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第28話 城下町での買い物 ①

「じゃ、俺も一緒に行って手伝うよ。街で買い物したことないし楽しそうだし、荷物も沢山あると持てないだろう?」




 この世界に来てから、屋敷内で来たるべきに備えて戦闘訓練や書物を読んで勉強ばかりしていたから街に出るのは嬉しい。


 実際はドーラのインプに殴られては伸びてた日々ばかりだった気もするが……。




「そうですね。ヒデヨシ様もこの世界の街に慣れるのは悪い事じゃありませんから一緒に買い出しお願いします」




 これは荷物沢山持たされそうだな。


「皆んなで買い物、買い物ダバサ。ねぇさま飴玉買って欲しいダバサ」


 そんな子供っぽいドーラの言ってる事を聞いて皆に笑顔がこぼれる。


 なんか、こういうのっていいよな。


 ずっと今まで俺は立身出世に明け暮れていたような気がする。


 と、言ってもこの世界に来て半年あまり、昨日からようやく物事が動きだしたばかり。


 この後、どうなる? なんか誰も分からないからしばしのほっこりした時間があって落ちつけた。




 ほどなくして、「パカパカ」という馬の爪音が止まり馬車は屋敷に到着した。


「それでは明朝にルーク隊長達と一緒にお迎えにまいります。では、また」


「ありがとう、お気をつけて!」


 御者をしてくれたアーガスは屋敷の馬を借りてアレクサンドリア城に戻って行った。




 朝一にお城に行ったのだが時間が経つのは早いもので、屋敷に戻ると昼過ぎで夕方近い刻になっている。




「少し休憩してから街に行きますか?」


 とメリルが気を使って聞いてくれたが明日は早い。


 のんびりしたい気持ちもあったが、まずは旅支度を済ませておいた方が懸命だと思った。


 買い物とか楽しい時間は早く過ぎてしまうのは経験上知っているからだ。


 出来る限り明日は早朝に出発することもあり、夜は就寝時間に当てたい気持ちもある。


 本来なら時間に余裕を持たせて明後日出発とかだったら良かったとも思うが急を要する事柄でもあるのでやもえない。




 アレクサンドリアの城下町。


 大きい街だけあって目抜き通りには沢山のお店が両側に軒を連ねている。


「いらっしゃい、いらっしゃい」


 とそこら中から食品や雑貨を売る店員の声がして活気があった。


「ヒデヨシ様、まずはギルドに寄りますね」


「ギルド?」


 この世界の言葉はかなり学んでいるはずなのに何だったか忘れてしまっている。


「何でも屋ですよ」


 と隣で手を繋いできたトレマシーが教えてくれた。


「うん。これから沢山もの買うでしょ。それをギルドで依頼するとお家まで持ってきてくれるダバサ」


 今度はトレマシーの横で手を繋いでいるドーラがギルドの説明をしてくれた。


 要するにお金があれば困ったことを引き受けてくれる職業の一つのようで組合制度らしい。だからギルドに登録してる人しか何でも屋が出来ない仕組みになっているそうだ。


 大陸間戦争が勃発していた時はギルドで魔物退治の依頼が主流だったが今はその名残で簡単な仕事依頼の場となっていた。


 ドーラの横で手を繋いでいるメリルが教えてくれた。


 こうして四人で手を繋いでいると本当の家族みたいで愛着が湧いてしまう。




 ギルドに行く道すがらに子供が好きそうなお菓子屋が見えたのでメリルに頼んで双子に大きい飴を買ってやった。


「ありがとう、ヒデヨシ兄ちゃん」


 初めてドーラから呼び捨てにされない奇跡が起こった瞬間。


 この双子をご機嫌にさせている飴はペロペロキャンディーというらしく、ドーラ屋トレマシーの顔ぐらいの大きさをしていて舐め応え十分な代物だ。


「ヒデヨシ兄ちゃん、ギルドが見えたよ」


 トレマシーが指差す方向にギルドの看板が見えてきた。


 魔物退治依頼を受け付けていた頃の面影なのだろう、看板は龍に戦士が挑む姿の物騒な物だ。


 確か、パラメキアを襲った龍に乗る化物も俺と同じような太刀を持っていたと聖騎士団のルークが言っていたが、この看板に書かれているような代物なら乗っている奴が何者であろうとも勝ち目はないと思ってしまう。


 そもそも龍なんてものはおとぎ話の世界だろうに。そんなの相手なんて無理、御免ってものだ。


 いずれにしろパラメキアに行けば分かるし、もし龍に乗った化物がいたら逃げる限る。




 ギルドは誰でも入りやすいように扉が開いた状態で営業している。


 店内からは人の出入りが激しい。


 混雑していると思いつつ、人の出入りが途切れるのを少し待ってから入店した。


 入ると出入り口の狭さとは裏腹に意外と中は広い。


 店内は案内をしてくれる店員が要件を聞いたり、壁一面に貼られてる募集をにらめっこしてる人達やカウンターで談笑や手続きをしてる人達がいて賑やかだ。




 そんな様子伺いをしてると、「やぁ、ヒデヨシじゃないか」と声をかけられた。




 呼ばれた方向を見ると、そこに居たのはフレドだった。


 フレドと会うのはこの世界に来て以来だ。


 最初の日に一緒にメリルの家まで案内してくれた恩人でもある。


 でも、それ以外はフレドの事を知らない自分。


 ここに来るきっかけになったコーディネーターなるものに有耶無耶にされていたが、本当のフレドが知ってる【ヒデヨシ】なる人物の中身はどこに行ってしまったのだ。


 それ以前にその中身はヒデヨシと言う名前だったのか? 


 その事を考えるとなぜだか頭痛がする。  


 うーん、確か「名前はそのままにしといてやる」みたいな上からの物言いだったし、もしかしてメリルみたいな感じでコーディネーター=神様なのだろうか?


 いや、それにしてはメリルの聖母様みたいにありがたみというか、尊厳が無いというか、悪く言えばふざけてるし、婉曲的に言えば楽しそうな感じで遊んでいるような……。


 スキル【人たらし】のステータス表示そのもので少し人を小馬鹿にしてる感じ。


 その事を考えると頭の中に靄が出来るようだ。


 

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