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第5話 アレクサンドリアの魔法使い ①

 転生した屋敷前を後に俺達はメリルと言う魔法使いが住むという街外れに向かった。

 


 この場所に転生させたコーディネーターなるものは異世界だと言っていたが、この辺りの風景は何処かバテレンの住んでいた世界のような気がする。実際に行ったことがないから分からないが、信長さまの茶会でバテレンが描いた街の姿に似ていたからだ。また献上した地球儀なる丸い玉に描かれた世界はとても大きく広かった事も思い出した。

 その折に信長さまは地球儀に描かれた小さき我が国を見て「世界に果てはないな。この国を召し上げたら海を渡るか秀吉」と申されていた。

 そんな事を考えながら、フレドの後を追いつつ街の目抜き通りを進んで行く。

 


 肉や魚に野菜といった食料品の店が軒を連ね、そこに宿屋や武器、防具といった店先の品を見ていると、建物の作りは違うものの安土や大坂の城下町を彷彿としているかな。

 ほどなく歩いていくと道の両端に木々が目立ちはじめやがて森になった辺りでメリルが住む館に辿りついた。

 ちょうど、館に着いた時には陽が沈みかけ辺りが薄暗くなりつつある逢魔が時といったところ。

 しかし、この屋敷は門構えからして立派な装飾がされていて、建物の作りこそ違えど例えるなら京の都の公家屋敷といった感じがした。

 魔法使いって儲かるんだと館を見て素直に思ってしまう。


 フレドが「ごめんくださーい」と扉をノックした。

 すると勢いよく扉が開き、中から年端もいかない少女、いや歳の頃は6歳くらいの女の子二人が飛び出してきた。

 二人とも目がクリっとしていて鼻が高く顔だけ見ると大人げているが、身長や頭にしてる大きな飾り(後にリボンと知る)がなんとも可愛らしく、身長も低くやはり子供らしい容姿をしている。瓜二つなところを見ると双子のようだ。

 フレドもそうだが、とにかくこの世界の住人は目鼻立ちがはっきりしていて、肌の色が白い。


「ヒデヨシ、ヒデヨシ! あんたヒデヨシでしょ?」

 そっくりな顔立ちをした女の子が口を揃えて聞いてくる。

 それと同時に、何故この子は俺の名前を知っている? 転生前に知り合いだったのだろうか。

「おい、聞こえてるだろうヒデヨシ。返事するだばさ」

「はい、そうだよ、ヒデヨシです。なんで俺の名前知っているの?」

 なんか、子供に呼び捨てにされて不甲斐なさがあるが、この世界では普通かも知れないので右から左に受け流して逆に疑問をぶつけてみた。

「姉さまがヒデヨシが明日来るって言ってたから知ってるだばさ。あたいらはヒデヨシが来るのを三年待ったんだからね」

 恐らく姉さまってのはメリルなる魔法使いの事なんだろうけど、俺がこの屋敷に来る事を知っていたとは? はて魔法使いなるものは予知能力があるって事なのだろうか。しかも三年前から待ってただと。

「さあーヒデヨシ。姉さまが待ってるだばす」

 最後の語尾がちょっと可笑しい女の子に手を引っ張られて屋敷の中に俺達は招き入れられた。


「姉さま、ヒデヨシ連れてきたよ」

「ありがとうトレマシー、ドーラ」

「お安い御用だばさ」

「あと、例のものを持ってきてくれるかしら。重いからきをつけてね」

「はーい姉さま!」

 双子らしき女の子に御礼を言う。

 姉さまと呼ばれた女人をみた瞬間、俺は「ドキューン!」とした。

 この衝撃は寧々や茶々を初めて見た時に似た感情かもだ。

 かなりメリルだと思わしき魔法使いは美しい。

 妹と同じく目鼻立ちがはっきりしていているが、キリッと引き締まった表情をしていて彫師が作成した弁天様のような顔立ちをしている。

 明らかに想像していた占い師や呪術師みたいな怪しさや不気味さは皆無であった。大坂の城下町で見かけたら、三成あたりに頼んで側室にしてもらうぐらいに俺好みの美形である。

 きっと京や堺あたりの商人が見繕った小袖なんか着せたら肌の色が白いから似合うんじゃないかと想像してしまう。

 故にこの女人と対面するとソワソワした。

 

「お待ちしてましたよヒデヨシ様。はじめまして!ですね。わたしの名前はメリル。アレクサンドリアの魔法使いと言われております」

「確かにヒデヨシだが……。俺を待っていた? とは。はていかに」

 単刀直入に聞いてみた。

「それは、ワタシもヒデヨシ様と同じで元々はこの世界の住人ではないのです。転生する前にワタシの信じてる神様が降臨されて、ヒデヨシ様に協力するようにと。

 また、これからのビジョンをお示しになられました。わたくしは、ヒデヨシ様のあちらでの世界のご活躍はよく存じております。ですから、ヒデヨシ様の目的達成の為にこのメリルをあなた様の右腕。いやヒデヨシ様の世界では軍師でしたね。それに任命なさいませ。で、ないとヒデヨシ様は……すぐに……死にます」

 えっ!? メリルも転生してきたって事なのか。で、死ぬるとは?

 それに、経緯は分からないが、神なるものに俺の助太刀をいたせと言われたと申しておる。ますますメリルに興味がわいてくる。

 ぐ、軍師って……。

 確かに、俺には半兵衛や官兵衛という有能な軍師がいたから天下人まで昇る事が出来た理由の一つなわけだが……。

 女人に果たして務まるのだろうか?

 いやいや、まてよ。軍師って言葉に縛られなかったら、家康殿の側室に阿茶局がいたように軍師ばりの助言をしていたと聞いたことがあったからな。

 でも、メリルは何で俺の助けをしてくれるのだ。この女人の目的があるはずだ。人ってのは見返りや打算がないと動かない事は人たらしと言われてきた自身が一番知っておるからな。

 それとメリルの言っている神様=コーディネーターと思ってよいのかな。そもそもこの世界に来ることになった元凶である神ならぬコーディネーターの目的が分からない。

 それにしても、どんどんと知りたい事が矢継ぎ早に出てきて好奇心が刺激されるのは良いけど、頭が知りたがり過ぎて軽く麻痺してしまう。

 ここは聞きたい事を整理しとかないとな。

・ この世界の情勢、誰が一番の権力者、勢力図みたいな状況。

・ 何故、メリルは三年あまりの月日を待ってでも俺の軍師となり率先して協力してくれるのか。

・ メリルが協力しないと俺が死ぬとは。

と言ったところだろうかな。

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