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第49話 源次郎の真田騎馬隊

 だが、偵察任務からの成り行きとはいえ、トーレス・パラメキア連合軍の軍勢に加わってしまった現状とはゆえ、このままでは双子のトレマシーとドーラが戦死してしまうのはあまりにも可哀想。


 いや、俺自身こんな異世界で死にたくない。

 輝かしい未来が待っているのを知っているからだ。


 とは言えど、なんとか最前線近くから逃げだしたものいずれは時間の問題で囲まれてしまうだろう。

 何しろ敵の数が半端ない。

 メリルによって荷台部分がぽっかりと開けた馬車から見える景色には【厭離穢土欣求浄土】と書かれた旗印を持つ足軽兵の姿も見えた。

 この旗印は徳川家のものだから、家康殿も魔王軍に参戦しているのは明らかだ。

 信長様亡き後、天下統一した俺だが最後まで油断出来ない狸だった家康。

 実際には家康の策略で一度戦では負けている。

 だから、余計にあの旗印を見たら恐ろしい。


 このままでは……。

 ここは起死回生とはいかないものの逃げのびるだけの何かが欲しい。


 俺は藁をもすがる思いで、太刀と共にメリルの言う所の神様から授かりし指輪にかける事にした。

 確か、パラメキアの地に赴く際に指輪の能力が向上していて助けになると夢で告げられ機会があれば試してみようと思っていたからな。


 俺は指輪を擦りながら「助けて、助けてくれ」と切望しながら願っていた。


 追手の騎馬が迫る中、指輪が光輝き出し法螺貝の音が耳に入り出した。


 その時、馬車の後方の景色に変化が起きる。

 以前にアレクサンドリア城でキマイラと戦った時のように空間が丸く裂けたのだ。

 だが、キマイラ戦の時とは違い裂けた穴は明らかに大きい。


 そうして「ヒヒヒーン」と馬の咆哮がしたかと思えば裂けた空間から赤い甲冑を着た武者が数百騎と飛び出してきた。

【真田幸村と十勇士】

 頭の中で現れた助っ人の正体が告げられた。

 キマイラ戦の時は清正と正則だったが、俺と縁のある武将が指輪から召喚される仕組み。

 なるほど、徳川方には真田が出現してくれた。

 負け戦をした事がない徳川に対して唯一土をつけたことがあるのが弱小大名とされた真田家だからだ。

 しかも一度ならず二度も勝っているから家康にとっては天敵と言ってもよい存在だろう。

 どういった仕組みで真田の騎馬隊が選ばれたのか知らないが徳川に対して真田が選ばれたのは指輪召喚の妙である。

 

 助っ人で、現れてくれた真田の騎馬隊は真田家独特の三途の川の渡し賃である赤地に黒い六文銭が描かれた軍旗が頼もしい。

 あまりの数で、どれが曲者真田の次男坊こと源次郎かは分からない。

 だが、源次郎こと幸村とそれに集いし古参の真田十勇士にかかれば、流石の狸な家康に一泡吹かせられるのは必定だろう。


 空間の裂け目から飛び出した真紅の甲冑を着た武者達は各々が朱槍を頭上で回転させながら、馬上から敵兵を突きなぎ倒していく。

 蹴散らす姿は見ているこちらも爽快そのものだった。


 表示からすると、あの騎馬隊の侍大将は真田幸村こと、源次郎なのだろう。

 あやつの親父はなかなかの曲者で天下人だった俺をかなり悩ませる存在だったから滅ぼしてやろうと思っていた矢先に現れたのが真田家の次男坊だった源次郎だった。

 源次郎は親父とは違い素直で利発だったから俺は直ぐに気に入り馬廻り役にした。

 しかも義理堅く人情深い漢だ。

 そういった理由で俺は源次郎を取りたてて側におくことにした。

 

 姿こそは見えないが懐かしい源次郎。

 大坂では随分と可愛がってやり真田家も源次郎のおかげで取り持つ事が出来たからな。

 そんな、源次郎が騎馬隊を率いて恩返ししてくれていると思うと嬉しい限りだ。


「今回の召喚された騎馬隊はもの凄い活躍ですね」

 魔王軍の敵兵が真田騎馬隊によって倒されている姿を見てメリルが感嘆の声を上げている。

「おかげで後方からの追手はなんとかなりました。今の内に逃げましょう。もたもたしてるとドラゴンに見つかります」


 メリルは馬車の荷台で攻撃しているトレマシーとドーラを馬車の御者台近くに呼びよせると進路を妨害している敵兵や障害物に火力を集中させた。


 障害物は次々と魔法使い三姉妹によって消されていき馬車は全速力で疾走し負け戦場から逃げ出していく。

 こういう時は逃げるが勝ちだからな。


 ある程度逃げたらパールロードから脇に進路を取るのが得策だ。

 数時間馬車を走らせ、トーレス・パラメキア連合軍が奪還した砦まで何とか逃げ延びた。

 ここはパールロードからは脇にそれた拠点で今は無人だから、わざわざ魔王軍も来ないと思っての事だ。


「さて、これからどうしよう?」

 

 ひとまずは命が助かり安堵していたが……。

 俺達は目的を失い途方にくれていた。


「魔王信長の軍勢の目的は定かじゃないけど、恐らくトーレス城狙いなのじゃないでしょうか」


 メリルは情勢を鑑み話をする。

「ひとまずはジェラルミン王からの偵察任務で報告する事は沢山あるので敵に見つからないようにアレクサンドリアに戻りましょう」


 確かに、パラメキアのシャングリラまで到着こそは出来なかったものの、陥落させた魔王軍の事も報告程度は出来た。

 今後の事を考える意味でも一旦アレクサンドリアに戻るのが良いだろうと思われるからだ。

 恐らく、トーレス・パラメキア連合軍も壊滅した事も伝えないといけないしな。


 砦で少し休憩も出来たし、アレクサンドリアに戻る事も決まった俺達は、そろそろ出発しようと思っていた矢先。


 砦の上空を三匹のドラゴンが西に向かって飛んで行く姿が目に映る。


 柴田と明智が乗る黒龍と赤龍の二匹は分かったが、もう一頭のドラゴンは一番大きな姿をしていた。

 しかも、頭が複数ある多頭のドラゴンで見るだけで身震い出来る禍々しい姿を見せつけながら巨大な翼を飛翔させ姿を消した。

 


 

 




 

 



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