第13話 最終話 ネイトの報告
コルブロが帰った後、ネイトが言った。
「さて、私も帰るわね。泊めてくれてありがとう」
「何処から帰りますか?台所?お風呂場?」
「足が濡れるから洗面所でも良いかしら」
「良いですけど……あの、お世話になりました。いろいろありがとうございました」
イピディアが言った。
「また遊びに来てね!」
ミラも嬉しそうに言う。
「日本自体にはまた来るのよ。来月推しのライブがあるから」
「何度も聞きますが、あなたは本当に古代エジプトの神ですか……?」
ネイトがふふっと笑った。
「神様なんて、もう暇なのよ」
そしてシュンっと音をさせ、洗面所の蛇口に入って去って行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
厳かな柱と彫像が立ち並ぶ神殿の中の、1番奥の椅子に誰かが座っている。
そこへコツンコツンとヒールの音をさせて別の人物が来た。
椅子に座っている者が顔を上げて、近付いてきたその者を見た。
「……ネイトか……数日姿が見えなかったが、何処に行っていたんだ?」
ネイトはゆったりとした動作で近くの椅子に座った。
脚を組んだのでシースドレスのスリットから覗く脚線美が悩ましい。
「日本に行っていたのよ。本当に久しぶりに水の魔女に呼ばれてね」
「ほう。お前がグルメとライブ以外の目的で日本に行くとはな。それに今どき水の魔女とは珍しい。
『魔女』などとうに滅びていると思っていたが……」
「ミラよ。3500年経って蘇って来てたわ」
「なんだって?そんな事有り得んだろう、人間ではあった筈だぞあの子は」
「……ミイラにされていたらしいわ。アヌビスの仕業」
「アヌビス?見つけたのかアイツを」
「ええ。見つけたわ、オシリス。4000年前の『エジプト神全員集合新年会大ビンゴ大会』で優勝して『【4000年間人間やってみる?】チャレンジ』の権利を貰って人間に生まれ変わった彼をね」
「アイツ……今まで何処にいたんだ……探しまくったんだぞ、3500年も……」
「『コルブロ』なんて何処にでもいるエジプト人の名前を語っていたわ。最近まで海の中にいたみたい。記憶もすっかり無くして思ったより好青年になっていたわ」
「好青年?」
「海の動物の為に人間の大学で環境汚染問題を解決する為の研究をするって頑張っているの」
「ほう……」
「ただ、魔法使いに生まれ変わったのが良くなかったわね。手癖かしら、無意識にミラをミイラにしてしまったのよ。それに巻き込まれてもう1人の魔女にも不死の呪いが掛かってしまって……ヘフを呼んで解いてもらったわ」
「アイツは私の事もミイラにしたぐらいだからな、冥界神の力が漏れ出てしまったか……しかしそれは、人間の生を終えて帰って来たら反省文を書いてもらわないといけないレベルだな。タイトルも付けてラノベ風に20,000文字ぐらいのやつ」
「面白い話にしてもらわないと原初の神ヌン様もお喜びにならないわね」
「うーん……タイトルはそうだな、ミラとミイラと魔女……ミイラ魔女……『ミラ魔女!』なんてどうだ?」
ネイトはクスッと笑った。
「センスないわね、オシリス」
完
ようやく最終話まで漕ぎ着けました。
読んでいただき、ありがとうございました。




