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第36話 空の覇者ドラゴン ②

「ヒデヨシ様、何とかしてみますね」


 メリルには何か策があるようだ。


「ルークさん、エリアさん、急いで馬車を端によせてください。それからトレマシーとドーラは魔法でお馬さんを眠らせてちょうだい」


 すぐにルークの愛馬と馬車をパールロードの端に寄せる。


 前方の道からは砂を巻き上げながらワーウルフと羊達がドラゴンから逃げてくる。


「ファイアーバリアント」


 まずは馬車に炎耐性の魔法をかけた。


 アレクサンドリア城でキマイラのブレスに数回耐えた火防御の魔法だが、「ドラゴンの火力では心許ないですがないよりマシ程度だと思って下さい」と言いながら呪文を唱えてくれた。


 それから、指先で宙に箱を描くようにしてルークの馬と馬車全体を長方形に囲む。


 すると、四方が鏡となり周囲の景色に溶け込んだ。


「さぁ、皆さん馬車に乗って! あとはドラゴンの目と鼻が効かない事を祈りましょう」




 短時間のうちに周囲に溶け込み擬装出来たのは見事だ。


 しかもこちら側からは鏡の外の様子が分かる。


 メリル曰く【マジックミラー】と言うらしい。




 ドラゴンに備えて早い段階に擬装したのがその後功を奏しることになった。


 ドラゴン達はブレスで獲物達の逃げ場に先んじて炎を吐くと足止めをするように仕向けた。


 動きが止まった羊やワーウルフはドラゴンの鋭利な脚の爪で餌食になる。


 三匹のドラゴンはそのようにして瞬く間に道に獲物を山積みにしていった。


 それはメリルが擬装してくれた場所から数十メートル先だった事から何もしなかったら俺達も山積みにされてる一部になっていたかもと思うとゾッとする。


 ドラゴンがこのように獲物を集めたのは捕食する際の本来の習性なのかも。もしくは最初の数十匹を食して腹は落ち着いたのかのどちらかに思えた。


 そうして集めた獲物を食する為に三匹の空の覇者は「ドスン」と地鳴りをさせると地上に降りたった。


 ドラゴン達は年齢か性別かは分からないが大きさが三匹ともに個体差がある。


 全身が鱗状の甲皮も微妙に色変化があり赤黒いものや緑が濃いもの、それに蒼いものなど三者三様の甲殻を形成している。


 いや、光の当たりようによっては銀に見えたり、赤や黒一色に見えたりして不思議な鱗を伴う甲皮をしていた。


 こんな魔物と戦う気はさらさらないがせっかくの間近で見る機会だ。


 スキルで一番大きい奴からステータスを見てみる。


【黒龍ブラックドラゴン 全長35メートルぐらい レベル??? ただいま放し飼い中 一つの国も滅ぼす力あり 見かけたら逃げるが勝ち 圧倒的火炎ブレス 脚爪は猛毒 魔王により天移された歴戦のドラゴン 竜殺刀ドラゴンスレイヤーを持つ日輪の子なら土俵には立てる 乗り手は金柑禿頭】




【赤龍レッドドラゴン 全長28メートルかな レベル??? ただいま放牧中♡ 君子危うきに近寄らず あと半世紀成長したらサラマンダーと呼ばれる逸材のドラゴン 灼熱火炎ブレス 脚爪麻痺毒 ブレス耐性ある日吉ならワンちゃんあるとかないとか……しらんけど。乗り手は鬼シバター】




【幼龍ワイバーン 全長15メートル レベル800 食欲旺盛絶賛成長中 カンストレベルの勇者なら戦えるかも。 生後三年くらいの子供のドラゴン 沼地を好む 火炎ブレス 脚爪毒 まだまだ知能は低い 乗り手募集中】




 スキルのステータス表示は良く言えば知りたい情報を簡潔に洗練されてきたようだし、悪く言えばだんだんとふざけていて酷かった。


 ただ情報で気になる所があったのも事実。


 見ておいて損はない。




 ドラゴン達の狩猟方法もステータスを見てなんとなく理解出来る。三頭とも脚の爪に毒があり掴んだ相手を瀕死や麻痺させて暴れないようにしてから食べてしまうようだな。


 今も山積みになった獲物を貪るように食っている。空腹の時は丸呑みしていたが今は牙て噛み砕いては肉だけ食べ骨は器用に吐き出していた。


 


 それと近くいるから確認出来たのだが黒龍と赤龍には首周りに巨大な金具が取り付けられていて馬の鞍みたいなものが見えて気になる。そもそも表示では飼い主あるいは乗り手がいるように書かれていたからな。


 聖騎士団達が以前にパラメキアが襲われた時にドラゴンに乗って太刀を振り上げていた。


 と言っていたから事実上のドラゴンの鞍なんだと思うしかない。


 にしても乗り手がキンカン頭に鬼シバターってのも、まさかなー? とおふざけが過ぎる。


 あのような化物を操るなんて人間業ではないから、俺の想像した奴ではない。


 そもそもこの世界にいるはずがないからな。




 あとは、日輪と日吉云々書いてあった事かな。


 母ちゃんが、何かある度に「あんたを宿した時に日輪(太陽)様が懐に入ってこられたんじゃ。だからお前は日吉山王権現の化身で神の子」と言って弱った時に自信をつけてくれたし、それが口癖だった。


 だから、小さい時は日吉、日吉って母ちゃんは俺の事を呼んでいたからな。


 それって俺の事なんじゃないかと思ったが、流石に出来過ぎな感じがする。


 日輪=太陽だから炎に強いとか安直過ぎるし……試して黒焦げになったらどうしてくれるんだ。


 要するに分かった事は、ドラゴンと遭遇したら【逃げろ】って話だわな。




 そういった訳で俺達はドラゴンと戦えるわけでもないので、この化物の旺盛な食欲が収まるまで待つしかなかった。


 しばらくの間、そのうち見つかって「食われてしまうのじゃない」かと生きた心地がしない時間を過ごした。


 そうして、羊飼い、羊達にワーウルフと一人一匹残らず平らげると満足したのか翼を広げて東の空に飛んでいってくれた。


 正直、俺も含めて皆は「助かった」と言う表情をしていた。


 

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