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03 - 戦闘

――login


 現実世界と変わらない全てを包み込むような雲一つない青空の下にブルーはログインした。地に着く。こちらも現実と同じくアスファルトの地面。実は仮想世界は現実と大差ない。唯一の違いは住人。相棒であるか人であるか、だけなのだ。

「こ、紅葉君……み、みてる?」

『ブルー! マジでどうなってんだよ! おかしいぞ色々と!』

 今までの違いは住人、相棒か人であるか、だけだった。

 ブルーの眼前に広がる景色――彼が見たものとは。

 メチャクチャな風景。半壊した家付近に落ちている瓦礫。ビルは崩れ、傾き、大きい道を塞いでいる。倒れた信号機や電柱は複数の建物を潰していた。現実世界と天候や時刻も共用(リンク)しているはずだが仮想世界(オートルモンド)の空は闇に包まれている。画面越しとは言え見慣れた街がボロボロの風景と化した姿を目撃し秋庭紅葉という少年は身震いする。

 紅葉とブルーは目を見張り、一体誰が何のために? そう思うが今は別にやることがあるので考えるのは後だ。

『ブルー!』

「わかってる」

 サポートセンターに連絡。とにかく現実世界で起こるスマートフォンのエアーディスプレイの誤作動と、仮想世界の街が崩壊していると知らせなければ、ブルーは走って目的地へ向かう。

 が、瞬間!

 背に悪寒が走る。後ろから何かを感じ取り、ブルーは振り向き様に一気に後退する。

 なぜなら見たのは目の前に佇む未知の存在だった。

 一言で表せば、それは異型。

 三次元に現れた二次元の影としか表現の仕様がない。人間の形に限りなく近いが肉体や表情があるのかさえも分からない。光すら感じられない。知能プログラム相棒の外見は自由に組み替えが可能だ。何百万種類と用意されたパーツがあるのでパズルのように帰ることができるのだ。しかし相棒の基底構造は人間、動物、昆虫など地球上に存在する生命体がモデル。自作でモデリングも可能だが規約により地球外生命体(架空生物)が禁止されているし登録申請で許可を貰わなければ使用も出来ない。

 そんな違法モデリングされた魔物のような異型とブルーが互いに見据えていた。

『……これも知らせた方がいいのかねぇ~』

「……だね」

 急に色々な事が起こりすぎて若手思考が一瞬だけ止まったが、すぐに我に返る。

 そしてふと気づく。

『……そういえばさ……何でインターネットっつか仮想世界に他の相棒がいないんだぁ……』

 この時代のインターネットは仮想世界。インターネットにアクセスするということは仮想世界にログインするということでもある。仮想世界にログインするということは自分の相棒を仮想世界へ送り込むことである。現日本の仮想世界(インターネット)利用人口は一億を超えている。しかも今は絶賛夏休み中で、まだ昼になったばかりというのに仮想世界に立っているのは紅葉の知能プログラム相棒ブルーと、異型のプログラムだけ。

『とにかく何かヤバイっぽいから早くサポートセンターへ、ブルー!』

「うん!」

少年に名前を呼ばれ答えたと同時に異型が吠える、

「ウガアァァァァァァアアアァァァァァァァァアアアッ!」

 咆哮し異型が動く、二本の腕がブルーへと襲いかかる。

「っ!」

『ブルー!』

 驚くが紅葉の声を聞き、横に動くことで攻撃を交わす。

「てぇぃやああああ!」

 すかさず敵を捉えて反撃する。

 異型に右の拳を叩きつける。

 だが。

『……か、硬い?』

 顔面に叩き付けたブルーの小さな拳は異型の皮膚で止まっていた。

 もう一度、二度、三度!

 何回も何回も殴りつけるがダメージを与えられないどころが動きさえしない。

 全力を持って放たれた攻撃を受けてピクリともしない異型に驚きが隠せないでいた。

 直後、異型の手が動く。

『避けろ!』

「え……?」

 気付くのが遅かった。

 異型の手で首を掴まれた。

 瞬間、野球ボールの如く投げられる。

 数十メートルも飛ばされたブルーは背中から地面に落下。二回バウンドして視界にノイズが入る。

 同時、猛烈な吐き気と痛みの代わりにブルーの処理速度が大幅に減った。相棒はダメージを受けると処理内容に「痛み」という無駄なタスクを追加するのだ。相棒同士の戦いでは大量の「痛み」タスクを相手に追加させて重さのあまりまともに動かせなくすれば勝ち。まあ、つまりは「痛み」タスクの量=(は)減らされたヒットポイント。

「うぐ……つ、つよい……」

『大丈夫かぁ?』

「う、うん……で、でもアイツが強すぎる……ど、どうしよう?」

『サポートセンターかサイバーポリスんとこに行こう! 今そこへのリンクを開く』


――logout


 紅葉はスマートフォンのエアーディスプレイ機能をOFF(オフ)にしてから別のブラウザを起動しサポートセンターへのリンクをクリックする。

 だが。

「と、飛ばない!?」

 メインブラウザに切り替えて画面を確認するけど、ボロボロの街に暗い空、ブルーは同じ場所に倒れ込んでいる。

「くっ! わけがわからない! こうなればログアウトだ……あれ? うそだろ? 何でログアウトしないんだよ!」

 ブラウザが閉じらないだけではなくオプション設定でインターネット接続をオフに切り替えることもできないのだ。

 頭を抱えて泣き叫びたい、でもブルーを置いていくなんて出来るはずがない。とにかく考えろ。こうしている間にも異型はブルーに迫る。あり得ないことが連続して起こっているのだ「痛みタスク」がMAXに溜り普通ならないが「DELETE(デリート)」という可能性も否定出来ないのだ。

 考えろ。考えるんだ。

 今この状況を打破する術を。

 何故かここら周辺のスマートフォンのエアーディスプレイが誤作動を起こしている。

 半滅状態の仮想世界に存在する紅葉の街。

 現れた謎のプログラム・異型に襲われた。

 ブルーは立ち向かうが手も足も出ない。

 そう手も足も……。

「まてよ」

 スマートフォンのスライドキーボードを出し、タッチ操作でブルーのステータスを表示する。

「や、やっぱり!」

 能力が全て最低値どころか装備品が一つも付いていない。

 というのも相棒が戦えるようになるに必要なのは「決闘者(デュエリスト)プラグイン」だけではなく戦闘能力向上アイテムも必要。まあ、これも自作したり可能だけど申請して許可を貰わないと使えないし、有料物ばかりで無料で直ぐに使えるものはないのだ。

 でも、

「友には悪いけど、アイテムを使わせてもらう」

 紅葉は今の今まで友の相棒を使いデュエルしていたわけではない。プログラミングで改良もしていた。友のアイテムは、彼の相棒用に最適化したものだからブルーには使えない。

 だけど秋庭紅葉という少年は得意なものが二つある。

 一つ、昼寝。

 一つ、ハッカーと呼ばれるほどのプログラミングスキル。

「今から解析、逆アセンブル、そして再プログラミングしてから即コンパイルする」

 紅葉はメインブラウザに映る相棒を見据えて言う、

「五分……いや、三分だけ耐えてくれ!」

『イエス、マイ・パートナー……』

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