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第1話:列車

現代よりもちょこっと未来かもしれない時代、

ミイラ男、吸血鬼、などの人外が人と共存する時代。

そんな、時代のとある会社の物語。



「僕が彼ト出会ったのハある列車ダッタ、

 ン?彼が誰カって?イヤ、これは失敬!紹介ガ遅れたネ

 彼の名ハ、ニコラス、ニコラス=スメラギ!性格は少々不器用だガなかなか見どころのアる青年だよ。ことあルごとに人の頭を握りツぶすのはどうカと思うがネ、髪は茶髪、瞳は夜空のよウな黒、こレは彼が日本人とノハーフだという特徴かな

 アァ、だが満月になルと、とても綺麗な金色にナるんだよ!やはり、月にハ血が騒ぐのカねぇ

 好物はハンバーガー!こうイう所だけは、子供らしいんだヨ、一応、彼二十歳超えテる筈なんだケどね、趣味はバイク弄り、休みの日ニは必ずと言って言いホどバイクを乗リ回しているよ

 ソして、最後に、彼の最大ノ特徴、それは

彼の血の四分の一ハ人なラざる者、もっと詳シく言えば狼男だっテことだよ

 まぁ、狼男とイっても一割は君たチと一緒の人間ナんだよ、ぶっきラぼうな奴だけど、仲よくしてやってクれ

 結局、僕ハ誰かっテ?

僕ハ彼の雇い主だヨ、そう、僕はただノ社長だ、愛すベキの社員ノ自慢がしたいダけのタだの社長さ

 とりあえズ、君にハ今から昔話に付キ合って貰うよ」





社長の話から遡ること数年前、ヨーロッパの何処かの列車の食堂車、

本格的な厨房設備にバーをイメージしたカウンター、現在は昼食時である為なかなか賑わっていた。

そんな中、新聞を広げる細身の男とその男の連れらしき短足の男がカウンターの席に腰掛けながら、話していた。

「おい、見ろよ、『イタリアにて惨殺事件、遺体の状態からまたしても人外の仕業か!』だとよ。カッー、嫌だねぇ、物騒な世の中になったもんだよ」と細身の男が言うと、食事をしていた短足の男が、

「むぐっ、確かに最近人外関係の事件多いよなー、この間なんかうちの近所の銀行で人外が強盗したんだよな」と返した。

「まったく、なんとかして欲しいもんだよ、何かあるたび人外の仕業だからなー、いやな世の中だよほんと」

細身の男が新聞を見つめつつ言った。

「けど、お前ハリウッドスターのアメリア=リーンのファンじゃなかったっけ?アメリアつったら確か人外で種族は人魚だったと思うなんだけど」

「ばっか!お前アメリアは人外がどうとかじゃないんだよ!お前、アメリアのデビュー作見てねーのかよ!デビュー作の『マーメイド』はアメリア自身の半生についての話なんだぜ!人魚のアメリアがいかにハリウッドスターまで上り詰めたかという壮大な物語をだなぁ!」

