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第37話 魔物侵攻 ①

 確か、エンゲルの街で聞いた話では、アレクサンドリア高原で牧畜をしてる者達が襲われてるって事だったが……。


 かなり西側までワーウルフやドラゴンが迫ってきてるよな。


 あの羊飼いもどこから来ていたのか分からないが、安全だと思い放牧していたはずで、まさかのドラゴンが飛来して全滅したわけだから……。


「ククル村が近いって言ってたよね。チーズ鍋が絶品ってとこ。あのドラゴンの感じでは……それと、これから先、馬車での旅は危険かもよ」




 俺は心配事をみんなに吐露してみた。


「確かに村の事は心配だな。ちょうどドラゴンが現れた稜線の裏側辺りがククル村だと思う」


 やはりククル村はこの辺りのようだ。


「それと、やはり馬車という足がないとアレクサンドリア領内すら出るのは難しいし時間がかかりますね」


 聖騎士団が意見を言ってくれる。


「あのマジックミラーって魔法で何とかならないのかい?」


 困った時のメリル様だ。


「残念ながら移動中はマジックミラーは無理ですね。効果があるかは分かりませんが魔法で嫌な匂いをつける事ぐらいですかね」


 ちなみに嫌な匂いとはニンニクや玉ねぎでワーウルフには効くようである。


「うーん、匂いはともかくとして、問題はドラゴン対策ですな。現状出来る事は目視を強化しての上空確認くらいですかね。先ほどみたいに上手く発見出来るとは限りませんが……」


 ルークの意見が妥当な所で単純だが魔法に頼る事が出来ない以上は見つからないように事前発見するしかない。


 数分稼げたらさっきみたいに擬装して隠れてやり過ごせるだろうしな。


「パラメキアまでの工程の半分超えたくらいですし、ここから先は魔物も出現するし正念場かと思います」


 確かにルークの言う通り、ドラゴンが現れた事もあり潮目が変わった気がする。


「ドラゴンも去り、馬も目覚めましたので今晩の宿になるククル村に向かいましょう」




 ルークは寝起きの愛馬にまたがるとパールロードを東に向かい先導を再開した。


 いくつかの起伏のある道を進むと、ドラゴンが最初に見えた丘陵近くまで来た。


 幸いな事にドラゴンの姿は確認されていなかった。


 丘陵の下り道に「酪農とチーズフゥンデュのククル村へようこそ」と書かれた立て札を見る。


 チーズなんちゃらはこの村の名物みたいだから食べないわけにはいかないと思っていたらククル村が見えてきた。




 すぐに村の異変にルークが気づき馬の脚を止めた。


 車窓からは村のあちこちからすす煙が立ち上っているのが見える。


 馬車から降りて村の入口付近に立つ。


 ドラゴンに襲われたのが明らかな無惨な姿となりし村。


 いや、かつては村があったと言われないと分からない跡地と化している。


 ドラゴンの火炎ブレスによって焼かれた石工の壁は高熱からか溶けて炭化し風が吹くと砂埃となり舞っている。


 焼かれた木材の煤煙具合からして襲われのはつい最近で二、三日ぐらい前だと思えた。


 


 どこからが入口かは分からないが村の跡地らしき場所に足を踏み入れ生存者がいないか皆んなで捜索してまわった。


 家屋のほとんどの屋根は吹き飛ばすかのように壊されていて、普請工事前みたいに基礎の枠だけが剥き出しになっている悲惨な有り様。


 きっとドラゴン達は家の中に逃げ惑う人々を引きずり出す為にブレスや脚で屋根や外壁を破壊したのが想像出来てしまう。


 それが証拠とばかりに広場らしき空地に無数の人骨が塚のように積み重なっていた。


 人骨は大小の頭蓋骨が多くて成人男子から女子供まで食らいつくしているのがすぐに分かってしまう跡形だ。 


 恐らく、ドラゴン達は先ほど見たように獲物を集めて一気に貪り食うのが習性のようだ。


 それが、羊達であろうと魔物であろうと、そして人間であろうとドラゴンからしたら食べ物でしかない。


 いわば、弱肉強食の世界が魔王復活からプロメキアスの大地には掟となってしまったように感じる。


 そう、俺がアレクサンドリアの屋敷でメリル達と来たるべきに備えて武芸や技を磨いていた時から、この世界は慈悲なき弱きものは成敗される残酷なものになってしまったのだ。


 そして、アレクサンドリア城でジーク卿やキマイラは何とか倒せた。


 だが、果たしてこの世界に連れてきた奴の思惑通りに行くのか不安な気持ちになる。


 あのドラゴンの凄まじい火力を見せつけられた今、次に向き合い戦闘となり勝機などあるわけないように思えるからだ。しかも、ステータス表示によると、ドラゴンには飼い主ならぬ乗り手がいて操るものすらいる。


 そんな奴を相手にして勝たなければいけない。


 しかもドラゴンにしたってドラゴンを操る者だとしても魔王の手下に過ぎないだろう。 


 だが、最終的には魔王を倒さなければ、俺もメリルも元の世界に戻れない。


 ある意味、この世界の救世主になる宿命を与えられたのは残酷過ぎる現実ではなかろうか。


 だが弱ければ敗北しこの積み上げられた屍になり晒されて風化してしまう無情。


 俺は自然と信仰心など無かったのだが手を合わせるとこの名も知れぬ屍達に成仏を願っていた。


「メリル様。このような事になりましたので、今日はここで野営をして過ごす事になりますが如何でしょうか」


 ルークの言う事は正しい。


 今から町を探すのも距離的に不可能で夜になってしまう。


 それにドラゴンはここに巣でもない限り来ないだろうから安心だと思えるからだ。


 俺達は、半壊してる家屋を探して、そこで雨風を凌ぐ選択をして泊まる事にした。

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