既に午前の授業は全て終わっており、アキハにどうしていたか聞くと、教科書は勝手に机の中から出したとのことだったので安心する。

「起きないから結構本気で心配した」

「いやあ……授業はいつもこうして過ごしてるからな」

 なんて言っていると、どこからともなく声が聞こえてきた。

『あー、あー、コホン……生徒の呼び出しをします。一年二組、レスト、サリカ・オルディス。二年無名クラス、キリエ・ローデディンス、ジュリア・ハーベスト。以上四名は理事長室まで来て下さい』

 教室に設置されている音水晶から聞こえてくるのはメリアの声。その内容は以上の通りだ。そして呼ばれたのがこの四人と言うことは学園祭のことだろう。

「レストくん、呼ばれてるよ?」

 弁当箱を持ってオレ達の所に来たマートルがそう言った。

 行かなければならないのは分かっているが、

「レスト」

と、来たようだ。

「よう、ミネア。いきなりで悪いがフーリアを頼む」

「え? ちょ……分かったわ」

 フーリアを抱きかかえて立ち上がったオレの横に現れたミネアにフーリアを預けると、やはり最初こそ戸惑ったが自分と似ている存在だからか直ぐに引き受けてくれた。

 先日ハーベストに言われて悩んだ結果、浮かんできたのが他ならぬミネアだった。

 銀龍でもある彼女は、有する膨大な魔力のお陰で人間の姿を取ることが出来る。フーリアも形は違うが、似たような物だ。まだなっていないが、フェンリルの姿を取ることも出来るしな。

 それを感じ取ったから、ミネアも直ぐに引き受けてくれたんだろう。

 というか、今オレが動いたにも関わらず眠っているフーリアは凄いな。

「サンキュ。今度なんか作ってやるから、考えておいてくれ」

「ええ」

 フーリアをしっかり抱きながら答えるミネア。

 アキハとマートルにも頼み、オレは理事長室に向かうべくもう一人呼び出しをされている女子生徒の元に向かう。

「ミネアちゃん、どうやって来たの?」

「テレポートよ」

「え!? それって、実現不可能なんじゃ」

「それは人間にとっては、ってだけ。あたしは人間じゃないからね」

「え?」

 後ろでそんな会話が聞こえたが、気にせず女子生徒に近付き声を掛けると、ビクリと肩を跳ね上がらせ「は、はい!」と上ずった声で返事が返ってきた。

「お前、オルディスだよな?」

「ぇ、えと……はい、そうです」

 前で組んだ両手の指をいじいじとしながら、若干顔を赤くしてチラチラとオレを見るオルディス。今初めて全体を見たが、成る程人気があるのも頷ける容姿をしている。

 肩まで伸びたウェーブの掛かった亜麻色の髪に、大きな琥珀色の瞳。幼い顔立ちに小柄な体躯は、見る者の庇護欲を掻き立てる様だ。

 オレはそんなこと無いが……周りの奴らが何か殺気立っているから多分そうだと思う。

「とりあえず、オレは『レスト』な?」

「はい……知ってます」

 知らないだろうと思って一応名乗ったが、どうやら知っていた様だ。まあ、殆どの授業を寝ていることやらである意味有名ではあるからな。

「そうか。とりあえず、お前と同じ実行委員にされちまったから、理事長室行こうぜ?」

「は、はい。あの、色々、ご迷惑をおかけするかも知れませんが……よろしくお願いします」

「ああ。よろしくな」

 その後何故か男子に射殺す様な視線を送られつつオレとオルディスは理事長室に向かい、途中で迎えに来たらしいハーベストと合流した。登場が天井からだったからげんこつを入れておいたが。

「馬鹿になったらどうするのよ?」

「心配するな。お前は既に馬鹿だ」

「それもそっか…………え、それどういう意味?」

「いくぞ、オルディス」

「え、あの」

 答えると面倒なことになる為、オルディスの手を引いて歩いていき、以降追求は全てスルーして歩き、理事長室に到着。中に入り、一番最初に来たであろうキリエに少し睨まれたが、そも無視して早速用件を聞くと案の定学園祭についてのことだった。

 五・六限を使ってクラスの出し物と大会出場者を決める。一年の他のクラスの奴らにはオレが、二年と三年の他のクラスの奴らにはキリエとハーベストがその概要を記したプリントを配ることになっている。

 どうでも良いが、「キリエ」って言った後に「ハーベスト」って言うと一人の名前になるんだよな。いや、ホントどうでもいいんだけどな? 

