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K君

作者: izumi

今日も良い天気だ。何もかもが輝いて見える。A市の隅にあるN公園は各々体を鍛えるために、スポーツが盛んに行われていた。いつも郊外畑に行くのに通る道筋にはテニスの壁打ちに興ずる老若男女が規則正しく間をあけてラケットを振っている。

郊外畑というのは養護学校の作業班の一つの農芸班が近所の農家に借りている50アールぐらいの畑である。そこでは、大根やイモ類・きゅうり・とうもろこし・きゃべつなど季節にあった作物を作っていた。卒業してから各作業所に行って農芸関係の仕事を主にするために必要な練習を施すためにある。

生徒の中には、土に触れる事を嫌がり何もしない子もいたり、みんなの先頭に立って種をつけたり、畝を作ったりする生徒もいる。

ある日、以前に収穫して学校に置いていた新ジャガから芽が出ていた。調理するのがおそかったのかなとみんなびっくりした。

みんなびっくりしたといえばK君のお漏らし癖だ。朝、家でお母さんから食後に浣腸され成功した日はいいが、駄目な日は送迎バスの中で事をして、登校時にはズボンのケツの穴あたりが下がっていて異臭をふりまく日々が続いていた。そのために担当の教師が、ズボンを脱がす事から始まって、糞の始末、パンツの洗濯と世話がやけた。

ほったらかしにしているわけにもいかず、あの手この手でトイレが近くなると教えるようにK君に教えた。

小便は自分で頃合を見ていけるのだが、大便は駄目だった。が、ある日、例の郊外畑にいる時、しきりに話せない口でウグウグ何かを伝えようとしている。そのうちジェスチャーも加わり大便の意思を表示するようになった。その時は郊外畑の外れに穴を掘って成功させた。

このことを連絡帳に書いたらお母さんは大喜びして学校にわざわざ電話を入れてくれた。教師も今後はお漏らしはないだろうと確信した。

K君の進歩は早かった。しかし、珍しく遅刻してきたある日、連絡ノートを学校で少し遅い朝、探しても見当たらない。しかも、肩を落として何か言いたげだ。

「K君ノートどうしたの?」と詰問すると下を向いたまま泣いてしまった。異臭もするのでトイレに連れて行った。お漏らしをしていた。久しぶりに下着一式の着替えをした。何かあったのか…。着替えの最中、K君の体中に痣があることに気づいた。学校の送迎バスを降りて一般のバスで通学するようになって一週間ほどしてた。教師は思った。きっと心無い人がK君のリュックを開けノートなどを取り出し人のいない場所で虐待を加えたのに違いない。教師は激怒した。

次の朝、K君の乗るバスにマスクをして帽子をかぶって教師が尾行した。路線バスはいろいろな人を乗せて走った。15分経過した頃、名も知れぬバス停で止まったバスは、中学生らしき一団を乗せた。そのうち一人がK君をからかいだした。定期を奪ってみたり、わざと体をぶつけて見たり…。他の笑っていた奴らはK君の降りるバス停とは違う自分達の降りるバス停へ引っ張り出した。教師は追った。5人のグループでK君への虐待が始まろうとしていた。

「やめろ!」教師は怒鳴った。中学生らは雲の子を散らすように逃亡した。残ったのはK君一人だった。安心したのか笑顔で教師を迎えてくれた。思わずK君を抱きしめていた。

「もう安心しなK」と叫んだら、どこか近くで泣き声が聞こえた。そこには、お母さんの姿があった。

「先生ありがとう!この子も成長して、ほら今日はお漏らししていませんよ」ジャガイモも子供もいつのまにか成長するもんだなと教師は感嘆した。この自動販売機に囲まれた一角で3人は声を出して笑った。

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― 新着の感想 ―
[一言] う〜んやはりizumiさんていいな。
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