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第40話 絵に描かれたもの

 す、スケコマシって……。


 もしかして俺の事?


 いや聖騎士団を除いたら男は俺しかいない。


 って事だわな。


 ジェセフって奴はやっぱり第一印象から苦手な感じだと思っていたが性格悪そうだわ。




「アレクサンドリア王の命があれば先陣であろうと後詰めであろうと従軍いたしますが、失礼ながらこの度の出陣はジェセフ侯の独断ですから如何なものかと……。それと敵を舐めてはいけませぬ。パラメキアの時もここに来る途中もドラゴンの恐るべき火力をまざまざと見せつけられました。もし行軍中の隊列にドラゴンが現れたら、いくら数がいようとも、ひとたまりもないかと存じます」




 先ほどはジョセフ侯の言う事も一理あるかと思ったが、流石ルークだ。先の事を考えての深慮深い意見だな。




「ドラゴンの事は案じるな。軍事マイスターによって新兵器を準備しておる。本来は城塞戦用の投石器を改良したもので高さ百メートルは飛ぶ巨大ボーガン。つまりは槍を飛ばす仕掛けの物を八門用意したから流石のドラゴンも槍で退治してやる。早く現れて欲しいぐらいじゃ」




 ルークが先日言っていたように逃げてきた人達が知恵を絞ってドラゴン対策している。しかも、倒してやろうという気概はあっぱれだと思う。


「でわ、聖騎士団一行の諸君達出陣時にまたあおう、帰りに城門に置いてあるドラゴンキラー兵器のトライデント・キャノンを見ていくといいぞ!」




 ドラゴン対策兵器に名前までつけてるのか!?


 しかし、感性のかけらもない呼び方だ。


 まぁ、兵器ってこんな名前なんだろうな。


 ドラゴンで思い出したが、この侯爵が立ち去る前に絵の事を聞かないと。




「あ、あのすいませんジョセフ様。良ければこの前献上されました敵が描かかれてる絵の方を拝見させてもらいたいのですが……。私達も侯爵と共に参戦するとなると相手の事を少しでも知っておきたいと思いまして」


 


 ジョセフ侯爵は俺の呼びかけに対して一瞬宙を見つめた。どうも、畏まった言い方は苦手だ。


「そう言えば、パラメキアの避難民が下手くそな絵を持ってきておったな。今は手元にはないから後で城のものに持たせるとしよう。スケコマシ君」


 こ、こいつ、やっぱりスケコマシとは俺の事なんだな。本来ならその場で手討ちにしてやる!


 だが今はただのメリルの従者設定だから何も出来ない。


「ありがとうございます。我々はルクソールと言う名の街で一番大きい宿屋におりますからお願いいたします」




 ルークが補足してくれて助かった。


 成り行きでつい言ってしまったが勝手に参戦も決めてしまいルークには申し訳ない気持ちだ。






 俺達はジョセフ侯爵と大した話も出来ずに追い返されるような形で宿屋に戻ってきた。


 どうも、侯爵はアレクサンドリア王を出し抜いて皇帝陛下に認めてもらいたい気持ちが強い気がする。


 ここからは陥落したパラメキアが一番近い城だから、敵との緩衝地帯となっているアレクサンドリア高原がない分危機感も強いのもある。


 だから、侯爵は短期間のうちにドラゴン対策をして、逆に魔王軍に対して先手を打つ構えのようだ。人間性はともかくとしてあの侯爵は意外と仕事は出来ると思ってみたりしていた。




 宿屋のギルドで情報収集をしていると、お城からジョセフ侯爵の使いの者が来ていた。


 どうやら、俺のお願いした絵を忘れずに持たせたようだ。 


 いやルークが念押しをしてくれたから聖騎士団長の顔を立ててくれたのだろう。


 実際にこの敵が描かれている絵が見たいが為にトーレス城主にまで会ったというのもある。


 アレクサンドリアからの使いの話なら聖騎士団だけで充分だからだ。


 逆に俺達が行ったところで相手からしたら「誰それ?」って事もあるから経緯を話す手間が増えたりする。




「届いたのですね」


 部屋に戻るとメリルがちょうど卓の椅子に座って聞いてきた。


「あぁ、ちょうどジェセフ侯爵の使いが持ってきてくれたよ。確かここに描かれてるドラゴンの乗り手が俺の名前を知っていて探してるとか……だしな気になって仕方がないから。まぁ、偶然の名前の一致の方かもだけどな」


「その事ですが、私も気になってました。そして


絵の内容によってはヒデヨシ様に確認したい事があるやも知れませぬ」




 なんかメリルは知っている事でもあるのか?


 意味深な物言いをしてくる。




 早速に絵の描かかれている画帳を開けてみる。


 ジェセフ侯爵が下手くそだと言っていた絵は絵心がない俺からしたら非常に上手くかけていた。


 絵はドラゴンが地上に降り立つ姿が描がいている。


 そして、そのドラゴンに股がる乗り手もしっかりと写生されていた。




 そこに描かかれていた者は……。




 角と見間違われた鎧兜を被り胸当てには紋章が入った甲冑を来ている。


 兜から覗く髭面顔の男は見覚えがあった。


 俺はあまりの驚きで腰が抜けそうになりかける。


 そこに描かかれているのは、織田家筆頭家老の権六、いや柴田勝家だったからだ。


 胸当てについてる紋章はよく見ると織田家の家紋である【織田木爪紋】で鳥の巣を模した紋で信長様が好んで使われていたから見間違えはない。  


 しかも、ドラゴンに付けられた鞍の横に金幣馬印と思われる権六の印がついているではないか。


 


 恐らくあの長い装飾品は黒い竹棒の先端に金色をあしらった物で戦場で柴田勝家の馬印を見たものは権六の猛将ぶりを知っているから震え上がったものだ。


 この際はドラゴンについているから龍印というのだろうけどな。


 かつて、俺も賤ヶ岳で権六と織田家のあとめ争いで相まみえたが武将としては無骨でやりにくく正室として迎えた小市様と一緒になって最後まで俺を下人呼ばわりの猿と言っては嫌っておった。

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