 短足の男がハリウッドスターの『アメリア=リーン』の話題を出すと、細身の男は新聞を置いて急に熱っぽく語り始める。

そんな細身の男に嫌そうに短足の男が

「知ってるよ、お前に何回その話聞かされたと思ってんだ。確かにアメリアは魅力的だよなー」というと細身の男は張り切りながら「だろぉ!」っと返す

「ハイハイ、お前のアメリアへの愛は分かったから、そろそろ帰ろうぜ」

二人組は自室へ帰って行った。

そんな二人組がいた席のすぐ後ろのテーブルで、

茶髪に黒の瞳の二十代そこそこの青年が、今まさに食事のハンバーガーに齧り付こうとしていた。

「いっただっきまーす」

顔立ちはなかなか良く、鋭い目が野性的な魅力を出している。

そんな青年に、青年よりは年上と思われる、男の声がかけられる。

「君」

「ふぁ?」ハンバーガーを咥えながら声のする方向に目を向ける。

「ソこの、席は空いているカね?」どうやら声の主は青年の向かいの席に腰掛けたい様だ

青年は「あぁ、別にかまいませんよ」と了承する。

「スマナイネ、何処も彼処もいっパいでね」

目の前に座った男の言葉に周りを見渡す青年

「あ、本当ッスね、昼飯時だしみんな食堂車に移ってきたんですかね」いつのまにか食堂車は乗車客のほとんどが来ているようだ。

「とこロで青年、君ハ旅行かい?」男が青年に聞く

「いや、俺は一応仕事ッス、えっと、」と青年が口籠ると

「あ、どうヤら自己紹介が遅れタみたいだね、僕は     だ、こんななりををシているが小さナ会社を経営さセてもらっていルんだ」と男は返した。

「じゃあ、社長さんてことッスか、俺は、ニコラスって言います。そういう社長さんは旅行ッスか?」

「フム、ニコラスくん、いイ質問だ。私は旅行といエば旅行だガ、」

「だが?」

「社員ニ黙って来てるのダよ!いワゆるお忍ビ旅行かな」

「社長さん…、あんたよく変だって言われないッスか?」

「オヤ、よくわカったね」

そんな奇妙な出会いをした二人を乗せ、列車は目的地を目指し進むのだった。



狼青年と男が出会っていたその頃、

ヨーロッパ某社の事務室

「あっ、そう言えば今日社長帰ってくるらしいですよ」

事務員の金髪に糸目の優男が急に思いついたように、書類を纏めていた黒髪の東洋人らしき事務員に話しかける。

「な、んだと」

黒髪の男は、目を見開いたかと思うと、顔から血の気がうせ冷や汗を流し始める。

「すいません、バタついてたもんで報告するの忘れてました」

そんな彼を見ながら悪びれた様子もなく、言葉を続ける優男。

「馬鹿野郎、遅えよ…」

そしてあきらめたように項垂れる東洋人。

「?社長が帰ってくると不味いことでもあるんですか?」

完璧に伏せてしまった東洋人に優男が疑問を投げかける。

その疑問に東洋人が、この世の終わりのような表情で答える。

「今日は、」

「今日は?」

「お嬢さんが出張から帰ってくる日だ!」

「マジですか?」

「残念ながらマジだ」

「マズイデスネェ…」

「マズイナァ…」


そんな事務員の心配をよそに列車は原因(社長)と新たな火種はともに目的地に向かってくるのだった。


列車

「へっクし!」

「風邪っすか?」

現在社員たちに多大な迷惑をかけている男は、食堂ですっかり意気投合したニコラスと呑気に会話をしていた。

「キっと何処かで私の武勇伝ニついて語っテいるに違いナいね!東洋にはこんなコとわざがある!『一そシり二笑い三惚レ四風邪』ってネ!」

「あのー、社長さんその理屈で行くと一回しかくしゃみしてないから、悪い噂なんじゃ…」

「ナに!じゃあ、目指すハ二回笑いダ!」

「それはそれで、馬鹿にされてんじゃ…」

「うーン、しかし、三回は惚れだカら子供がいル身としテ、そレは困るしなぁ」

「社長さん、結婚してんの?」

「イヤイヤ、結婚はしてイないんだが、それに子供ト言っても血は繋がっテいないんだよ。マぁ、それデも可愛くて仕方ないんダがねぇ」

「へぇー、(とてもじゃねぇが子持ちには見え無ぇな)お子さん幾つッスか?」

「エっと、確か今年デ上のほうハ21歳で下のホうは18歳だったかなぁ」

「ブッ、社長さん、あんた一体幾つっすか?!」(この面で60代とか言い出したらもう何も信じらんねぇ!)

「ハッハッハ、いやー何歳ナんだろうねぇ?そウいうニコラスくんは?」

「(冗談なんだか本気なんだか、この人だったら自分の歳忘れてても不思議じゃない気がする)…23ッス、お子さん二人とも男っすか?」

「いや、上ガ娘で下が息子だヨ、これがまたわが子なガらかわいい子たチでねぇ」

「そっすか(親ばかだなぁ)」


そんなこんなですっかり意気投合をした、青年と男は食事をしながら他愛のない世間話をしていたのだが、そこに放送がかかる。どうやら列車全体に対しての放送のようだ。スピーカーから、男の声が聞こえる。

『あー、あー、マイクテスマイクテス、おい、これもう繋がってのか?』

どうやら、喋っている男の周りにも人がいるようで、ちゃんと放送がかかっているのか周りに尋ねているようだ。

『あっそう、ちゃんと繋がってるんだな、エー、アテーションプリーズ、アテーションプリーズ、こちらは車掌室ぅ、列車に乗車中の皆々様にご連絡がございまーす、現在今を持ちましてこの列車は俺たち地獄への案内人によって占拠されましたぁ』

『まぁ、そういうわけで簡単に言わせてもらいますと、列車の乗客は全員俺たち列車強盗の人質になりましたー、ハイ拍手ー、ワーパチパチ、ってこれ自分で言うと悲しくなるなぁ』


暫くの間あまりの事態にだれもがキョトンとした表情になってしまったが、乗客の一人が悲鳴をあげるとたちまち列車中がパニックになってしまった。

しかし、スピーカーから一発の銃声が聞こえ一斉に静まり返った。

「おいおい、嘘だろ、こんな映画やドラマみてぇな展開」

「フム、どうヤら不味いことになっタようだね」

そんな中、席に着いたままスピーカーを見つめ会話を続ける二人。

『とりあえず、今の銃声聞いてわかるとおり無駄な抵抗はしないほうが身のためだぜぇ、こっちには何人も銃を持った物騒な強面どもが集まってるんだから、それに車掌室ぶっ壊して列車丸ごと脱線♡なーんてこともできちゃうんだからよぉ、あっ、それいいな、頂けるもん頂いたら車掌室壊してこっかなぁ、ギャハハウソウソ!幾らなんでも列車脱線はしないしない!今この話聞いてビビったやつ何人いるぅ?挙手して挙手!ダメだ俺放送してるから挙手されてもわかんねぇや!』

