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誕生日

作者: 大澤豊
掲載日:2026/04/12

 別にいいか。

 そう思ってから、日々生きることが楽になった。


 全てにおいて、正しさと完璧を目指すべきだ。僕はずっとそう思って生きてきた。もちろん、それは間違っていないと思う。世界中の人達が過ちを繰り返し、未完成のものばかりで溢れた世の中だったら、この世界は成り立たない。

 でも、常に正義を目指す義務はないし、優勝を目指さなければ死刑台に送られることもない。


 僕たちはただ、自分の求める未来へ向かって生きているのだと思う。

美しいものにならって一歩を踏み出し、誰かの喜びにつながる行動を選択し、命を守る安全なものを作る。それは、僕たち自身が求めた未来ではないか。


「いいんだ」

 そう自分に言い聞かせた時、目の前の光景が少しだけやさしい色合いになる。


 肩の力を抜いて、もっと自由に毎日を生きてほしい。

もっともっと、あなたの笑顔があふれる毎日が続きますように。

大切なあの人に対して、僕はいつもそう思う。

その思いを自分自身に置き換えた時、これまでの僕の中の考えが、少しずつ変化した。


 僕はずっと、間違った行動を選択してきたと思った。正しさや完璧を求め、自分を責め、落ち込み、周囲に八つ当たりをし、求める未来から遠ざかる道ばかり歩んできた。

 でも、大切なあの人がもし、僕と同じ行動をとっていたら、僕は絶対にあの人を責めない。

僕は、あの人に正しさを求めない。あの人の考える正義を、あの人が選択すればいいと思う。あの人の考えは時に間違ったとしても、いつも尊い。あの人はきっと、失敗すれば反省し、ちゃんと前を向いて進んでいく。僕はそれを知っている。


僕自身にそっくりそのまま、あの人に対するような思いを抱くことは難しいけど、それでも、自分に少しでも置き換えられたら、僕の世界は少しだけ心地よいものになる。


 こうして、あの人は僕の世界をやさしいものに変えてくれた。

宝箱にしまいこんだ、きらきらしたビー玉やおはじきのように、雨上がりの空に現れた虹のように、甘えた声をあげる猫のように、庭でふわりと香った梅の花のように、僕を笑顔にした。


 これから僕は、あの人のように、たくさんの人を笑顔にする未来を生きよう。


 時に間違ってもいいんだよ、あの人の声が聴こえた気がして、無意識に口元がゆるんだ。


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