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第38話  魔物侵攻 ②

 翌朝早くに俺達はドラゴンに滅ぼされしククル村を出発した。


 ククル村の悲惨な状況からアレクサンドリア東部にある町や村が心配だからだ。


 それと、パラメキアの国境に一番近いトーレス城も気がかりで何もない事を祈るしか出来ない。




「ここも、やられている」


 俺達の危惧していたククル村より東の村々はことごとくドラゴンや魔物達の餌食になっていた。


「これで三日三晩野営だぜ。たまにはゆっくりと背を伸ばして寝たいものだ」


 聖騎士団員のエリアがため息まじりに愚痴を漏らす。


 日中はアーガスと交代で騎手と対空監視をしているから気が抜く暇もない所に村の惨状を目の当たりにするものだから心労からの精神的負荷も限界に近いのだろう。


「みんな、疲労困憊してるだろうが明日にはトーレスの領内に入るから、今度こそは宿に泊まれると……」


 そのように、皆を励ますルーク自身も覇気のない声をしていて元気がない感じがする。


 アレクサンドリアの城下町でフレド達に用意を手伝ってもらった食料もいつの間にか無くなりこちらも野生動物を狩猟しなければ飢えてくるのは時間の問題である。


 もし、ルークの言っているトーレスの城下町が機能していなかったら、偵察任務の遂行が困難になり、アレクサンドリアまでの撤収も考えないといけない。


 本来はパラメキア国内に侵入して、いかなる事になっているのか等、情報収集しないといけないのだが予想外のドラゴンの存在が厄介事だ。


 あんなのが広い空を縄張りにしている事を考えたら撤収も英断の一つかも知れなかった。


「たぶん、トーレスの城下町は大丈夫かと思います。あの街はロックフィールドと言う名前で行けばわかりますが天然の地形を活かした要害ですからね」


 こちらの心配をよそにルークが町の様子を推察してくれた。


「パラメキアが陥落する直前にパール国内とアレクサンドリア国内に避難した皇民が沢山いたのですよ」


 意外にもルークからパラメキア陥落直前の話を聞くのは初めてだ。


 もしかしたら逃げてきた落ち度があるのかも知れない。まぁ、単純に聞く機会が無かっただけかもだけど……。




「その時に皇帝陛下は帝国親衛隊クロマントと共にパール教国側に落ちのびされたのは周知だと思います。勿論、皇帝陛下についていかれた者達も沢山いたと思いますが、半数以上はアレクサンドリア方面、つまりはトーレス城に行ったかと考えられます」




 かなりの数が避難してると思っていいような話。


「その中には、まだまだ戦える兵士や魔法使いも沢山いたと考えられますから。恐らく、数にして五千人はいるかと思いますよ。今はトーレス城で編成されて城や街の防御にまわっているかと。我々と同じでドラゴンのあのような火力を見せつけられたら逃げますから」




 どうだろうな? ルークの話では半分くらいは期待持てそうだが、あのドラゴン相手では兵士が何人いても全滅しそうな気もする。


 だからパラメキアが陥落したのだろうしな。


 そこらの不安をルークに聞いてみると自信ありげな見解を述べてくれた。


「パラメキアが襲われた時は不意をつかれた部分もありましたから……今は我々がアレクサンドリアに一報を入れている間に何らかのドラゴン対策はしていますよ。トーレスに逃げたものの中には博識で高尚な学匠や陛下の教育係などもいたはずですから学問書引っ張り出してますよ。パラメキア皇民だって手をこまねいている訳じゃないですから……と思いたい」




 なるほど最後が言いきってなくて声が少し小さくなったのが気がかりだったけど、俺達だって偵察任務で動いているわけだし悲観的な話ではないよな。




 ドラゴンが謳歌していたアレクサンドリア高原を抜けると、道の先の景色が一変して高い山々が見える。


 パールロードも直線が多かったところから、なるべく平地を進めるようにとくねくねと蛇行する進路が目立つようになってきた。




「もうすぐトーレス城が見えますよ」


 およそ、ここまでは偵察任務として最低限来なければいけないトーレス城が山間の狭間に姿を現した。


 この城は地形的なものを利用した自然の要害だと思った。


 城を見るにどうやらドラゴンや魔物達には襲われてはいない。


 あのアレクサンドリア高原で見たすす煙が上がってないからだ。


 


 パールロードから一本脇の道に進むとトーレスの城下街が見えてきた。


 他の街と違い入るには門を通らないといけない。この街もトーレス城と同じく地形の利を利用した堅固で攻めにくい作りをしていた。


 門の周りを囲む壁は自然の岩盤だからだ。


 言うなれば天井の空いた岩場の隙間に街があると言って良かった。


 だから、ルークがこの街の名前の由来は行けば分かると言っていたのは岩盤に囲われた街だからか。


 俺がもし、城や街を作るのならこのような場所に作ると思わせる絶妙な地形をしているからな。


 


 早速、ルークは入口で門番に街に立入る許可を貰ってくれた。


 すぐに数メートルはある門が開き街の中に入れた。


 やはり、聖騎士団の格好をしているルークは住人達から信頼されているのがよく分かる。


 どこの街に行っても大人気だった面目躍如な聖騎士団といったところ。


 馬車は宿屋までエリアに任せて、ルークの愛馬の後ろを歩いて街を散策してみる。


 ずっと馬車で座っていると背を伸ばして歩きたくなるのが人の本能だと痛感してしまうからな。




「あ、門番が言ってたのたが、少し匂うかも知れないがドラゴン対策だから我慢してくれ」


 と、ルークが匂いのもとは自分じゃないと言いたげに原因を説明してくれた。


 匂いの元は櫓の柱に吊るされた袋だ。


 何でも、パラメキアから逃げてきた学匠が文献を調べてドラゴンの嫌う匂いを見つけたそうだ。     


 それを袋に入れて街のあちこちに置いている。




 中身はゴベアと言う魚を乾燥させたものとタマネギとニンニクを腐らせ発酵してから入れるそうだ。さらに猫の排せつ物を入れると更に効果あるとの事。


 にわかには信じられない話ではあるが、今のところドラゴンは飛来していないから信じるものは救われるのかも知れない。




 だがこの街は臭い……。

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