まるで笑い話をしているかのように言葉を続ける男。恐らくこの男にとっては列車の脱線は笑い話で済んでいくような物なのだろう。

「頭いかれてやがんなぁ」

冷や汗ひとつ流さずに忌々しそうにスピーカーを睨むニコラス。

「清々シいぐらい、いカれてるねェ」

頬杖をつきながらスピーカーから流れる声を聴き続ける男。

ほかの乗客たちは、騒いでも無駄だとわかったせいか神に祈りをささげるものや家族で寄り添ったりしている。

乗務員たちは、なんとかして外と連絡を取ろうとしているようだが、どうやら連絡回線をすべて切断されてしまったようだ。

「ったく、俺はこれからいろいろ忙しってのに」

ニコラスが席から立ち上がりつつ呟く。

「オヤ?どこに行くんダい?外はキ険だよ?」

という問いかけに彼は振り向きもせずに

「便所」

と一言答えただけだった。


二時間後

終点 とある町にて

列車をジャックされてからはや二時間、恐怖の列車になったはずのとある不幸な列車は、無事に終点にたどり着き乗客たちを無事に降ろしていた。

「たっく、最近の世の中なにがあるかわからねェもんだなぁ」

「そっすね」

と呑気に(元)恐怖の列車を眺める無精ひげを生やし茶色いコートを纏った男と青い警察官の制服姿のまだ20代前半ぐらいの青年、彼らは今回の列車ジャック事件の担当になった。刑事と現地の警官だった。

「んで、あんたが車掌さん?」

けだるげに尋ねる刑事に未だにポカンとしていた車掌。

車掌ははっと顔を刑事に向けるものの状況が把握できていないようだ。

「あっ、はい、私がこの列車の車掌です」

「とりあえず、…アレどゆこと?」

刑事が指差す先には

「うぁぁぁあ!!もう二度と強盗なんてしねぇから早く安全な場所に連れってってくれぇぇぇえ!!」

「ほんとなんだよ!!妙な化け物が本当にいたんだよ!!」

「こ、殺されるぅぅぅぅ!!」

と喚き散らしつつ刑務所に運ばれていく元列車ジャック犯達がいた。

暫く犯人たちを「アホなやつら」と眺めていた刑事だが車掌に向き合い再度尋ねた。

「あの半狂乱になってるアホども、一応超有名な強盗団だったはずなんだけど?」

尋ねられた車掌はというと

「いやぁ、実は私も何が何だか、眠らされた挙句縛られて床に転がされてたもんで、さっぱりで」

と苦笑しながら答えた。

「チッ、にしても列車をこんな風にしちまうなんて、どんな奴が乗ってたんだか…」

車掌や他の関係者曰く乗客の中に超強い謎の人物がいたらしく、親切にも犯人たちをしばき倒してくれたらしい。

あまりの早業にだれがやったかもわからない状況だという。

刑事が目を向けた先(元)恐怖の列車は、車掌室の屋根が丸々吹き飛んでいた。

煙草を取り出しつつ「この場合は器物破損?いや過剰防衛?」などとぶちぶち呟く刑事。

すると後ろから若い警察官が、

「刑事殿!こちらに怪しい毛玉が!」

と声を掛け

「んなもん捨てとけ!!」

という言葉とともに殴られていた。

そんな警察の後ろを列車から降りてきた茶髪の青年が「警察官もコミカルな奴がいるなぁ」と呟きつつ通り過ぎて行った。

ふと、車掌が

「あっ、そういえば、狼がどうとか聞こえたような」

などと呟いた。

「狼ぃ?」

「いや、なんかね、馬鹿でかい狼がどうのーとか言ってたような、まぁ関係なですよねぇ」

「あははは」と言いつつ事情聴取のために違う警官に呼ばれたためにその場から離れる車掌。

「狼、ねぇ…」

「刑事殿どうかしたんですか?」

頭をさすりつつ刑事に近づいてきた若い警察官。

「いや、なんか最近狼についてどっかで見たような」

刑事は「どっかで聞いたようなぁ」と首をかしげる。

それにポンと手を叩いて、若い警官が答える。

「それって今話題の連続殺人犯のことじゃないですか?」

「連続殺人犯?」

「えっと、いまだに逃亡中で指名手配されてたようなぁ」

警官は「名前は、えっと、どっかに写真とメモが」と自分の懐を探る。

「殺人犯なんて物騒なもん関わり合いになりたくねぇなぁ」

「あっ、有りました!」

写真を出しつつ大きな声を上げる警官。

「どれどれ、うっわ、目つき悪」

刑事が写真も受け取る。

「やっぱり人外の仕業ッスねェ、名前は、」

写真に写っているのは

茶色い髪に鋭い目つき、歳は20代そこそこ

「ニコラス、ニコラス=スメラギですね、見つけ次第確保する、もしくは射殺するようにって発砲許可も出てます。」

つい先ほどまでこの列車に乗っていた、青年だった。


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