 さて、アホなこと考えてないで配りに行くか。腹も減ってるし。

 理事長室を出た所で、キリエは「ちゃんと仕事をするように!」とビシ! と効果音が付きそうな勢いで釘を刺しハーベストと共に去っていった。その時ハーベストが手を振ってきたからオレはそれにチョキで返す。すると今度はグーを出してきたが、先回りしてパーを出しておく。

 それを延々繰り返す、なんてことも無くオレ達もその場を去ろうとしたが、

「レスト」

メリアに呼ばれた。

「なんだ?」

 オルディスに少し待っている様に言って振り返り理由を尋ねると、どうやらフーリアとアキハのことが気になるらしい。とりあえず問題はないと言うことと、アキハの教科書類をできるだけ早めに用意する様に言うと、思い出した様に声を上げ一度部屋に引っ込んだと思ったらすぐに出て来た。胸には教科書を抱えている。

「これ、渡そうと思ってたけど忘れてたんだ。届けてくれる?」

「了解。他には無いか?」

「えっと………………あ、一応これもよろしく」

 暫く空間の中を漁っていたメリアが取り出したのは「部活動入部申請書」だ。

 オレ含め、キリエ達も部活には入っていないため触れることは無かったが、この学園は結構な数の部活動が存在する。だが、そんなことに一切興味の無いオレは部活のことを殆ど知らず、唯一知っている物と言えば「剣劇部」くらいだ。名の通り剣と劇を合わせた物。結構人気はあるらしい。

「もしかしたら『文芸部』くらいには、ユイちゃんも興味を持つかも知れないからね。向こうでも入ってたみたいだし。ちなみに、今この学園にある『ヤキュウ部』や『サッカー部』『テニス部』その他諸々もユイちゃんから聞いたのを元に出来てるんだよ」

「そんな部活があった事を立った今知ったけどな。他にはないな?」

「…………うん、無いね。あ、今日の夕飯はとんかつがいい」

 無い胸を張るメリアに聞くとそう返ってきた。

「分かった。じゃあな?」

「いってらっしゃ~い。サリカちゃん、レストをよろしくね?」

「あ、えと、はい」

 教室同様、後ろから聞こえる会話をスルーして歩き、暫くして隣に並んだオルディスと共に一年の教室へ向かった。

 なんか色々絡んでくる奴が多かったが、全てスルー。オルディスに何かしようとした奴は問答無用でぶっ飛ばしておいた。まあ、それはどうも反射的にしてしまったみたいだが……ずっと「フーリアに近付く奴はぶっ飛ばしてやる」思考だったからな。それの影響が出たんだろう。

 プリントを配り終え、後は無名クラスに届けるだけとなったが、何か面倒そうだから、オルディスは先に戻っておいてもらおう。

 そう思い言ってみると、オルディス本人は苦手意識を持っているのか素直に頷き、二組に入っていった。ソレを最後まで見送った後、無名クラスに向かい扉を開け放つ。

「学園祭の出し物申請書……で合ってるのか知らんが、持ってきたぞ。あと、大会参加申込書。代表はだれだ?」

 無名クラスは他のクラスと違って一クラスしか存在しない。

 単にそれだけの力を持つ奴が少ないってだけなんだが、一年はそれが顕著に表れている。二年は十人、三年は一三人いるが、一年は三人しかいない。

 と我ながらどうでも良い情報をつらつら考えていると手から二枚の用紙が引き抜かれた。同時に掌に軽い衝撃が走る。

「ああ、アンタが代表ね。ンじゃ、五・六限使って決めておいてくれ。遅くても明日までだからな?」

 目の前にいる茶髪をポニーテールにした女子生徒の拳を離しながら言ったが、当人は驚愕に目を見開いている。ちゃんと聞いているのか聞くと、ハッとなり曖昧に頷き、プリントを持って他二人の元へ帰った。

 何か三人同時に睨まれたが、オレなんかしたか? まあ、いいや。

 ちなみに他二人は片方が男、片方が女な。

「ただいまー」

『お帰り、レスト(くん)』

 教室に到着し何となく言ってみたが、三人の声が返ってきた。見るとそこにいるのはアキハとミネアとマートル、そんでミネアの膝枕で眠っているフーリア。起きない所を見ると、眠っているとは言え本能的な部分でミネアには心を許しているんだろうな、良いことだ。

