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第34話 二人の関係

「ヒデヨシさま、ヒデヨシさま」


 俺は身体を揺すられる感覚で目覚めた。


「悪い夢でも見られてましたか。うなされて寝言言っておられましたよ」


 起こしてくれたのはメリルだった。


 というか、必然的にメリルしかいない。


 どうやら、アレクサンドリアを出発して初めての街についたようだ。


 かなり、寝ていたようで馬車から降りると夕闇近くになっている。


「悪い夢なのかな。なんかこの世界に来るきっかけを作った奴が出てきた」


「どんな夢だったのですか?」


「うーん、あんまり何言ってるか、いつも分からないのだけど、嫁の寧々を映像で見せてくれた。どうやらこの世界とは時間の進み方が違う感じがしたよ」


 街についてから、宿屋に向かって歩きながらの立ち話。


 興味があるのかメリルは少し歩幅が遅くなり、大きな瞳で俺の顔を見つめてくる。


「何となく分かった事はこれから大変な事になるからメリルから貰った指輪と太刀を強化した云々かな。太刀は属性つけれるようで魔法使いと相談してみたいな感じだった」


「他には何か言ってましたか?」


「いや、ただ分かったのはメリルの言うところの神様と俺をこの世界に連れてきた奴は繋がっているような気がしたかな。メリルの神様がくれた指輪や太刀の事知っているからね。ただ、俺のはコーディネーターだとか神と言ってみたり一貫性がないし威厳とか神々しさとかは皆無だよ」


 


 実際のところ、この旅の初日で夢に出てきたのは機会タイミングが良すぎるわな。ともあれ強化してくれたのは悪い話ではない。


 本当の夢だったら強くなってないから意味なしだが、試すにも今は相手はいない。


 あと、つい寝てしまったが聖騎士団に比べたら俺は馬車の中で寝ていられる身分なわけでして、なんか役回りとしては男としては立つ瀬がないかも。だって聖騎士団の連中からしたら今は何もしない従者なわけだし……。


 キマイラ戦で活躍していなかったらと思うと仕事的部分ではゾッとするよな。


 あの戦いのおかげで彼らの中ではメリル達の用心棒として納得はしてもらえたから。


 一応に尊敬リスペクトはルークと話した時に感じはしたしね。


 ただ、いつかはこちらの世界の住人ではない事を言わないといけない日が来るかも知れない。


 個人的にはその方が俺は楽な気持ちにはなれるとは感じている。




「さあ、ここが今晩の寝床です。この街で一番大きな宿屋で一階はギルドと酒場も兼ねております。ちなみにこの街はアレクサンドリア城から一番近い街でエンゲルと言いますよ」




 ルークが言うには、これから行く先々の街や村の宿は見聞も兼ねて一番大きいところが良い。


 王の勅命は地域の情報収集で旅人や商人から聞くのが一番たからだ。特に酒場は酔って真偽はともかく、口を滑らす事もあるので大事な場所ということ。


 それを聞いて、偵察任務とは大袈裟に言えば間者や乱破(忍者)的要素もあるな。


 ジェラルミン王から潤沢な旅費を頂いているから俺達は宿で一番良い部屋で泊まる事が出来た。 


 勿論、聖騎士団とは別の部屋ではあったが、ルークに一緒の部屋で男同士過ごさないかと言われてしまう。


 その誘いを隣で聞いていたメリルが「従者」とは言え、用心棒も兼ねておりますから。それとヒデヨシと私は……皆まで言わせないで下さい。


 あちゃー、メリルの奴なんたる意味深な事をさらりと言ってしまうのだ。


 当たり前だが、俺とメリルはルークが想像してしまったような関係ではないのだが。


「あ、いや、察する事が出来ず申し訳ないです」


 ルークは少し顔を赤らめたからやはり連想したようだ。


「ルーク様、食事は部屋で取りますので四人分宿屋の主人にお願いしていただきますように言っておいてください。本当は皆様と一緒にいたいのですが、酒場にこの時間の女子供は好奇の目にさらされてしまいいらぬ厄介事になっても迷惑かかりますからね」


 確かに酒場は血気盛んな場所で些細な事で喧嘩になり刃傷沙汰なんて事もありうる。ただ聖騎士団相手に喧嘩売るような見所のある漢がいるとは思えないが酒は恐ろしいからな。


「時々はヒデヨシには酒場に行ってもらい、情報の共有してもらいますね」


「はい、メリル様了解いたしました。それでは早速に我々は情報集めがてら酒場で一杯やっております」


 


 結局、部屋で食事が終わると俺は酒場にいてルーク、アーガス、エリアの三人と酒を酌み交わしていた。


「いやいや、ヒデヨシさんも隅に置けないですな。いいんですか? お嬢様を一人にしておいて」


「バカ、トレマシさんーとドーラさんが一緒にいるから教育上良くないだろう」


 三人と乾杯して、数杯飲んだ頃、ルークから聞いたのだろう要らぬ妄想めいた事をアーガスとエリアはからかってくる。


 ここでまともな返答をしても面白くない。


「だと思うだろう。でもな、最近はトレマシーもドーラも一緒になってな……」


「ぶふぁー」


 それを聞いてルークが飲んでいるエーテルを口から吹いていた。


「あんな幼子と……」


「んな、わけないっしょ。戯れ事ですよ。冗談ですから」


「ですよね!」


 一同は大笑いしてくれた。


 なんとなく聖騎士団の連中と打ち解けあえたような気がする。


「ところで何か目新しい情報は聞けましたか?」


 まだまだ丁寧に聞かないといけないから友になるには時間がかかる。


「いや、ここはアレクサンドリアのお膝もとだからな。アレクサンドリア高原あたりから魔物が出るって話ぐらいかな」


 魔物が出るって……。


 危険な話だから大事だろーに。


「ここらあたりの諸侯は先日の謁見の間に来ていた方々だから、向こうが情報求めてるくらいで、今は来たるべきに備えて兵士の編成など戦準備してるのがここで聞けた話だよ」


 どうやら、この前謁見の間に集まった諸侯や貴族はアレクサンドリア高原手前ぐらいの者達だそうだ。


 一番遠い諸侯で、このエンゲルの街から馬を飛ばして五日ぐらいの距離にあるようだった。


 そして、魔物の情報をくれた旅人によると、パラメキア側の高原、つまりはここから東側に位置する場所はすでに魔物達の目撃が多く、アレクサンドリア側に避難してるそうだ。


 魔物は野生の狼が凶暴化したような姿でワーウルフと言ってるとの事で群れをなして襲ってくるそうだ。


 この話をしている間、聖騎士団達は「魔物のやろう。ぶっ倒してやる」と鼻息荒く、アレクサンドリアに来るまでに数多くの仲間を失っていた事が伺い知れた。


「それじゃ、アレクサンドリア高原に入ってからは魔物が出るから注意して進むってことだな」


「そうだな、あの辺りは牧畜が盛んだけど、今じゃ魔物に家畜を襲われるから遊牧民のように西に移動してきているらしい」


 まずはパラメキア高原まで進み、そこの街や村で情報収集するのがよさそうだった。


 パラメキア側に一番近いトーレス城も気になるところだった。


 ひとまず、明日も夜明け前に出発してパラメキア方向の東に進路を取ることで初日はお開きになった。

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