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第33話 いざ、パラメキアへ

 結局、晩餐会が終わってから旅支度を進めていたりメリルの言った不吉な事を考えていると、時間が経つのは早く明朝になっていた。


 


 そして約束の時間通りに聖騎士団一行が屋敷に迎えに来てしまったのだ。


 


 流石に聖騎士団だ。


 約束の時間に寸分違わず訪れる。


 すぐに、昨晩の晩餐会で泥酔してるフレドを叩き起こし、夢心地だろう双子ならびにフレドの弟達に旅立ち準備と帰る準備をさせる。




 こうして予定より半時間ほど遅れたものの俺達は馬車の前に立ちフレド達にしばしの別れを告げていた。


「だいたい一ヶ月くらいの旅なんだろう? 時々は屋敷の外回りは不審者がいないか確認しとくから、またご馳走してくれよな」




 フレドは泥酔していた割には目覚めよく元気そうだ。


 きっと酒には強い体質で強い肝臓の持ち主なのだろう。


 ちなみにメリルの言っていたオーラの欠片も俺には感じないし見えない。


 メリルの方を向いて手を振っている鼻の下が伸びきった青年の姿は確認出来たが……。




「それじゃ、パラメキアに向けて出発しますね」


 幌付き御車台には馬の騎手としてアーガスとエリアが乗り込んだ。


 どうやら一人が馬の操縦をしてる時はもう片方は休憩する。


 交互に騎手をして疲れを溜めないようにするそうだ。


 そして、聖騎士団長のルークが馬車を先導する形で愛馬にまたがっていた。


 しかし、聖騎士団長ともあれば、流石に良い馬に乗っているな。


 栗毛で艶があって美しい馬体をしている。


 この馬を見ていると主君信長様が開かれた馬揃いの会を思い出すな。


 あの時は後に家来になった山内一豊の馬が素晴らしかったが、ルークの馬を見ているとどこか似てると懐かしい気持ちになってしまう。




 ルークはパラメキアまでの道程はほぼパールロードに沿って進むと言っていた。


 この道はしっかり整備されて道幅も広く馬車の旅にはうってつけだからだ。


 馬車はすぐにアレクサンドリア城下を出て東に進路をとっている。


 馬車は車輪がしっかりしているのか、速度がそこそこ出ていても、あまり揺れなくてどちらかと言うと心地よく眠気を誘ってしまう。


 昨日の事もあってか寝不足気味もあり、トレマシーとドーラは出発してからほどなくして寝息をかいていた。


 やはり、魔力と態度は大人でも、お子様といったらそれまでの話にはなる。




 馬車の車窓から見る景色はどこまでも続いていそうな長い直線の道の左右にひたすら小麦畑が広がっている。


 メリルの話では、アレクサンドリアの国内は温暖な気候と大地の神に愛されているのか豊穣な土地が広がっていて大穀倉地帯になっているそうだ。もう少し先に行くとアレクサンドリア平原があり、そこでは牧畜をはじめとした畜産業も盛んらしい。


 故にパラメキアはもとよりプロメキアス大陸の食料の担い手として存在価値をを確立していてアレクサンドリアの諸侯達や貴族は潤っているそうだ。


 変わり映えのしない車窓からは農作民の民家が点在して建ってるのが見えた。


 地主っぽい家はお城や街中みたいに石積みされていて頑丈そうで立派な作りだが、小作人らしき家は木材と藁を組み合わせたような粗末な小屋に見えた。


 きっと、俺やフレドの実家もこのような場所に住んでいるのだろうな。


 でないと、食い扶持探しにギルドに通い兄弟で仕事などしないからな。


 それだけ農作だけでは家族が食べていけないのだろう。


 現に元々いたこの世界のはヒデヨシにも父、母や兄弟はいただろうに……。


 フレドから「屋敷で働く」と聞かされて以来、音沙汰無い事を考えたら食い扶持が一人減って助かった程度なのかも知れない。


 いや、一家の稼ぎ頭だったら大変な事なのだろうが俺と同じで農作には向いてない人間だったのかだろうと察しがつく。


 俺自身も信長様の家来になる前は貧しい小作人の家に生まれたから貧しさはよく知ってるつもりだ。


 こうした風景を見ているだけで、どこの世界も力のある諸侯や貴族、それに従う騎士などが優遇されて、税や年貢を納めないといけない農民達は搾取され続ける構造なんだよな。


 だから、この世界の貨幣価値は分からない。


 けれど、もしフレド達が俺の想像するような生活だったとしたら、もっと金貨をメリルに言って彈んでやったら良かったとも思う。


 ジェラルミン王から旅支度の資金は沢山貰っていたし、そもそもメリルは子爵の令嬢だからお金には困らない生活をしている。




 そんな、現状ではどうにもならない事を考えていたら、昨晩の睡眠不足と馬車の心地良い揺れで瞼がひっつき出し、双子の事を笑ってられないと思いつつ眠ってしまう。






「ヒデヨシ、ヒデヨシヒシシブリダナ」


 俺は馬車の中で宙に浮いている。


 俺を呼ぶ声は誰だ?


 こ、こいつはあの時の……。




「ガシュガシュして……あたり」


 ガシュなんだそれ?




「ヒデヨシコレキャラタイヘン、センバツやる。アイテモきたないからな」




【指輪と太刀が性能上昇しました】


 頭の中で変な活発な音色ファンファーレが聞こえた。


【転生天移武将追加登場者適当選抜、正宗属性追加魔法演者必須】


「ジャな、ガンバれバカエレ」


 馬車の中を見下ろす俯瞰の下に映像が見えた。


 心配そうな着物姿の女性。


 あ、あれは愛しき妻ねね。


 ここは、信長様が大名にしてくださった彦根城じゃないか!? 


 ってことは、寧々は俺がまだ金ヶ崎からの殿をしていて帰りを待っているという感じなのか。


 どうやら、この世界とは時の概念が違うってことなのか?


 いや、分からん、分からん。


 一つ分かったことは、この俺を異世界に送り込んだ奴とメリルの神様は繋がってる事だ。


 メリルからこの世界に来て貰った指輪と正宗の事を奴、いやコイツラは知っているからだ。

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