 三人に近付き、屈んでフーリアの頭を撫でる。

 小さく吐息を漏らすフーリアを見て自然と頬が緩む。

 オレがいない間何も無かったか聞くと、アキハとミネアの二人が常に室内に殺気を放っていたとのことで、特に何も起きなかった様だ。

 この二人を相手に勝てる奴なんて、それこそメリアかその愉快な仲間達くらいだろうからな、学園の生徒だけでなく世界中探してもそんな奴いる筈がない。

 なんてことを考えながら昼飯を食おうと思い、手を離そうとするとフーリアが抱きついてきた。起きたのかと思ったが見るとまだ目は閉じられており、寝息も聞こえる。

「……ん……ごしゅじん」

 夢でも見ているのか、寝言でオレを呼ぶフーリア。そっちに集中していたからか、ミネアとマートルが何か言ったが聞き取れず、聞いても「何でも無い」と返され、アキハは心なしか呆れた様な顔をしていた。まあ、いいか。

 抱えて立ち上がり、昼飯を食ったのか聞くとまだ食っていないそうだ。理由を聞けば「オレを待っていたから」とのこと。

「待っててくれてサンキュな? じゃ、食おうぜ?」

 その後、昼食を食べている途中で目を覚ましたフーリアも交え、賑やかに昼休みは過ぎ、現在五限目が始まった所。

 オレとオルディスは教壇に立っている。

 理由は勿論「学園祭出し物」と「大会出場者」を決める為なんだが、いかんせん生徒達が騒いでいてウザイ。

 フーリアはアキハの膝の上に座ってサクラを眺めており、舞い散るその様子が見ていて楽しいのか、尻尾がゆっくり揺れている。ちなみにアキハは普通に読書している。

 あ、部活動入部申請書と教科書を渡すの忘れてた。後で渡すか。

「あの……皆さん、静かにしてください」

 オルディスが言うが、クラスの奴らはギャアギャア騒いでいて全く聞いていない。一応授業だが、自由時間か何かと勘違いしているんだろう。とりあえずそんな奴らには制裁を与えねばならん。

 ポケットに手を突っこみ、そこで空間を開いて耳栓を四セット取り出し、ソレをまだ懸命に呼びかけをしているオルディスに渡す。疑問の視線で見てくる彼女に「耳に嵌めろ」とジェスチャーで示し、嵌めたことを確認し、オレも嵌める。残り二セットをマートルに投げ、一セットをアキハに持って行って貰い、そこで二人が嵌めたこととアキハがフーリアの耳を抑えたことを確認。黒板に爪を突き立て上から真っ直ぐ降ろすと、恐らくギイィイイィイイイイ!! と言う嫌な音が発生したのだろう。生徒達は一斉に耳を抑えた。

 これで静かになったな。

 耳栓を外すと生徒達の呻き声が聞こえたが、そんなのは無視だ。

「さっさと決めるぞ? 遅れたらお前等の帰宅時間も遅くなるからな? ほら、何か意見出しやがれ。オレはさっさと夕食の材料を買いに行きたいんだ」

「そう言えばレスト」

「アキハか。何かあるか?」

「今日の夕飯はなに?」

「学園祭掠りもしてねえな。今日はメリアの希望でとんかつだ」

「ん、分かった」

 それだけ言ってまた読書に戻るアキハ。

 ふむ。

「アキハ、とりあえず言っておくが今は読書の時間じゃないぞ?」

「だって学園祭なんて飽きたもん」

「そういや、お前の所ではどんなことやってたんだ?」

 チキュウについて詳しいことは聞いていないが、今の口ぶりからしてその世界にもこの学園と同じ様な所があるのだろう。

「下らない事ばかりだった。やれメイド喫茶だのコスプレ喫茶だの……まともな物と言ったら、バンドくらいだったかな」

 こすぷれ喫茶とやらも気になったが、ばんどの方が気になりそれはどんな物か聞いてみた。

 何でも、複数の楽器を使って演奏し、ヴォーカルと言う奴が歌を歌うそうで、膨大な数の音楽が存在しているらしい。

 次にこすぷれ喫茶について聞いてみると、既存のキャラクターの衣装などを着て接客することらしく、アキハ曰く「ウザイ」だそうだ。

 何か嫌な思い出でもあるんだろうか?

 だが、成る程。バンドは結構良いかも知れない。音楽室に行けば、多くの楽器があるからな。

言っておくが、オレは音楽の授業だろうと寝る。

 とりあえず候補に入れておくことにし、黒板に「バンド」と書く。

「他にはあるか? ないならこれで決まっちまうぞ?」

 言うと、生徒達は「別にどうでも良い」と言う様な雰囲気でまた話し始めた。

「後三十秒しても何も出なかったら、全員大会強制参加な?」

「はい! お化け屋敷がいいです!」

 ボソリと言った途端一人の女生徒が勢いよく挙手し意見を述べ、続くように次々と手を挙げて意見が飛び交う。どうやら大会に出るのは余程嫌の様だ。

 普通科の生徒が他学科の奴らに勝てる望みは限りなく薄いが、そこまで嫌か? まあ、意見が出るのは良いことだから放っておくが。

「あ、あの、一人ずつ、お願いします」

 オルディスの声に幾らか教室は静かになり、さっきよりは聞き取りやすくなった。お化け屋敷に続いて出た意見は、被っている物もあったが大体こんな感じだ。

 巨大迷路・じゃんけん大会・ビンゴゲーム・クイズ大会・校内スタンプラリー・宝探し・腕相撲大会・指相撲大会・お菓子喫茶・浴衣大会等など。

 色々ツッコミたい気はするが、とりあえず。

「『浴衣大会』ってなんだ? どうやって大会するんだよ」

 皆も気になるのか、頷いている奴がちらほらといる。

 そんな中で一人の男が説明を始めた。

「誰が一番浴衣が似合うか競うんだよ。目の保養にもなるだろ?」

「明らかにそっちが本音だな。まあ、お前はたった今から女子の敵になった訳だ。ご愁傷様」

「は?」

 名も知らぬ男子Bにそう言うと、一瞬訳の分からないと言った顔をするが周囲を見て直ぐに意味を理解したようだ。ほぼ全女子から鋭い目つきで睨まれ一気に顔が青ざめていく。そんな男子Bに近付く女子が一人。相当怒っているらしく握った拳がプルプル震えている。

「アンタねェ……」

「うお! ちょ、ミルシェ!? 落ち着け!」

「さて、痴話げんかは放っておいて「「痴話げんかじゃない!!」」あ~、はいはい。他に意見はないか?」

「無視かよ!?」

「無視だよ。いいから、男子Bと女子Aはそのままイチャついてろ。他にないみたいだから、この中から選ぶぞ? 多数決取るから、一人一回手を挙げてくれ。お化け屋敷をやりたい奴」

 ちらほらと挙がる手を数え、その数を名前の下に書き他の物も取っていく。

 ちなみにオレはお化け屋敷、オルディスはお菓子喫茶だ。

 多数決を取った結果は以下の通り。

 お化け屋敷・クイズ大会、それぞれ十二票。

 バンド・六票。

 お菓子喫茶・七票

 それ以外は全て零票と言う結果になった。

 その後、お化け屋敷を提案した女子とクイズ大会を提案した男子にじゃんけんをして貰い、結果女子が勝ったので。

「オレ等の出し物は『お化け屋敷』に決定した。誰も反対意見はないな? ちなみに男子Bの意見は受け付けん」

「なんでだよ!? あ、いえ、はい、良いです、すみませんでした!」

 叫んだ男子Bが女子Aに殴られそうになりながら謝っていることを確認し、用紙にお化け屋敷、必要な物の欄には「木材・暗幕・その他諸々」と書き我がクラスの出し物はお化け屋敷に決定した。

 さて、次。

「大会に出たい奴はいるか? いないな」

「はや! もう少し聞こうよ!」

「じゃあ、女子B、出るのか?」

「『女子B』って何!? あたしのこと!? 仮にも同じクラスなんだから覚えてよ! あと、大会には出ないよ!」

 ツッコミながらもちゃんと質問に答えるとは、コイツやるな。

「レスト。今貴方が考えていることは分からないけど、とりあえず馬鹿なことは考えないでね?」

 丁度そうしようと思っている所をフーリアに絵本を読み聞かせているアキハに言われた。わざわざ読み聞かせを一旦中止してまで。ご苦労様です。最近フーリアは絵本に夢中だからな。

「ユイ、早く続き」

「あ、うん」

 彼女はフーリアに催促され絵本の続きを読み始め、オレは大会参加申請用紙に「出場者無し」と書き、ソレを理事長室に提出してくる旨を皆に伝え、後は好きにしておくように言って教室を出た。



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